トミノの地獄(史実)
比較文学者であり映画史家の四方田犬彦氏(ご存命です)が2004年に発表した「心は転がる石のように」という著書に、世にも奇妙な話が掲載されています。
それは、「絶対に読んではいけない詩」というもの。なんでも、声に出して朗読してしまうと凶事が起こってしまうのだとか。
この詩を読んでしまったために有名な劇作家である寺山修司は亡くなってしまった、などのいわくつきです。ただしこれに対しては、最近広まった話題であり、根拠を裏付ける資料はそれほどないようです。ですが、朗読して具合の悪くなったという体験談は探したところ少なくありませんでした。
トミノの地獄は、トミノという少年が地獄を旅する姿を描いた詩です。
作者は西條八十(1892〜1970)氏。トミノの地獄が収録された詩集「砂金」を処女作として発表し、著名な印象派詩人・童話詩人としての人生を歩みだしました。歌謡曲を作るなど、明るい創作もされていたようです。ちなみに名前は本名で、両親が「九(苦)がないように」と祈りをこめてつけられたそうです。
さて、余談はこれくらいにして、噂となっている詩を掲載したいと思います。それではどうぞ。
*トミノの地獄
姉は血を吐く、妹は火吐く、
可愛いトミノは宝玉を吐く。
ひとり地獄に落ちゆくトミノ、
地獄くらやみ花も無き。
鞭で叩くはトミノの姉か、
鞭の朱総が気にかかる。
叩けや叩きやれ叩かずとても、
無間地獄はひとつみち。
暗い地獄へ案内をたのむ、
金の羊に、鶯に。
皮の嚢にやいくらほど入れよ、
無間地獄の旅支度。
春が来て候林に谿に、
暗い地獄谷七曲り。
籠にや鶯、車にや羊、
可愛いトミノの眼にや涙。
啼けよ、鶯、林の雨に
妹恋しと声かぎり。
啼けば反響が地獄にひびき、
狐牡丹の花がさく。
地獄七山七谿めぐる、
可愛いトミノのひとり旅。
地獄ござらばもて来てたもれ、
針の御山の留針を。
赤い留針だてにはささぬ、
可愛いトミノのめじるしに。
なんとも不思議な、そして綺麗な詩だなと自分は思います。
西條氏はどんな気持ちでこのような作品を綴ったのでしょうか。はたして呪いはどこからやってきたのでしょうか。このような形で後世に語られることを、予測していたでしょうか。
また、四方田氏はどのような気持ちでこの話を本にしたためたのでしょうか。取材によって明らかになった呪いなのか、はたまた怪人アンサー的な実験なのか、はたまたそれ以上の考えがあるのか。
真相は定かではありません。
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