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異世界で始める人生改革 ~貴族編〜  作者: 桐地栄人
〜第三章〜 成長期
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第113話 百年も探したのか

一つ前にも書きましたが書籍化致しました。詳しくは活動報告で。

「冒険者……ですか」

その単語に俺は渋い顔をする。

俺のトラウマを引き出してくる言葉だ。二年前の事は今思い出しても頭を抱えてしまうトラウマものだ。

そんな俺の様子を見ながらお父様は続ける。

「冒険者、と言っても真似ごとのようなものだ。この戦で、お前の実力不足はやはり問題があることがわかった。本来ならお前の周りを強くすればいいだけの話ではある。しかし、今のポルネシアにそこまでの戦力は存在しない。それに、例え軍を見捨ててでもお前には生き残ってもらわなければならん」

「それは……」

お父様のその言葉に俺は思わず口に出す。

それは未だ平行線の問題だ。俺は逃げない。お父様は逃げろという。

反論しようとする俺の言葉をお父様は手を前に出し、塞ぐ。

「分かっている。今ここで私がお前を説得し、頷かせたとしても、お前は結局そこで戦い続けるだろう」

「……」

その通りだ。

「仮に逃げたとしてもお前は引きずるだろうな」

「はい」

俺は素直に頷く。全くもってその通りだ。

「ならば、そこにいる者達でその場をなんとかしなければならん。そうだろう?」

「そうです」

はっきりと頷く。

「だからお前自身、経験を積ませる為にダンジョンに潜ってもらう」

「僕は顔が既に世間に知れてしまっています。ダンジョンに潜る以上、その近くの町に滞在する必要がありますよね?一ヶ月くらいならまだしもそれ以上、隠し通せる自信は……あまりないです」

顔バレをしてしまった場合、今の俺はちょっとマズイ立ち位置にある。帝国がどう動くかはわからないけど何もしないって事はないだろうか。

(ならば、街を転々とするのだろうか?ポルネシア王国内にそんなにダンジョンってあったっけ。

「ああ、だから普通のダンジョンには行かせられない」

お父様は意味深な言葉を告げてくる。

「はぁ、と、言いますと」

俺の振りにお父様を大げさなまでに大きく頷き、真剣な顔で話を続ける。

「お前に任せるのはオリオン領内から他貴族領内にまで渡ってある、広大な森林ダンジョン。通称『迷いの森』だ」

「なっ……」

入ったら出れないとまで言われている広大な森に囲まれている地表に出ている形のダンジョン。確かにそこならば顔バレの心配はないだろう。そもそも潜っている人がいないからだ。

「入ったら出れない未知のダンジョンですよ?僕やスクナ達だけで行くのはちょっと……」

「そんなわけないだろ」

「そうでしたか」

一瞬スクナ達だけを連れて行くんじゃないかと思ってびっくりしてしまった。

「他にも問題はあります。入ったら出れないダンジョンですから、僕が入ったら……」

「対策は考えてあるのだろう?」

俺が不安要素を話そうとするとお父様が口を挟む。その顔は一転してこちらを試すような顔だ。

一応はあるのだが……不安要素が多い。

取り敢えず、といった感じで話す。

「はい、まあ一応考えはしましたが……」

「話してみよ」

「わかりました……。ええっと、神眼を使うんです」

「ほぉ?」

「神眼は僕を中心に、一定の距離を空からでも見続けることが出来ます。それを使って見えるギリギリの位置を見続け、見ている場所まで移動します。移動出来たらもう一度これと同じことをします。これを繰り返せばいずれ森を出る事は可能です」

迷いの森は俺の知る限り、木が移動するだけのダンジョンだ。

法則性を理解しないと同じ場所を無限にループする、などといった事はない。

ちゃんと真っ直ぐ同じ方向に歩けるのであればちゃんと迷いの森を出る事は可能なのだ。

俺の説明にお父様は少し考えた後、疑問を口にする。

「それはデメリットが多くないか?」

「はい」

そう。この作戦はあまりにデメリットが多い。

まず、俺は同じ場所を見続ける必要があるため、ダンジョンには当然いる魔物との戦いに参加出来ない。

強い敵が現れれば参戦するが、参戦すれば魔物を強く意識しなければいけないため、また最初からとなってしまう。

これを繰り返すと永遠に出れなくなる。

次に、俺の神眼には方位磁石の機能は付いていない。それ故、森を出た先が何処なのかわからないという事だ。

森は全体がポルネシア王国内にある為、出たら他国だった、などという事はないが、出たら知らない貴族の領地だった、という事はあり得る。

その貴族がお父様と同じ王族派ならばいい。しかし、王族派と対立する第二夫人の両親みたいに貴族派だった場合、面倒ごとを避ける為に森の中に帰らなければならない。

数週間、数ヶ月単位の大幅な時間ロスだ。

せめて方位磁石があれば話は別なのだが、残念ながら俺の知る限り方位磁石は存在しない。

流石に方位磁石の作り方までは分からない。ありふれているものだが、どうして方位磁石が北を指せるかなんて気にもならなかった。

確か、星は北と南に磁力を帯びているから云々だったと思う。

そこから予想するに、方位磁石の針はN極とS極がある磁石なのではないかと推測できる。支えている針は普通に鉄だろうか?いやわからんけど。

お父様も方位磁石以外は俺と同じ結論だろう。

「長く見積もって出るのに数ヶ月はかかる。出るのにそこまで時間がかかるのであれば使えないな?数ヶ月もここを留守にさせられる程お前は暇ではない」

「はい……」

いや、まあ……ここでやる仕事は暇であって欲しいのだが。

俺は内心愚痴る。他の貴族との会合とかもうなくていいんじゃないかと思う。特にたまに来る気に入られようとグイグイこちらに近づいて来ては話しかけてくる子。キャラが強烈すぎて名前を覚えた。まあブラックリストとしてな。

「ならば私の案を使おう」

お父様が少しドヤ顔をしながら言ってきた。

「いや、案があるなら最初から言ってくださいよ」

ボツ案を長々と語ってしまったじゃないか。

眉を寄せる俺にお父様は笑う。

「はっはっはっ!すまんすまん」

お父様は大笑いだ。真剣な話をしてたんじゃないのか。まあご機嫌ならいいけどさ。

「まあ別に無駄な話をしたわけではない。私はここ数年、忙しくて本をあまり見ておらん。お前は今でも本をたくさん読むだろう?」

「はい、今でも暇があれば」

「読んでいる種類も豊富だから私よりいい案があるかも、と思っただけだ」

「なくて申し訳有りませんでしたね」

俺は頬を膨らませてそっぽを向く。

そんな俺の頭をガシガシと撫でながら、「すまんすまん」と謝ってくる。

「子どもじゃないのですからやめてくださいよ」

「いや子どもだろう」

そうだった。

「では、私、というよりオリオン家が迷いの森が出来てから今までに考えていた攻略法を話そう」

お父様は少し勿体つけるように間を溜める。

「お前の神眼には付いていないスキルだ」

俺の神眼には付いてないスキル?そんな物は腐るほどあるが……。

「それは?」

「それはな……」

俺は前のめりになってそれを聞く体制に入る。

「方位という方角が分かるスキルだ」

スキルならあんのかい!

「そうで……すか」

俺は少し呆れ顔だ。驚きはしたんだが……。それに対してお父様はドヤ顔だ。

因みに樹海、有名なものだと富士の樹海だが、樹海だと方位磁石が狂うというのはデマだ。

この世界にはそんな噂はない。まあそもそも方位磁石がないのだが。

俺の微妙な反応にドヤ顔だったお父様も訝しげな表情をする。

「ふむ?お前は一度会ったことがあるぞ?まあそのすぐ後にあれがあったから記憶にないとは思っていたがな」

「え?」

記憶にない。方位なんてスキルを持っている奴なんていたか?お父様の口ぶりからするとリュミオン戦だろうな。しかし、リュミオン戦で記憶に残っているのは準英雄級との戦いと初戦くらいだ。その中で俺がステータスを見た人の中に方位持ちがいたということか。

暫く考えた末、やっと思い出す。

「ああ、いましたね。リリー様を捜しに行った時に」

「ようやく思い出したか。そうだ、彼だよ。百年近くも探したのにまさか隣国にいるとは思わなかったがな」

そう言ってお父様のではは大笑いする。


百年も探したのか。

方位磁石の作り方をレインが予想しておりますがデタラメなので信じないでくださいm(_ _)m

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