表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

異世界転生・転移の文芸・SF・その他関係

本職の方々が異世界転移するとか何とか

作者: よぎそーと

「あれ?」

「ここは?」

 気づいたら彼らは見知らぬ場所にやってきていた。

 洞穴のような場所で、祭壇がしつられられている。

 その前に、あわせて四人。

 お互いに初対面だった。



「ええと」

「ここは?」

 とりあえず相手に声をかけるついでにそんな事を尋ねる者もいる。

「いや、俺もいきなりこんな所にいたから」

「俺もだ」

「私も」

「…………」

 男三人、女一人。

 共通点もほとんど見あたらない四人であるが、それぞれ特徴をもった格好をしていた。



 一人は、トレーニングウェアのようなジャージを身につけている。

 一人は、作業服を身につけている。

 一人は、神社の神子さんの格好をしている。

 一人は、眼鏡で背広のサラリーマンスタイル。



 それぞれタイプは違うが、各自の個性を示していた。

 そんな事をお互いを見つつ感じていた四人に、突然声がかかる。



 ────よくぞ参った、選ばれし者達よ



 頭の中に直接響くような声だった。

「誰だ?!」

 トレーニングウェアの男が叫ぶ。



 ────案ずるな、そなた達をここに呼び寄せた者だ。



「呼び寄せた?」

 問い返す作業服の男は、周囲に目をやって声の出た方向を探そうとする。



 ────うむ。この世界は危機に瀕している

 ────それを救ってほしい



「そんな、私たちそんな力なんか」

 神子姿の少女があわてる。

 実際、彼女にはそんな大それた事が出来る力はなかった。



 ────なに、安心せい。その為の力も引き出す

 ────そなた達が秘めた力だ

 ────それを用いれば、この世界を救えるだろう



「…………」

 呆然とするサラリーマンは、驚いてるのか呆れてるのか、ポカンと口を開いてしまっている。

 無理もないだろう。

 いきなりこんな事になってしまっては。



 ────時間もない。すぐにここから出て、南に向かうがよい

 ────託宣は出した。すぐ近くにある村で迎えの者もいよう



「ちょっと待ってくれよ」

「いきなり言われたって」

「無理ですよ…………」

「…………」

 四人それぞれが違った形で荷が重いと意志を示す。

 しかし声の主はそんな彼らの言い分を聞き入れる事はない。



 ────では、これよりそなたらの力を引き出す

 ────しかし、その力も最初から強大なわけではない

 ────用いて鍛える事を、ゆめゆめ忘れるな。



 その声が終わった直後、洞窟内に光が満ちる。

「な!」

「う!」

「きゃ!」

「…………!」

 まぶしさに目を閉じる四人。

 そんな彼らの頭に。



 ────頼んだぞ。私ももう力が足りない

 ────これより先、助力も難しい

 ────手引きもろくに出来ずすまないが、どうかがんばってほしい



 光の中で声がだんだんと小さくなっていく。



 ────お前達の力は、元の世界で本職をそのままにしたものだ

 ────案ずることはない…………



 その声は最後は聞こえないほど小さくなっていった。

 そして光が消えていく。

 直後に、

「…………はあ!?」

「なんだこりゃあ…………」

「あの、これって」

「…………?!」

 驚いきの声があがる。

 四人それぞれの目の前にはある意味見慣れたものが浮かんでいた。



「…………」

「…………」

「…………」

「…………ステータス画面?」

 今まで無言だったサラリーマンが口を開いた。



 その通り、彼らの前に浮かんでいるのは、RPGなどで見るステータス画面のようなものだった。

 体力や器用さなどの身体能力とそれをあらわしてるのだろう数値。

 それと、もってる技術を書いてる部分。

 彼らの能力がどれくらいなのかが一目で分かる。



 個別の能力や技術が何を指してるのか、数値の大きさがどれくらいの意味をもつのかなどはまだ分からないが。

 また、ステータス画面の上に職業のようなものが表示されている。

 おそらくそれが彼らの役目なのだろう。



「ええっと、戦士?」

 トレーニングウェアの男が呟いた。

「まあ、格闘やってたしなあ」



「俺は盗賊だ」

 作業服の男が何とも言い難い顔をしてる。

「そりゃあ錠前師だったけど」

 鍵を無くした場合などにそれを開く仕事だ

 確かに盗賊と言えば盗賊なのかもしれないが、やってる事は真逆なので色々思うところもあるだろう。



「私は神官ですね」

 神子さんはそのまんまだった。

「魔法も使えるみたいですね」

 技術の部分を見て口にする。

 それが今までと違うところであった。

 彼女は神子さんであるが、霊感があるわけでもない一般的な人間だったのだから。



 最後に残ったサラリーマンは、

「…………」

と呆然としてる。



「おう、どうした」

「何かあったんか?」

 無言のままの男に、戦士と盗賊( になった )の二人が声をかける。

 それでも呆然としているサラリーマンは、「あ、あの」とどもりなが口を開く。

「それが、ええっと」

 何か言いにくそうにサラリーマンは言いあぐねている。



「まずい事でもあったのか?」

「おかしな事があるなら言ってくれ。言わないでいる事のほうがよっぽどまずい」

 二人の後ろで、神官である神子さんが心配そうに見つめている。

 出会ったばかりだが、三人は相手を気遣う事ができる人間のようだった。

 それを察して、サラリーマンも意を決する。

「俺、俺……」

 それでも何度も言いよどむが、そこから勇気を出して言った。



「魔法使いだった」



 一瞬、その意味する所を三人は理解できなかった。

 が、すぐに盗賊が、

「あ、ああ……」

と頷いた。

「そうか、そうなんだ……」

 とても哀れむような、憐憫の声をあげる。



 戦士も、

「なるほど……」

 と意味を理解したようだった。



 残った神官の神子さんは、

「…………」

と気まずそうにうつむいている。



 サラリーマンあらため魔法使いは、そんな三人の気持ちが逆に痛かった。

「まあなんだ」

「そういう事もあるって」

「ええっと、あの」

 何とか声をかけようと、三人は必死だった。

 また、言葉を慎重に選んでもいた。

 人としてありがたいが、それが魔法使いには切なかった。



 だから、

「いいんだ」

 必死になって言葉を放った。

「俺、魔法使いだったから、もともと」

 本当に魔法が使えたわけではない。

 だが、魔法使いになれるという条件を満たしてしまっていたのは確かだった。



 三十歳以上、異性経験なし。



 魔法使いになれる(というか、なってしまう)という条件を男は満たしてしまっていた。

 それは根も葉もない噂やネタでしかないのだが。

 まさかそれが本当に魔法使いになろうとは。

 予想もしなかった展開に、そしてサラリーマンのこれまでに思いをはせ、三人は沈黙せざるえなかった。

 サラリーマンであり魔法使いでもある男も、いたたまれなさから口を閉じるしかない。



「まあ、それならそれで、今後がんばっていこう」

 この中では魔法使いに次いで年齢が高いであろう盗賊がそう言う。

「とにかく外に出よう。ここにいてももう意味はないみたいだし」

「そうですね、そうしましょう!」

 神官神子さんもその声にのる。

 先を促すと言うより、この場のこの空気からとりあえず逃げたいようであったが。



「じゃ、いこうぜ」

 無理して明るい声をあげる戦士が先頭に立つ。

 そんな三人の後ろを、うつむいたサラリーマン魔法使いが追っていった。



 空手、柔道、拳法を身につけた格闘家の戦士。

 錠前師であり、様々な工作技術を身につけた盗賊。

 神社で神子をしていた神官。

 目立たず騒がず平坦で何もない人生を歩んでいたサラリーマンの魔法使い。

 四人の冒険はここからはじまった。



 洞穴を抜けた先に拡がる景色。

 その先に見えた村。

 そこを目指して歩く四人。

 それがこの冒険の第一歩となった。

 一番最後を歩く魔法使いが同じ事を呟き続ける。

「なんでこんな事に……」

 その声は誰に聞かれるともなく風にかきけされていった。

そこおおおおおおおおおおおお!

そこのお前、そうお前だ、画面の前の。

「え、なに、これ作者のこと」とか「あっ(察し)」とか言うなああああああ!



まあ、タイトルで既にネタバレしてるとは思いますが。

楽しんでくれれば幸いです。



必要なかったかもしれんですが、R15指定にしておきました。

何がどこでひっかかるか分からないので。



では、また次回。




気に入ったらブックマーク

面白いと思ったら評価点なども


「いいね」ももらえると俺が喜びます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。




後書き、そして活動支援はこちら↓

これまで費やした執筆時間:人生
https://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/485935721.html
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ