吸血鬼PDFで表示縦書き表示RDF


吸血鬼
作:マル丸円



吸血鬼

コンビニでバイトをする俺は、あと10分で深夜のパートさんと交代なので、客もそんなにいなかったからダリィとか思いながら何気なく店内を放浪していた。

「おい!そこのバカそうな店員!!」客に呼ばれたから・・ではなくいきなりバカと言われたので振り向くと、そこには日本人離れした長いサラサラストレートの金髪と紅色の眼を持つかなりの美人さんがそこに仁王立ちしていた。

「はっ、はいなんでしょうか?」金髪の美人さんに見惚れて、一瞬返事が遅れてしまう。バカと言われたことなんて忘れている。

「これ、全部買うからカゴに入れて運べ!」仁王立ちの姿勢から右手を伸ばし、人差し指を立てて指さす。それはトマトジュース。

「はっ、はぁ・・」金髪女はカゴを持ってなかったから、カゴを持ってこようと歩き始めると「走れ!!」と怒号が飛んだ。

(やけに高飛車な女だな・・。でもこれも、店員のさだめだ。言う通りにしよ・・)渋々とトマトジュースをカゴに入れていく。

「これでいいんですよね」とりあえずこの金髪女の指差したトマトジュースは、全部入れた。

「こっちのも!」なんかウンザリしてきた・・。

結局金髪女は、店内のトマト関係をすべて俺にカゴに入れさせた。トマトジュースをはじめ、トマトサラダ・トマトのプ○ッツ、さらには調理用のトマトピューレもカゴに入れさせた。重すぎて腕がしびれる。

「よし!このぐらいだな」カゴ二つ分に山盛りになったところで、この金髪女の買い物は終了した。

(やっと終わった〜終了時間10分も過ぎてるし・・)

「いくらだ?店員」

「あぁ、待ってください、今打つんで」残りの力をすべて発揮し、何十キロもするであろうカゴを、レジに持って行き、商品のバーコードをレジに打ち込み、袋に詰める。すでに交代で入っていたパートさんも手伝ってくれたが、所要時間約10分。もうすでに俺の仕事時間は、20分オーバーしている。

「1万と3千円になります」値段を言ったところに、黒く光るカードを差し出された。

「カードで頼む。あいにくと現金は持ち合わせていないんだ」えーとこれは、戦車も買えるというマンガかドラマでしか見たことのないあのカードでしょうか?

「あっ・・はい」カードを受け取った手が汗ばまないか不安になったが、普通に受け取りいつものように、カード支払いを済ませられた。

「うむ、礼を言おう」満面の笑みでほほ笑むと、巨大な袋に手をかけ、金髪女は早足で店の外へと去って行った。というか、あの金髪女、俺があんなに苦労してたのに、軽々と持ちやがって・・。まぁあの笑顔は良かったな・・。

「それじゃぁ俺はこれで」簡単な片付けと着替えをしてタイムカードを押してパートさんに挨拶を済ます。俺の仕事は30分遅れでやっと終了した。

店の扉を開けると冷たい風が、疲れた体に反応して震えた。サブい。

帰ろうと、自分の原チャリが停めてある駐輪場へと向かうと、ライトの優しい光で照らされた俺の原チャリの隣にさっきの金髪女がちょこんと座って、さっき買っていったであろう、ホットのトマトジュースをチビチビ飲んでいた。

思わず、ドキッっとしてしまう自分がいた。いや、この画をみたらドキッっとしない男なんているはずないと胸を張って言えるな。うん。

「なにやってんですか?」平然を装い話しかけるが、内心は心臓バックバクだ。

「む?なんださっきの店員か。何の用だ?私に何か用か?」

「こんなに寒いのに外で何やってんですかお客さん?風邪ひきますよ?」仕事は終わっても、一応お客さんだ。それなりの対応をしなければいけないよな。うん。

「うむ。家に内緒で出てきたものだから、どこにも行くあてがないんだ」ここら辺はかなり物騒だ。近くにはヤクザの事務所があるし。近くにある俺が通う高校は不良の巣窟だし、この前なんか近くに住むOLが強姦されたとかいう話だ。そんな無法地帯で、こんな美人さんが一人で夜中にひとりでほっつき歩いていたら、危険以外のなにものでもない。

「さっきのカード使ってホテルにでも泊まったらどうだ?」何を思ったのか、金髪女はキョトンとした顔で俺を見ている。

「・・・・そうか、その手があったか!でかしたぞお前!!」気付かなかったのか。

「そうですか。それはよかった。じゃぁ解決策も見つかったみたいなので、俺は家に帰りますね」金髪女の隣をすり抜け、原チャリのハンドルに手をかけようとしたとき、襟をつかまれ、引き戻される。やったのはもちろん金髪女。

「まて、家に帰る前に、私をホテルまで送って行け、それが店員だ」どこにもいねぇよそんな店員と言いたくなるが、なんかめんどくさいことを延々言われそうなのでやめておく。

なんでそんなことを言ったのかはわからないがただ単に自分の下心が無意識に出てしまったのだろうか。俺は「わかったよ」と躊躇なくこの金髪女を原チャリの後ろに乗せてしまったのだ。

ヘルメットを金髪女に譲り、俺はノーヘル。でもそんなことはあまり関係はないのだ。

さっきも説明したように真夜中のこの町は無法地帯。警察が巡回している姿なんか、昼間に時々見るだけなので、ノーヘルなんかしていてもなんとも思わない。

二人乗りで他愛のない話をしながら、走ること5分。駅前のビジネスホテルに到着し、ホテル出入り口の前に一時駐車。

「礼を言おう、これはお礼だ。ありがたく受け取れ」そういって差し出したのは、一本のトマトジュース。かなり冷えているはずだが、快く受けとる。

「おぉ悪いなありがとう」話していると、いつのまにか店員としての態度は無くなり自然にため口で話していた。俺は受け取ったトマトジュースのタブを開け一気に飲み干す。

この缶は不良品だった。飲み口から口を離した瞬間、ギザギザしたものが俺の上唇を引っ掻き、そこから軽く血が出てきた。

「いって!」切れた唇を触っていると、金髪女がいきなりすぐ目の前に来て、俺の顔を物欲しそうな目で見ていた。そう、物欲しそうな目で。

「あっ・・どうかしたか?」返答はなく、ただおれの顔を見つめるだけ。

しばらくの沈黙の後、金髪女は俺の上唇を触っていたほうの手をどかし、俺の顔に自分の顔を近づけた。

「血・・ぃ」そんなことを呟きながら俺にした行動・・それは俺から見れば紛れもないキスで、でも金髪女はそんなことは気にもしていない様子だった。

あれ?これなんか変だぞ?なんか上唇が吸われているような感覚だ。

突然のキスから、10秒ほど・・あるいはもっとしていたかもしれないが、金髪女は急に我に返ったように、目を見開き、自分の口を離すと同時にいっきに距離をとり、俺の顔を見開いたままの目で見る。頬は若干赤く染まっている。

「えと・・どう反応すればいいのかわからないんだけど・・・」率直な感想。誰でもそうだろ、さっき知り合ったばかりの女の子に、いきなりキスをされてどうすればいいかわかる奴なんてそう居ない。

「明日・・迎え・・ひとり・・かえれ・・」何かをつぶやくが、小さすぎてよく聞こえない。

「えっ?なんだ?」

「明日の朝迎えにこい!!一人じゃ帰れそうにないんだ!!!」金髪女は心の底から叫ぶ。

「いいぞ。わかった」返事を聞いて金髪女の顔が一気に明るくなる。

「ところで、トマトといい、さっきの血とか言いながら・・その・・してきたのってもしかして・・・」

「明日ちゃんと迎えに来てくれたら教えてやる・・じゃあまた明日な」そう言って金髪女はビジネスホテル内に走って行った。

まぁいいか、吸血鬼だろうがヴァンパイヤだろうがドラキュラだろうが、そんなことはどうでもいい。

とりあえず明日の朝のために寝ておくか。

俺は、明日金髪女をどこに誘おうか迷いながら、原チャリを転がした。


最後のほう無茶苦茶(汗)













ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




◆BACK
小説家になろう