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日中ステルス戦争

 日中ステルス戦争


 GDP世界ベスト3の座を争う大国がちっぽけな島をめぐって火花を散らしていた。

 双方互いに譲らず、一方は尖閣、一方は魚釣と呼んで領有権を主張した。
 正当性を示す根拠として、由来を証す古文書を次から次へと繰り出した。

 日中、互いに妥協点を見いだせず、終わりの見えない論争はこの世が滅びるまで続くかと思われた。


 ある日、中国政府は突如として主張を翻した。

 日中間に領有権問題などない。

 ただ、東シナ海に未確定の海域があるだけだ、と。

 日本国政府は相手国の軟化を驚きを持って迎えた。雪解けムードが一気に高まり、両国民は沸いた。

 凍結されていた交流も復活し、株価は高騰した。

 しかし、この事態に冷水を浴びせるアクシデントが起きる。


 島に中国製のドローンが着陸したのだ。小さな国旗を掲げ、短波送信機でここが自国領土であることを全世界に宣言した。、
 同時に、中国政府は未知の海域に新島を発見したと発表。

 ドローンの操縦者を国家英雄と称えるとともに、命名権を付与した。
 中南海の池を背に彼はこう言った。

「魚釣島です」

 寝耳に水の日本政府は猛抗議を行ったが、中国政府は国際法に基づく先発見権を強固に主張。
 南沙諸島と同様に既成事実化してしまった。

 日本は急遽、護衛艦を差し向けるも、中国海軍の艦艇が一足早く尖閣海域に到着。一触即発の事態を迎えた。

 しかし、自衛隊は憲法9条で雁字搦めにされて撃てない。





戯馬たわば総理!」

 狂進反対党の八宝菜子やたからなつこ代表代行が国会で政府の及び腰を厳しく追及した。

 戯馬旧作首相はのらりくらりと答弁した。 


「我が国の憲法9条、専守防衛の方針に従いまして、たとえ領海内に他国の軍艦が侵入したとしても、直ちに武力行使できないのであります」
「また武力攻撃事態法に基づきましても、万が一護衛艦が被弾するようなことがあっても、攻撃に継続性が認められなければ武力攻撃事態に当たらないのであります」


 これに対し、反対党だけでなく与党民主自認党の議員からも野次が飛んだ。

「個別自衛権を行使できないのか!」
「武力奪還だ!」
「意気地なし!」
「そうだ! そうだ!!」

 首相は声を裏返し、真っ赤な顔で反論した。

「国際法に照らして、魚釣島は既に中国が実効支配していると判断される以上、武力行使は『侵略行為』に当たります、これは我が国の憲法が硬く禁じています」

 すると議席は更にヒートアップした。
 首相も応戦する。
「日本を戦争に巻き込みたくない。法の厳格な運用を求めたのは、八宝さん! あなたがた野党ではありませんか!」
「「「「よく言った! さすが総理大臣」」」」






 国会議員の人件費一日当たり総額三億円。

 豪華な茶番劇が催されている頃、政府の極秘プロジェクトチームが筆菱ふでびし重工で爪を研いでいた。
 大きな翼の下で技術者たちが工具をふるっている。

「まさか、ライトニングⅡにこんな装備があるなんてな」
「用廃後の有効活用を見据えた設計です」
「アメさんは先の先まで考えているんだよ」

 技師たちは感心しながら機体の改造を進めていった。

 翌日、日本国政府は突如として台湾との断交を発表した。

 そればかりではない。
「台湾」という国家そのものの存在を否定したのだ。

「東シナ海の地理的状況は未解明である。調査が必要である」

 台湾政府はパニック状態に陥った。


 中国の頓珍漢トンチンカン国家主席は日本の姿勢を諸手を挙げて歓迎した。
「一つの中国、一国二制度に基づき、解決される問題である」と従来の主張を繰り返した。
 すると、戯馬はしれっと言った。
「中国は一つしかない」

 その瞬間、東京株式市場は大混乱に陥り、怒り狂ったネットユーザーによる炎上で政府与党諸機関のサーバーがダウンした。

 しかし、それはたちまち鎮火する。

 日本国政府は緊急声明を発表した。

「我が国の無人観測機が東シナ海に新島を発見した。台湾と命名する」

 泡を吹いたのは中国政府だ。
 中国国営テレビは偵察衛星が撮影したと思われる戦闘機の画像を公開した。

 日の丸を掲げた無人戦闘機が着陸している。


 F35Bステルス垂直離着陸機を使ったやり口に中国政府は怒りをあらわにした。
 しかし、戯馬はきっぱりと言った。

「あなたがたも盲目的ステルスではないか」
解説
米軍の戦闘機は用済みになると、でっかいドローンに改造されます。
パイロットがそれを標的にして実戦さながらの訓練を行うのです。
最期にはミサイルの的になってお役目ごめんです。

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