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非異世界ファンタジア 作者:なんこつ
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第三十六話 近況

ま、間に合っ、た……。
今回は日常の話です。
良かったなと思えたら評価ポイントをお願いします。

 最近の俺の朝は早い。午前五時には起きて運動着に着替え、山に転移する。到着したらまずは準備運動。ラジオ体操の第一と第二に加え、復刻された第三を行う。ちなみにスポーツ用品メーカーがプロモーション用に作成した第四というのもあるが、これは極度の柔軟性が必要とされるので挑戦する気にもならない。

「さて、始めるか」

 準備運動を終えたら山林部分に向かって走り出す。身体強化は怪我をしないための最低限度のものを。凹凸の激しい地面に足を取られぬよう、されど速度は落とさぬよう、ただただ駆け抜ける。この山の不安定な足場で走るトレーニングは夢の異世界で師匠に散々やらされたものだ。地球でも似たような競技があり、トレイルランニングといわれるこれは体力・脚力・体幹などを鍛えるのに適しているらしい。

「し、っかし……きつ、い……」

 もっとも、折角山を手に入れたのだからと懐かしさから始めたが、GW以来修行をサボっていたツケは存外大きいものだった。息が切れる。体が思うように動かない。判断力が鈍い。なまじ魔物との戦闘をしていただけに、それなりに動いているつもいでいたのも悪く作用した。考えてみれば敵対する大魔法使いもいなければ、ドラゴンやグリフォンのような危険種もいないのだ。イージーモードでやっていれば色々衰えもするというものである。

「はあっ、はあっ……げほっ」

 敷地を一周し、ようやく元の場所にたどり着くと、咳き込みながらも水を飲んでのどを潤す。時計を見るといつもと変わらぬ時間なことに少し安心し、次のトレーニングへ。

「――――」

 飛ぶ。いわゆる飛行魔法だ。急加速・急停止・三次元機動といった基本ローテーションで調子に問題が無いことを確認したら、本番の森に突っ込む。木々や岩といった障害物に当たらないようにルートを選択するのが課題だ。先のトレーニングの疲弊によりイマイチ頭が働かないが、甘いことは言っていられない。もしここに師匠が居れば障害物の代わりに魔法を撃ちこんできたであろうことを考えれば、これでもまだ足りないくらいなのだ。

「……こんなもんか」

 その後も全力の身体強化や精密な攻撃魔法など行い、修行は一区切り。時間にすれば大体一時間半くらいの軽いものだが、中々に堪える。
 ちなみに、なぜこんな修行をしているかというと、いつドラゴンやグリフォンが現れても不思議ではないと考え出したからだ。この間の魔物大量発生が新顔ばかりだったのを考えれば、それも当然だろう。そして、それらに対抗するには思うように戦闘をできる事が最低条件である。ゆえに、スタミナ・判断力・魔法コントロールといったものを身に付けておく必要があるのだ。

「まあ、もしかしたら魔力でゴリ押しできるかもしれないけど」

 基準が夢の魔力160万くらいの時のものなので、案外簡単に処理できる可能性もある。とはいえ、いざやってみて駄目でしたなんてのは御免なのでこれからも続けるつもりだが。

「おっと、そろそろ帰らないとまずいな」

 そんなことを考えている間に時間は既に七時半。回収したマンドラゴラの葉をまとめ、亜空間倉庫に放り込んだら急ぎ家に転移する。すぐにシャワーと朝食を終え、今度は学校の人気が少ない場所に転移。そして教室に急ぐ。
 なお、転移自体は才能があるで済む世の中になったので別に見られても構わない。だが、転移ゲートの発生ポイントが先に占領されているとゲート自体が開けないので、人気の少ないポイントに設置しているというわけだ。

「おはようございます、夢人くん」
「おはよう、夢人」
「おはよう」

 教室に入ると声をかけてくる澪と璃良に挨拶を返し、自分の席へ。それに伴い二人も近づいてくる。最初は昼食時以外も俺にべったりなこの光景にクラスの皆は驚いたが、今では慣れていつものことと受け入れられている。もっとも、当初――夏休みに入る前――はどっちが本命なのかと質問攻めにあった挙句、二人に指輪を渡したのが判明して俺は女の子を弄ぶサイテー野郎の誹りを受けることになったわけだが。
 その後弟子にしたことと、それ絡みで指輪を渡したことが広まり俺の名誉は一定の回復をみたわけだが、それでもスケコマシの称号は与えられてしまった。なお、夏休み中に両方とも受け入れることを決めたのは厳重に口止めしてある。今度は俺だけの非難では済みそうにないからだ。
 そんなことを頭の片隅で考えいるとチャイムが鳴る。クラスメイト達が慌ただしく席に着き、本日の授業が始まった。



「今日はどうしますか?」
「討伐? それとも座学?」

 六時限目の授業が終わり放課後、部活に所属していない俺たちはそのまま修行に入る。
「今日は座学かな」

 そう言って山への転移ゲートを開く。以前は魔法陣魔法を教える際に人除けの結界を張った河原を使っていたが、最近は買った山を利用している。特にそうしなければいけない理由はないのだが。……まあ、秘密基地みたいなものだ。

「それじゃあ、早速説明ね」

 二人が講義を聞く姿勢になっていることを確認してから話し始める。ちなみに今日のお題は飛行魔法についてだ。

「――と、言うわけで飛行魔法は浮遊と推進力、自動身体強化の三種を組み込んだ複合術式になる」
「これは、大変ですね……」
「でも浮遊は自由落下防止に絞って推進力は速度を魔力依存にすれば――」
「――イメージが必要な変数は進行方向だけになりますね」

 澪と璃良は飛行魔法に必要な要素を詰めていく。これは魔法陣を自作する時のための訓練なのだが、二人とも大分慣れてきたのか正解に到るのが早くなってきている。師としては弟子の成長がうれしくもあるが、教えてあげられることが減る寂しさを感じないでもない。だが、自身の研究が行き詰った時の突破口足り得るかもという頼もしさも覚える。俺の師匠もこんな気分だったのだろうか。

「できました!」
「夢人、これでいい?」
「うん、いいね。ちなみに模範解答はこんな感じ」

 二人の作った魔法陣を見ても不備は見当たらない。もう少し見やすくしたり記述を単純にしたりはできるだろうが、そこは経験の領域なので減点とは言い難い。

「ちょっと試しに使ってみようか。まずは地面近くで俺が引っ張るから推進力零にして浮遊と身体強化だけを発動してみて」

 もっとも、魔法は制御面も重要なので魔法陣を作っても終わりではない。飛行魔法についてはそれが特に顕著なので、俺が手を引くことで感覚を覚えさせようというわけだ。

「わあっ!!」
「すごい!」

 二人の両手を持ち、地上三十センチほどに引き上げ、そのままゆっくり水平に手を引きながら移動する。基本は直進で、時々曲がったり止まったり。まずは飛行というものに馴染んでもらう。

「よし。今度は指示する方向にゆっくり進むイメージで俺と一緒に飛んで」

 暫くしたら両手を放し、二人の後ろに回って裾を軽く持つ。どうにも戸惑っているようだが、大丈夫だからと言って指示を出す。

「前―、前―、次ぎ三つ数えたら右に曲がってー。いーち、にー、さーん」

 二人はいくらか緊張しているようだが、混乱することもなく順調に進んでいく。その後も前後上下左右に停止を組み合わせて必要な動きを学ばせていく。

「じゃあ、今度はそのまましばらく前―」

 澪も璃良もだいぶ慣れてきたところを見計らってゆっくり裾から手を放してその場にストップ。二人は順調に飛び続けている。

「そろそろいいかな。おーい、二人とも戻ってきてー」

 ある程度遠くに行ったことを確認したところで声をかける。すると、俺がいつの間にかいなくなってたことに驚き動揺したのか、その場で逆さまになってしまった。高度は移動の繰り返しで二メートルくらいまで上がっていたので、頭をぶつけつことは無かった。ただ、二人は学校帰りで制服姿なわけで……。

「きゃー!!」
「み、見ちゃダメ!!」

 ダメと言われても目を離せるはずもない。むしろ元に戻してあげる必要があると自身に言い訳をしながら急ぎ近づく。

「……っ……」

 スカートがまくれ上がり臍まで見える光景に思わず生唾を飲む。好きな女の子の下半身が無防備に晒されている光景に興奮を覚えない男子などいないだろう。とはいえ、俺は紳士であるからして凝視したりはしない。ただ、目の前の光景を脳内に保存しつつ、惜しみながらも二人を助け起こすだけだ。

「うう、しっかり見られました」
「心の準備は、必要」

 顔を真っ赤にして恥ずかしがっている二人に慌てて話を解説に変える。

「す、進みながら体を捻るとああいうことになるんだよね!」
「それを教えてくれたらすぐ元に戻れたのでは……?」

 思わず目をそらす。だが仕方がないのだ。俺も男の子であるからして。

「もう、夢人くん!?」
「説教」

 二人の怒りを鎮めるには暫しの時間が必要だった。



 二人との修行のあとは家に帰って風呂や夕食、宿題の時間だ。それが終わると、リビングでゆっくりしてから眠りにつく。大体午後十一時くらいだろうか。世の中の高校生よりは随分早いのだろうが、朝早くに起きる必要があるため仕方がない。

「そういえば夢人は女の子二人とはどうなんだ?」

 時々、寝る前の時間にこんなことを聞かれる日がある。澪と璃良についてあまり詳しいことは話していないのだが何か勘づかれているのだろうか? どうにもこの手の話の時は両親の関心度が上がっている気がするのだが。

「あー、今日は怒らせちゃったかな」
「なにをやらかしたんだ?」
「うん、まあちょっと」

 流石にスケベ根性を叱られたとは言い難い。

「女の子は大事にしないと駄目よ?」
「分かってる」

 母の忠告に少し言い訳がましく答える。俺としては十分に大事にしているつもりなのだ。ただ、今日は少し本能を抑えられなかっただけで。

「あと、家にもたまには連れてきなさい」
「そうだな。家のことは気にしなくていいぞ」
「まあ、機会があればね」

 そう言ってマグカップの中身を飲みほし、就寝の挨拶をして自室に上がる。
 いずれ二人を両親に紹介しなければならないと思ってはいる。だが、今はその決心がつかない。澪と璃良の両方と生きることや、依存させてしまったことを言えば大問題に発展するであろうことは間違いないからだ。俺が二人のことを好きなのは確かだし、二人も依存が無くても俺を好いてくれているはずだと思う。だが、世間的には認められておらず、誰の親からも許されはしないだろう。
 幸せだと思える道を選んだつもりだった。だが、誰からも祝福されない。俺の選択は間違っていたのか。澪や璃良のことを両親と話す度に考えるようになった答えが出ない問いを考えつつ、今日も目を閉じる。

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