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一瞬の間を経て辿り着いたそこは、勿論、見たことのない場所であった。
なのに、どこにでもあるような風景と街。
いささか変わった造りの建造物が所々に見受けられるが、それを除けば特に変わった様子のない所であった。
街を歩く人々も、自分たちとよく似ていた。
服装は異国風で民族衣装なのだろう、変わった模様がちりばめられた色鮮やかなやや袖の長いデザインだった。
ただ、走ってきた子供がつまずいて転んだ際に作ったひざの傷を、少年自身が手をかざし傷を消していた。
そして、何事もなかったかのように再び駆け出して行く。
どうやらここは、紛れもない魔法国・アウドリックのようであった。
「…おい、これは夢か現実か?」
キングスは、まるで夢を見ているかのような気分になる。
周囲を見渡せば、一見普通の人々。違いといえば、超能力的なパワーを隠し持っていること。
その時、突然トゥインガが走り出した。
「早くアウドリックの王の所に行くわよ!」
少女が息吹を吹き返したように行動的になる。
「何なんだあいつは…? 落ち込んでいたと思えばいきなり元気になって…よくわからん女だ」
「あの頃が一番、喜怒哀楽が激しい時期なんだろうさ。俺にもあったさ、そんな青い時期が」
しみじみ語るアルディを見て、肩をすくめたザッハンが付け加える。
「私にはありませんでしたよ。お利口さんでしたからね」
「君の場合は、無関心と無感情が優先する性格なんだろうな」
「どういう意味ですか、それは…」
まるで、つまらない青春時代を送って来たかのようにして言うアルディに、ザッハンがムッとする。
「だけど、彼女にきつく言った王子もいけないんですよ。ただでさえ情緒不安定になっているというのに…」
「ほっほーう。やけに姫さんの肩を持つじゃないか。お前さん、ひょっとして…?」
「ち、違いますよ! 私はお二人に仲良くして戴きたいだけです!」
赤面しながら慌てて誤解を取ろうと、ザッハンは必死になった。
*
王宮らしき壮大な建物が、彼らの目の前に立ちはだかっていた。
門番に何の疑いもなくすんなり通された一行は、中に入って更に驚いた。
「何か…空気が違うよな…?」
既に魔法でもかかっているのだろうか、明らかに外とは何かが異なっているのが自分たちにでも感じ取れる、
まさに神聖さが漂っている神々しい場所…。
それなのに、緊張感がほぐれる安らぎ感が感じられるのが不思議だった。
誰もいない長い廊下を、四人の足音だけが響き渡る。
そこへ、正面の一際大きな扉が開かれ、一人の女性が微笑んで現れた。
「どうぞお入り下さい」
自分たちを待っていたかのように、その人は招く。
勧められるままその奥へ入ると、先程街で見かけた民族衣装に身を包んだ、気品ある人々が並んで出迎えてくれた。
その中に、一際目立った青い法衣を着た男女が数人、垣間見える。
刹那、トゥインガの表情がかげり、身体がわずかに震えだす。
「ようこそアウドリックへ」
皆、笑顔で歓迎してくれる。
その慈愛に満ちた笑顔は、見る者を無条件で幸福にさせてくれた。
だが彼らは魔法を使いこなす。
「全てを見抜かれそうで怖いな…」
キングスの耳元でアルディが囁いた。
「お前が今口にしながら、本当は何を考えているのかまで知っていそうだな」
アルディがつばを飲み込む。
そして、玉座に座る風格のある銀髪の男が立ち上がり、前に出て挨拶をしてきた。
「私がアウドリックの王、ケルスカーザレオンと申します。お待ちしておりました」
キングスも前に出て、自分の名を告げ握手を交わすが、
「てっとりばやく申されることをお許し戴きたい。我々がこちらに伺うよう手配してくれていたようですが、
早急、魔法師の助力をお頼み申し上げます」
そこまで言った時、恐る恐るトゥインガが前に歩み出す。
「あの…、そちらの青いローブの方々は…?」
「トゥ、トゥインガ様!?」
唐突な質問をし出す彼女にザッハンは慌てふためくが、王の目が見開かれる。
「おお…、あなたは彼らのことを見抜いておられますな。勘が良いと見える」
ケルスカーザレオン王は感心するが、トゥインガの顔は以前暗いままだったが、王の言葉が耳に入ると、
一層険悪な表情を作った。
「いいえ…。リーゲル邸を崩壊される直前、私の寝室に現れた男が、
そちらの方々とよく似た感じの青いローブを着ておりましたもので---------」
「何だって!?」
キングスも驚き、その方を見る。
魔法師たちは一瞬とまどうが、それでも動じず、落ち着いたままその場に立っている。
「うむ、相違ないな…。実はその男は、数年前にこの国から姿をくらました魔法師で、名はシグネシェン。
この青ローブは、魔法師の中でも最高の上級魔法師だけが着ることが許される魔法着なのだ…」
「そんなまさか……」
ザッハンの落胆する声が聞こえる。
「奴の悪行を心からお詫びして、私からも陳謝致す。申し訳ない…!!
…それで許してもらおうなどと非礼極まりないことは申さない。
ただ、神聖なる魔法を下賎な理由で用いたとなれば、魔法力の剥奪は至極当然。
直ちに奴を捕まえなければならない。…シルヴァン!」
「は!」
青ローブの男の一人が前に進み出る。
「上級魔法師を数名抜擢し、同行させよ。シグネシェンの冒涜は、我々アウドリックの冒涜でもある」
「はい、その同行者は既に決めております」
「ルフィネリアンとセシリージェンであるな…?」
「はい! この二人がいれば、あの男など一捻りでありましょう」
「うむ。二人は前へ」
王の許可が下り、青ローブを着た二人の小さな少年と少女が現れる。
上級魔法師と聞いて、さぞかし立派な年配の魔法師が出てくると思っていただけに、キングスたちの目は点になる。
「宜しくお願い致します」
トゥインガよりも三歳は年下であろう少年と少女が、恭しく腰を屈めた。
つられて一行も腰を屈める。
「はぁ…、こちらこそ…」
「ご覧の通り、まだ子供と言えど、この二人は魔法師中の魔法師。きっと役に立つことでしょう」
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