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非異世界ファンタジア 作者:なんこつ
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第三十七話 最新情報

設定に穴があったため完成が遅くなりました。
申し訳ありません。
今回は説明会になります。
良かったなと思えたら評価ポイントをお願いします。
「じゃ、検討会を始めまーす」
「まーす」

 十月頭の六時限目、グループ研究で集まった情報の検討会を始める。テーマは魔法魔物関連についてだ。班長の向江さんが仕切り、山井が適当なノリを返す。

「まず私からね。私の担当するIFO(国際幻想機構、International Fantasy Organization)は先月末にいくつかの発表をしたよ」

 そう言う向江さんは複数の資料を取り出した。

「一つ目は魔物の出現場所について。理由は分からないけど、魔物ってやっぱり屋内には出現しないみたい」

 資料によると魔物の出現以降、世界各国で調査が行われ続けたが建物内に魔物が出現した事例は見当たらないということだった。これは今までもずっと予想されてきた情報だったが、この間の魔物の大量発生でも同様だったので有益な情報として公表したらしい。

「それに、魔物は基本的に地面に触れるように出現するんだって」

 つまり、空高くから落ちてきたり海中から突然浮かんで来たりといった出現の仕方はしないということだ。もっとも、全てを探査したわけでは無いだろうから、こちらも状況からの推定だろうが。

「これ、なんでなんだろうな? 人間的には都合がいいけどさ」
「春日井くんは魔法使いとして何か分からない?」
「分からないかな」

 異世界において魔物は魔力の澱みによって起きるものとされていた。魔力を行使することで世界の魔力に澱みが発生する。それが集積することで魔物が生成されるということだ。だが、地球において魔法は魔物が現れるまで常用されていなかった。つまり魔物が大量発生する根拠足り得ない。
 では異世界から転移してきていると考えてはどうか。この場合、建物が結界の役割を果たしていると仮定すれば、許可のない魔物が屋内に出現できないことも説明が付く。転移ゲートは障害物のあるところには展開できないのだから。だが、『誰が』『何故』『どうやって』という疑問が残る。世界規模の転移など誰が使える。使えたとして何故魔物を送り込んでくる。それも大量に、地上にのみ転移ポイントを設定して。
 結局、答えなど出ないのだ。

「んー、ならこれは仮説なしか」

 向江さんはそう言って関連資料を取り除いた。

「じゃあ、二つ目。魔物は討伐前でも採取出来ない。これについて二人とも何かある?」
「魔物って倒したら消えるんだから当たり前じゃね―の……?」

 まあ、山井の言っていることも間違ってはいない。倒すとドロップ品を残して消滅するのだから、そもそも消える存在なのだという理屈だ。ただ、もう少し理論的に考察することも出来る。

「一般的には『魔物は魔力の塊』だからって言われてるよね」

 『倒すと霧散する』・『魔力を持たない攻撃は通らない』といった特徴から『魔物は魔力の塊』という原因の推定が行われている。そして今回の『討伐前は採取できない=血は出ないし欠損部位は消える』という特徴も同様の理由だと。

「あと、より踏み込んだ『魔物は現象魔法』説も見たことがあるかな」

 現在の地球において魔法は“モノ”を作り出す『物質魔法』と“出来事”を発生させる『現象魔法』に大別される。例えば火球や石槍は『物質魔法』、転移や結界は『現象魔法』になるわけだ。つまり、『魔物が現象魔法』というのは魔物が出来事であるという主張になる。

「いや、魔物って生き物っぽいけど」

 山井は微妙そうな表情を見せるが、先の区別には続きがある。それは『物質魔法』は魔法が終了しても発生物が残るが、『現象魔法』は消滅するという点だ。モノを作るのだから残って当たり前だし、出来事を発生させるのだから消滅して当然なのだが、この観点から魔物という存在を見ると『倒すと霧散する』魔物が『現象魔法』に該当することが判る。

「……うーん、そもそも魔法なのか?」
「魔法の定義は“魔力というエネルギーを用いて”“想像を具現化する”ことだ。誰が想像しているのかはさておき、魔力を用いて形成されている以上は魔法に該当するだろうな」

 ゆえに、魔物は出来事であり、出来事を回収することなどできはしないというのがこの理屈だ。

「あれ、でもドロップ品は手に入るよね?」
「ドロップ品は『物質魔法』により生成されている可能性が述べられていたと思う。魔物の構成魔力が討伐時に魔法を引き起こしているのではないかって」

 そしてそれは間違っていないだろう。何かをトリガーにして発動させるという魔法は作れるわけだし。
それにしても、魔法が出現してまだ半年にも満たない地球でこんなにも興味深い考察がされていることには驚いた。例外はもちろん出るだろうが魔力を物質の生成に使うか純エネルギーとして使うかの分類はとても合理的だし、そこから魔物の考察をしているのも面白い。夢の異世界は実用的なこと以外はほぼ研究されないものだったからとても新鮮に感じる。

「よし、これは良い資料になりそうだね!」

 ご機嫌な向江さんとそれを盗み見ている山井を眺めながらそんなことを考える。

「私のは次で最後かな。なんか、アメリカが魔法で金を作ることに成功したんだって。……針の先程度の大きさみたいだけど」
「へー。凄い人ならもっと大きいの作れるのかね?」

 たぶん、難しいだろう。というのも、魔法は魔力と想像力が大切だ。具体的なイメージが出来れば消費魔力が下がり大きな効果を得やすいが、魔力を幾らつぎ込んでも想像が貧相だと発動すらしない。そしてイメージのし易さというのは特徴の体感がとても重要だ。ゆえに、金に限らず金属類の生成は非常に難しい。重さを知るくらいが精々ではないだろうか。針の先ほどの大きさでも作れたのはかなり才能があるからに違いない。

「なかなか上手いこといかないもんなんだな」
「これもイマイチかあ」

 まあ、そんなに簡単に金が作れてたら世界経済が大混乱だっただろうから喜ぶところではないだろうか。



「次は俺の企業関連か」

 向江さんの報告が終わったのでとりあえず自分の資料を取り出し二人に配る。

「最近の変化は二点。一つは魔物のドロップ品を使ったサプリや栄養ドリンクがたくさん出始めていること」

 利に敏い企業は、最近の魔物ドロップ品を食べる流行を見逃さなかった。新商品の開発は間に合わないうえに素材をたくさんは用意できないからか、従来の商品に効能を疑うような量しか入っていないものばかりのようだが売れ行きは好調らしい。ニュースの街頭インタビュー曰く、手ごろな価格なのがいいんだとか。

「確かに素材高いもんな。爪や牙がネットで一個5000円とか1万円で売られてるってTVで見た時はビックリしたし」
「変に高騰している感じはあるよな」

 効能が確かだからか流行のせいかは知らないが、今はギルドに売る数倍の値がネットオークションでつく。当然ギルドに在庫など無いから購入希望者からの直接依頼が増えるわけだが、オークションより利益が落ちるぶん受注者は多くはない。もちろん、発送の手間やトラブルのリスクを嫌う人がギルドを利用しているので少なくもないが。

「いつか安くなるのかな?」
「分からない。市場と社会の移り変わり次第だろうね」

 金がぐるぐる回って好景気になると共に値上がりするのか、それとも需要が落ち着くのが先か。そんなのは予想が付かない。

「まあ、とりあえず次。アメリカの企業が一般人でも使える対魔物武器の開発をしたらしい」
「どうせ馬鹿高い値段なんだろ?」
「いや。アメリカでは今売れに売れているみたいだ」

 ニュースの特集によると、最初はアメリカらしく銃弾を開発しようとしたらしい。だが、先に述べたように金属の生成は非常に難しい。そこで今度はクロスボウメーカーが挑戦したところ、それなりに成功したらしい。具体的には矢の先端部分を魔物の爪や牙を加工したものにすることで非魔法使いでも魔物を討伐できたのだとか。

「へえ、凄いね」

 だが欠点もある。その最たるものはコスト面だろう。特殊な加工技術を使っているらしく、従来の倍の値段がするらしい。他にも、倒すには多数当てるのが必須なのだとか。ヘッドショットを決めてもゴブリン一体を倒すのに五発を要していた。

「結果、ゴブリンやコボルトといった小型種でも一体倒すのに収入の十倍以上のコストがかかるんだとか。他にも生産に時間がかかったり効果は使い捨てだったりと問題は多いらしい」
「それでも売れてるのか……」
「ああ」

 曰く、護身用の需要が最も大きいのだとか。次いで趣味の狩り用。さすが銃大国といったところだろう。
「開発した会社は日本でも売れると断言してたな」

 まあ、流石に無理だろうが。クロスボウの規制は緩いらしいから日本でも販売は可能だろうが、殺傷能力のある武器を持つことに抵抗がある日本人が買うとは思えない。それに面積当たりの日本は魔法使いの数が多いので、わざわざ高い金を出してまで自衛する必要は今のところないのだ。

「じゃ、次は山井の国家間関係だな」

 自分の報告が終わり一息つく。そして山井はどんな情報を持ってきたのかとみると、なにやら様子がおかしい。

「あー、えーと、その。最近部活がきつくて……」

 どうやらやってきていないらしい。そしてそんな展開に対して班長の向江さんはお冠のようだ。先ほどまで楽しそうにメモを取っていたはずなのに、今では無表情で山井に冷たい視線を向けている。

「私、あれほど何回も確認したよね?」
「うっ!」

 確かに。進捗は大丈夫かとか、何なら手伝おうかとか言ってた気がする。

「山井くんも終わってるって言ったよね?」
「それは、その」

 それなのに嘘をつかれていたとなれば向江さんが怒るのも無理はない。

「それなのに何も持ってきてないんだー」
「一応、一昨日の番組を録画して――」
「見たの?」
「……見てません」

 すでに周辺が吹雪いているかのような気さえする。自分が怒られているわけでもないのにこの場から離れたい。周囲のグループも何事かとこちらを見ている。
 山井おろかなり。せめて番組だけでも見てまとめていれば少しは違っただろうに。ちなみに、魔物が地続きの国家間を移動するせいで関係が悪くなっているという話だった。

「だいたい山井くんはいつも――」

 向江さんの文句が教室に響く。既にクラス全体から注目されていて同じグループの俺は身の置き所が無い。ああ、誰か彼女を止めてくれ。そんなことを思いながら気配を消す事に努めた。


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