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非異世界ファンタジア 作者:なんこつ
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第四十五話 調査・前編

幕間入れて今回で五十話! 文字数も前回で二十万文字突破!
読者の皆さんの応援のおかげです!!
……数百話とか数百万文字とか書いている作家さんは怪獣か何かだと思う。
 ゲートを潜り抜けた俺たちを出迎えたのは美しい鍾乳洞だった。

「わあ!」
「凄い」

 先に来ていた人たちと同様、目を輝かせ感動の言葉を口にする二人。ダンジョンに入った割に気が緩んでいるような反応だが、この光景を前にしてはそれも仕方のないことだと思わないでもない。
 ダンジョン特有の出所不明の光源によって明るく照らされた鍾乳石はその独特な造形をあらわにし、所々に溜まった水は透き通った青色をたたえている。この世界遺産もかくやといった景色は、ダンジョンの中でも非常に珍しいものだ。魔物さえ出現しなければ、一種の観光スポットとして機能するかもしれない。

「ま、とりあえずは連絡をっと」

 とはいえ、チームリーダーとしての責任もあるのでいつまでも絶景に呆けているわけにもいかず、早々に職員へ通話確認の連絡を取る。

「第七班です。通話確認のために連絡しました」
「第七班ですね。……はい、確かに。それでは怪我等に気を付けて調査をお願いします」
「はい、ありがとうございます」

 通話を切ると、他の班も慌てて連絡をしているのが目に映る。案の定忘れていたようだ。そんな状況をしり目に俺は澪と璃良を促し探索を始めることにする。

「そろそろ行こうか」

 そう告げ、二人の顔つきが真面目なものに変わったことを確認した後、俺は数十人が入ってもなお余裕のある空間を見渡した。この部屋から出るルートは背後のゲートを除けば正面と左右の三つ。うち一つは先の部屋でさらに二つに分岐しているのが見て取れる。

「夢人、どれにする?」
「そうだな……。璃良はどれがいい?」
「え!? 私ですか?」
「そう」

 今回は概要調査であるから特別目標というものが無く、マップのような選択の指標もない。時間もそれなりにあるから余裕を持った探索が可能であることも考えると、澪や璃良の好奇心に任せるのも面白いかもしれないと思うのだ。

「えっと……じゃあ、あっちで」

 そう言いながら璃良が指さしたのは一番大きく明るい真ん中のルート、ではなくその隣。三つの中で最も特徴のない右側のコースだった。ちなみに理由を聞くと選ぶ人が少なそうだからとのこと。なるほど。

「よし、行こうか。足下に気を付けてね」

 観光地のように足場が整備されているわけはなく、凹凸のある不安定な岩場を歩いて先へ行く。歩を進めるほどに俺たち以外の人気は遠ざかり、天井から滴り落ちる水滴の音が耳に響いた。



「ここらで少し、調査をしようか」

 魔物に遭遇することもなく、時折話をしながら歩くこと十五分。一度進むのを止め、本来の目的であるダンジョンの資料となるものを集めることにした。

「調査、ですか?」
「そう」

 まあ、調査と言っても大したことができるわけでもない。内部の写真をいくつか取り、走り書き程度の地図を書く。この地図はヘンゼルとグレーテルのパンのように自分の魔力を目印として地面に残す迷子防止用の魔法を参照しているので、実態と大きくずれることはない。
 ちなみに、地形探査やイメージの焼き付けといったマッピング向きの魔法もあるのだが、実際に地図作成に活用するのはセンスが必要で酷く難しかったりする。少なくとも俺には向いていなかった。加えて、宝物庫やモンスターハウスといった重要ポイントに探査魔法から逃れる仕掛けがしてあることも多く、当てにしすぎるのも危険なのだ。
 刑事ではないが、足で稼ぐのが基本というやつである。

「次は動画の準備をして、っと」

 ゆえに澪や璃良にもこの手法とその理由を懸念という形で伝えつつ、今度はダンジョンの性質試験へ。まず金槌を取り出し、鍾乳石を思いきり叩く。すると割と簡単に砕けたものの破片はすぐに透け始め、やがては消えてなくなってしまった。また、地面に溜まっている水を透明のコップで掬ってみるも、そちらも水は空気に溶けるように消えていく。

「夢人、どうして消えたの?」
「分からない」

 異世界のダンジョンと同じ現象を確認したところで録画を停止すると、澪が今のことについて興味深そうに尋ねてきた。だが、残念ながら俺はそれに対する明確な答えを持ち合わせていない。強いて言うならばこれがダンジョンの性質だからとでもいうべきか。異世界では魔物を討伐しないと採取できないのと同じ理屈ではないかという考察もあったが、見ての通りダンジョン自体は魔力を纏っていないので近くとも異なる理屈なのだと思われる。

「まあ、多分ダンジョンから持ち帰れるのはドロップ品と宝物のみってことなんだろうね」
「ふーん」

 そんな俺の発言に澪は不思議そうに首をかしげながら岩を撫でている。

「あの、夢人くん」
「ん?」

 ふと、璃良が俺を呼ぶ。その声はどこか困ったような音をしていたので何事かと思いそちらを見れば、彼女の手の中には小さな女の子が。

「この子も、魔物なんでしょうか?」
「……」
「可愛い」

 あまりの事態に思わず絶句する。なぜなら璃良の手の中で笑顔で手を振っているそれは間違いなく“迷宮妖精”なのだから。

「夢人くん?」
「……あ、ああ。魔物とは言えない、ような気がしないでもない?」

 実に煮え切らない回答だが、正直ダンジョンと同様かそれ以上に謎な存在なので仕方がないのだ。十五センチほどの人の姿をしたそれは、異世界においては魔物の一種ともダンジョンの主とも言われていた。遭遇すること自体が稀で、気に入った者を導くときにだけ姿を見せるらしい。もちろん俺も初見である。

「よかった。流石にこの子に攻撃するのはちょっと」
「間違っても仕掛けない方がいい。敵対の意思が感じられないし、ダンジョンの精霊みたいな存在の可能性もある」

 ちなみにかつてドロップ品を狙って横殴りを仕掛けた者は、生涯どんなダンジョンにも入ることが出来なくなったという。

「あっ」

 そんな話をしていると、澪に撫でられくすぐったそうにしていた迷宮妖精は突然に璃良の手から飛び降り、迷宮の奥に向かって走り出した。かと思うと途中で止まり、こちらを見ている。

「ついて来いって」

 どうやらそのようだ。俺たちが歩き始めると、彼女はまた先へと進み始める。

「何処に行くんでしょうね?」
「さあ? でも、悪いことにはならないと思うよ」

 楽観的だが、恐らく間違いないはずだ。



 迷宮妖精の後を追うこと三十分。魔物との戦闘が発生することもなく、右へ左へと鍾乳洞の分岐を進み続けた先にあったのは木製のゲートだった。

「これは……」
「次の階層に行くための物だろうね」

 まさか全く寄り道をすることなくたどり着けるとは思いもしなかった。見れば迷宮妖精はどうだと言わんばかりに胸を張っている。

「ありがとうございます」

 そう優しくも嬉しそうな声で璃良が感謝を伝えると、小さな案内人は跳んで走って全身で喜びをあらわにし始めた。そんな様子を見て澪が思わずといった様子で零す。

「連れて帰りたい」
「気持ちは分かるけど流石に無理だよ」
「……写真で我慢する」

 少しがっかりしたもののすぐに切り替えた澪は携帯端末を取り出す。璃良もそれは良案だといった様子で迷宮妖精を手に乗せて撮影の準備に入った。

「ハイ、チーズ」

 右に俺、左に澪が寄ってきたことで不思議そうにしていた迷宮妖精だったが、璃良が端末の方を指さすとそちらを向く。その瞬間にパシャリ。突然のフラッシュに迷宮妖精は驚きひっくり返ってしまったが、起き上がった彼女に澪が撮影した画像を見せると途端に目を輝かせ始めた。
 とはいえ端末は澪の物であり、あげるわけにはいかない。しかしその画像をいたく気に入ったらしい迷宮妖精は端末を回収しようとするとひどく悲しい表情を見せる。

「夢人くん……」
「大丈夫」

 端末を置き、映った画像を見ながら無地のメモ帳にイメージの焼き付けを行う。これはちょっとした小技で、現物を見ながら行うことでその視界の情報がそのまま焼き付けられるのだ。そうやって出来上がった写真に保護処理を行えば彼女への贈り物の完成である。

「はい、君の分」

 そう言って手渡すと、彼女にとっては模造紙サイズの写真を大事そうに抱きしめたので喜んでくれたのだと思う。

「さて、そろそろ次に行こうか」

 迷宮妖精と遊ぶのも良いが、時間が限られている以上調査も行わなくてはならない。だが、立ち上がりゲートに歩を進めても迷宮妖精はその場に立ち止まったままだ。

「……ここでお別れみたいですね」

 そうらしい。涙目の彼女は、しかし笑顔で手を振っている。

「私たちも」
「ああ」

 後ろを向いて迷宮妖精に手を振りながらゲートへと歩を進める。感謝の言葉を口にし、別れへの寂しさを覆い隠しながら第二階層へと転移した。

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