エピソード12 最初のツアー
最初のツアーはアメリカ、ミッド・ウエスト地方。
地図でいうと、アメリカ大陸の真ん中ら変。
カンザス、アーカンザス、コロラド、ネブラスカ、ケンタッキーなど10箇所くらい、だったかな?
3月中、2週間のツアーだ。
ミッド・ウエストの気候について、マイクにきいたら、「NYと同じくらいじゃね?」と大嘘をついた。笑。
3月のミッド・ウエストは、砂漠の嵐。
気温は氷点下で、風がものすごく強く、顔や手が痛くて前にススメナイ、という気候。
バスで移動して、ホテルにチェックインして、劇場でリハして、本番やって、
また移動。これをひたすら繰り返す。
ミッド・ウエストは本当のアメリカだ。(NYは移民の町)
広大な土地。そして白人王国。カウボーイ?←偏見かも?
一つの町から、次の町まで、バスでノンストップ(信号も無し)10時間くらい、猛スピードで走る中、
見るものは、4時間に一回くらい、ファーストフード・ジョイントがあるだけ。
走っても走っても広大な土地と、マクドナルド、バーガーキング、タコ・ベル、KFC、マクドナルド。
ああ、他のものを食べさせてくれ〜。泣。
NYになれていた私には、カルチャーショックだった。
そして、ショウをやる町にたどり着くと、人々は太っていた。
全体的に相撲部屋級に太っていた。(もちろん、全員じゃないけど、本当に沢山いた)
そして、私たち、白人3人、黒人二人、アジア人一人という組み合わせは、どこへ行ってもじろじろ見られた。
アジア人自体が珍しいのもあるが、超珍しいのは、この「取り合わせ」だ。
一度は、レストランで、おばあさんが大きな声で
「ねえ、どうして、あそこに黒人がいるのかしら?同じ空気を吸いたくないわ。」的な発言をして
私たちを「どきっ」とさせたが、パリスもシャローンも意外に大人で
「おばあちゃん、田舎モノで時代の変化についてこれないんだね?」と軽くあしらって、その場を離れた。
これからのツアーに期待がいっぱいの私にマイクが言った。
You are the 6th person.
おまえは 六番目のメンバーだ。
このカンパニーで六番目とは、「穴埋め」を意味して、群舞のときだけ出てくる。
しかもお客さんから見て、存在が超薄くて、ショウが終わってお客さんとの歓談の時間があるけど
たいていのお客さんはお前が出ていたことすら、気付かない。
I was there, once.
俺も そのポジションにいたんだよ。
最初は意地悪で言っているのかと思った。
だけど違った。
マイクは、俺も6番目の人間だった。
お客さんに気づかれない存在だった。
悔しかった。
りずむもたぶん今回はそうなると思うけど、くじけるな、と励ましていた。
そして、実際マイクの言ったとおりになった。
私は目一杯がんばっているけど、他のダンサーのキャリアと技術と個性がすごすぎて、
たった一人しかいないアジア人なのに、その存在はほぼ気づかれずに終わった。
この2週間の間に、マイクとパリスと私の間には友情と、尊敬が生まれた。
マイクは私のことを馬鹿にするのをやめて、いろいろなことを教えてくれる。
そして最後の夜、事件は起きた。
私は疲れはてて、ベッドで眠っていた。
熟睡していたと思うが、人影に驚いて飛び起きた。
大男の人影。暗いから影が巨人みたいに見える。
私は「ぎゃああああああああああ」と大声を出して、
枕とかスタンドとかを、その巨人に投げつけた。
巨人も、何か叫んでる。
怖い。
巨人も、何か叫んでる。
Rhythm! It’s MIKE!!!! MIKEY!!!
りずむ! マイクだよ。マイキー!!!
マイク?っ。
What the hell!
何それ? 超びびったわ〜。
パリスが「やんちゃ」をはじめて、シャローンと部屋に入って、鍵をかけたから、部屋に入れなくなった。
「部屋に入れろ」と言ったら、シャローンがドアの下から、この部屋の鍵をよこした。という。
シャローンめ〜。さすが、19歳と20歳。気分は完全に修学旅行だね。
ディレクターもいないし、やりたい放題。
パリスはたしか、前のツアーでは、マリアとやってたよね?
モチロンNYに戻ったら、即効で別れてたけど。
そんなパリスとシャローンのおかげで、私はマイクと一晩中おしゃべりをすることになった。
タップのこと、これからのこと、マイク&パリスがこれからつくろうとしてるショウのこと。
そして、そして、「りずむも一緒にやるか?」。
ラッキー!!!!
1回目のツアーは、完全に6番目のメンバーで終わったけど、まだここじゃ終われない。
追記 ミッド・ウエストでは、完全に「アメリカ商品」しか手にはいらなかった。
マクドナルドとかバーガーキングもそうだけど、ビールもバドワイザーとか、たばこもマルボロとか
ほんとに、アメリカの真ん中に位置して、外界とは離れて、「アメリカナンバーワン」で時代からもかなり遅れている感じをうけた。
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