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現状理解と異母弟が可愛い

……リアルでも弟が欲しいものです

「うわぉ……マジか……」

私はイゼリア・フォン・オルシア。世間では残虐非道、悪辣、鬼の住処とも言われているオルシアの本家直系の一人娘。

鏡に映るは絹のような艶を持つ黒髪、闇夜のような黒目。陶器のような白い肌に整った美貌。10年後にはさぞ美しくなるだろうと思わせる容姿だ。

私はこの容姿の大きくなった時の姿を知っている

そう。悪役令嬢である

「小説か!!」と思わず叫びたくなる衝動を抑え現状を理解しようと思う。なっちゃったもんは仕方ない


この物語は『運命は君の手に』という名のゲームで中世ヨーロッパ風の魔術が存在する王道系ファンタジーでイゼリアが18歳の時に本編を迎える。

ヒロインにそれはもう激しい虐めを繰り返し行い、バッドエンドではヒロインはイゼリアに追い詰められ自殺してしまう。

ちなみにノーマルエンドならイゼリアは実家没落の上牢獄で拷問死するという。死に方はエンドする攻略対象によって様々だが。

対象者はイゼリアの異母弟ギルバート、第一王子アルフォンス、公爵家の息子エリオット、近衛騎士団隊長レオナード、奴隷に落ちた隣国の王子ヒューリである。

それぞれの過去のトラウマにイゼリアは関与する

隣国の王子などはイゼリアが堕としたものだし。


(ヤバイ……確か異母弟のギルは私が9歳の時に来る。そして私は昨日9歳の誕生日を迎えた)

異母弟ギルバート。女を犯す、乱暴に扱う事で快感を得るタイプの父(豚のよう)に犯された男爵家の娘から生まれた弟だ。子を孕んだことで難癖を付けられたら堪らないと父はギルバートの母親を騙し娼館に売り飛ばす。父に犯されハメられ娼婦に堕ちたギルバートの母親はギルバートに憎しみの限りをぶつける

ある日極度の飢餓と母親から殺されかけたことでギルバートは暴走。魔力持ちだと言うことが判明しオルシア家に引き取られる。

もしかしたら愛してくれるかもしれない。それでなくとももう殴られたりしないかもと思ったギルバートを裏切るかのようにオルシア家ではイゼリアとイゼリアの母がギルバートを虐待する。

そして奴隷のように扱われ、母の所にいた時よりも人の扱いはされずギルバートは絶望する。

まぁその後ヒロインの優しい心や行動に癒されギルバートはヒロインと恋に落ちるのだ。

ちなみに、ギルバートのエンドだと私はこの国で最も恐ろしい監獄、通称《煉獄》に収容され死ぬより辛い目に逢う。


(うぉお……改めて思い出すと凄まじい人生だギルバート……希望が無い……)


本来なら澄み切った深い藍色の瞳は淀み、艶やかであったであろう黒髪はパサパサでごわついている。私より2歳年下であるギルバートは7歳とは思えないほど身体が小さく未成熟だ。

「これからイゼリアの弟になるギルバートだ。まぁあれだ……魔力持ちでもある。利用方法なら事欠かないだろう」

そんなギルバートの細い腕を乱暴に掴みながら父が言う

黙ったままの私に怯えるような視線を向けるギルバートに母は癇癪を起こす。

「貴方!?こんな卑しい血の入ったものを家に迎えるですって!?不貞を働くだけでなくこんな……こんな屈辱はありませんわ!!!!!」

「ならば下男として扱っても構わない」

(えええ……待ってまず仮にもオルシア家の息子を家でとはいえ奴隷扱いって……!!!!!ヤバイ!!!フラグが!!)

「お父様とお母様はこの子が要らないの?なら私にくれます?」

ギルバートを挟み喧嘩をする両親に聞く

「構わないが殺すなよ。将来確実に使えるからな」

「私は元より面倒をみるつもりは御座いません!!」

ヒステリックに叫ぶ母親、父親は乱雑に掴んでいたギルバートをそのまま私の足元へと投げる。

「…い…っ!!」

身体中に走る傷が擦れ痛みに声をあげるギルバートに私は内心(ああやめて痛そう!!)と思いながら手を差し伸ばす。

「後で治療をしましょう?私は、イゼリア・フォン・オルシア。貴方の姉になります。……そうね、これからは姉様とでも読んでちょうだい。貴方のことは……ギルと呼んでもいい?」

「…ね…姉様、?」

微かに震える肩は怯えているからなのか

姉様と呼ぶ声も怯えと恐怖が混ざっていた。けれどギルと呼んでもいい?という質問にギルはこくんと頷く。

「ほら早くおいで?そのままでは痛いままでしょ?」

空中で躊躇うかのように止まった手を掴み私は医局へ向かう。治癒魔法は王宮にしか存在せず普通の治療しかできない

少ししてギルが私の手をきゅっと掴んだ。


***


面倒を見ないと言った母は文字通りギルをネグレクトしまくりどころか悪意と害意をギルにぶつける。私が居ないすきにギルは母によく鞭打たれていたらしい。

その頃私は知識をちょっとでも手に入れようと図書館に通い詰めでギルの事を後回しにしていた。というかまさか母親がここまでするとは思っていなかったのだ。ある日予定外に早く帰ればギルが泣き叫び母は甲高い声でギルを罵っているものだから驚いた。


「お母様!?何をなさっていて!?ギルは何も悪いことしてないでしょう!!」

「この薄汚い子供は存在する事こそが罪なのよ!!」

血走った目でギルを踏みつけ身体の場所など構わず思いっきり鞭を振るう母は鬼のよう。白い肌にドンドン赤い跡がついていく

「ね、姉様助け、て!!あうっ!!…いっ…!!」

母親の乱心振りに引いてる暇は無かった

ギルはまだ引き取られる前の傷が治っておらず服が擦れるだけでも痛がっている。泣きながら私に手を伸ばしてくるギルを助けなければと私は必死になった。

「お母様やめて!!ギルが死んでしまう!!だ、誰か!!お母様を止めて!!」

見て見ぬ振りをしていた使用人を動かせ母を拘束してもらう。

「イゼリア!!私を止めるなど……この親不孝者が!!」

「まだ幼い子供を、それも何もしていないのに鞭打つお母様はおかしい!!私は従えません!!」

酷い所は皮が破れ血が出ているギルを庇いつつ母と対立する。母とはこれより関係が希薄になったような気がする。

散々に打たれたギルは傷が悪化し、しばらくは熱に魘される程の重症だった。


そんなギルを守り、食事を摂らせ(家のシェフは母が手回しをしたらしく作らないので私が作ったり。そもそもシェフは何だかプライドが無駄に高い方だったのではよクビにしたい)、睡眠を取らせ……と様々なケアをした結果ギルは原作通りのイケメンになった

よくやった私!!


「ふふっギルの髪は触り心地が良いわ」

椿油でケアするのも、もう要らないかなーっていうくらいサラツヤになった髪を梳きながら呟く。この美しいエンジェルリングを作るため苦心したものだ……。

ギルは髪を撫でられるのが好きなようでとろりと蕩けた目を向け……うつらうつらとしている。

「姉様……でももっと、して?」

「う、……もうちょっとだけよ?(可愛いぃいい!!鼻血出そう、やばい流石ギル!!)」

眠いからか舌っ足らずな声、珍しいお願い事、破壊的可愛さだった……イゼリアはどうしてイジメられたのだろうか……無理だ可愛すぎる。


最近では私が離れると焦って私を探しそばから離れないギル。一度どうしても私だけで行かねばならない用事がありギルが寝ているあいだに向かったときは大変だった

瞳が魔力保持者の特徴である金に染まり、魔力が暴走。部屋はボロボロになった


「捨てないで、姉様」

慌てて家に帰りギルを抱き締めるとギルはそう懇願してきた。やはり母親がトラウマになっているのだろうか……

後9年で原作始まるけど……ギルは大幅にキャラ変してしまったなぁ……

とりあえず少し離れても大丈夫なようにしないと。

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