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陰キャ特有の壊滅的につまらない会話

作者:喂?
 高校2年の俺は陰キャなので、休み時間に教室で喋る人が1人しかいない。
 1時間目が終わって暇になった俺は、その友人の席に近づいて話しかけた。

「おはよう」
「المملكة العربي」

 しかし彼は俺と同様に性格が暗い上に、サウジアラビア語しか話すことができないので、はっきり言って、話しても全く楽しくない。しかも共通の趣味や話題もない。いつも話していたから、惰性でなんとなく話す感じだ。
 休み時間の喧騒の中、俺は、伏し目がちの彼に向かって、思いついたことをなんか適当に言う。

「……てか今年のロッテってなんであんなに弱いのかなー。やばいよね、今年のロッテ。オープン戦では強かったのに。やっぱりあれだな。オープン戦の成績って全然あてにならないなー。伊東監督も可哀想だよねー。フロントがちゃんと補強するならって条件で続投したのに、デスパイネ抜けて、連れてきたのがダフィーとパラデスって。特にパラデスとか論外でしょ。何あの居合斬り打法。だっさ」
「……المالمالمملكة العربية السعوديةملكة العربية السعوديةملكة العربية السعوديةالمملكةالمملكة العربية السعودية العربيةالمملكة العربية السعودية السعوديةالمملكة العربية السعودية」

 話してても全然楽しくねえ…………
 彼がサウジアラビア語しか分からないというのもあるが、俺の話が壊滅的につまらないというのも一因かもしれない。多分俺の話って超つまんねえんだろうな。自分でも分かる。
 彼がサウジアラビア語しか分からないからこうしてロッテの話が迷いなくできるが、日本語が分かる人にロッテの話とか絶対しないしな。
 俺って多分、話が甚大につまらないからクラスに友達少ないんだ。しかも陰キャのくせにそんなに深いオタクってわけでもないから、オタクグループにも入れないし、こうしてガチ陰キャになるんだろうな。昼休みに遊戯王とかやるような奴らと一緒になりたくないという安いプライドが、俺をオタクグループから遠ざけている。
 でも俺は分かっている。俺は昼休みに遊戯王をやる奴ら以下の存在であると。休み時間にロッテの話するとか、絶対遊戯王より下だ。千葉ロッテマリーンズはクソ。
 こんな薄っぺらい友達なら、いっそぼっちになった方がましかもしれない。自分の席で適当に読書でもしてた方が気楽かもしれない。多分、目の前の彼も同じことを思っているのではないだろうか。会話してて、彼が笑ってる姿を見たことがない。
 ていうか俺が話しかけないと彼は絶対に話しかけてこないので、もしかしたら俺は嫌われているのかもしれない。だが、体育で柔軟のペアを作らされた際は、彼の方から俺にコンタクトを取ってくる。多分彼にとって俺はそれだけの為の存在なんだろうな。まあ俺もそうだが。明日から彼が不登校になっても、暮らしに何の影響も生まれない気がする。
 だが、俺は特に休み時間にやることが無いので、その後も一方的にロッテの話をし続けた。

「あんなに打線が不振なのに、打撃コーチの堀が無能すぎるわ。『余計なことを選手が考えてしまうから投手のデータは敢えて見せない』とか言ってるんだよ。それはありえねえだろ。データを見せろよデータを。どうせ堀はろくな打撃指導もしてないんだろうね。あと、コスト削減のために、ロッテにはスコアラーが全くいないらしいよ。アホすぎるよね」
「المالمملكة العربية السعوديةملكة العربية المملكةالمملكة العربية السعودية العربية السعوديةالسعوديةالمملكةالمملكة العربية السعودية العربية السعوديةالمملكة العربية السعودية」

 あーつまんね。
 周りの人たちが超楽しそうに見える。
 輝いて見える。

「あははははは!」
「ははははははは!」
「きゃー!」
「あははは!」
「うふふふふふふふふふ!」
「デュフフフフ!」
「ははは!」
「ゲラゲラゲラゲラ!」
「ファー!」
「きゃー!」

 俺の高校生活、こんなことでいいのだろうか。ロッテの話なんかで終わっていいのだろうか。高校生の今しかできない話があるのではないだろうか。
 そんなこと思ってしまって、俺の目の前にいる彼には申し訳ない。だが思ってしまうものはしょうがない。
 と、その次の瞬間だった。

「田中君とアブドゥルアズィーズ・イブン・サウード君って、いつもそういう話してるの?(笑)」

 俺は、いきなり横から女子に話しかけられたので超驚いて、高速で女子の方を見た。ちなみに田中は俺の名前だ。
 女子と目が合ったが、普段関わりが皆無すぎるが故に名前がよく分からなかった。誰だこの人。見たことねえ。
 俺は、きょどりながら言った。

「えっと、まあ、うん、そう。大体は千葉ロッテマリーンズの話かな。あっ、千葉ロッテマリーンズって知ってる? プロ野球の球団でパリーグで本拠地は千葉にあるんだけど、今年クソみたいに滅茶苦茶弱いんだよね」
「へーなにそれ、超どうでもいい(笑)」

 そう返され、俺は超無言になった。
 サウジアラビア語しか分からない彼も無言だった。

「私さー、隣の席だからいっつも話が聞こえるんだけど、超つまんないよ。田中君の話」
「え」
「アブドゥルアズィーズ・イブン・サウード君は優しいからつまんないって言わないだけで、本心では絶対に滅茶苦茶つまんないと思ってるよ。ね、アブドゥルアズィーズ・イブン・サウード君?」
「うん、たしかに滅茶苦茶つまんないよ。田中君の話」

 え!!!!???!?!!?!
 てめえサウジアラビア語しか分からないんじゃなかったのか?????
 俺は思わず問うた。

「アブドゥルなんとか君って、日本語話せたの?」

 アブドゥルなんとか君は、伏し目がちに言った。

「いや、ほとんど分からないけど、田中君の話があまりにクソつまらないから、つまらないっていう単語だけは必死に覚えたんだ。ごめん………………」

 めっちゃ申し訳なさそうに言われた。
 まじか。そんなにつまらなかったのか、ロッテの話。まあ俺もしてて楽しくなったことなんか一回も無いけどな。
 やがて、再び横から女子が言ってきた。

「田中君このままだと女の子に絶対もてないよ」
「え?」
「なんでか知りたい?」
「うん、知りたい」
「だって話が超つまんないから(笑)」

 そんなにつまらないのか。ロッテの話。
 ていうか話したこともない人からいきなりなんでこんなにボロクソに言われないといけないのか分からない。俺の話がつまらないこととあなたの生活になんの関係があるんだ?
 と聞ければよかったが、「は?」とか言われそうで、聞けなかった。
 俺は聞いた。

「じゃあ逆にロッテ以外にどういう話すればもてるの」

 すると、女子は言った。

「どういう話っていうか、どうせ何話しても面白くないんだから、聞き役に徹すれば?」
「あ、なるほど」

 たしかに今までの俺は、自分が言いたいことを言うだけだった。よく考えたらそれはコミュニケーションとして成り立っていない。俺がロッテの話をするだけで、アブドゥルなんとか君の話を聞いたことは殆ど無かったな。
 俺は言った。

「アブドゥルなんとか君、俺が聞き役になるから好きなこと話していいよ」
「يةالمملكةالمملكة العربية السعودية العربية السعوديةالمملكة العربية السعوديةيةالمملكةالمملكة العربية السعودية العربية السعوديةالمملكة العربية السعوديةيةالمملكةالمملكة العربية السعودية العربية السعوديةالمملكة العربية السعوديةيةالمملكةالمملكة العربية السعودية العربية السعوديةالمملكة العربية السعودية」

 何言ってんのか全く分からねえ……

「あはははは! 何言ってんのかわかんねえ!(笑)」

 女子が普通にめっちゃ笑っていたので、俺は、こいつデリカシーねえなと思った。

「花子ー、一緒にトイレ行こー!!!!!!」
「あっ、分かったー!!!!!」

 女子はすっくと立ち上がって、小走りで友達の方に向かっていった。
 名前を初めて知った。
 俺は連れションに誘われた花子という人間の後ろ姿を見ていた。そのうちすぐ教室から花子たちが消える。
 俺とアブドゥルなんとか君の間に、しばらく謎の沈黙が流れる。特に彼と話すことも無かったので、俺はまた適当にロッテの話をし始めた。
 ロッテの話をしてたら、そのうちキーンコーンカーンコーン、とチャイムが鳴り、先生が入ってきて「さっさと座れー」と促されたので、速攻で席についた。
 みんなが騒ぎながらぞろぞろ席に座りだす。俺が座る。誰かが座る。花子が座る。みんな座る。季節は初夏だった。

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