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非異世界ファンタジア 作者:なんこつ
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第二話 魔法の指輪

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 俺の秘密が両親にばれた翌日、俺と両親は金属ショップにいた。

「まさか子供から初めてねだられるものが銀塊とはな」
「なんかごめん」

 目的は純銀一キログラム。子供らしさの欠片もないおねだりで非常に申し訳ないのだが、これの有無で今後の苦楽が大きく変化するので、是非とも買っていただきたいのだ。

「いいじゃない。この子が何かを欲しがるなんて初めてだし、それに必要なことなんでしょう?」
「うん、絶対に」

 理解を示してくれる母がありがたい。いや、父も理解していないわけではないのだろう。ちょっと思っていたのと違う現実に合点がいかないだけで。

「まあ、いい。早いところ選んで帰るぞ」

 父の発言に頷く。ちなみにこのセリフ、別に不機嫌なわけでもなんでもなくて、銀を買って帰ってからの作業が本番だと伝えてあるがゆえのものだ。
 さっそく展示されている商品を見ると、一口に銀といえども色んな種類があった。しかし、用があるのは純銀ただ一つ。手数料込でお値段66,000円なり。

「事前に調べた時も思ったが、金やプラチナと比べるとずいぶん安いな」
「そうね」

 グラム単価でみると金が4,500円ほどなのに対して、銀は60円。圧倒的な安さである。

「本当に銀でいいのか? 一キログラムは無理でも五十グラム程度なら金を買えないこともないぞ?」

 俺が遠慮していると思ったのか、父が銀でいいのかを再確認してくる。七歳の子供の初めてのプレゼントにしては純銀でも高い買い物なのに、まだ無理をしようとしてくれているのが解り嬉しくなる。しかし、

「いや、むしろ銀の方が良いんだ」

 今回は投資商品としてではなく材料としての買い物であるがゆえに、金よりも銀の方が都合がいい。量はもちろんだが、性質も銀の方が圧倒的に優れているからだ。

「それならばいいが」

 そういうものかと納得した父は会計を済ませ、銀塊を受け取る。

「しかし、妙な物ばかり買ったな」

 店を出て車に乗り込む際、父がぼやく。車の中には模造紙や学校の授業で使うような大きなコンパス、そして銀塊といった奇妙なものが積み込まれている。

「あら、楽しみじゃない」

 反対に母はご機嫌だ。きっとこれらの用途がある程度予想できているに違いない。なんたって魔法大好きだし。父は怪訝な顔をしながらも車を発進させる。我が家の愛車は自宅への道をゆっくりと進んでいった。



「それで? 何か作るという話だったが、何を作るんだ?」

 家に帰ってきた父が問いかけてくる。

「指輪を作ろうと思うんだ」
「指輪?」

 訳が分からないといった様子の父に詳しく説明する。

「指輪って言っても、ただの指輪じゃない。魔法の指輪だよ」

 情報の保存と展開を行える魔法使い必携の品で、好みによっては本や杖を用いることもある。つまり魔導書や魔法の杖のようなものだ。
 先を促す両親に話しを続ける

「作る指輪は二つ。一つ目は夢の未来体験の記憶を忘れないようにするための物」

 今は驚くほど鮮明に、それこそ読んだ書物の内容まで覚えているが、あくまで記憶である以上これが劣化しないとも限らない。ゆえに記憶を複写し、思い出すときは自動的に補完してくれる機構を用意する必要がある。

「パソコンでも似たようなシステムがあったな」

 目的に対するアプローチの話なので、父も理解の色を見せる。

「そうだね、そんな感じ。重要な情報だからプロテクトもかけるし、そういう意味ではかなり近いかも」

 世界や分野が違えども問題に対する最終的な解が収束するというのはなかなか興味深い話だが、まあそれはさておき。

「二つ目は魔法を発動させるための物」

 説明の続きに入る。より正確には魔法の発動水準を高めるための物、だろうか。使用する魔法の情報をあらかじめ記録しておき、必要に応じて呼び出すことで高速化と安定化が可能となる。

「無くても魔法は使えるけど、効率や利便性を考えると必須かな」

 例えるなら同じ絵をかくのでも、絵の具と絵筆で描くかプリンタを使うかくらいの差がある。そんな説明をすると父も母もしっくりきたようで、なるほどと頷いている。
ちなみにたった二個の指輪を作る割に使う銀の量が異常に多いのは、サイズ調整機能を付与するからだ。

「サイズ調整機能?」

 文字通り装着する人のサイズに自動で調整してくれる機能だ。質量保存の法則を始めとした物理法則に真っ向から喧嘩を売っている光景のため、両親にはこれが一番魔法的に映るかもしれない。

「まあ本命からするとオマケみたいな効果だけど、一生ものだから無いと困るかな」

 物理法則を否定するようなものがオマケと聞かされた父は顔をひきつらせているが、それは努めて無視する。

「……なるほど、用途と必要性については分かった。しかし、どうやって作るつもりだ?」

 ここまで話しても父にはピンとこないらしい。逆に母は面白そうな顔をして俺の答えを待っている。

「もちろん、魔法を使って作るんだよ」



 買い出しから一週間。下準備が終わったのでいよいよ製作を行う段階だ。両親たっての希望で、実行は二人の監督下で行うことになる。もっとも、父はトラブルが起きないかの心配、母は魔法への好奇心といった違いはあるのだが。

「これより、魔法の指輪の製作を開始します!」
「わ~!」
「わ、わー……?」

 大盛り上がりの母といまいち流れに乗りきれない父をしり目に、手順の説明を始める。

「まず、エストラ銀を五百グラム用意します」
「まて、このあいだ購入したのは純銀が一キログラムだったはずだ」

 のっけから飛ばしていった俺に早くも突っ込みが入る。基本的にファンタジーに耐性のない父には既に理解不能なのだろう。

「これはあの時買ってもらった銀塊だよ。ただ、純水と大量の魔力に一週間ほど漬けておいたから魔法金属に変質しているんだ」

 ちなみに質量が違うのも当然魔法で二つに分けたからである。

「なるほど、だから金ではなく銀だったのか」

 そう。銀よりは金の方がやや魔法との相性が良いのだが、それらの比ではないくらい優れた魔法金属のエストラ銀に錬成できるという利点が純銀にはあった。加えて、比較的安価で量を確保できることも選択した理由だ。

「でも、魔法金属ってそんなに簡単にできるものなの?」

 母の疑問も尤もだろう。大抵の物語で魔法金属といえば希少物質として扱われている。エストラ銀もその法則に違わず、珍重されるものなのも間違いない。ただ。

「別に簡単にってわけじゃないよ。まず純水を用意するのが難しいし、それを維持しないといけない。それに、自然環境なら魔力の濃い場所で数年かかる変質を短縮させるために、相当な量の魔力を加え続ける必要もある。それも睡眠時間とか関係なくね」

 おかげで今週は外出できなかった。夏休みだからよかったものの、学校がある期間だとどうにもならなかっただろう。現在の魔力量だと七日間が限界だし。

「それは……大丈夫だったの?」
「これでも大魔法使い予定だからね。今の段階でも魔力はかなり多いし、二つ三つの魔法の制御とか寝てても余裕だから全く問題ないよ」
「そう。無理してないならいいのだけど」

 心配する母に笑って返す。これが山奥に一人隠居でもしているならともかく、同居人が居て周囲には民家が密集している環境下で無茶をするつもりはない。何かあった時の被害がシャレにならないからだ。そんなことを言うと、

「馬鹿者。母さんはお前の身を心配して無理をするなと言っとるんだ」

 父に怒られてしまった。

「あー、自愛シマス」
「そうしてちょうだい」

 母にも念押しされてしまった。まあ、今回は無理していないどころか余裕だったから何の問題もない。なお、夢の中では結構無茶な実験をしていたことは言わないことに決めた。

「と、とりあえず次にいくよ。次は魔法陣を用意します」
「まてまて、魔法陣だと?」

 ファンタジーな単語の登場に再度父から待ったが掛かるが、とりあえず現物を見せようと模造紙を取り出し広げる。

「わあ~!」
「確かに、魔法陣、だな」

 いつの間になどと呟いている父の横では、母が実に楽しそうにしている。呪文詠唱とか魔法陣とかが好きな母にはたまらないだろう。内容自体は既存の術式をそのまま持ってきただけなので、大して時間はかからなかった。とはいえ、一から記述したので大体一時間くらいはかかったが。

「で、これの中心にさっきのエストラ銀をのせて魔力を流します」

 いざ魔法の実行するタイミングで止められると嫌なので、あくまで自然の事のように発動してしまう。模造紙の魔法陣が光り、やや遅れてエストラ銀が光に包まれる。

「!?」

 二人の顔が驚きに染まる。三秒ほど経つと光は収まり、無地の模造紙と一つの指輪が残った。

「そして最後にこっちの魔法陣にこの指輪をのせて、やっぱり魔力を流します」

 別の模造紙を取りだし、エストラ銀の指輪にメインの魔法をかける。今回は記憶の保存と補完をする方なので、俺自身も淡く光る。父と母が見つめる中、やはり三秒ほどで光は収まった。

「完、成、です!」

 ピースサインと共に指輪を突きだし、成功をアピールする。それに対し両親が大きく安堵の息を吐いた。ちょっと駆け足過ぎただろうか? とはいえ、作る指輪はもう一つあるのだが。

「と、いうわけで。これは置いといて、もう一個も作っちゃいます」

 先ほどと同様の手順で今度は魔法発動体になる指輪を作成する。二度目だからか今度は両親も普通に見守っていた。

「それで、終わりなのか?」

 父がようやくかといった表情で語りかけてくる。

「まだ発動体に魔法陣の登録とかあるけど、一応これで今すべきことは済んだよ」
「すごかったわね~。綺麗に光って、とっても幻想的だったわ」

 母は特に問題が起きずに魔法が見ることができたからか、ご機嫌だ。

「んんっ! まあ、何もトラブルはなかったようだし、周囲に配慮していることも解った。今後も魔法を使うことがあるだろうが、いちいち監視をしなくても大丈夫そうだな」

 父からの信頼の言葉も得られた。今回の指輪作成はプレゼンとしても大成功だったと言えそうだ。

「ただし、 さっき母さんが言ったように自分の事も気にかけて無理をしないこと。あとはくれぐれも周囲にばれないようにすること。いいな?」
「はい!」

 こうして、一応の釘は刺されたものの、俺の未来改善作戦は順調に滑り出したのであった。
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