第十四話 マイナーインシデンツ リターンズ!
私が日常生活と、気力を取り戻していくと
ケイと私の間の「むやみに愛が溢れる毎日」も姿を消し
ささいなこと(マイナーインシデンツ)での喧嘩が戻ってきた。
内容は、前と全く同じだ。
「がん」という事件の陰に、かくれて見えなくなっていただけで
問題は全然解決されていないからだ。
ケイは相変わらず、金も力も実力も無い。
加えて、気合もいまいちだ。←私たちの世代に比べちゃうと
「今の若いものは、、、、」と言いたくなる、気合の無さ。
ケイも、前にも後ろにも行かない、自分に苛立ちを感じているし、
「ああ、俺もニューヨークとかいきてえなあ」とやたら頻繁に口にするようになる。
私も、「うん、さっさといきなよ。」と繰り返し言った。
どこにいてもいいけど、「ここは俺の(私の)居場所じゃない」的な態度は
見ていて本当につまらないし、興ざめする。
今は選べる時代なのだから、日本に不満があり
日本が楽しくないなら、さっさと出て行けばいいのだ。
ケイは遅かれ早かれ出て行く。
私はこれから日本で活動を開始しようと、色々思い描いている。
ケイがNYに行くことを決め、日程が決定すると、
喧嘩の内容は「別れる、別れない」にシフトした。
ケイの言い分「ニューヨークには行くけど別れたくない!」
私の言い分「ばかじゃん。別れるに決まってる」
ケイは、わかっていないのだ。
ニューヨークに行くことがどういうことか。
日本での生活や仕事を一生懸命やっている人ならば
NYに行っても、勿論、帰ってくるけども、
日本での生活に不満ばかりあり「早くこの日常から逃げ出したい」
と考えている人間がNYに行ったらどうなるか。
帰ってこない。
そうでなくても、ダンサー志望の若者が
NYに行ったら、なかなか帰ってこない。
私は、6年間NYで生き、自分の居場所も見つけ、帰ってきたばかり。
これから、6年前の私と同じことをしようとしているケイと
同じ温度でNYを感じ、同じ視点で見ることはできないのだ。
ケイはNYに行くとこは決まっているので、
別れの日は一日、一日と近づいてきた。
最後の夜、ケイは私に手紙をくれた。
今まで、どれだけ楽しかったか、どれだけ幸せだったか。
私にとっても「別れ」はつらくないわけはない。
とても寂しい気持ちで、涙も流したけれども
「生きているから、人にはやるべきことがあり、行くべき所がある」
とわりきっていた。
_______________
その夜、眠りについた後、私は目を覚ました。
ケイが号泣している。
え〜ん え〜ん え〜ん
え〜ん え〜ん え〜ん
え〜ん え〜ん え〜ん。
ケイの涙をはじめて見た。
ケイの泣き声をはじめて聞いた。
びっくりして声をかけた。
「ケイ?」
ケイは私に抱きついて泣いた。
え〜ん え〜ん え〜ん
え〜ん え〜ん え〜ん。
ずっと、ずっと、我慢してきた涙だ。
ずっと、ずっと、私を守ってきてくれた涙。
ずっと、ずっと、大人の役をやっていたケイが
はじめて、子供として流す涙だ。
私は がんばってね、ありがとうね、
がんばってね、ありがとうね。
がんばってね、ありがとうね。
をくりかえした。
ケイ、しっかりね。
NYでしっかり頑張ってね。
そしてありがとう。
そばにいてくれてありがとう。
ありがとうケイ。
ありがとうケイ。
ありがとうケイ。
ネット小説ランキング>恋愛シリアス部門>「がんとNY」に投票
りずむKの小説を読んだら、是非!あなたの一票を投じてください。めちゃめちゃはげみになります!
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。