彼は、クッパの意思に共感することができた。
確かにピーチ姫は美しい。あの美しい姫を自分の傍に置いておきたい。彼も、次なるステージへ逃亡するクッパジュニアと面会したときにそう思ってしまった。
なぜあんな髭親父がいいのだろう。彼は疑問に思う。
あの赤いやつは、スターがなければ無敵にもなれないし、キノコがなければブロックも壊せない。
だが、我らが王クッパ様は地形さえ良ければ負けなしだ。投げるものも二種類ある。ジャンプ力も赤いやつに負けはしない。
そう考えて、私も土管掃除屋のあいつに劣ってはいないなと彼は鼻で笑った。
彼はノコノコ騎士団の中でも有数の、クッパ様のおめかけがある戦士だ。
ウツボや巨大ウツボのいる地帯だけであんなやつを粉砕するのは簡単だろうが、念には念をいれてのことらしく、彼は同じ騎士団達と縦一列の陣を組まされていた。
永遠ではないかと錯覚してしまう、上下運動――彼は、己は壁だと思い込むようになった。
いや、もともとそういう教育をされていた。自分は壁である、主を守る壁である、そのことは最もな幸福である――彼は壁となった中で、愛しい人のことを考えてきた。
子供の名を付けると約束したのだ。必ず帰らなくてはならない。そのために自分は生きなければならない。
下っ端ノコノコのように、シャアじゃない赤いやつがスターコインを手に入れるために使われてはならないのだ。
ぴょぉん
ついに、来たか。
ジャンプに妙な効果音を付けるなんて余裕をこく赤帽子のやつが、ついに彼の前へ辿り着いた。
でっていうーはいないらしい。彼はそう思い、あれは別ゲーだったなと改める。
彼は、勝利できると思っていた。
どうやってウツボを越してきたのかはわからない。巨大ウツボは画面の半分を埋め尽くして過ぎていく、あれを避けここまで辿り着いたのには賞賛の言葉しか浮かばなかった彼は、しかし勝利を確信していた。
整った陣形に乱れはない。我々は一致団結し、壁となっている――それが彼の確信の理由すべて。
我々の弱点たる「上に行けば下が手薄になる」も、この壁には存在しない。彼は、彼らは、キノコがなければ自分よりもチビなあの野郎を弾き返す壁となっていた。
二歩下がる赤帽子と青服のチビ男を見て、怖気づいたか小童が、と彼は思う。
しかし次の瞬間、彼は覚った。
覚るのは、上から落ちてくる巨大なキノコに疑問を感じた次の瞬間だった。
これは脅威だ――クッパ様でもこれは危ういと、彼は最中に思う。
だが彼は知っていた。このキノコ好き野郎と同じように、クッパ様にも奥の手があると。
そしてもうひとつ、彼が不敵に微笑むのには理由があった。
どうやって伸びているのかわからない青衣に包まれた片足に踏まれ、地面のさらに下へ落ち行く最中、彼は恐怖も何をも振り払って呟いたのだ。
"我々を突き破る勢いのまま、お前は土管をも壊すことになる……我々の勝ちだ。赤帽子よ"と……
キノコ一個を食べたときの大きさへ縮んだ髭男は、入口の引きちぎられた土管の上で呆然と立ち尽くしたのだった。
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