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過去作品集
作:雪芳



ピエロ恐怖症(エッセイ)


 ピエロ恐怖症というものがある。読んで字の如く、ピエロに恐怖心を抱いてしまう病だ。
 人によって症状はまちまちで、イラストだけで身がすくんでしまう人や、顔にピエロの化粧をほどこした人を見るだけで卒倒してしまう人までいる。
 実は情報提供者もピエロは苦手で、昔はマクドナルドのCMを見ただけで夜眠れなくなるほどであった。何が理由でそれほど恐ろしく思うのかはわからないのだが、とにかくピエロを見ると嫌な気分になる。

 この奇妙な病であるが、軽度であれ重度であれ、持っている人は意外にも少なくない。映画パイレーツオブカリビアンなどヒットで一躍時の人となった俳優ジョニー・デップもまた、ピエロ恐怖症である。彼はピエロを見ると恐怖心に駆られるという。
 しかしその一方で、かの有名な殺人鬼ゲイシーが描いたピエロのイラストを大切に所持している。もしかしたら彼の場合、畏怖と同時に憧憬の念もまたあるのかもしれない。

 さて、このピエロ症候群ではあるが、いったいどのような経緯で発症するのか。それは、二種類の仮説があげられている。

 まず、映画やドラマの影響。
 ホラーの巨匠S・キングの著書にITというタイトルのものがあるが、それに出てくるピエロは狂気的な存在である。この作品の限りではなく、ピエロを題材にしたホラー作品は多い。
 これらを幼少時に見たためにトラウマとして残ってしまったというものがひとつ。

 もうひとつは、ピエロの笑顔だ。
 ピエロの仕事は人を笑わせることであり、当然ピエロ自身も常に笑っている。白塗りに映えた口紅は頬の真ん中まで引かれており、どのような状態でも彼らは笑顔となる。だがそれこそが恐怖を生むのだ。
 誰もが理解していることだが、人は笑い続けることができない。時に怒り、泣き、表情豊かに生きているのだ。だからこそピエロは不自然であり、この不自然さが不信となる。
 不信の芽生えはいわば危機回避の本能である。この本能の働きによって、無意識に人はピエロに感じるのだ。未知への戦慄を。

 ピエロ恐怖症の人が世界で何人いるのかは正確にはわかっていない。病気自体無名に等しく、なによりピエロに対して恐怖心を抱くことが殆ど無意味であることを多くの人が知っているから、まず表には出てこない(ただし一部にはピエロ恐怖症に苦しむ過激な道化批判主義者も存在する)。
 奇妙な、だが実在する病である。












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