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  がんとNY  作者:りずむK
弟十三話 カツラをとって!
日常生活がままならない私を、母がプールでのエアロビクスに誘った。
「筋力が落ちてるから、重力が少ないほうが、いいんじゃない?」みたいな。

平日の午前中ということもあり、女性ばかりで、70代、80代の年配の方も目につく。
「これは楽勝なのでは?」と始まる前、かなり馬鹿にしていた。

結果は、、、、、、みんなの予想通りだ。

水の中でぴょんぴょんジャンプしているだけなのに、全く体は動かなくて、
周囲の人のジャンプで押し寄せる波にもまれながら、なんとかしてその場に立っているのが
精一杯だった。

先生の後ろにある時計を、つい見てしまう。
すかさず、「りずむさん、時計見ませんよ!」と突っ込まれる。

えええええええええええええ?まだ5分????
あと25分? 
完全に無理。 

その後15分、私はなんとかふんばって、その場に立っているだけだった。
最後の10分は、全員が同じ方向に歩く、流れるプール。
すでに大量の水を飲み込んで、歩く気力など全くなかったが、
流されるままにみんなと同じ方向へ。

それでも、足がふらふらで、水がどんどん口に入ってくるので、
プールに浮かぶソーセージ(プールを仕切る、ソーセージみたいな浮き?)
に必死にしがみついて、流されないように頑張った。 

先生は容赦なく
「りずむさん、わかめみたいになってないで、歩いて!」
とか言っているが、無理である。
先生が鬼のように見えた。 

こうして、わたしは「わかめ」になりながら、30分を乗り切った。
さらには、みんなが、さっさとプールからあがっていく中、一人、
プールの水中と陸上の境目で、立ち上がることができず、
母と70歳くらいのおばあさんに両脇をかかえられて
やっとの思いでプールからあがったのだ。

ああ、情けない。
と思いながらも、毎日、生きることに向かって何かをするのは楽しかった。
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そうこうするうちに、復帰の一歩目と決めた、ワークショップの日がやってきた。
二日間連続のワークショップ。

一日目のクラス。
25名くらいの生徒。
久々の「仕事」は楽しくて、うきうきして、あっという間に時間は過ぎたけど、
みんなに見られていることと、鏡に囲まれていることで、
「カツラ」の存在がものすごく気になって、集中力がいまいちだ。

そして、クラスが終わってから、着替える時には
服を脱ぐ時に「カツラ」がとれることを心配して
こそこそとトイレで一人着替えた。

二日目のクラスも同様に楽しかったが、やはり「カツラ」の重圧があり
胸に何かつかえているような感じで終わった。

二日目のクラスのアト、生徒さんとみんなで飲みに行った。
みんなが、私の復帰を祝ってくれるという。 
とりとめのない話をしながら、楽しく飲んでいたが、その途中で私は切れた。

「すみません!私これ、ちょっと気になって、集中できないので、とっていいですか?」
と言って、カツラをとって、坊主の頭をみんなに見せ、とったカツラを右手で振り回した。

みんなは、ショックを隠しきれない顔で、呆然と見つめた。
笑っていいのか?泣いていいのか?どんな言葉をかけたらいいのか?

仲の良い友達が、言った。
「私はいいけど、生徒さんとか、りずむに憧れる人は、ちょっとショックかもね?
でも、りずむが落ち着く形が一番いいんじゃない?」  

うん、そうだね。私は坊主頭で「カツラ」を気にしないで、コソコソしないほうが落ち着く。
みんなは、見慣れてくれるだろう。

ワークショップも復帰の第一歩だけど、精神的には「カツラ」をとってみんなの前に出られたことが、すごく大きかった。


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