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非異世界ファンタジア 作者:なんこつ
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第五話 体力強化とクラブチーム・後編

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 あの後、駆け付けた監督をはじめとした大人たちによって火は消し止められ、三人は救急車で病院に運ばれた。警察も駆けつけかなりの大事になり、簡単な聴取も行われた。

「つまり、お前は被害者だということだな?」
「そう」

 警察の取り調べが終わり家に帰ってくると、確認として両親に再度一連の流れを説明することになった。

「本当に怪我は無いのね?」
「うん、大丈夫」

 心配してくれる母にそう返す。警察もやけどが見当たらない点を不思議そうにしていたが、素早く靴を脱いで投げつけたから、でひとまずは納得してくれた。実際は火が見えた瞬間に身体強化を施したからなのだが。抑え込んでいた二人を投げられたのもそれが理由だ。

「だが、お前は彼らを踏みつけようとしたと聞いたぞ?」

 痛いところを突かれた。どう返そうかと思案したが、結局は素直に話すことにした。

「……そうだね。間違いないよ」
「強化された体でか?」
「うん」
「大けがをすることも承知だったんだな?」
「もちろん」
「……なぜそんなことをしようとした!」

 父の怒鳴り声に怒りが生じる。

「あいつらは! あいつらは俺に害をなそうとした!! 父さんと母さんからもらった大切なシューズを燃やしやがった! そんな奴らを排除して何が悪い!!!」
「馬鹿者が!!」

 声を荒げた俺よりもさらに大きな声をかぶせてくる。

「確かに問題が起きた時に力でねじ伏せる方法があるとは言ったが、やり過ぎていいとは言ってないぞ!」

 訳が分からない。

「必要十分だ!」
「いいや、やり過ぎだ。未遂とはいえ、追撃までは必要なかった」

 馬鹿な、甘すぎる。やるときは徹底的にやるべきだ。もし手加減をして復帰した連中がより苛烈に攻撃してきたらどうするというのか。

「守るためには必要だったんだ!」
「その結果、何を失うことになるところだったのかを分かっているのか?」
「え?」

 失う? 何を?

「分からないのなら、一晩考えろ」

 そう言って父は席を立つ。

「母さんも、攻撃しようとしたことには反対」

 母さんも?

「もう一度、冷静に、客観的に考えてみて? 大丈夫。夢人ならきっとわかるわ」

 母も席を立ち、自室には混乱した俺だけが取り残された。



 翌朝。

「分かったか?」

 朝食時に父が昨日の問答の結論が出たかを聞いてくる。

「……分からない」
「そうか」

 なぜ追撃しようとしたことが駄目だったのか、一体何を失いそうだったのか。考えてみても結論は出なかった。
守るべきものは手元にあり、それを守るために脅威を全力で排除する。何もおかしなところはないはずだ。

「……先ほど警察から事件の流れの最終確認を行いたいと連絡があった。それが終わったらもう一度話をしよう」

 父はわずかに思案したのち、そう言ってきた。俺も納得のいく説明を聞きたいので素直に頷き、今は朝食に集中することにした。



「――である。以上、間違っている点や疑問点等はありませんか?」
「はい」
「では、こちらの書類に署名をお願いします」

 警察で一通りの説明を受け、母が署名をする。警察の話によると、三人とも比較的軽傷だったため昨日のうちに聴取を行ったがしかし、こちらとは大きく食い違った証言をしたという。曰く、彼らは俺に呼び出され、俺が自分で火をつけたシューズを投げつけられて怪我をしたのだと。……一体彼らはどれだけ人をコケにすれば気が済むのか。
 しかし、なぜ投げられたシューズを避けられなかったのか、なぜ三人共に引火しているのかなどの不審な点を指摘したらあっさりと本当のことを話し始めたという。決定的だったのは近くに落ちていた火種から彼らとその母親達の指紋が検出されたことで、最後まで粘ったリーダー格も白状したのだとか。そう、驚くべきことに今回の事件は彼らの独断ではなく、母親たちもグルで行われたものだった。子供たちを唆し、道具まで用意していたのだ。偽りの証言も母親たちの入れ知恵だそうで、警察では動機を含め慎重に調べを進めているという。

「はい、それではこれで終わりになります。ありがとうございました」
「ありがとうございました」

 終わったことに一息つき部屋から出ると、例の三人組と鉢合わせた。何が起きてもいいように、すぐさま臨戦態勢に入る。だが、警察に連れられた彼らはどこかおびえた様子を見せながら足早に立ち去って行った。
 見たところ、完全に心が折れている。敵性存在の排除に成功したことに安堵感と満足感を覚えていると、なぜか両親から痛ましいものを見る目で見られていた。



 先の視線に疑問を覚えながらも、とりあえず家路に就く。

「でも、特に問題なく終わりそうでよかったよ」

 車の後部座席で寝転びながらそう口にした俺の目に、眉間にしわを寄せた父の顔がルームミラー越しに飛び込んできた。

「お前は、何も思わなかったのか?」
「え、何が?」
「あの三人の様子を見て、何も思わなかったのかと聞いてるんだ!」

 父の大きな声が車内に響く。訳の分からないことを問われた挙句、イライラをぶつけられて不快感を禁じ得ない。とはいえ、我慢できないほどではないので、素直に質問に答えることにする。安堵し、満足していると。

「……ふー」

 信号待ちの車内。天を仰ぎ、大きく息を吐く父。こころなしか母の背中もしょんぼりしているように見える。

「夢人、彼らはお前のことを恐れていたな?」
「そうだね」

 だからこそ今後あいつ等からの攻撃はないと安堵したし、問題が解決したことに満足感を覚えたのだ。

「分からないか? それはつまり拒絶されている、ということだ」

 ……。

「そして、それは彼ら以外の者からも向けられるかもしれない」

 っ!!

「力を使うのが悪いとは言わん。用法用量を守れば問題解決に効果的なのは事実だからな」

 だが、と父は続ける。

「むやみやたらに力を振るえば恐れられ排除される。それは社会での立場やセーフティーゾーンを失うことを意味する。それも下手をすれば周りの者も巻き込んで、だ」

 あの時、キャプテンが来なかったら。折れる腕、過剰防衛として攻め立てる警察、肩身の狭くなる両親。そんな展開が容易に想像できてしまい、うなだれる。

「一人世捨て人になるならそれでも構わん。だが、お前はそんな未来を変えたくて行動しているのだろう?」

 そう、だった。嫁さんができなかったのも隠居したのも誰のせいではない、自分のせいだった。魔法にかまけ、得た力を存分に振るい、顔色ばかりを窺う世の中に失望して隠居したのだ。帰る間際に見たあの目。あれは戦場で、討伐を見せた後の村で、護衛旅の道中で、何度も見たそれだ。理解不能な化け物を見る目。ああ、なぜこんな簡単なことに思い至らなかったのか。間が抜けていたとしか言いようがない。

「あなたは夢でたくさん大変な経験をしたんだと思う。でも、優しく在る事を忘れないで? それはきっとあなたの助けになるから」

 母の優しくも力強い言葉に心を打たれる。そう、俺はこの人生を幸せなものにするのだから。
 車はいつの間にか自宅の車庫に停車していた。



 一週間後。久しぶりにクラブチームに赴いたが、幸いなことに扱いは良好なものだった。俺が被害者としての立場だったこともあるが、あの三人の素行も普段からよくなかったらしい。加えて、自分たちも俺に対しては似たような態度だった罪悪感もあるようだ。

「それだけじゃないぞ」

 呟きが聞こえたのか、休憩中の俺の下に監督がやってきた。ちなみにこの監督、両親だけでなく俺自身にも物凄い勢いで謝罪をかました。確かに不祥事ではあるのだが、保護者だけではなく児童にもあそこまで謝れるものかと驚いてしまった。そういうと、

「今回は完全に俺の落ち度だし、チームとしてお前を失うわけにはいかんからな」

とのこと。それにしたってなかなかできるものではないと思うのだが。

「ところで、さっきの『それだけじゃない』ってどういうことです?」
「ん? ああ。それはあれだ、お前のプレーが原因だってことだ」

 詳しく聞くと、どうも大会の時の試合の流れを変えたことが主な要因だという。

「ある程度デキる連中には、優秀な者をリスペクトするという土壌があるからな。あれだけの能力を見せたお前に敬意を払わないわけがないのさ」

 なるほど、さすが強豪プロチームの下部組織なだけある。そういえば、夢の体験でも一流以上の連中は恐れるどころかからかってきてたな……。それは数少ない隠居後の人との繋がりだった。
 とはいえ、一般的な幸せを求める以上、今後力を行使する時は周囲からの見え方に気を配った方が良いだろう。出来る自信は、あまりないが。
 休憩の終わりを知らせるホイッスルが思索の終わりを告げた。
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