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  過去作品集 作者:雪芳
霊感少女(エッセイ)
 小学生の低学年くらいだったろうか。同じクラスに自称霊感少女がいた。名前はめぐみちゃん――。

 彼女はよく誰もいない場所を指さしては、「あそこに幽霊がいる。女の人」「小さい子がこっちみてるわ」などと言って、みんなを怖がらせていた。めぐみちゃんと私は仲良しで、よく群をなして歩いていた。歩いている間、めぐみちゃんは何度も指をさしては言うのだ。

「あそこにいるよ」と。

 それは殆ど毎日で、私はめぐみちゃんとの会話はそういう幽霊話しか覚えていないくらいだ。彼女は指をさしながら、キャアとかワァとか怖がる私たちをみて、いつも誇らしそうにしていた。

 そんな彼女に対し、次第に周囲の女の子は「嘘つきだ」と陰で囁いていた。今思えば嫉妬だと思う。霊感があり幽霊がみえるということは当時の小学生にとって憧れで、幽霊が見えると言い触らすめぐみちゃんは、みんなの気持ちを逆撫でていたに違いない。
 でもそんなことは露知らず、めぐみちゃんは指をさし続けていた。

 だけれどある日。
 突然、めぐみちゃんは指をさすのをやめた。

 あれほど幽霊の話しかしていなかったのに、手のひらを返すように押し黙る。私は心配した。陰の悪口がめぐみちゃんに伝わってしまったのではないかと。
 私は意を決し、こうたずねた。
「幽霊を指ささなくていいの?」

 するとめぐみちゃんは、こう返したのだ。
「もう指をさせなくなったの」、と。

 その時の私はそれで納得し、それからはもう、めぐみちゃんと幽霊話をすることはなくなった。
 今思えば、どうしてそんな言葉で単純に納得したのだろう、と思う。めぐみちゃんは自分が陰口を言われていることを全く知らなかったし、第一「もう指をさせなくなった」ということはどういうことだったのか……。

 今となっては、真相は闇の中だ。

 果たして、彼女は本当に幽霊が見えていたのか。私は大人になった今でも時折、めぐみちゃんのことを思い出し、考えてしまう。


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