弟九話 なぜ死ぬのがそんなに悲しいのか?考えた
私はなぜ、病床で毎日泣くのか?
何がそんなに悲しいのか?考えた。
生きがい(仕事)、夢(仕事)、情熱(仕事)、野望(仕事)に未練があるのか?
私の場合「仕事=ダンス」。
これだけ、情熱を傾けてきたダンスに未練があるのか?
答えはNO。
死ぬとなったら、ダンスはどうでもよかった。
なぜなら、私にとってダンスは「生きている証」的な?
生きていることを表現したいし、生きていて嬉しいことを表現したいし、
生きた感動を人に伝えたいし、生きていることで出会う悲しみを人に伝えたい。
生きている限り、表現したいけど、死ぬとなったら、それはそんなに大切なことじゃなかった。
むしろ踊れなくなってもいいから、生きていたいと思う。
とにかく、元気になって、生きていれますように、って神様にひたすら祈った。
では、何がそんなに悲しいのか?
涙があふれるとき、思い浮かべるのは、家族の顔、友達の顔、先生の顔、そして
ケイの顔。つらいのは「別れ」だ。私一人、先に旅立つことが、とてつもなくつらい。
母はいつも「心配するのは親の仕事」って言って、三十にもなった私の心配を毎日している。
元気で仕事しているときも、海外で頑張っているときも、舞台に立っているときも、
いつも、どんな時も私のことを思い、心配して、私を助けてくれる。
母はそして、自分を責める。私は好きな事を仕事にして、こんなに幸せに生きてきたのに
それでも、何かあると、母は「私の選択が悪かったのか?」と、自分を責める。
歯の矯正をして、痛くて泣いていれば、「矯正をさせたのは間違っていたのか?」と悩み、
「聖心」という堅い学校に入って、毎日のように先生に呼び出されれば
「こんな学校に入れて、りずむの個性が失われるのでは?」と悩み、
大きな怪我をすれば、「私がもっとしっかりしていれば」と母は自分を責める。
歯の矯正をしたことは、人前に出る仕事について、ものすごく感謝しているのに。
聖心という学校はとても堅かったけど、そこで学べたことや、出会った友達は「一生の宝だな。」って、思っているのに。
怪我をしても、私は何度も克服して、復活することができ、その「力」に感謝しているのに。
それでも、母は自分を責めるのだ。
そんな母が病気の私に先立たれたとき、どう思って、苦しむか、予想がつく。
母は、私が想像できないくらい深く悲しみ、そして自分を責めると思う。
父もまた、気持ちは母と同じだけど、父は父なりの「距離」をとって、いつも私と接していた。
本当は毎日、顔を出したいと思っているけど、1週間に2〜3回「どうだ?」って、お見舞いにくる。
あまりにもやさしい父は、私をどう見守ったらいいか、とまどい、
私には何も見せないけど、一人のとき、悲しみ、苦しんでいる。
まだ、親孝行を何一つしてないのに、私は、最後の最後まで、何もできずに、
親を悲しませ、先に逝かなくてはならないのか?
考えると悔しくて、涙がとまらない。
そして、ケイ。今、一番近くにいてくれて、甘えさせてくれるケイ。
私が逝ってしまったら、私を忘れてしまうだろうか?
時間がたてば必ず忘れて、また「新しい彼女」ができて、
手をつないで歩いて、肩をよせあって話して、ばか話して笑って、新しい生活を新しい人とするよね?
その一つ一つを思い浮かべるだけで、悲しくて、つらい。
私の存在が消えてなくなる。
残されて、生きなくてはならない人は、しばらくの間はつらいけど、きっと忘れる。忘れなければ、
つらくて生きて行かれないから、きっと忘れる。
私の心だけが置いていかれる。そこでストップして、置いていかれる。
エゴイスティックな私の心は、できれば忘れないでいてほしいと、思っている。
私が死んでも、私のことを思っていてほしいと思っている。
テレビで自殺のニュースが流れると、無償に腹が立って、
「その命私にくれ!!その命いらないなら私にくれ!!」と怒鳴った。
激しく嘔吐しながらも、怒鳴った。
そのくらい「命」が惜しかった。
まだ、まだ、この世の人と一緒にいたいのに。
まだまだ、会いたい人がいっぱいいるのに。
まだまだ、伝えたいことがいっぱいあるのに。
つらいのは人との別れだ。
その命、粗末にするなら、私にくれ!
何度も何度も、声に出して、願った。
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