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  がんとNY  作者:りずむK
エピソード1 NYへ行くことになったワケ
1996年3月、大学を5年かけて卒業した私は、単身NYへ向かった。
大学に5年もかけて行った理由は「ダンスにウツツをぬかした」からで、勉強熱心だったからではない。 

だが、NYへ行く決意をしたきっかけは、「NYでのダンサー生活を夢見て」ではなく、
「男」だ。 

とても不思議だけど、人間を動かすきっかけは、いつも、ほんのささいな出会いとか、
ほんの小さな事故だったりする。 

私は大学卒業をひかえた、前年12月、タヒチ旅行に行った。
そこで、アルゼンティーノの男性(アルゼンチンの血、国籍アメリカ、ボストン在住)と
激しくも、どうでもいい恋をした。笑。

彼の名前はディエゴ。

それまでは、「外人とか無理!」とか思っていた私だが、
なぜか突然、ものすごい盛り上がった恋をした。完全に「タヒチマジック」だ。

私の語学力からして、ほとんど、会話は成り立っていなかったはずだが、手をつないで歩いたり
英語やスペイン語の単語を習ったり(例、「手はスペイン語で「マノ」っていうんだよ」)
とかいう、しょうもない会話でも楽しかった。

馬鹿である。

お互いの連絡先を交換して、日本に帰ったあとも、毎日のように手紙のやりとりが続き
私は猛烈に英語を勉強しはじめた。 
中学から大学まで10年間、学校でさんざん英語をやったはずだが、このときが一番勉強したと思う。

「恋」はいつも、モチベーションのトップリストだ。 

というわけで、私は、あっという間に
「3月に大学を卒業したら、アメリカに渡ってダンスを勉強する」と決意していた。 

「アメリカに渡って、ダンスを勉強する」の意味がよくわかんないけど
とりあえず言い訳として、もっともらしかった。 

私は、なんでも自分で決めて、自分でやりたいタイプだ。
NYのことも、自分で情報収集して、日本人が経営している安全そうなところでアパートを1ヶ月予約して
とりあえず、いそいそとNYへ出かけた。

NYで住むことになるならば、「学生ビザ」を取得しなければならない。
ということは、「通う学校」を決めなくてはならないのだ。

ダンススクールなのか?
英語スクールなのか? 
何スクールに行くのか? 

それさえ、定まっていない。
漠然とNYへ行くことを決めただけで、23歳の私はNYで何がしたいのかわかっていなかったからだ。

1ヶ月間、色々見てまわったが、当然、1ヶ月で、自分のやりたいことなど見つかるわけもない。
私はなんとなく「よさげ」な、Fordham大学(法律関係でそれなりに有名な大学。マンハッタンのほぼ真ん中、
リンカーンセンターのすぐとなりにある大学)の、ESL(外国人のための英語コース)を取ることに決め
ビザ取得のために一旦帰国した。

さて、ディエゴはどうしたのか?というと、ディエゴとの激しくも、馬鹿馬鹿しい恋は、
NYで再会した瞬間にあっさり終わった。笑。

私がNYに来た!という知らせをきくと、ディエゴはボストンから週末を利用して会いにきたが
当然のことながら、会話も続かないし、話すこともないし、接点が無い。

お互い、「どしたの?元気ないね。前と違わない?」という言葉を繰り返すばかりで、
一日、NYの町を一緒に歩いて、気まずいお茶をしたりして、夕方には、「BYE」と「You tak care.」いう言葉と共に
義理のほっぺに「ちゅう」で、冷たく別れて終わった。
(NO real kisses , no real hugs) ←ほんとのキスもほんとのハグも無し。

ま、そんなものだ。笑。

だけど、ディエゴとの出会いは、私をアメリカに導くには充分なきっかけだった。

「ダンサーになりたい」という気持ちは強く持っていたが、どうやって?がわからなかった私。
「アメリカに行って勉強したほうがいいと思うけど、怖い」とか、
「日本で仕事ができるなら、アメリカなんていう未知の世界に行かなくてもいいでしょ?」とか
小さくまとまろう、小さくまとまろうとしていた私。

そんな私に、あっさりと、「日本を飛び出そう!」と、ハードルを越えさせてくれたのだ。

恋愛パワー、全然ばかにできない。

こうして、私は、目的も、行き先も、やりたいことさえ見えないまま、NYでの生活をスタートすることになった。 

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