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過去作品集
作:雪芳



童謡(エッセイ)


童謡に「赤い靴」というものがある。

 赤い靴はいてた女の子
 異人さんにつれられて行っちゃった
 横浜の波止場から船に乗って
 異人さんに連れられて行っちゃった
 今では青い目になっちゃって
 異人さんのお国にいるんだろう
 赤い靴見るたび考える
 異人さんに逢うたび考える

 このように童謡「赤い靴」は、なんとも不思議な歌詞をもっている。そのためか、この歌に関する都市伝説はとても多い。特に、「赤い靴を履いていた女の子は、異人に誘拐され、海外に売られた」という意味である。というものが主流となっている。

 はたして、真相はどうなのか。

 赤い靴は1922年に童謡作詞家である野口雨情が作詞し、発表したものだ。このとき雨情はある少女の実話をもとにした。
 岩崎きみ(明治37年7月15日清水市宮加三生まれ)、彼女が赤い靴の少女のモデルなのである。

 きみの母親は、北海道へ仕事のためにわたることとなった。しかし慣れない土地で子供を育てる自信がなかった。そのために母親はアメリカの宣教師にきみを預けてしまった。
 そしてそのまま、きみは宣教師と共にアメリカにわたった……、ならばまだ救いがあったかもしれない。
 きみは不幸にも体調を崩し、宣教師によって今度は養護施設に預けられてしまうのだ。宣教師はきみを置いて、横浜の波止場から海外へと旅立っていった。
 そして幼き少女・きみは、預けられた孤児院で、わずか九歳という年齢で、この世を去った。

 死にゆく少女の心は、どのようなものだったろうか。母親に捨てられ、宣教師にも捨てられたと絶望していたろうか。今では分からないが……、このことをしった雨情は彼女をあえて健康のまま生かし、海外へと渡らせた。
 柔らかなメロディをもった、童謡という形で。

 奇妙な歌詞の意味だけが残酷に世の中に広まっていく。しかし雨情が赤い靴に託した感情は、とても暖かいものだったのではないだろうか。個人的な推測ではあるが、私はそう思ってやまない。












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