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異世界で始める人生改革 ~貴族編〜  作者: 桐地栄人
〜第一章〜 幼年期
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第40話 父の思い


私の名はロンド・デュク・ド・オリオン。

国が出来た時から存在するオリオン公爵家の現当主である。


可愛い息子や娘を授かり領地経営も順調に進み順風満帆な生活を送っている。


だがそんな私にもいくつか悩みがある。

まずは私の第二夫人であるヒルダだ。

あいつは事あるごとに私に公爵家の跡取りを自分の長男にしろと言ってきた。


する訳がない!

これは決して第二夫人の子供だから、などという理由ではない。

第二夫人の子供や継承権の低い子供が貴族領を継いだ話など枚挙にいとまがないのだ。

伝統は大切だ。それ位、一貴族として当然理解はしている。

だがそれにこだわりすぎるのはよくないという事くらいわかっているのだ。

もしレインが愚者ならばそれを考えても良かっただろう。


だけど違う。

奴は本物だ。

最初は私とて気色悪く思った事は否めない。

だが英雄のかなり信頼度がある実話や噂話の本を見てみると天才と変人は紙一重だという事がわかった。


あの英雄の中でも最も有名なグロリアスノアでさえ、暗殺者を妾にするという常人には理解できない行動をしたのだ。


我らが皇帝陛下にも天才について聞いてみたところ、なんとあのアルメリア王女でさえ、偏食家なだけではなく、世には出回っていない異常な行動があるという。

それに比べたら英雄クラスの天才であるあいつの異常さなど大した事はない。

普通の人間よりも遥かに賢く、普通の人間よりもちょっとだけ小心者なだけだ。

人と接するのが苦手なだけで嫌いになる程私の愛は脆くない。


確かに魔法が使えない事は頭を抱えてしまうほど痛い事だ。

だが何時までも悩んではいられない。

足の速さは貴族としてはあまり使えない能力だ。

だがそれを引いて余りある頭脳と性格があればいい。

レインは小心者だが決して引きこもっている訳ではない。

自分の足で歩くのはどうかと思うが、自ら外に出て見聞を広めようとするという気概がある。


ならば良い。

ならばこの公爵家を継ぐのに何も問題はない。

小心者程度これからいくらでも変えるチャンスはあるのだから。


それに比べてプロウスは・・・

才能は並以下、魔法才能の一つ程度では大した自慢にもならない。

スキルも一つこれも決して珍しくもない。

母親があんなだからだろう。

率先して何かを知ろうとは決してしない。

独断と偏見で物事を決めようとするのが既にあの歳で顕著になっているのだ。


それではダメなのだ。

他国との貿易をし、そしてこの国では最大の領地を持つ貴族としてその考え方は決して相応しくない。


今まで代々引き継がれてきた公爵家と民衆の関係を粉々にするだろう。


悪口を言いたい訳では決してない。

だが事実をありのままに言うと如何してもこうなるのだ。

レインはあの歳で既に領地経営や農地の改良のノウハウを身につけ、私から領地を借り、実験を繰り返している。

まだなんとも言えないが、あいつの言葉を信じるならばなかなかうまくいっているという。

5歳からそれを行う行動力はこの大陸を見渡しても数えられる程しかいないだろう。


他の弟たちには悪いがレイン以外がこの領地を継ぐのは不可能だ。

計略や謀略からは私が守る。

もう少し大きくなったら貴族の蹴落とし方や蹴落とされない様に気をつける事を教えてやればいい。


あいつは少し迂闊なところがあるからな

そこはしっかり直さねばなるまい。


それから王都に赴き、陛下とのご対面も終わり、あいつが許嫁である王女殿下と会う時がやってきた。

結婚はあいつが生まれる前から決まっていた事だ。

許嫁がいると伝えると物凄い嫌な顔をしたが諦めろとしか言えん。

あと嫌な事があるとすぐ顔にでるとこは直さないとな。


パーティーで王女殿下は顔を知らないはずなのに何故か真っ直ぐにレインのもとまでやってきて(途中邪魔が入ったが)、ご挨拶をなされていた。


私も派閥を残して王女殿下のもとに向かう。

するとレインは王女殿下が自分の許婚だと聞いて放心していた。


嫌なのか嬉しいのかはっきりしない顔だった。

(嬉しいんだな、嬉しいんだよな?よし決めた!こいつは喜んでいる)


今更どうしようもないので喜んでいる事にして話を進める。


簡単な話し合いだったがどうもなかなか気に入られている様だ。

それからこちらの用事が終わり帰ってきたレインを早速呼ぶと、どうもうまくいかなかったらしい。

まだ隠している事がありそうだったが取り敢えずは良い感じで終わったみたいなので後で確認してみる。


次の日の午後、なんとレインの許婚である第二王女が攫われたそうだ。

私もすぐに兵を集め総動員で探さなければならない。


相手はどうも獣人の盗賊らしく王女殿下を使って差別の撤廃を求めるらしい、という情報が入った。

念の為貴族と王族だけにこの事を知らせた。

一般兵からだと情報が漏洩する恐れがあるからだ。

誘拐が成功した時、国中の獣人が立ち上がる恐れがある。

今の時期に内乱はマズイ。


それからしばらく捜索して一度家に帰ってみるとスクナがいた。

ソフィーと何か話していて、向こうがこちらに気づく。

話を聞いてみるとなんとレインが盗賊を四人も倒し、王女殿下の居場所を見つけたらしい。


ソフィーは私にあったらすぐに引き返す様にと、お願いした。

だがそれは出来ない。

私とて貴族だ。

あいつと王女殿下の関係を揺るぎないものとする絶好の機会をみすみす逃すわけにはいかないからだ。


初めは付いてくるだけでも意味がある程度にしか思っていなかったのだが、レインのところから王女殿下のところまで行くのに斥候の1人もいないで無事倉庫までついた。


ものものしくはあるが、こちらが倉庫に向かっていると言う情報は掴んでいないらしい。

幾ら何でも彼らの索敵がそこまでザルだとはさすがに思えない。

ならさっきのスクナたちが少し離れたやつだろう。


後でしっかり話し合わねばなるまい。


そして倉庫襲撃となり、なるべくこちら側に被害を出さず制圧したい。

強力な身体能力を持つ獣人と正面衝突はさすがに遠慮したい。

包囲すればガムシャラに突っ込んで来る可能性もある。

混乱に乗じて王女殿下を連れて逃げられでもしたら元も子もない。

待って援軍を待つという手しかないか・・・と考えて、チラリとレインを見る。

レインは困った様な顔をしてブツブツと何かを言い出した。

目潰しがどうとか、突入がどうとかだ。

それからすぐに策を思いついたといい、聞いてみるとレインが敵の大将の懐に飛び込みあいつが家から持ってきた閃光玉を破裂させ、それと同時に我々が突入、横からレインの逃げ道の為に土魔法で壁を崩すという作戦だった。


危険だと思ったがあいつならやれる、そんな根拠のない自信の様なものを感じ、実行してみるとこれが面白いほどうまくいった。

連携はおざなりだったが私の直轄の騎士を前衛にして衛兵を突っ込ませると目をやられ怯んだ盗賊達はアッサリと壊滅した。


後でわかったことだが敵の大将が気絶して指揮系統が崩れた為だろう。


レインはというと端っこの方で王女様に抱きつかれていた。


(よし!あいつが公爵家を継ぐことはこれで揺るがないな!)

と心で頷きながらそちらに行き、貴族としての務めを果たす。


それから王都の騎士がすぐに来て王女殿下が帰り、レインも騎士を護衛につけて返すことにした。

帰るとソフィーが待っていることに気がつき、取り押さえてでも返す様にと騎士達に命じておく。

まああいつなら余裕で逃げられるがな。


皇帝陛下にご報告してやっと帰れるとなった時だ。


「レイン様が突然叫び出し血を吐いて倒れました!!」


と言う報告が来たのは。

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― 新着の感想 ―
[一言] 国のトップが王陛下から皇帝陛下になってます
2021/11/25 16:38 退会済み
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