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泡沫の大地の詩 [バージョン1]
作:スピリットQ



<  〃  >(3)


 魔法師たちは、魔法陣と杖がなくても呪文のみで空間を移動することが可能だった。
ルフィネの魔法力によって、キングスたちは大地が陥没した廃墟と化したある場所へ辿り着いていた。
 リーゲル公国の光景を再び目の当たりにしているのかと思い、辟易へきえきする。

「おいルフィネ…、リーゲル公国じゃなくて、シッカ国に…シッカの城に戻るんだぞ…?」

 キングスの問いに、暗い面持ちで目を伏せた彼女が首を横に振る。

「ここが…そのシッカ城に当たる場所です…。空間移動に狂いはありませんでした」

 瓦礫がれきの山と化した廃墟を前に、一同は呆然と立ち尽くしていた。
キングスにはそこがどこであるのか本当はわかっていた。
 崩れた床や壁、そして天井の下には、確かに見覚えのある調度品や絵画が散らばっている。
真っ二つに割れた肖像画の祖父の片目が、自分を悲しげに見つめていた。
 それに所々で、仰向けの者、うつ伏せの者、頭のない者、足のない者…が瓦礫に埋もれるように静かに眠っていた。
 その中には、確かに出発前に話を交わした臣下もいる。
あんなにも口うるさかった大臣たちも、今は息を潜めて沈黙し続けているかのようであった。

すぐそばでは焼き尽くされた黒い森シェルドが未だくすぶり声を上げていたが、黒く焼け焦げた木々が、
死んでいった動物が、森の精霊が、人間たちを軽蔑のまなこでジッと見つめている。


「いや…いや---------っ!!」

 トゥインガの叫喚きょうかんかん走る。
彼女の脳裏に、数日前の母国の悲劇が重なり押し寄せる。

「トゥインガ!!」

 少女は気絶して、体の安定感を失った。
間一髪支えに入ったキングスだったが、彼の腕にも力が入らず、そのまま地面に気を失った少女を横たえる。

「王は…、王妃様は…? ライアや母上はっ!?」

 ザッハンもその場にへたり込んで茫然自失する。

「ちくしょう!! 何だってこんな目に!? ……そうだ、魔法だ。
 ルフィネ、魔法で死んだ者を生き返らせることはできるんだろう!?」

 期待を込めてキングスが叫ぶが、彼女の口から返されてきたものは、その期待を覆す結果となる。 

「まだ息のある内は回復させることができますが、息絶えてしまってからでは施しようがないのです。
天命には逆らえません……」

 キングスが舌打ちする。
しばらくすると、ヴーン…という振動音と共に、空間にひずみが生まれた。
 アルディを捜しに行った銀髪の少年が出て来たが、彼一人だった。

「----彼は見つからなかったのですか?」

 落ち着いた口調で、少女の魔法師が訊ねた。少年が首を横に振った。

「家の中、周辺一帯を捜しましたが、どこにも彼らしき姿は見受けられませんでした。
 ですが、北に向かって走る一つの影が、遥か彼方に見えました。恐らく彼でしょう……」

「北…?」

 ザッハンが即座に地図を渡し、見開いたキングスが訝しげに呟く。

「あそこから北は…帝都の方角だ。あいつは一体、何をするつもりだ…?」
「まさか、一人で立ち向かうつもりじゃ……」

 キングスとザッハンは、互いの目を見合わせる。

-----まさか……。

 キングスの中で、何やら怪しい雲行きが漂い始めていた。
と、そこへ、瓦礫の向こう側に人影が感じられ、キングスは遠くに視線を変えた。

「レッグド大尉!! 無事だったのか!?」

 キングスの剣の師、レッグドがそこへ立っていた。
ザッハンも立ち上がって、彼に向かって走り出した。

「何やら人の声がこちらから聞こえたので来てみれば、キングス様、あなた方だったのですね。
 ご無事で何よりです……」

 喜びも束の間、レッグドの顔には蒼白の色が浮かんでいた。

「申し訳ありません……。御一行が魔法国へ旅立って間もなく、こういう事態に遭遇致しました。
 キングス様が居合わせなくて本当に良かった……! 女神ジブエは我々に味方してくれたのですね……。
 敵は例の魔法師たちでした。魔法を前に、我々普通の人間は無力。
 それでも騎士や兵士たちは皆、最後まで忠誠を誓い力を振り絞って戦いに散っていきました。
 殊に、メビーリス大尉並びにイファニール大尉は、共に有終の美をまっとう致しました!」

 キングスの前でひざまずくと、無念の涙を呑んで彼は戦いの様子を告げた。

「レッグド大尉が助かっただけでも俺は嬉しい。そして、彼らの果敢な勇姿を称えよう」

 ひざまずく師に手を差し伸べる。

「自分は、仲間の後を追って死ねなかった自分のふがいなさに、腹を立てております!
 しかしこれも一重に、神が私に使命を任せていると察し致しますれば、死ぬことはできません!
 まだ私はあきらめたつもりはございません! 王と王妃、それにダフスー宰相を始め、
 数人の臣下たちがセッツェン城に連れて行かれたのです! 助けに行かねばなりません!」

 落胆していたキングスとザッハンの顔に、生気がみなぎり始めた。
 
「父上も母上も生きているのか!?」
「はい。皇帝一派は、世継ぎのキングス様がここにいなかったことに立腹し、
 セッツェン城へ来るようにと私に告げて行きました。
 ----目前で、王たちの死に様を見せてやると言い残して……」
「皇帝一派だと!? 海賊じゃないのか!?」
「魔法師のいる海賊、それに山賊は、皇帝と手を結んだようでした。魔法師の隣りには、鉄仮面の人間がいて、
 彼は、セッツェン皇帝ガインダークであると自ら名乗っていきました」

 レッグドは笑って頭を左右に振った。

「ふざけるのも大概にしろっ!! どこまでいかれた奴らなんだ!!」

 キングスの怒号が響く。













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