表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

偽札

作者: ミミ

お題は『偽札』です。

 あれほど反対していたのに、勇者召喚術が用いられた。


 理由はと言えば、イタズラに戦費がかさむのを王が嫌ったため。

 一命を賭して、直々に意見を奏上するも、王は笑うばかり。

「何、勇者は確かに強い。だが、わしらに暴力をふるうことも嘘を吐くこともできん。また便利なコマとして使い潰せば良いのじゃ」

 王の言い分ももっともだが、それはあまりにも心がなさ過ぎる。

 実際、召喚された勇者は召喚主と召喚主が属するものに対して無力だ。

 一日中こき使われても食事すら満足に与えられなくても、何もしてこない。

 しかし、彼らはその扱いを忘れてはいない。

 文句のひとつも言えずとも、ぎらぎらと光る目は雄弁に語っていた。

 そんなあるとき、


「魔王軍の戦力を削る策を思い付きました」


 勇者のひとりがこんなことを言い出した。

 聞いてみると、魔王軍側の偽札を作って流通させ、魔王軍の経済を破壊するのだという。

 こんな発想は誰も持っていなかったので、大臣も学者も皆驚いた。

「効果はあるのかね?」

 王が訊ねると、

「我々の世界では、経済は偽金との戦いでした。紙幣はもちろん、金貨や銀貨、銅貨ですら多数の偽造が世界中で確認されています」

 と堂々と答えた。

「ふむ……まあ、大したカネもかかるまい。大臣! すぐにやってみせよ!」

 王は命じ、勇者に下がるよう告げた。


「待ってくれ! 報酬を……日にパン二個でいいから、せめてまともなものを食わせてくれ」


 がりがりにやせた勇者の命は、そのまま潰えた。

 許可もなく王に話しかけた罪だそうだ。


「ふはは! 面白いように魔王軍の経済が壊れていくそうではないか! 愉快愉快! これも、ワシに下賎のものの意見を取り入れる度量があればこそよ」


 私は、財産を整理し、この国を去ることにした。

 多額の報酬も提示されたが、そんなものは無価値だときっぱり断った。


 理由は二つある。

 ひとつは、死にゆく勇者が、壮絶な笑みを遺したこと。

 もうひとつは、この国には偽金対策という概念がまだ存在していないことだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 確かに経済を突くのは一番怖いですよね。無価値と断ち切ったのも経済の概念があるからこそのタネだと思います。主従関係はここからまままに行ったのですか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ