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ある魔心導師と愚者の話 作者:藤一左

《禍根の瞳》編

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第零話『禍根の瞳』

 無限の闇が広がっている。そんな空間に一人で居た。足元に地面は無いが、浮遊感も無い。その時点でもう、夢だと悟った。

 ただ何も無い空間を見回すと、遠くにひとつ、白い点が見えた。

 光だ。

 そう思って歩を進める。つま先が蹴るものも無いのに、身体は進む。

 いや、進んでいるのだろうか。白い点は確かに近付いているが、これが果たして前進なのか。それが疑問だった。

 だが、少し歩いて、前進などでは無いと気付いた。血管の中で虫が蠢くかのような嫌悪感に、歩く力を奪われ、俺は立ち止まる。

 白い点。光だと思っていたものは、目だった。

 身体も顔も無い。ただ、瞳だけがこちらを見ている。

 俺は後ずさった。逃げろと本能が叫ぶ。

 どうせあいつに勝てやしないのだ。戦うことさえ出来ない。

 あいつは俺の過去だ。いつぞや、小学校の教室を埋め尽くした瞳が、俺を見つめている。

 だが、逃げ出す事さえ出来なかった。

 その瞳が、暗い空間のそこかしこに現れたのだ。

 急激に増殖したそいつは、数秒の内に数え切れないほどになり、空間を埋め尽くす。

 その全てが、俺を見ている気がした。

 見るな、と、叫ぶ事さえ出来ない。

 呼吸さえも止まる。瞳しか無い空間に、血塗られた教室の風景がフラッシュバックする。黒い手が握る鋭利な鋏がチラついて、そいつが俺の心を切り裂く。

 俺を嘲笑っている気がした。

 罵声を浴びせている気もした。

 何も出来なかった無能な俺を、哀れんでいるようでもあった。

 最後に、視界を塞ぐほど大きな血走った眼が現れて、気を失うようにして、その夢は唐突に終わった。
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