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非異世界ファンタジア 作者:なんこつ
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幕間五 我が息子[父]

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 私には少々変わった息子がいる。地球に魔物が現れる以前から魔法を使い、修行と称し運動や勉強をこなしていた不思議な子だ。なぜそんなことができた、あるいはしていたのか。本人曰く、自身の人生を一度夢で体験していたかららしい。特に魔法については、高校一年のGWに異世界に転移するから知っていたのだとか。
 息子がまだ七歳だった頃にこの話を聞かされた当初、私は半信半疑、いや殆ど信じていなかった。それも当然だろう。どう考えても妄想話の類だ。もちろん七歳時分でここまで話を考えられるのならとても優秀だろうが、それだけだとも。
 しかし、妻が息子の緊急事態だと会社から呼び戻した事実が気にかかった。仕事にかまけている私と違い、妻は息子と多くの時間を過ごしている。その妻が異変を感じているのならそれは本当なのかもしれないと。また、少なくとも冒頭で話した三平方の定理や三権分立については妻もあずかり知らぬ話なのだとも。



「……うん、使えるよ。ほら」

 そう言って超常現象を引き起こした息子を見た際、今までの話は真実なのだと確証を得た。もちろんそれまでに話していた世の中の流れから本当であるという前提で話を進めていたが、100%そうなのだと叩き込まれたのだ。そしてすぐさまその危険性について思い至る。七才で大人同様の思考が出来る。限定的ではあるが未来の流れを知っている。そして、魔法を使える。こんなことが世に知れれば息子の平穏は無くなってしまう。私たちも息子と引き離され、異世界とやらに行くまでの少ない時間を共に過ごすことも許されなくなるに違いない。ゆえに息子には厳重に言い聞かせた。夢の事は決して他言してはならない、と。
 もちろん、あとから考えれば必要なかったのかもしれない。息子が言うには夢の経験で苦労をしたようだし、他人への警戒心は人一倍だっただろうから。ただ、当時は一人の親として言わずにはいられなかったのだ。



 そんな衝撃的な事件からおよそ九年が過ぎた。銀塊を魔法金属に改造し、30億もの資金を蓄え、守るために加減することを学んだ息子はGWが過ぎても異世界とやらに転移せずに済んだ。その事実に妻と喜んだ時は今でも鮮明に思い出すことができる。

「ああ、これからも私たちは共に暮らしていけるのか」

 安堵感から思わず口に出たその言葉に、妻は涙を流しながら何度も頷いていた。
 しかし、何の因果か話はここで終わらなかった。GWから一週間が過ぎたくらいに怪物、つまりは魔物が出現したのだ。息子によるとどうやら彼らは異世界に居るはずの存在らしい。テレビでその存在を確認した息子はすぐさま結界とやらを張り、私たちに外に出ないように言い含めた。無論、私も妻もその指示に背くはずがない。異世界の存在であり、息子が警告するほど危険なのだから当然だ。それに、この時はまだ自衛隊がすぐに何とかするという考えがあったことも大きい。
 しかし、その考えは甘かった。魔物に近代兵器は通用せず、自衛隊は蹴散らされてしまったのだ。同様のことは諸外国でも起きており、世界は暗闇に包まれることを余儀なくされる。それから事態の改善が見られないまま三日が過ぎた時、思わず私は息子に尋ねた。

「夢人、お前ならどうにかできるのか?」

 答えは是。むしろどうにかできるのは息子だけなのかもしれないとも。それならば、と興奮する私にしかし、息子は冷静に手で制した。

「――そんな展開はごめんなんだよ」

 苦々しい表情でリスクを口にする息子を見て己を恥じる。一度は世間にばれる危険性について説いたはずなのに、事態の打開について考えるあまり失念していたのだ。だが、リスクを説明されてもなお、どうにかならないのかという思いは消えることはなかった。日本は、世界はこのまま終焉を待つしかないのかと。



 結局、その後息子は魔物駆除に赴くことになった。もっとも、世界中で魔法を使えるようになる人間が続出したので懸念していた事態にはならなかったが。
 それからも魔法使い管理条約による騒動だの選民思想によるテロリズムだのといったものが発生し、世の中は動乱の様相を呈していた。特にテロリズムについては息子も巻き込まれ、妻と共に心配したものである。
 そんな色々と人並み外れた息子だが、最近は女の子にお熱のようだ。仲の良い子が二人いるようで、どちらかは彼女なのかもしれない。GWより以前はあまり他人と深く関わろうとしなかったので、今の状況に少し安心する。今度上手くいくようにアドバイスをしてみることだろうか。

「なかなかいい考えかもしれんな」

 思えば父親として息子にしてやれたことは少なかったような気がする。だが、夢の体験で息子は生涯未婚だったらしいし、この分野においてなら力になれそうだ。魔物や魔法の出現で慌ただしい世の中ではあるが、忙しかった息子は落ち着いて人並みの幸せを味わってもいいはずである。まずは妻と協力して最近流行の店のリストでも――。

「父さん、山を買いたいんだけど」

 息子が落ち着くのはまだ先なのかもしれない。
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