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le freak 作者:やましたよしのぶ
6/6

第二部 010−END

010

明美先生はなかなか落ち着きのある時間を過ごしていた。

温泉はなかなか良いし、料理も良かった。なんにも気遣うことがなく、旅館も親切だけど
余計なことは一切してこなかったので居心地が良かった。夜に窓越しの風景を眺め
いろいろなことを考えた。やっぱりどこにいっても、世界中どこにいっても
私がどうにか勇気を持って言うしかないという事には変わりはなかった。まあそうだろう。

明美先生はまずはリラックスすることを心がけた。思えば最近、仕事が忙しかった。
山形先生の真似をしてちょっと自分も仕事を増やしてみたけど、どうも私はそういうのは
向いていないのかもしれない。いろいろと私は気を使い過ぎるところもあるから、
ストレスも溜まる。それじゃ意味がないな、と思った。まあ、いいや、今はゆっくりだ。
そうして彼女はぼけっと温泉にはいり、食事をしたり、本を読んだりして過ごした。
なにかもやもやしていたものが少し抜けたような気がした。良い兆候だ。

最後の夜、食堂でたまにロビーでおしゃべりをする老夫婦にあった。
おばさんはなかなか感じが良い人だ。細かいことは全然気にしない人みたいだし、
なかなか裕福そうで、旦那さんも穏やかな人だ。おばさんは彼女がが幼稚園の先生を
していることに興味があるようだった。大変そうねーといつも言った。
なんだかそうやって楽しくしゃべっている間に彼女はなんとなく、直感で、このおばさんに
自分のことを相談してみようかなと思った。彼女は一緒にお風呂にいきませんか?と
思い切って尋ねた。おばさんはうなずいた。そうして食事のあとに彼女とおばさんは
お風呂場に向かった。湯船の中で思い切って話してみた。

「どうしたらよいと思います?」と彼女は聞いた。

おばさんは考えた。とその時、あることを思い出した。おばさんの頭の中でなにかがパチンと言った。

「あそこにいったらいい、ここから確かすぐだよ、あそこにいったらいい」とおばさんは言った。

「あそこ?」と彼女は聞いた。

彼女たちはお風呂から上がり、フロントへと向かった。そしておばさんはフロント係に
あそこの場所を知っているかどうか尋ねた。フロント係はそこを知っているみたいだった。
ちょっと今調べますので、待ってて下さい、と言った。ふたりはロビーのソファーで待った。

「あそこってなんですか?」と彼女は答えた。おばさんは少し困った顔をした。

「今はあんまり知らないほうがいいと思う、いけばわかる、わけがわからないだろうけど
今はおばさんの言うこと黙って聞いてくれないかな?申し訳ないけど」とおばさんは言った。

「なんか、変なところなんですか?」彼女は不安そうに聞いた。

「いや、決して変なところじゃないの、いいところ、私もその人のおかげでこうして
のんびりと良い老後を送れているのよ、これは本当の話、私たち夫婦が昔、悪い人にだまされて
お金が無くなった時にその人が助けてくれたのよ。ただ、あんまり予備知識を持って
いかないほうがいいと思っただけ」とおばさんは説明した。ますますわけがわからなくなった。

そして、フロント係がそこにいく簡単な地図を丁寧に作成してくれて、それを手渡しに来た。
彼女はお礼を述べた。フロント係が一礼して元に戻った。名前はたかはしいずみと書いてあった。

「このたかはしさんの所に行けばいいのですか?」と彼女は聞いた。

「そう、そこにいけばなにも言わなくってもすべてやってくれるから」とおばさんは言った。

なんかの占い師かなんかなのだろうか?まあいいや、行って見る価値はありそうだ。

「ちょっと良く理解出来ないけど、本当にありがとう御座います。」と彼女はお礼を述べた。
おばさんはにこにことしてうなずいた。良い人だ。いってみる価値はある。

翌日、9時ごろにこの旅館を出た。フロント係にお礼を申し上げて小さな駅へと向かった。
ここから電車で一時間くらいのところにそのたかはしさんはいるみたいだ。
ローカルな2両編成の電車がゆっくりと進む。気分が良い。天気も良いし、電車の窓から見える
風景が綺麗だった。思えばこうやってひとりで行動することってあんまりなかったな、と
気づいた。大学も家から近い所にいったし、旅行はいつも友達と一緒だった。
家にはもちろん両親がいる。きっとこういうことも大事なんだろうと彼女は漠然と思った。
しかし、このたかはしさんとはいったい何者なのだろう?ちょっと不安だが、あのおばさんが
言うにはたぶん大丈夫だろう。そう信じるほか無い。自分の感を信じましょう。

目的の駅に到着した。また似た様な小さな駅だった。まわりが一面見渡せる。
私は地図を見て方角を確認し、歩いた。ここから歩いて10分くらいらしい。
目印があまりないので、いまいちこの道でよいのか不安だったが、あった。
小さい表札だった。ひらがなでそのまま”たかはしいずみ”と書いてあった。
どう考えても商売をしているようには見えなかった。普通の民家と変わらない。
本当にここでいいのか不安だったが、あたりを一応見回してもたかはしさんはここしかなかった。
思い切ってドアの前のベルを鳴らした。遠くから小さな返事が聞こえた。ドアが開く。

「はい!どちらさまで?」とたかはしさんは笑顔で答えた。たかはしさんは30代くらいの
人で髪はロングでなかなか綺麗な人だった。水色のワンピースを着ている。

「あの、あるかたにここにくればすべてわかるって言われてきたのですけど、、、」
彼女はおどおどと答えた。うまく説明できない。しかしその時、たかはしさんの頭の中でパチンと
なにかが言った。

「あーはいはい、どうぞあがってください」とたかはしさんは笑顔で家に招きいれた。
彼女は恐縮しながら家へとあがった。たかはしさんはなにかを理解している。私はさっぱり
わけがわからない。緊張した。玄関で靴を脱ぎ、スリッパを渡された。長い廊下の奥の部屋へと
案内された。広い家だった。たかはしさんのほかには誰もいなそうだった。
廊下の突き当たりの部屋のドアをたかはしさんが開ける。どうぞ、と言われた。
部屋には病院にあるような白い簡易なベットがあり、椅子がふたつ向かいに並んでいた。
小さなテーブルがある。それ以外はなにもない窓も無い部屋だった。前面真っ白だった。
広さは8畳ぐらいだと思う。たかはしさんはキャンドルを持ってきた。林檎型のガラスに
キャンドルが収まっていた。それをテーブルに置いた。やっぱりなんかあやしい占い師なんだろう
と思った。部屋のドアを閉めて、照明を落とした。ほのかなキャンドルの明かりが辺りを
照らした。薄暗い、彼女はものすごい緊張した。たかはしさんはずっと笑顔のままだった。
どうか緊張しないでリラックスしてくだい、とたかはしさんは言ったけど、なかなかそう簡単に
リラックスできない。

「あなたの名前は明美さんですね」とたかはしさんは答えた。彼女はびっくりした。

「OOOO県、XXX市 XX町の幼稚園で働いていらっしゃる。」とたかはしさんは言った。

「、、、どうして、、わかるのでしょうか、、?」彼女はなんだかわけのわからぬまま聞いた。

それにはたかはしさんは答えなかった。そしてたかはしさんは目を瞑った。しばしの間。
彼女はポカンとしたまま、たかはしさんをじっと見ていた。そして目を開いた。


「ちょっと脱いでください」とたかはしさんはきっぱりと言った。

彼女は絶句した。脱ぐ?ここで?ちょっと待ってください、どうして脱ぐのでしょうか?

たかはしさんは一切質問に答えなかった。本当にここは大丈夫なのだろうか?
しかし、たかはしさんは一切動きもしないで黙って笑顔でこっちを見ていた。
言葉がでない。なんて言えばいいのだろう?言葉を探している。でも見つからない。

異様に恥ずかしかったけど、シャツを脱いでみた。なんにも反応がない。しばらく黙ってみた。
そして

「すべて脱いでください」とたかはしさんは言った。

?? しかしまた、たかはしさんは微動たりしなかった。笑顔を絶やさない。駄目だ、頭がうまく
まわらない。彼女は思い切ってブラジャーをはずした。ジーンズを脱ぎ、パンツを下ろした。
胸を隠す。恥ずかしすぎる。温泉なら別に平気だけど、この部屋はさすがにやばい。

恥ずかしい。たかはしさんは笑顔のままだ。

「本当に胸が小さいですね」とたかはしさんはいきなり言った。彼女はぐさっと来た。けど
なにも言えなかった。照れながらうなずくしかなかった。たかはしさんは立ち上がった。

「目を閉じてください」とたかはしさんは言った。彼女は目を閉じた。

そして目隠しもされた。頭に手が当てられた。なにかわけのわからないことをぶつくさ言っている。
日本語じゃない、呪文みたいだ。そしてたかはしさんは彼女の小さな胸を揉み始めた。

「ちょっと、、」彼女は言ってみたが予想通り反応はなかった。

しばらくの間、たかはしさんは彼女の胸を両手で揉んでいた。もうなにもかもされるがままだ。
もしかして、この胸を大きくしてくれるというのだろうか?それともたかはしさんはたんなる
レズかなんかなのか?様々な思いが彼女の中を駆け巡り、そして混乱した。うまく体を動かせない。

たかはしさんはずっとその手を止めることはなかった。恥ずかしいけど、なんだかだんだん
気持ちよくなってきた。やばい。なんだかどんどん相手のいいなりになってる。でも動けない。
でもなんだか少しリラックスしてきたような気がした。気持ちが良い、異様に恥ずかしいけど
気持ちが良い。私は間違ってもレズではないと思う。だんだんとたかはしさんのもみ方が
エスカレートしているような気がする。変な声を出してしまいそうだ。たかはしさんのもみ方は
なんといっていいのかわからないけど、うまい。やばい。変な気分だ。気持ちが良い。

そして、やっとたかはしさんの手は止まった。しばしの間、沈黙が続いた。なにか物音が聞こえる。
彼女はそのまま動かず、固まっていた。まだ彼女の胸にたかはしさんの手の感触が残っている。

「目隠しを取ってください」とたかはしさんは言った。彼女は目隠しを取った。
たかはしさんも裸になっていた。彼女はポカンとしたまま、たかはしさんのきれいな体を見ていた。

「山形先生が好きなんですね」とたかはしさんは言った。彼女はびくっとした。

「は、、、え、、まあ、、」と彼女は照れながら答えた。ちょっとたかはしさんはストレート過ぎる
ところがある。彼女はおろおろするばかりだ。

「山形先生のことは好きではないのですか?」とたかはしさんは言った。笑顔はずっと変わらぬままだ

「い、いえ、、好きです」と非常に照れながら彼女は答えた。まるでたかはしさんに告白している
ような気分だ。

「山形先生とセックスしたいですか?」とたかはしさんは言った。非常にストレートな質問が続く。
彼女の羞恥心はもうがたがたにされていた。完全に操られてる。

「え、、まあ、、」と彼女はあいまいに答えた。

「あなたは見知らぬ男性に犯されたいですか?」とたかはしさんは言った。

「いえ、、されたくありません」彼女は答えた。多少はきっぱりと答えられた。

「私はどうですか?私の体はどうでしょう?きれいですか?」とたかはしさんは言った。
堂々としている。程よい大きさの良い形をした胸だ。うらやましい。彼女の理想とする形だ。
たかはしさんは両手で自身の胸を押えて上下させたりしていた。なんだか挑発されているみたいだ。
でもたかはしさんの表情には嫌味も皮肉も恥じらいも何も感じられない。なんだかうらやましい。

「たかはしさんの体はきれいですけど、、犯されたくはありません」と彼女はもっと言葉を選んで
言いたかったが、結局こういう風にしか言えなかった。

「一番あなたが望むことを躊躇するというのは、すべてをあいまいにしてしまいます。
 見知らぬ誰かに犯され続けても、あなたはなにも文句を言えません。あなたが望むところに
いくにはあなたはそんなに多くの言葉を持ってはいけません。言葉を減らさなくてはなりません」

とたかはしさんは言った。彼女はなんのことだか良く理解出来なかった。犯され続ける?

「山形先生とセックスしたいですか?」とたかはしさんはもう一度質問した。

「、、はい、、」と彼女はまだ少し照れながら言った。そんなこと普通はきっぱりいえないもんだ。
もう少し、その辺をわかって欲しい。たかはしさんは子供並みに言葉がストレート過ぎる。

「山形先生とセックスしたいですか?」とたかはしさんはもう一度、表情を変えずに言った。

「はい」と彼女は意識してきっぱり答えた。ほかの言葉が見つからない。

「それでは今から山形先生とセックスしましょう」とたかはしさんは言った。

「はい?」と彼女は聞いた。わけがわからない。しかしたかはしさんはなにも答えず、立ち上がり
彼女に目隠しをした。そして彼女を立たせて、白いベットに仰向けになるように指示した。
彼女はベットに仰向けになった。そして右手首になにかの細長い布を何回か巻きつけ、軽く結んだ。
左手首も同様に結ばれ、その布をどこかベットの頭のほうにあるなにかに結びつけた。両手の自由が
なくなった。たかはしさんは今度は彼女の両足を少し開き、また両足首を布で結び、なにかに
結びつけた。ちょっと、、と思っても、もう彼女の体に自由はなかった。怖くなってきた。
たかはしさんは彼女の額に手を当てた。

「山形先生の顔を思い浮かべてください」とたかはしさんが言った。彼女は一応、山形先生の顔を
思い浮かべたが、なにかこういう格好させられた状態で山形先生の顔を思い浮かべるのは
モラルに反しているような気がした。でも今、この状態でなにを言っても意味が無い。
そうしているうちにだんだんと意識が遠のいていくような感じになった。なんだか彼女は
自分のとっておきの自制心がどんどん破壊されてくような気がした。でも動けない。

意識の中で山形先生は裸になっていた。いつものごとくさわやかな笑顔を浮かべていた。
彼女はどういう表情を作ってきいのかわからなかった。引きつっている。わけがわからない。

山形先生はなんのことわりもなく、彼女の小さな胸を触りだした。そしてたかはしさんのように
揉み始めた。気持ちが良い、なんだかよくわからないけど、気持ちが良い。意識の中では
私は山形先生に胸を触られているのだが、現実にはたかはしさんが先ほどのように胸を
揉んでいた。そして山形先生は乳首を舌で舐め始めた。たかはしさんも同様にした。
彼女は必死で声が出そうになるのを押えた。でももうどこか、まともなところに引き返せる
手段はない。どう考えてもない、体はそれを確かに求めていた。まだわずかに残っている
彼女の自制心が様々な感情をごちゃまぜにした。山形先生の舌はどんどん下腹部に向かっていった。
両手は胸を相変わらず揉み続けた。たかはしさんも同様にしていた。なんだか世界中のひとたちが
私の小さな胸を触りたがっている。わけのわからない感想を彼女は持った。そして山形先生は
自分のものを彼女に子供のように見せびらかした。なんの照れもない。子供みたいだ。
山形先生のそれはなかなか立派だった。彼女はそんなに男性経験はないけれど断トツだった。

”山形先生のものは大きいですか?”と意識の中でたかはしさんは聞いてきた。

”は、、はい、、”彼女は答えた。なんでそんなことを聞くのだろう?

山形先生はなんの躊躇も無く、彼女のところにそれを挿入した。そしてゆっくりと腰を動かした。
もう駄目だ、降参だ。彼女はどうしょうもなくなっていた。たかはしさんはバイブレーターを
使い、彼女のところにそれを挿入した。スイッチを入れる。振動音が聞こえる。
彼女はもう声をあげていた。犯されてる。そう思った。けど山形先生は素敵だった。
たかはしさんもなかなか激しかった。これを商売にしているのだろうか?怪しい商売だ。
あのおばさんが言葉を濁したのもよくわかる。こんなこといったら私はここにこないだろう。
山形先生が私にキスをしてきた。舌を絡めてきた。たかはしさんも同様にした。私はすでに
何度かいってしまった。こんなのは初めてだ。失神してしまいそうだ。山形先生の腰が
激しくなってきた。私もどうにかなりそうだ。そして山形先生はそれを抜き出し、彼女の
お腹に射精した。山形先生はとても気持ちよさそうだった。山形先生はそれを私の口に押し付けた。
彼女はそれを口に含んだ。舌を使ってそれを舐めた。たかはしさんのそこを現実には舐めている。
犯されている。言葉にならないくらい気持ちよかったけど、なにもかもあいまいだ。
こんなのって良くない。でも気持ちが良い。彼女は意識の中で叫んだ。違う、違う、
絶叫した。意識がどんどん遠のいていく。わけがわからない。意識がどんどん遠のいていく。


意識が戻ると彼女は林の中にいた。裸のままだ。近くになんだか防空壕みたいな大きな穴がある。
近くにきちんと服を着たたかはしさんがいつもの笑顔で立ってこっちを見つめていた。
なぜだかわからないけどミコちゃんのお母さんもいる。同様に笑顔で立っている。
彼女は裸のままで、しかもお腹には精液がこびりついている。わけがわからない。恥ずかしすぎる。

「ここは、、、ど、、して、、ミコちゃんのお母さんまで、、、あの、、」と彼女はわけがわからない

たかはしさんはなにも答えず、彼女についた精液をティッシュで丁寧にふき取った。
そしてうちの奥さんが彼女の服を持ってきた。バックもある。わけがわからないけど
こんなところで裸のままいたくない。なんとか意識を取り戻してそれを着た。子供みたいに
たどたどしく。たかはしさんは水筒から冷たい麦茶を注ぎ、彼女に渡した。彼女はそれを飲んだ。
おいしい。なんとか意識を取り戻した。しかしここはどこなのだろう?ミコちゃんのお母さんは
ここでなにをしてるのだろう?私はやっと立ち上がった。バックを受け取る。

「あの、、ここはどこなんですか?」と彼女は聞いた。

「さあ、冒険がはじまります」とうちの奥さんがきっぱりと言った。冒険?

うちの奥さんはたかはしさんにありがとう、と言った。たかはしさんは笑ってうなずいた。
彼女もなんだかわからないけど、一応、お礼を言った。なにか起こったのかはよくわからないけど。

「あともう少しだから頑張ってね」とたかはしさんは彼女に言った。もう少し?

そうしてたかはしさんは手を振ってすたすたとどこかに歩いていった。彼女は何度も頭を下げた。
うちの奥さんが懐中電灯の電源をいれた。穴に向かってそれを照らした。彼女はそれをポカンと
見ていた。

「さあ、行きましょう」とうちの奥さんが言った。はあ、と彼女は言った。

そして大きな穴の中を、彼女はうちの奥さんのあとについて歩いた。暗い洞窟だ。
よくわからないけど、もうなんだか質問するのも嫌になってきた。どうせ答えてくれないのだろう。
彼女も結構怖がりだ。でも必死に我慢した。まだ山形先生の体の感触が残っている。
しばらく歩くと、光が見えてきた。もうあの変な男はいなかった。幕も開けられている。
四角い穴がある。うちの奥さんはその穴を指差して、彼女に覗かせた。いったいなんなのだ?

「明美先生は携帯電話をお持ちですか?」とうちの奥さんが聞いた。はいと答えた。
一応、バックを開けて携帯電話を確認した。なにも問題はない。うちの奥さんはうなずいて
彼女に懐中電灯を渡した。

「この穴の底をそれで照らしてみてください」うちの奥さんは言った。彼女は懐中電灯で
言われる通りに穴の底を照らしてみた。でもなにも見えない。なにがあるんだろう?
その時に、うちの奥さんはまた強引に彼女の背中を突き飛ばした。彼女は落ちながら
絶叫した。うちの奥さんは一度その穴を覗いて、にやりとし、またそこから立ち去った。


011

ベッケンガー大佐はUFOの動きを調査していた。アメリカ全国土のレーダーを調べた。
どう考えても、それはシアトルに集中していた。そこから全国に広がっているような
動きだった。彼はシアトルの軍派遣を増強した。上空の観察を重点において。

シアトルでは確かにUFOの目撃情報がネット上とかで氾濫していた。特に真夜中の
セーフコ球場で多く見られた。ちょっとした観光スポットとなっていた。
ネットのUFO写真をみるとだいたい同じ傾向のある形のUFOが写されていた。
特殊部隊は毎日のようにお客として球場内に入場し、怪しまれぬ様に、慎重に
辺りを調査した。球場周辺にも普通の人間を装った部隊があふれかえっていた。
球場に入場した人間の何人かは試合終了後もどこかにひっそりと身を隠して、
だれもいなくなった球場内を探索した。警備員に見つからぬように。その辺はしっかり
と訓練されている。しかし、何日も調査したが球場内にはなにも変わったところは
見つからなかった。彼らは選手のロッカールームまで丹念に調べ上げたのだ。
きっとどこかに秘密のルートがあるとベッケンガーは考えていた。しかし見つからない。

そのうちになぜか、日本の伊豆にて同様のUFOの目撃情報が多発している情報を得た。
ベッケンガー大佐はアメリカ政府に頼み、日本政府に極秘調査の協力を依頼するように
頼んだ。大統領が緊急に日本を訪問した。表向きは違う件についてで。
日本政府はとりあえず、伊豆周辺をレーダーで調査した。確かにそのような事実が確認された。
日本政府は自衛隊の管理下の元でという条件で承諾した。そうしてベッケンガー大佐は
3人の有能な部下を率いて極秘に来日した。シアトルでは相変わらずなにも進展のない
調査が続いていたが、続行させた。他に打つ手はない。

レーダーはある一点から飛行が行われていた。場所を調査すると、どうやらキャンプ場の近く
らしい。ベッケンガー大佐はそこにキャンプをはって調査をすることに決めた。
最初は、3人の自衛隊員とわれわれ4人でキャンプ場に予約をいれてみたが、予約でいっぱい
だったので断られてしまった。仕方が無いのでそのキャンプ場の裏側にある林の奥に極秘に
キャンプをはった。まあわれわれはそういうのは得意なところだ。別に問題ない。

キャンプ場の人間に悟られないように、かなり遠くのところからヘリコプターで降りた。
調査に必要な機材と生活用品と機関銃等を降ろした。ヘリコプターが去っていった。
位置を確認して、その山の中を歩いた。まるで軍事演習みたいだが、まあ我々は軍人だ。問題なし。
3時間ぐらいそのような歩きにくい山の中を歩いていた。危険なものはなにもなかったし
もちろん敵が潜んでるわけでもない。特に注意もせずに歩いた。ずっと遠くに池が見えて
その向こうにキャンプ場が見えた。どうやらこの辺らしい。彼らはそこにキャンプをはる
ことにした。ベッケンガー大佐はなんだかほっとして腰を下ろし、しばらくこの木陰で
寝転んだ。他の隊員も同様にした。いつも緊迫した毎日だったからなんだか落ち着く。
ここにはもちろん敵もいない、危険な動物もいなそうだ。良い天気だった。
様々な鳥や蝉の音が辺りに鳴り響いていた。彼は早くこの事情のわからない事件を解決して
しばらくはのんびりとした生活を送ることを望んでいた。最近は家族とも離れ離れだ。
きちんと解決すれば、国は私に一生涯の生活保障をしてくれる。名誉も与えられる。
これはチャンスだ。この一件が終了したら、家族とのんびりキャンプにでも行こう。
それは良いアイディアだ。ベッケンガー大佐はそう思いながらいつの間にか寝ていた。

起きたら夕方だった。夕日がとても綺麗だった。体がとてもリフレッシュしていた。
大佐は自衛隊の人たちにキャンプの設営と食事の用意を依頼した。自衛隊員は了解した。
大佐らは衛星電話の機材を調整し、コンピューターを広げた。シアトルの方は相変わらず
みたいだった。機関銃の状態をチェックした。家族にメールを送った。変わらず元気なようだ。
近くを4人で探索した。するとすぐに彼らは大きな防空壕を発見することとなった。
大佐はまずはここを調査することに決めた。なにか引っかかる。ここの位置をきちんと確認し
彼らはキャンプに戻った。

彼らは戻り、食事にした。食事をしながら今夜の計画をみんなに説明した。
自衛隊も同意した。とりあえず進展しそうなことがあったので大佐には笑顔が見られた。
一同、なごやかな食事時間となった。あたりは真っ暗になっていった。大佐は少しウイスキーを
飲んだ。

大きな防空壕らしき穴まで機材等を運んだ。誰もいない。辺りを一応確認したけど
誰もここにきそうもない。とりあえず彼らはひとり見張りに残して、洞窟の中に入っていった。
ライトを照らすがとりあえずなにもない。時々したたり落ちる水滴の音が辺りに響いた。
しばらくするとなにか広いところがあるのを発見した。誰もいない。紫色の幕は上がったままだ。
ライトを照らすとその奥に四角い穴があった。大佐はなんだかよく理解出来なかったが
穴の中をライトで照らしてみた。なにも見えない。この幕はいったいなんなのだろう?
理解出来なかった。穴の周辺を丹念に調べた。しかしどこにもなにか変わったものはなかった。
この四角い穴だけだ。どうやら一回降りてみるしかなさそうだ。大佐は自衛隊員にロープの用意を
依頼した。ひとりが来た道を戻り、ロープを抱えて戻ってきた。大佐と3人の部下で下に
降りることにした。自衛隊員がロープを幕のところに縛りつけ、引っ張って確認し、
それを穴の中に垂らした。大佐が先に降りた。深さは10メートルくらいだった。そこには
トランポリンがあった。またわけがわからない。けどなにかここにはある。大佐はそう思った。
部下に降りるように大声で指示を出す。部下達が降りてきた。トランポリンの上についた。
部下もわけがわからないといった表情を浮かべた。しかし前に進むほか無い。大佐は無線で
とりあえずどこかに進む、そこで待機してもらうように頼んだ。了解した。
部下が階段の存在を発見した。階段の先にはなにか穴のようなものがあった。大佐は
その階段を降りた。なにも問題はなかった。トランポリンの存在理由がつかめないだけだ。
部下も降りてきた。しかしこれはタカチャン星人のしわざかもしれないと大佐は考えた。
普通の人間はこんなばかげたものを作ったりしない。でもいまいち良くわからない。
大佐は機関銃を手に持ってこれから進む様、指示した。一応、用心したほうがよいだろう。
こんなところで死にたくない。大佐はその奇妙な穴へと向かった。部下が続く。

巨大なガラスチューブの中では星空が広がっていた。大佐はまた固まった。わけがわからない。
思わず、構えていた機関銃をおろしてしまった。部下達もそれを下ろした。しばらくその
美しい光景に見とれていた。これはなにかの罠なのか?しかし少しも敵意を感じない。
足元にも星空が広がっていた。まるで空中に浮いているみたいだ。なんなんだろう?
でももし出来るならここに家族を連れて来たいくらい綺麗だ。星空も本物みたいだ。
というか本物に見える。しかし、ここにいてもしょうがない、大佐はようやく歩く決心をした。
かすかに静かなジャズが聞こえてきた。なんだか心が洗われるようだ。このわけのわからない
仕事が終わったら綺麗な夜空が見えるところに旅行しに行こう、と大佐は思った。
彼らはゆっくり歩きながら、この星空を眺めていた。敵がいなければどこの戦場も
美しいものなのだ。大佐はそう思った。早く仕事を片付けなくては。


防空壕の前にはひとりの自衛隊員が暇そうに腰を下ろしていた。そりゃそうだ。
あたりに緊迫した雰囲気はない。われらがなんの目的でここに来ているのかも
上司は教えてくれない。ずっと向こうの方では陽気なキャンプ客が楽しそうに遊んでいる。
自衛隊員はたばこをくわえながらぼけっと夜空を見ていた。それをたかはしさんと
うちの奥さんが林の影から見ていた。

「まあ、余裕だわ」たかはしさんが小さな声で言った。うちの奥さんがにこっとした。
彼女らはぐるりとまわりこみ、彼に近づいた。そして一気に彼の目の前に二人で走って行き
たかはしさんが催眠術をかけ、うちの奥さんがヘルメットをぱこんと叩いた。
彼はぐてんと倒れた。簡単なもんだ。担架を用意し、彼を二人で抱えて、それに乗せる。
担架を二人で抱えて、洞窟に入っていく、広場のちょっと前で担架を下ろし、ふたりは
彼らの様子を伺う。どうやら無線が通じなくなったらしい。彼らはその四角い穴の中を
覗いていた。チャンスだ。ふたりは一気にそこまで走って行き、おーーーーー!!!
と大声を上げた。彼らがかなりびっくりして立ち上がり、振り向いた瞬間、たかはしさんと
うちの奥さんはジャンピングキックを決めた。彼らは絶叫しながら穴の中に落ちた。
ふたりは笑顔でハイタッチした。そして担架のところまで急いで戻り、担架を担いで
四角い穴まで戻り、担架ごと落とした。成功だ。そしてまた洞窟を一気に駆け上がり
林の中に隠していた穴の蓋をふたりで運んだ。それを四角い穴にぴったりとかぶせた。
これにて一件落着!うちの奥さんが悪いねーと笑顔で言った。たかはしさんはにやりとした。

「昔っからやることがなんかおおげさだよなーミカは」たかはしさんが言った。

うちの奥さんが笑った。

「あんただってよくあんなことできるよなー、いい加減、結婚して落ち着いたら?」とうちの奥さんが
言った。たかはしさんが苦笑いした。あんな仕事をしていたら近所とうまくやっていけない。

「まだ、なんかやることあるの?」とたかはしさんは聞いた。

「ん、もうあんまりないけど、よかったらちょっと仕事休んでのんびりしていけば?」
とうちの奥さんが言った。 そうだね、そうする、とたかはしさんは言った。

「んじゃ、とりあえず部屋に戻って乾杯でもしますか?」とうちの奥さんは言った。

いいね、とたかはしさんは笑った。ふたりは大笑いしながらログキャビンへと向かった。

012

「まずはその草をひとつにまとめてちょうだい」とうちの奥さんが言った。

、、だそうです、、と私はみんなに説明した。草はいっぱいあった、みんな呆然とそれをながめた。

「とにかくやるしかないみたいですね」よしくんパパがそうつぶやいた。

われわれはみんなで手分けして、その膨大な干し草を部屋の隅に集めた。用具はなにもない。
まったくうちの奥さんはなにを考えているのだ?わけがわからない。
1時間近く、その作業が続いた。すると部屋の真ん中に大きな円が描かれていた。
黒い線で円は描かれ、真ん中に点が描かれていた。床はゴムのような素材で出来ていた。

「なんか変な円が出てきたけど、、」と私は奥さんに聞いた。

「そしたら部屋の向こうに衣装があるからみんなで着替えて」とうちの奥さんが言った。着替える?

みんなでその衣装のありかを探した。ゆうたくんパパが大きなクローゼットのドアを発見した。
そこには時代劇用のコスチュームがいろいろとぎっしり詰まっていた。はじまった。
うちの奥さんの趣味だ。いったいなにを考えてるんだ?頭が痛くなってきた。

「これ、、着るんですか?」さゆりちゃんママが聞いてきた。私だってそう聞きたい。大賛成だ。

私はしかたがなく、こくりとうなずいた。ははは、

一同、少しの間、固まっていたが、ゆうたくんパパが動いた。さすがだ。ゆうたくんパパは
水戸黄門のコスチュームを選んで着てみた。髭までしっかりつけてみた。なんか似合ってる。
みんなが爆笑した。それでみんなが動き出した。さゆりちゃんパパは助さん役となった。
よしくんパパは格さん役となった。するってえと私はうっかり八兵衛ですか、、、はいはい。
女性軍はみんな奥女中になった。みんなで笑った。携帯電話のカメラでみんな記念撮影を
はじめた。わけがわからないけど、みんなで着ちゃうとなんかどうでも良くなったみたいだ。
女性軍もなかなかみなさん似合っていた。さゆりちゃんママは格別だ。なんでも似合う。

「きがえたよ」と私は報告した。うちの奥さんが大笑いしていた。そういう場合じゃない。
あんたが選んだんじゃないか?私は文句を言った。

「ごめん、そしたら、さっきの円の縁に座って、中心の点を見ながら」とうちの奥さんが言った。

私はみんなに説明した。みんなで輪になって座った。みんな中心を見つめた。
格好のせいで、みんな必死に笑いをこらえていた。そういう場合じゃないが、しかたがない、
しかし、子供たちにはいつ会えるのだろう?

円がぐるぐると動き始めた。ゆっくりと、みんなちょっとびっくりする。
しばらくまわると、急に円の中が真っ暗になった。そしてわれわれは落ちた。

「またおちるの?」さゆりちゃんのママがぼやいた。

しかし、下降はゆっくりだった。重力の感覚が違う。半分浮いているみたいな落ち方だった。
まわりにはまた綺麗な星空が映っていた。またさゆりちゃんママが感動していた。
なかなか心地よい気分だった。衣装がもっとましだったらもっと良かったとおもう。
3分ぐらいの間、われわれは少しずつ下降した。だんだんと速度が遅くなっていた。

そして、ようやく底までたどり着いた。地下の駐車場みたいなコンクリートで出来た広いスペース
に着いた。照明はあたりをきちんと照らしていた。現実的な照明だ。

「どうすればいいのかな?」と私は奥さんに尋ねた。返事が無い。何度もたずねたが返事が無い。

「返事がないんだけど、、、」と私は正直にみんなに言った。みんなが固まった。
もしかしてこれ以降は台本がないのかもしれない。困った。

「とにかく手分けしてなんか探そう」とゆうたくんパパが提案した。みんな賛成した。

我々はこの広いスペースを手分けして探索した。ここはいったいどこなんだろう?
日本の地下になんでこんなもんがあるのだ?というか今までのもの全部がそうだけど。
私はぶつくさ文句を言いながら探索した。よしくんパパがなにか見つけたみたいだ。

「みんな!ちょっときて!」よしくんパパが叫んだ。

みんながよしくんパパのもとに駆け寄った。広いところなのでみんなはあはあ言いながら
集まってきた。そこにはまたなんか大きな円が描かれていた。中心点もあった。円の中心に
なにかのボタンがあった。緑色のボタンだ。

「また落ちるのですか、、、」さゆりちゃんママがもううんざりな表情で言った。

「とにかくまたここに座ってみましょうか?」ゆうたくんパパが提案した。
われわれはまた同じように座ってみた。なにも動かなかった。やっぱりボタンを押すべきなんだろう。
よしくんパパがおそるおそる近づいて、そっとボタンを押してみた。さゆりちゃんママが
怯えている。よしくんママは目を瞑っている。ボタンを押した瞬間、円は光った。
巨大なライトみたいだ。そして円はだんだんと上昇していた。なんだかSF映画みたいだ。

ゆっくりと上昇した。光はまっすぐと上を照らしていた。コンクリートの天井を突き破っていた。
われわれは光に守られて上昇していた。コンクリートの中を通り抜けて行く。

そして、我々はなぜだか知らないけど、野球場のマウンドの上に立っていた。

我々はその広いフィールドを見回した。テレビで見たことがある。セーフコ球場だ。

「、、、、ここはシアトル?」よしくんパパがつぶやいた。そうらしい。

「、、、、イチローのサインもらえるかな、、」ゆうたくんパパがつぶやいた。そんな場合ではない。

しばらく呆然と誰もいない客席とかを見ていた。今はもうすぐ夜明けの時刻らしい。
まだ薄暗い。というかなんで我々はアメリカにいるのかよくわからない。

「でも、ここにいたらやばいでしょ、また引き返したほうがよさそうだね」とさゆりちゃんパパは
提案した。まあそうだ。健全なアメリカ市民にこんな姿見られたくない。恥ずかしい。
しかし、なんだか名残惜しいので、みんなでまた球場をバックに記念撮影大会が始まった。
懲りない私達だ。なんだかもう、楽しんだもん勝ちだ。ゆうたくんパパが興奮していた、そして、

我々はマウンドの代わりに現れた円の中にまた戻り、座って、よしくんパパがまたボタンを
押した。また光が現れて、今度は下降した。ゆうたくんパパが名残惜しそうに球場を眺めていたが
そんな場合でもない。下降する。そしてもとの位置に戻った。そしてまた手分けして探索した。

「こっち!」さゆりちゃんパパが叫んだ。

またみんながはあはあ言いながらさゆりちゃんパパのところにやってきた。もうみんないい年
なのだ。勘弁して欲しい。壁には黒で手形が二人分、描かれていた。なんだろう?これは。

「ふたりでこれを押せばいいのかな?」さゆりちゃんパパが言った。

よしくんパパとゆうたくんパパが手形に手を合わせて、押した。すると動いた。
壁は後ろへと追いやられた。右側にはなにかの通路が見えてきた。さゆりちゃんパパが
そこに行ってみた。みんなを呼んだ。女性軍がささっと通路に行った。私も後に続いた。
そしてゆうたくんパパとよしくんパパが手を離し、通路に来た。壁はゆっくりとまた
元の位置に戻った。ここはどこだ?どこかでかすかに子供の声がした。あっちのほうだ。

「あっちにいってみましょう」私が提案した。左側の通路だ。みんなが賛成した。

ゆうたくんパパが先頭でこの通路を歩いた。通路は薄い水色に統一されていた。
照明も水色っぽい。なんだか現実感のない通路だ。だんだんと子供たちの声が大きくなってきた。
しかし、どう考えてもうちの子達ではない。英語だ。わけがわからない。
私たちは声の方向を確かめながら進んだ。途中で右に曲がった。するとなぜかそこに
明美先生が立っていた。

「あ、、、みなさんどうも、、」明美先生はそう言った。彼女はわれわれの姿にあっけに
とられていた。それはみんなみんなうちの奥さんのせいだ。しかし、しばらくの間、
我々はこの格好にすっかり慣れていた。変なもんだ。

013

「ミコ、おきてくれ」ねこがミコの頭を叩いた。午前3時ちょっと前だ。
まだちょっと、寝足りない、夢を見ていた。星空の中でねこが浮いたり大王がトランポリンで
楽しそうに跳ねている夢だった。わけがわからない。寝ぼけていた。ようやく起き上がった。

「まみだ、、おはよう、いまなんじ?」ミコが眠そうな顔でいった。

「エリカ姫が来るから、みんな起こしてくれ」ねこは言った。こっちだって眠いんだ。

「えりかひめってだれ?」ミコが質問した。

「エリカ姫はタカチャン大王の娘だ。ちょっとみんなに助けをお願いしたい」ねこが言った。

「たすける?」ミコが聞いた。

「とにかく、来ればわかるから、、説明している暇はない、みんなを起こしてくれ」ねこが言った。

ミコは、とぼとぼと歩き出し、みんなを起こしてまわった。みんなぐっすりと眠っている。
うさぎさんたちとあひるさんたちもみんなを起こしにまわった。みんなもそれぞれ変な夢を
見たようだ。寝ぼけている。みんな頭がくしゃくしゃだった。なんとかみんなを真ん中の
テーブルに集めた。その時、こっそりとエリカ姫がやってきた。

「おはようございます」姫が静かに言った。礼儀正しい。

「おはよー」みんなが寝ぼけて言った。ねこが首を横に振った。

「こっちにおいで」ねこがエリカ姫を招いた。

「ねこさん おはよう」エリカ姫が言った。テーブルまでたどり着いた。

ねこがテーブルの上にあがり、ことを説明した。みんな寝ぼけながらもじっと聞いていた。
エリカ姫がパパとママがアメリカとの戦いで忙しくって、遊んでくれなくって悲しんでいること。
ねこがたんたんと説明した。みんながそんなのよろしくない、と騒ぎはじめた。

「そういうのはよくない!」よしくんは言った。

「あけみせんせいはおっぱいちいさいけどやさしいせんせいだ!」ミコが言った。一言余計だ。

「うちのぱぱはいつもぼくとやきゅうであそんでくれる!」ゆうたくんが言った。

「うちのぱぱはいつもちゃんとせんたくしてくれる」マコが言った。おいおい

みんながそんな意見をごちゃごちゃ言い始めた。エリカ姫はきょとんとしていたが、
みんなが慰めてくれたので、にこにこしていた。エリカ姫が今までのことを話し始めた。
でも、地球にくるまでは、やさしい人たちであったこと、でもいまはこういうことになって
しまってつまんない、ということ。そのうちにエリカ姫は感極まって泣いてしまった。
みんなでエリカ姫のところに集まって一生懸命慰めた。エリカ姫は泣き止んだ。
なんだか仲良くなったみたいだ。エリカ姫は良い子だ。しっかりしている。

「どうしてあめりかとたたかってるの?」とさゆりちゃんが聞いた。

「ぱぱにきいてもおしえてくれないの、、ごめんね」とエリカ姫は答えた。

ねこがふたたび書類を口にくわえてテーブルにあがる。右手でテーブルをこんこんと叩く。
みんながねこを見つめる。ねこが咳払いをする。

「ここにその訳が書いてある。」とねこは書類を右手でこんこんと叩いた。

みんながその書類を囲んだ。しかし字は難しい、なぜか日本語でかいてあったが読めない。

「よめません」ミコがきっぱりと言った。しかたがない、まだ6歳児だ。

ねこはしょうがない、といった表情でみんなをぐるっと見回した後、読み上げた。

「今回の強行策における、基本的な目標とは、現行の地球型経済システムが起こす
様々な矛盾や、変動に弱い現行の貨幣経済に関する、地球人の認識を、、、、

ねこは長い長い論文を演説口調でたんたんと読み上げた。時には言葉を強調し、身振り手振りで
感情表現をした。素晴らしい演説だった。大人の間では盛大な拍手が沸き起こるだろう。

しかし、相手は子供だ。訳がわからない。ブーイングが起きた。

「げんこうのけいざいがいねんとかんきょうもんだいぞうかのかんれんせいってなんですか?」
よしくんが質問した。

「たりょうしょうひしゃかいがひきおこすこじんろうどうのふたんりつぞうかってなんですか?」
さゆりちゃんが質問した。

「あたらしいてくのろじーがひつぜんてきにおこすしつぎょうりつぞうかへのえんじょたいさく
ってなんですか?」 マコが質問した。

「さまざまなろーかりずむをほうかつできるあらたなぐろーばりずむがいねんってなんですか?」
ゆうたくんが質問した。

「ぜんぜん、なんのことだかわかりません」ミコがみんなの意見をまとめた。

ねこがポカンとしたまま、横にぱたんと倒れた。エリカ姫もポカンとしてた。もちろん
エリカ姫にもよくわからなかった。ねこがやっと立ち上がった。

「、、、、よ、ようするに現行の地球の経済概念の矛盾を指摘し、タカチャン星が持つ
画期的な経済システムの普及を推し進める事が今回の強行策の最大の目標である、という事」

ねこが簡単に説明した。みんながまだポカンとしている。ブーイングが起こる。ねこがこける。

「わかんない!」ゆうたくんが叫んだ。ねこが頭を抱えている。

「、、、ようするに、アメリカの子供を誘拐して脅しちゃおう、ということ」ねこが超簡単に
開き直って、説明した。ようやくみんなが納得したようだ。みんなはそんなのよろしくない!
と騒ぎ始めた。ねこは日本の将来は大丈夫なのか?と思ったが、相手は6歳児だ、勘弁して欲しい。

「みんなでだいおうにそれをやめさせよう!」よしくんが提案した。そうだそうだ、とみんなが
賛成した。子供会議がおこなわれた。ねこはまあいいや、どうせ私たちの目標はそこにあるんだ、
と納得した。

「いつもぱぱたちはよるの8じにみんなでかいぎするの」とエリカ姫は言った。

「じゃ、みんなで8じにそこにおこりにいこう!」よしくんが提案した。

ねこは書類の最後のページにあるこの館の見取り図を見せた。エリカ姫が位置を説明した。
7時50分にエリカ姫の部屋に集合することになった。エリカ姫はなんだか楽しそうだった。
ここ最近は地球にきていたせいで、ろくにお友達とも遊べなかった。それでもお姫様だから
なかなか同年代と遊べないのだが、エリカ姫がそう話すと、みんなが同情してくれた。
なんのことだかよくわからないけれど、お姫様をやめればいい。みんなそう思った。単純だ。
そしてエリカ姫は立ち上がった。

「みんな、ありがとう、たのしかった。そろそろもどらないと」とエリカ姫は言った。
そろそろ朝になる。食事係がやってくる。見つかるとちょっと面倒だ。

「わかった、じゃ8じにいくね」ミコが言った。そしてエリカ姫は部屋のドアから出て行った。

ねことみんなが手を振る。ねこはエリカ姫を気にいったようだ。なんとしても願いを叶えて
あげたいと心からそう思った。頼りない連中だが、みんながなんとかしてくれるだろう。
足りない部分は自分が補えばいい。今からみんなにいろいろ説明しなくては、ねこはそう思った。
ねこが振り向いた。ねこはポカンとした表情になった。

みんなはまだ寝足りないようで、またいびきをかいて寝ていた。よしくんはなんだか
わけのわからないことを寝言で言っていた。うさぎさんたちやあひるさんたちも寝ていた。

「やれやれ」とねこはつぶやいた。


015

しばらくの間、明美先生は我々の姿を指さしながら爆笑していた。どうやらツボにはいったみたいだ。
我々だって声を大きくして言いたい。こんなのは単なるうちの奥さんの趣味だ。我々の趣味じゃない。
さゆりちゃんのパパがおどけて、ポケットに入っていた印籠を右手に持ち、ひかえおろう!と
言ってみた。爆笑が大爆笑に変わった。本当にこんなことしている場合ではない。しかし、
我々もしょうがないから笑ってみた。変な日本人たちだ。やっと明美先生が落ち着いてきた。

「こっちに誘拐されたアメリカの子供たちがいるんです。ついてきて下さい」と明美先生が言った。

「誘拐?」とゆうたくんパパが明美先生に聞いた。

明美先生はうちの奥さんに聞いた話を説明した。星空の中で携帯電話で聞いたらしい
とにかくアメリカの子供と交流を取って、司令部の人間をひとまとめにして欲しいとのことだ。

「わけがわからないな、」ゆうたくんパパが言った。

「ともかく子供たちのところに行ってみましょう。」さゆりちゃんパパが言った。

われわれは明美先生のあとを着いていった。廊下の奥にひとつドアがあった。そこから
子供たちの声が聞こえてきた。明美先生がドアを開けた。水戸黄門一行が部屋に入っていく。
一瞬、子供たちは静まり返った。何者だ? しょうがないからまた、さゆりちゃんパパが
印籠をもってひかえおろう!とおどけてみた。明美先生が笑った。そしてやっと子供たちが
大爆笑し始めた。

「オーーーサムライ!」 と我々のことを指差して笑い始めた。侍じゃない。水戸黄門だ。

「ヘイ!ニンジャ!」 とだれかが物まねを始めた。我々は忍者じゃない。水戸黄門だ。

ゆうたくんパパが忍者の物まねをした。みんながのって来た。まあいいや、なんでも。
アメリカ人がうっかり八兵衛のキャラクターを理解するにはまだ時間がかかる。

さゆりちゃんのパパは英語が堪能だった。さすがだ。さゆりちゃんのママも出来る。
さゆりちゃんのパパはみんなといろいろ話始めた。いろいろ事情を聞いていた。
自身の児童心理学を駆使して、みんなと必死に打ち解けようとしていた。さすがだ。
さゆりちゃんのママもそれをフォローした。子供たちは自分たちの正直な気持ちを
うちあけてきた。親達が忙しくて面白くない。ここにいた方が面白い、とまでいう子供もいた。
そして、こんどはゆうたくんパパとよしくんパパがみんなと野球なんかして遊び始めた。
なかなか楽しそうだ。これなら英語を使う必要も無い。さゆりちゃんのママは女の子たちと
いろいろゲームをしたりしていた。何人かのちょっと大きめの子供たちとさゆりちゃんパパは
なかなか真剣に話し込んでいた。さゆりちゃんのパパは明美先生になにやら話していた。
その時、明美先生の頭の中でなにかがパチンといった。そして明美先生は私のほうに来た。

「ちょっと来てください」明美先生は私にそういった。

明美先生とわたしとゆうたくんママとよしくんママでこの部屋をでた。明美先生はなんだか
いつもと違ってなんだか堂々としていた。

「な、、なにしにいくんですか?」よしくんママがおどおどと言った。明美先生はしー!と言った。

「静かにしてください」明美先生は厳しい表情でいった。よしくんママがびっくりした。
われわれは黙って静かについていった。

途中の倉庫のドアを開けて、明美先生はまずロープを取り出した。結構重い。
それをよしくんママに渡した。よしくんママがポカンとした表情でそれを持った。
そして私に小型の拳銃をほいっと投げた。私がそれを手にした。よしくんママが叫びそうになるが
明美先生が厳しい顔でしー!と言う。ゆうたくんママに機関銃を渡す。ゆうたくんママは
ちょっとびっくりしていたけど、結構好きそうだった。よしくんママに向けて銃をチェックする。
頼むからこれ以上脅かさないで欲しい。またみんなでよしくんママを静かにさせる。
そして、明美先生も機関銃を手にした。なんでもなさそうだ。なぜか手馴れた表情でそれを
確かめる。そして倉庫から出る。明美先生がいつでも発射できるように手にしっかり機関銃を
握る。私たちもそれに習う。よしくんママはまた静かにぐるぐるまわりながら着いて来た。
我々はキッチンと書いてある部屋のドアまで辿り着いた。明美先生は私にドアを開けるように
指示した。了解。そして私のあとにすぐこの部屋に入ること、と指示した。ゆうたくんママが
敬礼した。なんだか楽しんでいる。度胸がある。私はドアを開けた。明美先生が入っていった。
銃声が鳴り響く。よしくんママが絶叫した。そんな場合ではない。われわれは後に続いた。
私とゆうたくんママは彼らに銃を向ける。明美先生が天井に必要以上に発射していた。
キッチンスタッフは全員で10人くらいいた。もちろんびっくりしてみんな手をあげていた。
明美先生、、やりすぎだ。もう発射の必要はない。私が明美先生の肩をたたいた。
やっと明美先生は発射をやめた。十分だ。もうきちんと降参している。
これ以上やったら国際問題になる。こんな格好で新聞に掲載されたくない。

明美先生は英語が堪能だった。明美先生は、私とゆうたくんママにずっと銃を向けているように
指示した。そしてぐるぐるまわるよしくんママと一緒に彼らの体にロープを縛りはじめた。
なにやら英語で説明している。どうやらもうすぐアメリカ軍がくるから、おとなしくしていれば
殺されたりはしない、と言っているようだ。アメリカ軍? こんな格好でアメリカ軍の人と
会いたくないな、と私は思った。そして明美先生はさきほどの倉庫にみんなを連れて行き
倉庫に全員詰め込んだ。明美先生はごめんね、しばらくはきついけどすぐに解放されるから
と言った。そして倉庫のドアを閉めた。鍵を一応かけた。そして先ほどのキッチンに戻った。

「よしくんのお母さん、すみませんがここで子供たちの食事を作ってください」と明美先生が言った。

「は、、はい、、」よしくんママがおどおどしながら言った。

しかし、よしくんママが包丁を持った瞬間、がらっと態度が変わる。私に調理の器具の
名前を告げて持ってこさせたりした。私は手術室の助手のごとくそれを手渡した。

「ミキサー!」とよしくんママが指示をする。私がそれを持ってくる。

「小皿!」どうやら味見がしたいらしい。私はそれを持ってきた。よしくんパパも結構大変
なんだな、と思ったがそういう場合でもない。いつも包丁持って行動すれば、よしくんママも
きりっとしているんだろうけど、それはちょっと怖い。ご近所付き合いに支障が出る。
ゆうたくんママも明美先生も指示に従い、われわれは食事の用意を進めた。
ゆうたくんママはフライパンで鶏肉を炒めるより、機関銃を持っているほうがいいみたいだ。
だが、それもちょっと困る。ご近所付き合いに支障がでる。

そして、我々は食事を完成させた。よしくんママが最後に包丁をまな板にパタンと置く。
いつもの表情に戻った。感情表現が豊かな人だ。印象ががらっと変わる。みんながほっとする。
味見をしてみたが、これはうまい!才能だ。我々がよしくんママを褒める。よしくんママが
おおいに謙遜する。感情表現が豊かだ。よしくんパパも大変なんだろうな、と思った。
だがそういう場合じゃない。我々はワゴンに食事を詰め込み、子供の部屋に運んだ。

部屋は大いに盛り上がっていた。子供達はみんないい子だった。食事を持ってくると
歓声があがった。みんなで食事の準備をする。なんとかわけのわからない変な格好をした
日本人たちだが、好意的に見てくれているようだ。みんなで食事会がはじまった。

あちこちでおいしい!との評価があがった。よしくんママが英語はわからないけど
謙遜していた。楽しそうだ。みんなお腹いっぱいになったみたいだ。子供たちは
テレビを見始めた。この上で行われている野球の試合だ。マリナーズ対ヤンキーズだった。

ゆうたくんパパが一緒に見たそうだったが、われわれは話し合いを始めた。そんな場合でもない。
まずは子供たちの気持ちを子供たちの親達に説明することだった。話し合いを持つべきだと
さゆりちゃんパパが言った。明美先生があとここの司令室にあと4人ほど人間がいることを
説明した。ここのスタッフはみんなタカチャン星人に雇われて働いているらしい

「タカチャン星人ってなんなんですか?」とゆうたくんパパが明美先生に聞いた。

「詳しいことはわからないけど、アメリカとのなんかの交渉が決裂して強硬手段を
とっているみたいなの」と明美先生が説明した。というかタカチャン星人ってなにものだ?

「とにかく、また我々も強硬手段をとります」と明美先生は言った。よしくんママがまた
おどおどした。感情表現が豊かだ。

我々はまた空いたお皿などをワゴンに詰め、キッチンへと向かった。
そして、またわれわれは4人分の食事を作った。今度はよしくんパパが手馴れた動きで
よしくんママをフォローした。やっぱりいつもそうなんだ、と思った。みんなもそう
思ったみたいだ。よしくんパパが苦笑いしながらこっちを見ている。みんながにやにやしていた。
そして明美先生は、さゆりちゃん夫婦とゆうたくんパパに野球のマスコットをかぶせた。
そして私とゆうたくんママはまた銃を持つようにと指示された。了解。ゆうたくんママがにやりと
していた。今度は私が発射したいと言った。物好きだ。度胸がある。明美先生がにこりと了解した。
みんなが機関銃にびびっていた。当然だ。わけがわからない。そして今度はよしくんママには
キッチンに残ってもらうことにした。人にはそれぞれ得手、不得手がある。よしくんパパが
ロープを手にした。

明美先生が先頭で歩く、マスコットたちが食事を運ぶ、その後を私とゆうたくんママが銃を構えて
進む、後ろによしくんパパがロープを持ってついて来る。一言で言うと変な集団だ。
ゆうたくんママは楽しそうだ。まあ、われわれは別に人を殺すわけでもない。おもちゃみたいなもんだ

司令室のドアの前に着いた。明美先生が私とゆうたくんママと明美先生がマスコットの後ろに隠れて
部屋に入るよう指示した。了解。そして目で合図を送るからゆうたくんママが、また天井に
発射するようにと、指示した。了解。明美先生がノックする。ちいさな返事がある。
マスコットが入っていく、うしろに私たちが隠れる。よしくんパパはとりあえず待機だ。
司令室にはたくさんのパソコンが並んでいた。そこに4人が並んでいた。その反対側に
テーブルがあった。だれかが英語でありがとう、といった。マスコットたちがそのテーブルに
食事を並べる。4人は作業の手を止めて、テーブルに向かってくる。明美先生が目で合図を送る。
マスコットが腰を下ろす。我々の姿が見える。4人はびっくりする。

「うおおおおおーーーーーー!!!!!」ゆうたくんママは絶叫しながら天井に何発も
発射した。楽しそうだ。マスコットに入っているゆうたくんパパがおどおどとしたリアクションを
する。見たことない表情だ。私と明美先生が銃を4人に向ける。明美先生が部屋の外でおどおどと
待っているよしくんパパを手招きで迎え入れる。パパもママみたいにぐるぐる回りそうだった。

4人はめいいっぱい手をあげている。しかし、ゆうたくんママが止まらない。やりすぎだ。
もう十分だ。そもそもわれわれは発砲する必要はないだろうと思う。けどやる。これはおそらく
女性特有の心理だ。男達はお手上げだ。しかしやりすぎだ。私はゆうたくんママの肩を叩く。
よしよし、よくやった。やっとゆうたくんママは発砲を止める。はあはあいってるが満足そうな
表情だ。私にハイタッチを求めた。しょうがないから私とゆうたくんママでハイタッチする。
ゆうたくんパパがそれを眺めている。中でどんな表情をしてるのだろう?

我々が銃を向け続ける。向こうは武器を持っていない。マスコットたちは頭を取った。
汗がだらだらだった。そりゃそうだ。その上に変な格好までさせられている。

さゆりちゃんのパパがことを説明した。4人もなにか説明している。タカチャン星人と
ひょんなことで意気投合したが、もうここから出たいと言っていた。明美先生がもうすぐ
軍がくるから大丈夫だと説明した。よくわからないけど、なんとか納得したみたいだ。
とりあえず食事をしてもらう。4人はおいしそうにそれを食べた。そしてさゆりちゃんのパパは
コンピューターでアメリカの上層部とコンタクトがとれないかどうか聞いた。一応可能だ、
と彼らは言った。しかしタカチャン星人の司令部の許可がないと出来ないと言った。
司令部はどこにある?と聞いたけど知らない、と答えた。ともかく我々は彼らに
大まかなパソコンのプログラムの説明を求めた。よしくんパパがパソコンに詳しかった。
さゆりちゃんパパの通訳を交えて、よしくんパパと4人が話していた。だいたいわかったようだ。
そして、一応悪いけど、とお断りをして4人をロープでしばった。下手に自由にしていると
アメリカ軍が間違って発砲するかもしれない、と明美先生が言った。彼らは同意した。
そして私は明美先生から鍵を借りて、彼らを倉庫に入れた。鍵を閉める。鍵はそのドアノブに
かけておいた。その方が発見されやすいだろう。私は気になって子供部屋を覗いた。
みんなはもうテレビを消して寝ていた。おやすみ 夢に変な忍者が現れませんように

キッチンも覗いてみた。よしくんママはなかなか楽しそうにキッチンを片付けていた。
私もそれを手伝った。よしくんママが笑顔で答えた。もう誰も敵はいないと言うと
ほっとした表情を浮かべた。そして、彼女を連れて司令室に向かった。部屋に入った。


「だいたいわかったけど、向こうからコンタクトがないと話が進まないね」とよしくんパパが
残念そうにつぶやいた。まあそうだろう。

「とりあえず、もう我々もいっかい寝ませんか?」と私は提案した。みんな賛成した。

というわけでわれわれは司令室の奥にあるベットを借りて寝ることとなった。4台あった。
それぞれの夫婦で寝た。うちの奥さんはなにをやっておるのだ?

その頃、うちの奥さんはたかはしさんとログキャビンでお酒を飲みながら昔話で大いに
盛り上がっていた。あんたね、、


016

夜7時半、ねこ一同はエリカ姫のところに出発する。朝起きて、またマスコット達が
食事を運んだ。ねことうさぎ達らはその間、天井の穴に隠れていた。また同じメニューだった。
よしくんたちはぶつくさいってたが、また女の子3人で母親役になり、どうにか食べさせた。
フルーツをねこたちにあげた。ねこ達はそれをおいしそうにそれを食べた。

またマスコット達と遊んだ。なかなか楽しいけど、体力を残しておかなくてはいけない。
ミコがみんなにそれを伝える。みんなが賛成した。

子供たちはその天井の穴へと登る。ミコとマコが先に浮遊術であがる。みんながポカンと
それを見ている。そしてねことミコとマコでひとりずつ上に浮かべる。なんだかみんな
楽しそうだ。全員洞窟の上に上がった。ねこがみんなを案内する。通気溝の前にくる。
そしてまたねことミコとマコは術を使い、みんなの体を半分くらいにする。ねこが大きくみえる。
ねこを先頭にしてみんなで赤ちゃんみたいにはいずって進む。エリカ姫の部屋のところまで
くる。ねこが様子を伺う。相変わらずつまんなそうだ。ねこが音をたてる。エリカ姫が
ねこに気づく。笑顔になり手を振る。問題なさそうだ。またうさぎさん達に枠を外して
もらう。そしてねこから部屋へとゆっくり降りていく。ミコとマコがそれに続く、そして
体のサイズを元に戻す。そしてまたひとりずつ、降ろしていく。ミコとマコとねこで
協力しないとちょっと重い。慎重に降ろす。エリカ姫がそれをじっと見ている。
エリカ姫も魔女をみたのは初めてだった。地球よりも文明が進んでいるから
今までなんにも驚くことはなかったが、これにはちょっとびっくりしていた。

全員が無事に降ろされた。サイズをひとりずつもとに戻す。よしくんがいっかい大人みたいに
でかくなってみたいと言ったが、却下された。そういう場合ではない。無駄に術を使うと
うちの奥さんに死ぬほど怒られる。

「もうすこしするとみんなかいぎをはじめるはず」エリカ姫は言った。

子供たちはエリカ姫の部屋をぐるぐると見回した。まず日本ではお目にかかれない
ものがいろいろあった。エリカ姫がいろいろと説明してくれた。なんだか楽しそうだ。

「ぱぱがもうあとなんねんもたつとちきゅうにもできるっていってた」とエリカ姫が言った。

そして、不思議な動きをするおもちゃをエリカ姫が披露してくれた。みんなが沸いた。
なんだか待ちきれないといった表情だ。でもこれが地球に普及することには
みんなは大人になっているのかもしれない。そんなことは良くわからない。しかしそういう場合で
はない。ねこはエリカ姫になにか紐はないか?と聞いた。エリカ姫が紐を探して持ってきた。
ねこはミコに姫の手首をそれで縛るように指示した。

「わるいが、姫、人質のふりをしてくれ」とねこは言った。エリカ姫はうなずいた。
ミコが姫の手首を紐で軽く縛る。時刻は8時近くになっていた。そろそろ出陣だ。

ねこはよしくんとゆうたくんがペアを組むように指示をした。うさぎさん達とあひるさん達
にもそう指示した。了解した。さゆりちゃんが持っている杖で魔法を欠ける。ミコとマコが
それを操作しメガホンを持ってあおる。ミコとマコがエリカ姫を守るのだ。みんな了解した。
台本は完成した。なんだか学芸会みたいだ。みんなで円陣を組んだ。そしてエリカ姫は部屋の
ドアをそっと開けて廊下の様子を伺った。問題ない。

タカチャン大王たちは全員で7人くらいで会議をしていた。女王もいる。なんだかアメリカの
司令室から反応がないのでごちゃごちゃとなにかを言い合っていた。チャンスだ。
エリカ姫がドアを開ける。先によしくんたちがどかどかと部屋に入っていった。みんなが気づいた。

「ちょっと、、ぼくたち、ここにははいっちゃいけないよ!」大王がやさしく言った。

その後にうさぎさん達とあひるさん達、ねこ、さゆりちゃん、手首を縛ったエリカ姫を
ミコとマコが挟んで入っていった。お遊戯会のはじまりだ。ミコがメガホンを持って叫んだ。

「こどもとあそばないおやはわれわれがゆるさない!」みんながうなずいた。

大王たちはポカンとしていた。大王と女王がおそるおそるこっちに近づいてきた。相変わらず
みんな変な格好だ。奥には5人の変な格好の男達がいる。どうやらタカチャン星人の正装らしい
文明が進んでいるのに、服装のセンスがない。よくわからないが、そういう場合でもない。

「けっとうだ!」ゆうたくんが叫んだ。

ゆうたくんとよしくんがジャイアンツメガホンを持ってうしろの男達のところに行き
なにやらわけのわからないことを叫び始めた。男達は耳をふさぎながら足をバタバタさせた。
なんだか変わった人達だ。みんな基本的には優しい人達だ。よくこれでアメリカと
戦えるもんだ。ねこがうさぎさん達とあひるさん達を宙に浮かべてうしろの男達を
攻撃した。うさぎさん達が両手でパコンパコンと頭を叩いている。あひるさん達は
くちばしで攻撃する。よし、うしろの5人は大丈夫そうだ。なんだかよくわからない台本だ。
ねこは右手をぐるぐるさせてうさぎさんらを操作する。大王たちがおそるおそる近づいてくる。

「エリカひめがかわいそうだ!おひめさまをやめさせるべきだ!」ミコがメガホンで思いっきり
叫ぶ。

「もうたかちゃんせいにかえるべきだ!」マコがメガホンで続く

さゆりちゃんは持っていた杖で魔法をかける。ミコがそれを操作する。すると大王と女王が
宙に浮いてぐるぐるとまわり始める。大王がたすけてーと叫ぶ。さゆりちゃんはなんだか
楽しそうだった。アニメ漫画みたいだ。こういうのに憧れていた。さゆりちゃんは
アニメの魔女もののファンだった。なかなか様になっている。さすがさゆりちゃんだ。

そうしてミコとマコが得意の口攻撃を繰り返し、うしろではよしくんらががたがたとやっていた。
変な台本だが、さゆりちゃんもなかなか夢中になっていろいろ魔法をかけていた。
わけのわからない光景だった。ここ何日はすべて変なことばかりだ。その時エリカ姫の
頭の中でなにかがパチンと言った。


「もうたくさんだああああああ!!!!!!!」とエリカ姫が叫んだ。すべての動きが止まった。
大王と女王も動きが止まって床に落ちた。

「ぱぱもままももうかえろう!あそびたい!おひめさまももういやだ!やめる!」エリカ姫が
そういって泣き出した。ミコとマコがエリカ姫の肩に手を当てる。よしよし

子供たちがそうだ!そうだ!と続いた。大王は困った顔をしていた、しかし、同意した。
両手を上に上げた。エリカ姫はまだ泣いていた。ミコとマコが慰める。

「ごめん、えりか、パパが悪かった。もうおしまいだ」と大王は言った。ミコとマコはエリカ姫の
紐を解いてあげた。大王と女王とエリカ姫が3人で寄り添った。一見落着。さゆりちゃんが
感動して泣き始めた。みんなが拍手をした。

「我々はもう国王政治をやめにして地球を見習ってきちんとした議会制民主主義をとるよ」
と大王はみんなに説明した。また拍手が起こった。後ろの5人が驚きの表情で拍手した。
マコが大王の前にすたすたと歩いてきた。

「だいおう」ミコが言った。

「なんでしょうか?」大王は丁寧に答えた。

「ぎかいせいみんしゅしゅぎってなんですか?」とミコが質問した。ねこがこけた。

そうして子供達らはみんなでその議会制民主主義スタイルで話し合った。みんなで椅子を用意して
丸くなった。ねこがまた中心にたって議会制民主主義の基本的な概念について説明した。
大王たちはこくこくとうなずきながら聞き入っていたが、子供たちはわけがわからなかった。
ねこがまたこける。しょうがないからミコがみんなでフルーツバスケットをしようと言った。
今度はミコが中心にたって説明した。そしてみんなはフルーツバスケットでなぜか大いに
盛り上がった。大王が議会制民主主義は楽しい!と言った。エリカ姫も楽しそうだった。
ねこがそれは違うと言いたそうだった。まあ、いいや、フルーツバスケットも民主主義の
概念がないというわけでもない。フルーツバスケットでみんな仲良しだ。

みんなでワイルドに盛り上がった後、ねこはアメリカの司令室とコンタクトをとる
方法を大王に聞いた。さっき繋がらなくってどうしようといってたとこだ。とひとりの
男が説明した。もう一度トライして欲しい、とねこは頼んだ。ひとりの男はパソコンの
前に座り、ねこと一緒に司令室にアクセスを試みた。子供たちもみんなでこのパソコンを
見ていた。

「お、、繋がった」とひとりの男が言った。

「司令室とビデオチャットできませんか?」とねこが聞いた。物知りなねこだ。

そうして、司令室とコンタクトした。


017

「お、、繋がった」よしくんパパが叫んだ。みんながその声で起き上がった。朝だ。

よしくんパパはなかなか凝り性だ。気になって朝早くこっそり起きてパソコンに
張り付いていた。こういうのは好きだし、得意みたいだ。さすがだ。
われわれがよしくんパパの後ろからパソコンを覗いた。なにか向こうから
ビデオチャットの許可を求める通知が来ていた。よしくんパパが許可する。
近くにマイクと大きなカメラがあった。我々を映している。

「おおおおおーー!」と歓声があがった。するとビデオにはうちのねこが映っていた。

するとねこの背後から子供たちが覗き込んでいた。そして子供たちは大爆笑を始めた。
どうやらツボにはいったみたいだ。笑いが止まらない。

「ど、、どこにいるの?」とよしくんパパが格さんの格好で聞いた。まだ爆笑している。

「こっちは日本だ、タカチャン星人と一緒にいる」ねこが答えた。よしくんパパがびっくりした。

「こどもたちは無事なんだね?」さゆりちゃんパパが聞いた。そういえば我々は子供達を
探していたのだ。やっと気づいた。

「無事だよ、そっちの件はうまく片付いたかい?」とねこが聞いてきた。こっちの件?

「こっちは片付いたよ、だけどもうひとつ頼みたいことがある」と明美先生が言った。

「なにかな?頼みたい事って」ねこが聞いた。

さゆりちゃんパパがアメリカの子供たちとその親たちでビデオチャット会議を出来ないだろうか?
早急に、とねこに尋ねた。ねこは右手をあげて、画面から消えた。タカチャン星人と交渉している
らしい、その間、画面は子供たちが映っていた。相変わらず爆笑していた。そういう場合じゃない。

「ぱぱはさむらいさんだ!」とミコが爆笑しながら指をさして言った。

私は侍じゃない。私はうっかり八兵衛だ。

みんなが爆笑している。大人たちは笑ってごまかした。さゆりちゃんのパパがまたおどけて
印籠を片手にひかえおろうー!と言った。爆笑が大爆笑に変わった。そういう場合じゃない。

ねこが戻ってきた。どうやらいけそうらしい。ねこがマウスを動かしたり
キーボードを叩いたりしている。それを子供たちが覗いている。変な光景だ。
ねこはこっちにわかりやすいようにアクセス方法を文字で送ってきた。わかりやすい
ちょっとよしくんパパもわからない部分があったので、質問を文字で送った。
それを我々が見ている。子供たちがまた爆笑している。そういう場合じゃない。
質問の内容をみてまたねこがこける。ねこが、あんたね、、とよしくんパパを睨む。
よしくんパパが頭をかきながら照れている。しっかりしたねこだ。
ねこが質問の返答を送ってきた。ようやくよしくんパパも理解したみたいだ。

「それでは、アメリカのトップには私から話をつける。用意が出来たらその手順で
ビデオチャットを開始してくれ」とねこがよしくんパパに指示をした。よしくんパパが
敬礼をする。頼もしいねこだ。ビデオチャットが終了した。

そうして、我々はよしくんパパとさゆりちゃんパパを残して、キッチンへと向かった。
子供達の食事を作らないといけない。よしくんパパはパソコンから離せないから
また、私がよしくんママの助手を務める。ハードな朝だ。砂糖! 片手鍋!とよしくんママが
叫ぶ、私がそれを用意する。他のみんなも指示を仰ぎ、朝からあわただしく動く。

そしてワゴンに食事を積んで、子供部屋へと運ぶ。子供たちはみんな起きていた。
なかなかよしくんママのお食事は好評なようだ。みんなでわいわい言いながらそれを食べる。
私はよしくんパパとさゆりちゃんパパのところに食事を運ぶ。私もそこで一緒に食べる。
食べている途中にねこから再度アクセスがあった。よしくんパパがパンを加えながら
またビデオチャットをする。それをみてまた子供たちが爆笑する。そういう場合ではない。

「今日のお昼過ぎまでになんとか親達を集めるそうだ」とねこは言った。了解。

ねこはまた文字でアクセス先の情報を文字で送った。よしくんパパがカメラに向かって
OKサインを送った。何度もねこに怒られたらたまったもんじゃない。まだ会社の上司のほうがましだ。

「ぱぱ、そこはどこなの?」とミコが聞いてきた。

「ぱぱはシアトルにいるんだよ」と私は答えた。

「ぱぱ」とミコが言った。

「なに?」と私は言った。

「しあとるってなに?」とミコが言った。またねこがこけた。我々もこけた。

チャットを終了し、食事を片付けて、我々はこの部屋を広く開けて子供部屋から
椅子を運び出し、ビデオ会議室を作った。さゆりちゃんパパが今日の会議の内容を説明した。
私はカメラ係を担当した。よしくんパパがパソコンの管理をする。さゆりちゃんパパが
議会の進行役を勤める。マイク係をさゆりちゃんママが受け持った。我々の顔が
ばれるとやばい。途中で気づいた。さゆりちゃんのパパとママにキッチンペーパーを
巻きつけた。なんだかあやしいがしょうがない。顔を知られたら私達は捕まってしまう。

お昼が過ぎた。あわただしく昼食をすませた。最後の食事会だ。みんなにそういうと
なんだか悲しがられたが、しょうがない。みんなもいつまでもここにいるわけにはいかない。

「みなさん、それではこの際、自分の意見を正直に言ってくださいね」さゆりちゃんパパが
そう子供たちに説明した。みんなはそれにうなずいた。

どうやら向こうも用意が整ったようだ。アクセスがあった。ビデオにはたくさんの親達が
深刻な顔をしてこっちをみていた。そしてさゆりちゃんのパパが顔を隠して子供たちを
椅子に座らせた。親達がどよめく。次々に子供の名前を叫んだ。涙する母親の顔もあった。
子供たちが手を振る。元気そうだ。ひとまずは安心したようだ。さゆりちゃんパパに
ママがマイクを渡す。さゆりちゃんパパはまず、子供たちは無事であること
おそらく今日中にもアメリカ軍が子供を保護するであろう。だから心配しないでください。
子供はシアトルにいます。なのでこの会議が終わったらみなさんシアトルにいらしてください。
しかし、その前に子供たちの意見を聞いてください。とさゆりちゃんパパは説明した。
親達はなんだ?この変な格好の男は?という顔をしたが、あんまり挑発するのもなんなので
黙って同意した。きっとこのチャットは記録されるんだろうな、とさゆりちゃんパパは
ふと思ったので、ちょっと印籠を出しておどけてみようかと思ったが辞めた。そういう場合じゃない。

さゆりちゃんママがひとりの一番年上のしっかりした男の子にマイクを渡した。
その子が正直に子供たちの心境を代弁した。親達はそれを真剣に聞いていた。
子供達は優しい大人に囲まれて楽しくなにも怖いことはされずに過ごした事と
子供達がみな親が遊んでくれないことの不満をぶちまけた。ひとりの親がそうだけど、
と切り出すと、その親の子供がマイクを要求し、親に不満をぶちまけた。子供達が
それに拍手を送る。子供たちが次々とマイクを奪い合って自分の意見を述べ始めた。
親達がそれを悲しそうに、真剣に聞いていた。なんだか子供がずいぶんと大人っぽく
なっていることに驚いていた。そして楽しそうに、のびのびとしていることに気づいた。
親達はなにも言い返せなかった。そして一度、親達同士で話し合い、ひとりがそのことを
深く認めて、今度からはきちんとそうする。悪かった。許して欲しい、と言った。
さゆりちゃんパパは親達はそういってるけど、許してくれるかな?と聞いた。
子供同士で話しあった。そしてまた一番年上の子が意見をまとめた。

「ぱぱ、ちゃんとゆるすから、よいこにするからあそんでくれる?」とそのこは言った。

親はうなずいた。許して欲しいと言った。さゆりちゃんのパパがにっこりしている。
が、そのペーパータオル顔でにっこりされるとちょっと怖い。さゆりちゃんのパパがマイクを
握った。

「というわけで、みなさま、ありがとうござます。それではお忙しいでしょうが、
シアトルにいらしてください」とさゆりちゃんパパが言った。親たちがうなずいた。

そして、よしくんパパはチャットを終了させた。ほっとした。子供たちから拍手が沸き起こった。
われわれも拍手した。任務完了だ。明美先生がなんか泣いている。よしくんママも感動している。
感情表現が豊かだ。

そして、我々は子供達におそらく夜までにはアメリカ軍がくるからここでおとなしく
待っているように指示した。下手に動くと変な目にあうからと注意した。みんなが納得した。
年上の子の言うことをよく聞くように、と言った。

キッチンでよしくんママがパンとケーキを焼いていた。おいしそうだ。それを子供たちに配った。
パンはお腹がすいたら夜に食べてね、とよしくんママが言った。さゆりちゃんママが通訳した。
そして、我々はさようならをした。みんなで握手して別れた。なんだか寂しくなったけど
日本につれて帰るわけにはいかないし、こんな格好でアメリカ軍にも会いたくない。

よしくんパパにもう一度ねことアクセスをしてもらい、無事終了したことを報告した。

「わかった、それではこっちも帰る」とねこは言った。また子供たちが爆笑した。こりない人達だ。

我々はあの廊下まで来た。どうやって開けるのだろう?なにも書いてない。
みんなで力を合わせて横にスライドしてみたがびくともしない。すると明美先生とゆうたくんママが
機関銃を持ってきた。またよしくんママがぐるぐるとまわり始めた。こりない人だ。

「ちょとどいて」明美先生が言った。みんながどいた。こんなところで死にたくない。

明美先生とゆうたくんママはふたりで顔を見合わせてにやりとした。どうしてもやりたいみたいだ。
ふたりともにこにこだ。そしてそのドアに機関銃を向けて、連射した。けたたましい音がする。
しばらく連射していた。ふたりとも楽しそうだ。みんなは耳をふさいでいる。機関銃の弾が無くなる
まで、それは続いた。そして、

ドアがゆっくりとスライドしていった。

「ふう、すっきりした!」明美先生がそう言った。ゆうたくんママとハイタッチをする。

機関銃をその辺に投げ捨てた。もう用はない。弾も入っていない。でもゆうたくんママはなんだか
記念に持って帰りたそうだった。いったいなんに使うのだ?そんなことしたら警察に捕まる。

そうして我々はもと来た道をたどることとなる。駐車場みたいなスペースで我々が
降りてきたところを探した。確かこの辺だ。我々は手をつないで輪になり、静かに待ってみた。
すると天井に黒い穴が開き、我々はゆっくりと宙に浮かんだ。そしてまた綺麗な星空の中を
上昇した。綺麗な景色だ。みんな笑顔だった。なんだか良くわからなかったけど、心地よい
充実感を感じた。みんな涙を流していた。不思議な気分だ。でも感動的だ。


018

「みんなもいっしょにいこうよ」ミコが提案した。

エリカちゃんも賛成した。タカチャン星に帰る前にちょっと地球を見てみたかったし、
ミコたちとも遊びたかった。元大王のエリカちゃんのパパは、いいのですか?ミコちゃん
と聞いた。

「うん、べつにぜんぜんだいじょうぶだよ、うちのぱぱたちもだいじょうぶ」とミコが答えた。

そうして、ミコ一行は子供部屋の天井の穴へと向かった。エリカちゃん、タカチャン星人7人
うさぎさん達とあひるさん達とねこと子供軍団だ。

エリカちゃんパパが梯子を用意して登った。魔法はもう使えない。決まりだ。
そうしてひとりずつ登り、洞窟へと出た。そしてまた元の道を辿った。だんだんまた
洞窟はせまくなっていった。でももうなにも怖いものはない。タカチャン星人たちも
楽しそうだった。子供みたいだ。変な格好だけどパパたちよりかはまともな気もする。
エリカちゃんも楽しそうだった。良かった。とミコは思った。なんだかよくわからなかったけど
きっと良いことをしたんだと思った。うちのママはいつもわけがわからない台本を用意するけど
まあ、いいや、楽しければ。さゆりちゃんたちとももっと仲良くなれたし、みんなも
楽しそうだ。良かった。キャンプは面白い! でも本当のキャンプはそういうことじゃない。

そうしてあともう少しで干草の部屋という所まで来た。


019

ベッケンガー大佐は大きな丸い穴の所までやってきた。周りには干草が寄せられている。
わけがわからない。誰もいないみたいだ。4人でその奇妙な黒い空洞を覗いていた。

「どうやらこの中にいくしかないな、、」大佐は言った。みんなが緊張した。

この中がどうなっているのかまったく検討もつかない。ためしにひとつ機関銃の弾を
その穴の中に落としてみた。すると弾は宙に浮きながらゆっくりと下降していった。
しばらくその様子を見ていた。ゆっくりと下降している。やがてそれは見えなくなった。
しかし、いつまでたっても底に当たる音は聞こえてこない。大佐は悩んだ。

「どうしよう、、」大佐はめずらしくみんなにぼやいた。意を決して飛び込んでも
問題なさそうな気もする。ロープがない。無線で連絡してみた。しかし、全然繋がらない。
4人はしばらく腰を下ろし、その穴の中を覗き込んでいた。その時にうちの奥さんと
たかはしさんがそっと彼らに近づいて、二人ずつ突き落とした。4人は見事に落ちた。
絶叫があがったが、やっと問題ないことに気づいたらしい、静かになった。
ふたりはハイタッチをした。任務完了だ。

大佐達は星空の中をゆっくりと下降していった。なんだかまたわけがわからないが
死ぬことはなさそうなので、ほっとした。誰だ?我々を突き落としたのは?
しかし、まあいい、なにを考えても答えはでなさそうだ。綺麗な星空だ。
4人ともなんだか見とれているようだった。ゆっくりと下降している。
なにか神様が私にメッセージをしているのかもしれない。大佐はふとそう思った。
悪くないメッセージだ。もうすべてを神にゆだねよう、と思った。考えても無駄なようだ。

そして、4人は地下駐車場のようなスペースにたどり着いた。しばらく見回した。
4人は注意しながら歩いていると、そこに大きな円があって真ん中に緑のボタンが
あった。4人で円の中に入り、大佐はそのボタンを押していた。円の中が光った。
そして上昇していった。訳がわからない。しかしそれに身をゆだねた。考えてもしょうがない。

そして、かれらはセーフコ球場のマウンドに立った。お昼過ぎだ。どうやら今日は
チームは遠征しているらしい、試合は今夜はないようだ。4人はびっくりして
辺りを見回す。どう考えても本物だ。本物の野球場だ。シアトルだ。入り口は
日本にあったのだ。わけがわからない。大佐は持っていた携帯電話で本部に連絡してみた。
電話は繋がった。信じられない。本部の人間が電話にでた。大佐は訳がわからないが
今、シアトルにいる、と言った。本部の人間も訳がわからないようだった。大佐は
日本に行ったのではないのか?と本部の人間が聞いてきた。うまく説明できない、
でもどういうわけか今、シアトルにいる、こっちに軍を呼び寄せて欲しい。
場所はセーフコ球場だ。マウンドに集合して欲しい、大佐はそう言った。
本部はしばらくたってから、軍はすでにシアトルに集合している、今からそこに向かわせる、
球場の入場許可を今取っている、そこで待っていて欲しい、と本部は言った。了解。
大佐は電話を切った。しばらく、そこでぼけっと観客席を見回していた。大佐は昔、学生の頃
野球をやっていた。なかなかのピッチャーだったが、なぜか軍隊の道を選んだ。
マウンドの近くにひとつボールが転がっていた。大佐はそれを拾い、本来キャッチャーが
いる所にめがけて思いっきり投げた。ストライクだ。しかもなかなか球は速かった。
3人は拍手をした。大佐がにっこりとした。なんだかとても良い気分だ。はやく息子と
キャッチボールがしたくなった。学生時代を思い出した。どうして私は野球選手にならなかった
のだろう、と思った。でもいまさらしかたがない。どうやらこの変な事件を解決できそうだ。
そうすれば、私は自由の身になれる。気楽にいこう。大佐はそう思った。

軍がぞくぞくと球場内に入ってきた。隊員は全部で20人近くいた。マウンドに何人か残して
その他を円の中に入れた。隊員たちは不思議そうな顔をしたが、うまく説明できない。
ともかく、この中に敵はいる。十分に気をつけるように、と大佐は指示をした。みんなが
了解をした。大佐がボタンを押した。円はゆっくりと下降した。どよめきが起こった。
大佐は別になんともない、といった表情でじっとしていた。いちいち説明している場合ではない。
もちろん説明も出来ない。自分だってわけがわからない。そして、先ほどの地下にたどり着いた。
部隊は辺りを見回した。するとさっきはなかった入り口を発見した。うすい水色の廊下が見える。
大佐が銃を構えて、中の様子を伺う。廊下には機関銃が2丁、転がっていた。大佐は廊下の前後に
隊員を配備した。機関銃を調べてみる。弾は空だった。大佐は二手に分かれて内部を調査することに
した。大佐は廊下を進んだ。すると子供たちの声が聞こえてきた。誘拐された子供達だろうか?
大佐は静かに廊下を歩いた。ドアに耳を当てる。中では子供達の元気そうな声が聞こえた。
子供達以外に誰もいなさそうだ。しばらくして突入を決意した。廊下に10人ほどの
隊員を呼び寄せた。ひとりに合図でドアを開けるよう指示した。ひとりはうなずいた。
ドアを開けたら一気にみんなで突入だ。みんなが了解した。ドアが開いた。みんなが銃を構えて
どかどかと進入した。子供たちがびっくりして大声を上げた。女の子達が震えていた。
しかし、問題がないとわかると、隊員は銃を降ろした。大佐はひとりの子供にここに誰か
いるのか?と聞いた。ひとりの子供は子供以外誰もいない、と答えた。この館内に誰か
大人はいるのか?と聞いた。子供はわからないと答えた。さっきまでいた日本人達のことは
黙ってて欲しいといわれたので答えなかった。いい人達だったので答えたくはなかった。
ひとりの隊員は倉庫でロープに縛られた人達を発見した。そのほか、司令室らしき部屋や
キッチンも調べたがなにも異常がない、と報告があった。大佐はその大人たちに質問したが
まるっきりわけがわからない答えが帰ってきた。我々はタカチャン星人に拉致されたものだ。
とずっとそれ一点張りで答えた。わけのわからない日本人にそう言えと言われていた。
そうすれば無罪になる、日本人のことを話すとあなたがたはちょっと、面倒なことになる。
どのみち説明しようと思っても誰も信じてくれないだろう。黙っている方が良い、と忠告され
ていた。確かにそうだろうと彼らは考えた。正直にこのややこしい話を説明しようと思っても
つじつまが合わない。我々が疑われる。というわけでただ黙ってタカチャン星人のせいにした。
大佐は頭を抱えた。他にここに大人はいるのか?と聞いた。誰もいないと答えた。
、、事件は解決した。子供もいる、敵はもういない、終わりだ。携帯電話が鳴った。
大佐が電話にでた。本部からだ。

「そちらに変な日本風の格好をした人間をみなかったか?」本部が聞いてきた。日本風?

「ちょっと待って」大佐は言った。子供と大人に聞いてみた。ひとりの大人がそれは
タカチャン星人だ、と答えた。そういうと子供たちもそれに同意した。

「それはタカチャン星人だそうだ」大佐は答えた。

「わかった、そっちはあまり重要ではない、ともかくタカチャン星人は誘拐をやめたようだ
今、子供たちの親がシアトルに向かっている。お疲れ様、任務は完了だ。よくやった。
今後は現場検証に入るから、後でそこの進入方法を教えて欲しい、というわけだ」と本部は言った。

「わかった、ありがとう、今から子供を連れて行く」と言って大佐は電話を切った。

そして、子供達と大人達をマウンドに上がれる場所まで連れて行った。人が多いので
先に子供たちを上に連れて行った。子供達は最初は怯えたが、大丈夫だとわかると
笑顔になった。そしてマウンドにあがった。みんな不思議そうな表情を浮かべた。

「もうすぐ君たちの親が来るから、そこで遊んでいてね」と大佐は笑顔で言った。
子供たちはフィールドを走り始めた。久しぶりに地上に出たので楽しそうだった。

そしてまた地下に戻り、大人達と隊員を乗せた。そして地上にあがった。
大人たちは不思議な表情をしていた、しかしこれで元の生活に戻れる。ほっとした。
しばらくは誰かに問い詰められると思うが、まあ、大丈夫だろう。早く家に帰りたい。

全員をマウンドに上げたとたん、円は消えていた。何事もなかったように、そこは
普通のマウンドになっていた。ボタンもない。大佐ははいつくばってボタンを探したが
見つからない。困った。本部に進入ルートを説明しなくてはいけない。しかしもう
なにもない。終わったのだ。きっと現場検証したってなにもわからないだろう。
消えたのだ。大佐はなぜだかわからないけど、そう思った。なんとか適当に笑ってごまかすしかない。
タカチャン星人とやらのせいにしよう。きっとあの日本の入り口も塞がれているだろう。

親達が到着したようだ。客席から入ってきて、フィールド内にやってきた。子供達が
みんな親の元に走っていった。それぞれの家族が自分の子供を抱きしめていた。
大佐はその姿をずっとマウンドから見ていた。変な気分だ。でも、まあいいや、任務は無事終了した。
誰もけがなく、死ぬことなく、任務完了だ。

しばらく、家族達はこのフィールド内で遊んでいた。子供達も親達も楽しそうだった。


大佐はそれをずっと見ていた。そして神に感謝した。


020

我々はあの干草の部屋で子供達と再会した。子供達は我々を見るなりまた大爆笑した。
タカチャン星人達も一緒にいた。なんだかよくわからないけど、ご挨拶をした。

「ミコちゃん達には大変お世話になりました。ありがとうございます!」エリカちゃんパパは
そういって私と握手をした。なんのことだかわからないけど、うなずいた。感情表現が豊かな人だ。

みんなでこの変な格好をやめる前に記念撮影をした。タカチャン星人も交えてみんなで
写真をとりあった。そして、このへんな衣装を脱ぎ捨てた。子供もそこで脱いだ。
あーすっきりした。

そして我々はあの星空のガラスチューブに入った。なぜか今度はエスカレーターみたいな
床がなっていて、止まったまま進んでくれた。楽チンだ。みんなでにぎやかに進んだ。
綺麗な星空だ。なんだか名残惜しい、そうみんな思っているみたいだ。明美先生が泣いていた。
大人達は携帯のカメラで写真をとりまくっていた。もちろん、我々以外には見せられないの
だけれど、まあ、キャンプの良い思い出だ。

そうして我々は久しぶりに外に出た。今度はなぜかトランポリンが消えていて
そのまま防空壕の外に出た。夕方だった。そこにはうちの奥さんとたかはしさんが
調理器具を一式そろえて待っていた。みんなが外に出た。明美先生はたかはしさんと
なにやら話していた。みんなはなんともいえない表情を浮かべていた。しばらくは
我々の間の思い出話として語られるのだろう、と思った。悪くない。みんなで
誰にもいえない秘密を楽しく語り合うのだ。悪くない。うちの奥さんがよしくんママに
包丁を手渡した。よしくんママがにこっとした。出番だ。また表情が変わった。

我々はよしくんママが作ったカレーライスやら焼肉やら、その他いろいろなおつまみで
乾杯した。みんなお腹がすいていたから、すごい騒ぎだった。タカチャン星人がカレーライスを
絶賛していた。タカチャン星人達が何度もおかわりをした。よく食べる人達だ。
よしくんママにカレーのレシピを聞いていた。相当気に入ったようだ。よしくんママが
楽しそうに教えてあげていた。さゆりちゃんパパが持ってきたワインをあけて乾杯した。
エリカちゃんはミコ達と楽しそうに食べながらおしゃべりをしていた。タカチャンたちは
食べるのに夢中だった。ねことうさぎさん達やあひるさん達もご飯を食べながら
なにやらお話していた。うちの奥さんが花火を用意していた。子供達がエリカちゃんと
花火で遊んだ。私はエリカちゃんのパパとおしゃべりをした。変な格好をしているけど
なかなか優しい人だった。何度もミコちゃん達に感謝の気持ちを述べていた。
ともかくまあ、カレーライスに喜んでくれただけでも、こっちは満足だ。
良い文化交流だ。今度はうちの星にもいらしてください、エリカちゃんパパは言った。
ぜひ、と言ったけど、どうやって行っていいのかわからない。まだ地球の技術では無理だ。

そして、そろそろお別れの時間がきた。

エリカちゃんと子供達がみんなで握手をしていた。大人達もみんなで握手した。
ミコ達もエリカちゃんも泣いていた。でもしょうがない。エリカちゃんが今度は
タカチャン星にきてね、と言った。絶対行くとミコが泣きながら答えた。

そして、さっきのガラスチューブの中にタカチャン達は入っていった。みんなで
手を振った。子供たちがばいばい!と手を振った。みんな中に入ったら
防空壕は消えてしまった。ただの土になった。しばらくすると空にいくつかの
UFOが見えた。きっと彼らであろう。みんなで手を振った。お幸せに。

UFOはいっかいぐるぐると回った後、空に消えた。


021

夏休みが終わった。また制服洗濯地獄が始まる。私は午前中、洗濯機を回していた。


あの後、我々はログキャビンに戻り、ごく普通のキャンプで楽しく過ごした。
みんなでこの思い出話に花が咲いた。子供と大人でお話がが違ったけど、合わせて見ると
なんとかこのお話の全貌が見えてきた。たかはしさんと明美先生もそのまま泊まった。
明美先生はなにも言わなかった。まあ、言いにくい話だ。子供の前では言えない。


キャンプ後もたまにどこかの家に集まり、この話で盛り上がった。ニュースで、
シアトルで無事に子供たちが保護されたことを聞いた。でも細部は謎のままだ。
しょうがない。あと、あの防空壕があった付近で3人の自衛隊員が倒れているのを
誰かが発見し、病院にいったそうだ。

ミコは毎日のようにいつタカチャン星に行けるのか聞いてきた。困ったもんだ。
新幹線で連れて行けるならとっくに連れて行ってる。笑ってごまかすしかない。
あと何年かしたら、地球人はそこに行けるのだろうか?未来の事は誰にもわからない。謎だ。

幼稚園ではビックニュースに園児たちが沸いていた。山形先生と明美先生が結婚することに
なった。おめでたい話だ。そりゃそうだ。このお話は明美先生が主人公だ。
うちの奥さんが台本を書いた。かなりむちゃくちゃだがまあ、まあ、そういうことだ。
誰かが何かをする時、広い目でみれば世界中を動かしている、ということもある。
宇宙をも動かす。初めは小さな心でも、拡大する。

この話はそういうお話だ。

教室の中で山形先生と明美先生が園児たちの前に立ってそのことを発表した。
園児たちは喜んだ。良いニュースだ。みんな明美先生のことが好きなのだ。
ミコが泣いていた。明美先生がミコにどうしたの?と聞いた。ミコが立ち上がった。

「あけみせんせい、いままでへんなことばっかりいってごめんなさい、
でもせんせいけっこんおめでとう」 とミコが泣きながら言った。 明美先生も泣き始めた。

「ミコちゃん、ありがとう、先生、幸せだから大丈夫だよ」明美先生が言った。

みんなから拍手が沸いた。みんな立ち上がった。明美先生はありがとうを何度も言った。
山形先生が明美先生の肩を優しく叩いた。みんながぴーぴー言い始めた。山形先生が照れていた。




「ちょっとやりすぎだろ」私は洗濯物を外に干した後、うちの奥さんに言った。もちろん
このお話のことだ。なにも宇宙人まで巻き込むことはないのではないか。

「はははは、、」うちの奥さんが照れながら言った。私はにこりとした。うちの奥さんもそうした。

天気の良い9月の日だ。


外の洗濯物が風に揺れていた。なかなか気持ちよさそうだった。誰も知らない舞台裏の光景だ。



。。。。。。。。。。。終わり。。。。。。。。。。。。。。





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