《第8楽章》 繋がった行き先
鬱蒼と手招きする茶深い森の中心に建つ洋館。キッドは、蔦だか苔だか分からないぐらいの緑に覆われたバルコニーに降り立った。
「苦手なんだよな、あいつ。けど他に当てもねーし、サクッと情報仕入れてずらからねーと。……って、何やってんだ?」
覗き込んだキッドの深碧の瞳に映ったのは、部屋の主がカード遊びに興じている姿だった。時折引き上がる口端が、ふと小さく開かれたまま止まった。
そのままの状態で二、三秒。まるでそこだけ時が止まってしまったように微動だにしない。そして――。
おもむろに泳がせた目線がキッドを捉えた。
「やっぱり来たのね、キッド。いえ、今日は黒羽君として、かしら?」
緋色混じりの涼しげな瞳の少女は、キッドに向かって微かな笑みを見せた。それからカードに目線を戻し、思いついたように問うた。
「あなたも一枚引いてみる? きっとあなたの探してる答が出るかも。そう――あの子とあなたの因縁、とかね」
「はァ? 何言ってっか解んねーよ。大体オレとあの子にどんな――」
「それを知る為に一枚どうかって言ってるのよ。さあ、どうするの?」
含みを籠めた視線がキッドを捕らえて離さない。逃げ場を遮るように見透かされて瞬き一つも覚束ない。
キッドは半ば呆れて少女を一瞥した後、カードが置かれたテーブルに近づいて手を伸ばした。
「さあ引いたぜ? このカードに何の意味があるのか教えて貰おうじゃねーか、紅子!」
「あら、わたしに聞かなくても解るでしょ? IQ四百もあるんだから、謎なんか直ぐに解けるんじゃなくって?」
「バァロ。確かに心当たりはあるけどよ。……幾らなんでも――」
「ありえない……? 一つ面白い事教えてあげるわ。あの子も[そのカード]に惹かれてしまったのよ。そしてあなたが今――。偶然では片付けられないんじゃなくって?」
紅子に投げ掛けられた言葉を、キッドは口の中でかみ砕いた。そして答えも見つけた。
深碧の瞳に鋭い光を宿しつつ、片眼鏡の奥ではポーカーフェイスが現実離れした現実を受け入れていた。
「面白そうじゃねーか。[エ・テメン・アン・キ] ――つまり[バベルの塔]が、オレとあの灰原って子を、って事か。フッ…悪ぃけど負ける訳にはいかねー。キッドの名に賭けてもな」
心の中で静かに宣戦布告を終えたキッドは、暗みかかった空に向かって翼を広げた。そして今まさに飛び立とうと脚に力を入れた時、紅子の言葉が勢いを奪った。
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