《第2楽章》 タロットカードが指し示す導べ
その日の夕方、哀は何の気無しにタロットカードで遊んでいた。
特別楽しんでいた訳ではなかったが、気晴らし程度にはなった。
けれど、昼間工藤邸で感じた事がどうしてだか頭から離れずにいて、集中する事は出来なかった。
「あの時感じた、わたしとは違う自分。あれって何だったのかしらね」
まるで別の人格が表に出てきたような不思議な感覚だった。今思えば不可解な事だ。
識らない筈の文字を読めた事も勿論だが、書かれていた内容に惹かれてしまった自分が解らない。
そして、それを目に留めて薄ら嗤った自分に違和感を抱かずにいられない。
「どういう事なのかしら。あの本に何か秘密が……?」
そう呟いてみて自嘲した。馬鹿馬鹿しいと失笑を零す。
まさか、と一瞬掠めた考えも打ち消した。もう一度頭の中で反芻して声に出す。
「何かの呪いとかではなさそうだけど……。とにかく気にしない事にしなきゃね」
そして気を取り直して一枚ずつカードをめくってゆく。するとあるカードを目に留めた事で哀の指先が動きを止めた。
一見何の変哲もない、ただのタロットカードだ。けれど哀の深層で警告音が鳴り響いた。
そして同時に、別の誰かが自分の中で躍動を始めた事に気付いた。
ざわざわと全身の血が騒ぎ立てるようで、眩暈さえ覚えるほど身体が震えて止まらない。
「そういう事だったのね。あの時わたしの中に入ってきたのは、遠い昔の……」
そう結論づけた哀の瞳はタロットカードの『塔』を、妖しく映し取っていた。
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