第七話 ケイの気持ち
家に帰った私は、事の次第をケイに全部話した。
私の気持ちや、感情は、その時自分でもよくわからなかったので
事実だけを坦々と話した。
ケイは一言も発せず黙ってきいた。
ケイの沈黙が怖かった。
先に言われるのが怖くなって、私から切り出した。
「ケイはまだ若いし、私はこれから大変だと思うし、え〜と、別れよっか?」
言葉にしてみたら、抑えていた感情とともに涙があふれてきた。
強がっているのに、ケイにすがっていた。
ケイは若いけど、「うん、じゃあ、そうするよ」とは言えないに決まっている。
その時、ケイは頭の中で、いっぺんに沢山のことを考えていたと思う。
私を好きな気持ち。
でも、病気の私に付き合えるほど好きかどうか。
NYに行きたい!と考えていること。
はっきり言って、髪の毛が無くなった私をまだ好きって言えるか?
はっきり言って、毎日、吐き続けながら、ベッドで寝たきりになる私とどれだけ一緒にいれるか?
NYに行くぞ!って決めていたけど、私の病気にどれだけ足をひっぱられるのか?
考えて当然だ。
ケイは黙って部屋を出て、小さな丸い石を持って帰ってきた。
河原に落ちてるような、小さな、黒くて丸い石。
「俺が病気で入院してるとき、先輩にもらったんだ。なんでだかわかんないけど、すごい励まされた。
絶対治るよ!って。りずむにあげる。今は俺が何をしてあげられるのか、全然わからないけど、
一緒にいたいって気持ちは変わらないし、そばにいて力になりたいと思うよ」
みごとに「一般的な模範解答」だけど、
その時のケイにはそれは精一杯だったと思う。
でも私の中の身勝手な不安と悲しい気持ちは、ケイに「普遍の愛」を誓ってほしかったし、
「りずむがどんな風になっても、俺は超愛してるよ!」って言ってほしかった。
昨日までは、「やっぱり年の差もあるし、長くは続かないかなー」とか思っていたくせに、
今日からは「ずっとそばにいるよ」って言ってほしかった。
だけど、ケイの中も、いっぱいいっぱいなのがわかっていたから、私は
「ありがとう!じゃあ、これからもよろしくー!その変な石はいらないけどね。」
と笑って強がって見せた。
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