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  過去作品集 作者:雪芳
閑話休題(???)
「漆黒の聖母」
 聖母という言葉を聞いたとき、あなたはどんなものを想像するだろう。多くの日本人は、石像で象られた白い肌の美しい女性を思い浮かべる。しかし世界には、黒い肌の聖母も存在する。

 黒い聖母をみる人の中には、その異様な姿からまがまがしいと感じるかもしれない。しかしかのマリアたちは、篤い信仰を捧げられてきた。
 キリスト教圏ではしばしば、黒は光のない状態をあらわし、時に罪の象徴とされて忌み嫌われてきた。

 しかし他の宗教では黒は必ずしも悪を示す色ではなかった。彼らにとって黒は大地の色であり、生命を生む根源的な色であった。つまり女神の色であったのである。
 偉大な大地母神たちの多くは黒い肌として像を造られることがある。黒い聖母の像は、おそらく大地母神の伝承と解け合い生まれたものとされている。

 海外で黒い聖母像を見かけたら、あなたは恐怖を感じるかもしれない。
 しかしそれは無知ゆえの先入観からくるものである。おののく前に周囲を冷静に見渡してほしい。そして気づいてほしい。そこに地元民たちの、確かな崇敬の念があることを。

「サンヒャン・ドゥダリ」
 バリに伝わる呪術。名前の中のヒャンは神、ドゥダリとは天女のこと。

 天女の格好をさせた思春期前の処女たちが登場する。彼女たちは花のような装飾がついた金色のかんむりに、白いローブを腰に巻いている。日本の天女とはかなり違うスタイルだ。

 少女たちに依り代である人形・ブランムンドマム(熱に浮かされた月という意味)を使わせ、カジャクレオン(満月と新月のこと)のお告げをもたらす。

 少女たちが猟奇的な歌を唄うと、なんとブランムンドマムが踊りだすのだ。その様から、バリのこっくりさんと呼ばれている。

 ちなみに歌はこんな感じ。

 月の光に咲く花なぁに?
 つまんで見上げりゃ
 真っ赤なお池
 耳なし
 鼻なし
 口もなし
 ころころ転がる
 目玉にパクリ

 今でもバリで踊られている伝統的な呪術だ。

「塩の致死量」
 どんなものにも致死量が存在する。馴染み深い調味料「塩」もその例外ではない。塩の致死量は一キログラムにつき0.5g〜5.0gと言われている。致死量に達しなくとも、大量の塩を一度で取り入れることにより脳浮腫や肺浮腫といった障害が起こることもあるという。
 この塩で、一人の少女が死んだ。

 場所はドイツのルートウィヒハーフェンの病院だった。ある少女が脳性発作で病院に担ぎ込まれた。
 原因不明。なすすべなく、そのまま少女は亡くなった。
 医師たちは原因を解明するべく少女の身辺とその体を解剖した。すると恐ろしいことが判明した。

 少女は両親から虐待を受けていた。そして、血液中の塩化ナトリウム(塩)の濃度が極端に高い状態であった。
 その事実を突きつけられ、母親(当時22歳)は、少女が塩を勝手に飲み込んだに違いないと主張した。しかし検証の結果、塩は少女の手の届かない場所にあったことが判明した。そもそも、そんなにも大量の塩を普通の人間が飲み込むことなどありえない。塩辛くて、吐き出してしまう。

 少女は強制されて、何者かに塩を食べさせられたのだ。

 そして後日、少女の母親は逮捕された。大さじ山盛り2杯分の塩を加えたプリンを少女に食べさせたという警察の訴えによるものだった。
 少女はどのような気分で恐ろしく塩辛いプリンを完食したのだろうか。そして母親は、どのような気分で恐ろしく塩辛く、嘔吐してもおかしくないほどのプリンを実の娘に食べさせたのか。

 心の闇に致死量があるのならば、それはいったいどれほどの量なのだろう。




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