エピソード18 愛したら、愛されたい!
そう、私は「両思い」が好き。
「片思い」は辛くて、切なくて、苦しくて、妄想ばかりで、本当の相手を知らない。
最初は、リズムタップと、その世界に片思いしていた私だけど、少しずつ、そして確実に、その想いは受け入れられた。
ジャムセッションで学び、ライブに出演して、舞台に出演して、ツアーでアメリカを回り、
成長し、そして、アメリカの観客から愛されるようになっていた。
あの、最初のツアーからは2年くらいがたっただろうか?
マイクが言っていた「6番目」の穴埋めダンサーだった私も
ヨーロッパツアーに行くころには、1曲の振り付けを任され
ソロやデゥオも踊るようになっていた。
メンバーも大きくかわり、新しく、「ノイズ・ファンク」に出演していた、マーシャル・デービスと
一緒に踊ることができたり、「タップドックス」に出演していたダンサーも入ってきた。
タップドックスとは、オーストラリアで生まれたタップのショウで、世界中をツアーするほどの大ヒットとなったショウだ。
ショウが大ヒットを飛ばしたときに、発生する問題がある。
カンパニーが「メガカンパニー」に成長して、世界中をツアーしてまわると、そのために何十ものツアーグループをつくらなくてはならない。
そのために、どんどん、どんどん、新しいダンサーや、ツアーメンバーを雇う。
そのため、必然的にダンサーやショウの質は下がっていく、、、という傾向にある。
ブロードウェイのショウもそうだ。最初の1年、2年は「オリジナルキャスト」で上演されるが、そのあと、メガカンパニーになって、
オリジナルキャストが、ばらばらに配置されるので、「ブロードウェイ」は手薄になり、実際は日本で見たほうが「当り」だったり、
その「ツアーグループ」により、ものすごく「当り、はずれ」が出てくるのだ。
タップドックスからきた19歳はその中で「はずれ」だった。(私の個人的な意見だけど)
だけど、へザーは「彼には足りないものが沢山あるけど、いいパフォーマーだから」と言って、
私に彼のお守りをいいつけた。
ええ?
と思ったけど、そういえば、私も入ったばかりのときは、みんなに沢山教えてもらった。
ジュングリだね。
教えてもらったならば、教える番がくる。
まず
●「チカラいっぱい、床をたたかない」ことを教える。←これ超大変。
●「スウィング」を教える。←基本、ジャズバンドでやるショウだから、スウィングできないと、、、。 これも超大変。
●そして何より、「俺は、世界一すげえんだぜ!」というおごりをやめてもらう。←これは無理だった。
っていうか、「俺、世界一すげえ!」と思っている人に何を教えるのも難しい。
そして、さらにへザーは、「彼にとって苦手分野だから勉強になる」と言って、
Do the Sunny side with him.
サニーサイドを 彼とやりなよ!
と言った。
ガああああああああああああああああん。
サニーサイドとは、私がNYで始めて振り付けした思い出の曲。
今、現在でもライブで踊っているナンバーだ。
マーシャルと踊りたいです。
マーシャルにしてください。
マーシャル大好き!
という、申し出はあっさり却下された。
というわけで、ヨーロッパでは、
「俺、世界一すげえぜええええええええ」という力でねじ伏せて、スウィング感ゼロのサニーサイドを踊ってきた。
そんな頃になると、どうなってくるか?というと、
カンパニーを離れたくなる。
サラリーマンで言うところの、「会社をやめて、起業する」みたいな?
2年前は、何もかもが新しく、何もかもが刺激的だった、マンハッタンタップ。
そして、へザーの振り付け。
最初は1曲、そして、2曲、そして、3曲と、自分の振り付けがつくりたくなる。
そして、5曲、6曲、7曲、を数えてみたら、「自分のショウ」がつくりたくなる。
へザーは素晴らしいディレクターだ。
みんなそこから学んで、良いダンサーに成長して、そして、今度は「自分の世界」をつくりたくなって、カンパニーを離れていく。
これは、仕方の無い「自然の法則」だと思う。
私もまた、自然と、カンパニーから離れ、自分のやりたいことを、次々に「形」にすることをはじめていた。
けれども、そこで!
NYでは「外国人」である私が、「会社」を離れたとき、問題が起こる。
ペーパー(ビザ)の問題だ。
外国人である限り、なんらかの、ペーパーを持って、長期滞在していなければならない。
学生ビザならば、学校に行っていなければならないし、
就労ビザならば、その会社に勤めて、アメリカに税金を納めていなければ、ならない。
特に、ダンサー、アーティストなどは、「特定の会社に勤めていれば満足」、というわけにはいかないから、ペーパー問題で、苦悩の日々が続く。
一度、オーディションを受けにいったら、外国人と見るや否や、ペーパーを見せろ!と言われて、私は、ペーパーが無くても、オーディションを受けたかったのだけれど、
「ビザも無いのに、何しに来た!ここは、ダンサーが仕事を得る場所だ。
人の時間を無駄にするな!!!」
と怒鳴られて、家に帰り、悔しくて、悔しくて、泣きまくったこともある。
近年は、「アーティストビザ」という、熱いビザがあるらしいが、それだって、みんな、
「どうやったら手にはいるのか???」情報をかぎまわっている、というのが現状だ。
リズムタップに出会ったときから、今まで、夢中でタップの練習をしてきた。
だけど、今からは、「表現」に時間を費やしたかった。
やりたいことが沢山あった。
アメリカを回った、ヨーロッパも行った。
たぶん、世界中、まだまた、行ったことがない国が山ほどあるに違いないけれど、
私は、日本に帰って、今度は「日本人に、私を、受け入れてもらえるのか?」
やってみたくなった。
自由の国アメリカって言うけれど、日本人のとって一番自由の国は日本だと思う。
日本は豊かだ。
日本は発展している。
日本は私の国だ。
日本で活動をしようとする私に、父が言った。
「え?まだじゃねえか?あと5年だな。もうひと踏ん張りだ。
何より、日本人は、アメリカで認められたものしか、認めないから。
今帰ってきたら、中途半端だ。あと5年踏ん張って、アメリカで認められたら、日本人は認めるから」
父の言うことは正しいのかもしれない。
正しくないのかもしれない。
私は、アメリカ人が認める、認めないに関係なく、好きなものがある。
私は、日本人にも、そういう感性が育ちつつある、と信じている。
私は、アメリカじゃなく、日本で、伝えたいことがいっぱいある。
だから、日本でやってみたい。
と思う。
その考えに、正しいも正しくないも無いと思う。
こうして、私は、日本とアメリカを頻繁に行ったりきたりするようになった。
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