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異世界で始める人生改革 ~貴族編〜  作者: 桐地栄人
〜第三章〜 成長期
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第108話 帰宅直前

「レイン様、旦那様がお帰りになりました」


部屋で魔法の勉強をしていると、ドアをノックしながら、リサさんが声を掛けてきた。


「お?やっとですか!」


腰を掛けていた金の装飾をされたふかふかの椅子から立ち、衣装ケースに向かう。


お父様が帰ってくるのは数ヶ月ぶりだ。リュミオンの事で揉めているのは分かるが、戦争に行ってきた帰りに城に出勤とは同情を隠せない。


家に帰って来たということは一段落ついたのだろう。


久々にお父様が帰って来るということで、普段着ている服ではなく、礼服を着る。

絹で作られている外見を重視された服で、俺が本気で走ったら多分バラバラになる。


シワがないことを確認した後ドアを開け、リサさんを部屋に招き入れる。


「失礼します」


頭を下げながらリサさんがはいってくる。


「どうですか?決まってますか?」


自分では見えない背中の部分を見せながら確認を取る。

久々のお父様なので恥ずかしい姿を見せたくない。


「はい。きっちりとシワなく決まっております」

「ありがとうございます。では、行きましょう」

「はい、レイン様」


その言葉に納得した俺はリサさんを連れて、城の階段を下り庭に出る。


「お待ちしておりました、レイン様」


庭には使用人が勢揃いしており、訓練中の俺の部下達もいた。

代表としてスクナが声を掛けてくる。

服も着替えたのだろう。訓練でついたはずの泥などの汚れなどは一切見受けられない。


久々の旦那様のお帰りは全員でのお出迎えだ。あの第二夫人ですらきている。


「第一夫人であるこの私が一番右端。プロウスの位置も勿論一番右端なのは当たり前ですわよね?」

「そんなわけないでしょう?というか、いつから貴女が第一夫人になったのかしら?」


しかしながら、いつも通りというか並ぶ順番で争っている。

夫人も子どもも前からくるお父様から見て、左端から順番に並ぶのが通常だ。


こんなどうでもいい事でも一番の座が欲しいらしい第二夫人は第一夫人のお母様に食ってかかる。

お母様はお母様で未だに譲れない部分らしく、無視すればいいものを相手をしている。


止めるのも面倒くさいので、俺はいつものその光景を横目に子ども達が並んでいる場所に歩く。


オリオン家の子どもが生まれた順番は上から俺、第二夫人の子どもであるプロウス君、そして第三夫人の娘であるレイシアだ。


なので俺から見て左から俺の場所、プロウス君、レイシアとなる筈だ。


しかし、プロウス君とレイシアの間には明らかな間がある。

ちょうど一人分くらいの間だ。具体的には俺が入れるとぴったりはまりそうな間だ。


その光景を見て溜息をつく。


「はぁ……またか、お前ら」

二人に聞こえるように言ってやると、レイシアが先に口を開く。

「だってプロウスお兄様ったらいつも意地悪ばっかりするのよ!」

それを聞いたプロウス君は七三分けした髪をさらっと撫でながら鼻を鳴らす。


「フン。僕の進行方向にレイシアがいたから退けただけだ。兄の前で立ち塞がっているレイシアが悪い」


キザったらしい態度は第二夫人にでも習ったのだろうか。様になっているのがなんかムカつく。


歩き出し、プロウス君の前に行く。


「まあ、二人の事情はわかりました。取り敢えず、プロウス、邪魔だ」


その場所は俺の位置だ。プロウス君の肩を掴みレイシアの方にずらす。


「ちょっ!レイン!おい!今の僕の話を聞いていたのか?」


俺の圧倒的な腕力でなす術もなく横にずらされたプロウス君は抗議の声を上げる。

しかし、その言葉の中に俺の癪にさわる言葉があった。


「おい?『レイン』?」


肩に掴んでいる手に力を込めながら聞き返す。


「あいだだだ!痛い!痛いですレイン兄様!すいません!」


その言葉を聞いて、頷きながら手を離す。


「お前、俺の見てないところで呼び捨てで呼んでないだろうな?」


凄んで聞く俺にプロウス君は掴まれた肩を摩りながら、慌てて首を横に振る。


「そうか……ならいいです」


言っても仕方ない気がしてきた。


「ぷぅ〜、レインお兄様!私の話、聞いてた?」


一件落着とばかりに前を向いてお父様を待とうとした俺の耳に今度はレイシアの声が聞こえてきた。


仕方なく首をレイシアに向ける。


「聞いてましたよ。今日は我慢してください。久しぶりのお父様のご帰宅なのですから」

「むぅ……」

渋々といった形でレイシアが前を向く。

レイシアは俺の言う事をよく聞いてくれるので助かる。


「僕は納得してないぞ」


しかしいう事を聞いてくれない子もいる。


「プロウス。妹がいう事を聞いているのに兄であるお前がワガママを言ってどうする」

「しかし……」


なおも食い下がろうとするプロウス君に俺はとっておきの言葉を投げかける。


「言い訳をする貴族はダサいぞ」

「グッ……わかったよ」


プロウス君も渋々といった感じで前を向く。

こいつは貴族の部分を刺激すると弱い。


どちらも母親の教育の方針の表れだろう。


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