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第2部
第84話 裏切りのペナルティ
さすがはサブナック、簡単には勝たせてくれない。
だがここまで来て引き下がれない。

こいつだけは倒さなければ!


84 裏切りのペナルティ


お互いに距離をとって一息つく。

『パイモン、大丈夫?』

俺のサポートに徹していたヴォラクが俺に歩み寄った。
俺よりも傷を負っているお前の方が大丈夫かと思うがな。

『平気だ。お前こそ大丈夫か?』
『うん、でも中々上手くいかないね。第一馬に乗られたんじゃ……』

確かにあっちの方が移動力は高い。
あの馬がいる限り、どうしようもないな。

『ヴォラク、ヴアル、お前達はシメオンを狙ってくれないか?俺が囮になろう』
『シメオンを?』
『騎馬と歩兵じゃ圧倒的に不利過ぎる。それにシメオン自体も俺たちに攻撃を仕掛けてくる。俺が囮になって、できるだけシメオンを行動させないようにする。その隙に一気に狙ってくれ。あいつがいなくなれば俺とお前で倒せるはずだ』

サブナックも俺たちと同じ。いや、3人を相手にしてる時点で俺たちよりも疲弊してるはずだ。
ヴォラクは頷いて、ヴアルに耳打ちをする。

『小細工か……何を企んでいる?』
『さぁな』

俺はサブナックめがけて走りだす。
そしてジャンプして斬りかかった。
攻撃を受け止められて着地した俺にシメオンが襲い掛かる。
俺はその攻撃を何とか避けて、また斬りかかった。

『無謀な……あまり動きまわると疲れるぞ』
『ご忠告どうも』

走りまわる機会は与えない。
この位置のまま保たなければ!
しかしシメオンは俺を蹴散らして距離をとろうとしている。まったく頭のいい馬だな。

『いっけぇ!』

俺がシメオンの攻撃を避けていると、ヴォラクがサブナックに斬りかかった。
剣と剣がぶつかる音を立てた後、サブナックはすぐにヴォラクの剣をはじき返した。

『攻撃が単調だな』
『勝手に言ってればぁ?どちらにせよ逃がさないかんね』

よし。これで何とかなるな。
ヴアルは指先に力を集めている。かなりでかい爆発にするみたいだな。

『ヴォラク。結界はっとけ』
『え?』

距離をとったヴォラクに俺は近づき、耳打ちをした。

『ヴアルの奴。かなり大規模な爆発を起こすみたいだ。音が漏れるぞ』
『りょーかい』

ヴアルが準備が整ったのか、サブナックを指差す。
いける!

『これは……』

瞬時に避けた俺は何とか爆発に巻き込まれることはなかったがヴアルの奴、シメオンだけじゃなくサブナックも巻き込めるほどの爆発を作り出したな。
ヴォラクが一瞬で結界を張ってくれたおかげで、何とか音は外に漏れずに済みそうだ。
煙の中で目を凝らすと、横たわっているシメオンの姿。
確実にあいつはやれたな。だがサブナックは……

『なかなか見事、と言うべきか。面白いものを見せてもらった』

傷だらけになったとはいえ…あの爆発に巻き込まれても立ってられるとはな。

『お前達との戦、楽しかったが時間だ』
『なに言ってんの。シメオンがやられたからって逃げる気かぁ?』

サブナック1人のなった事で勝利を確信したのか、ヴォラクはにやりと笑い、剣を向ける。
しかしサブナックは薄い笑みを絶やさず、動揺している様子も全く見られない。
まだ何か策があるのか?

『誰も逃げられはしない。だが死ぬのはお前たちだ』

サブナックが笑いながら俺たちに指をさす。

『腐れ』
『な!』

サブナックがそう呟いた瞬間、奴に斬られた部分から蛆が湧き始めた。

「ぱっパイモン!!何だよそれ!?」

この光景を見ていた主が顔を真っ青にさせ、大声を出す。

『主、奴の能力は腐敗。斬りつけた箇所を腐らせる力を持っています。その時間が来た様です』
「そんな……」
「くっそ!マジなんなんだよこれ!」

シトリーの声が聞こえて慌てて振り返ると、シトリーが必死で蛆を払っていた。
そうか、シトリーも確か所々に傷を負っていたな。
シトリーが倒れるのはまずい…あいつが倒れれば、その場で光太郎の魂は肉体から離れてしまう!
しかし足、腕、頬……腐った個所はさっきと違い、上手く動かせない。
腐ったという事は体の機能も麻痺していくのかもな。
どうでもいい事に頭を働かせてしまい、俺は慌ててかぶりを振る。
何とかしなければ。ヴォラクも体をうまく動かせないのか、膝をついてしまっている。

『そのまま腐敗され屍となるがいい』
『ふざけるな!』

声で叫ぶものの、やはり体は思ったように動かない。

『パイモン、ヴォラク大丈夫!?』
『大丈夫な訳ないじゃん!こんな虫が湧いちゃってんのにさ』

後方支援で唯一怪我を負っていないヴアルが真っ青な顔でこの状況を眺めている。
くそ……このまま戦っても恐らく話しにならないだろう。
サブナックも傷を負っているが、それでも遥かに俺たちよりは動けるはずだ。
せめてあと少し時間があれば……

『お前達はもういい。それよりも』

サブナックはゆっくりと主に近づいて行く。

『お前だ継承者』
「……っ!」
『大人しく付いてくるか、半殺しにされて連れていかれるか、選ぶがいい』
「そんなの……!」
『拓也!ついて行ってはいけません!地獄に行けばそこで貴方は殺されます!』

主に大声を出すストラスをサブナックは睨みつけた。

『外野は黙っていろ。継承者の意見を聞いている』
「俺は行かない!誰が付いてくもんか!お前だけはぜってーにぶちのめしてやる!!」
『ならば仕方ない。少々痛い目を見てもらうか』

サブナックが剣を抜いて、主の前に立つ。

『主!危険です!逃げてください!貴方の手に負える相手じゃない!』
『拓也!お前の敵う相手じゃねーぞ!』

なのになぜ浄化の剣を持って立ちあがるのです!
シトリーの怒声にも主は耳を傾けない。

「何だっていい!俺は戦う!だってこいつは光太郎を殺した奴なんだぞ!!」

その言葉を聞いたら言い返せなくなってしまう。
ずっと黙っていた中谷もバットを持って立ち上がる。

「そうだ。こんなとこで、こんな終わり方あるわけねぇだろ!こんな後味悪い終わり方認めねぇ!!」

主と中谷の言葉に俺もヴォラクも黙ってしまうしかない。
主は剣を握りしめ、サブナックに問いかける。

「なぁ、なんであんたは俺を狙うんだ?」
『これは命令。それ以外の何物でもない』
「またルシファー様って奴か」
『そこまでわかっているのならば話は早い。覚悟するべきだ』

サブナックは剣を向けて主に斬りかかっていった。

―セーレside―――――
拓也たちは大丈夫かな。相手はサブナックだけど……
そう思いながら信司君の背中をなで続ける事数分、大きな音をあげて屋上のドアが開いた。

「信司!」
「竹下先輩……」

そこには恐らく巻き込まれてしまったんだろう。さっきまで体育館にいた少年が立っていた。
竹下と言われた少年は黙って信司君の所まで歩いてきた。
風を切るように乾いた音が響いた。信司君の頬が真っ赤に腫れる。

「どうすんだよ……こんな騒ぎ起こして……部長も、お前の幼馴染もどうすんだよ!お前犯罪者になっちまったんだぞ!?」
「どうしようもないっすよ。やっちまったもんは……だから最後のツケはあいつにちゃんと返さないとな」

信司君はペンダントを握りしめ、大きく振りかざした。
まさか……

『壊す気なのか?』

どうやら俺の考えは正解のようだ。
信司君はそのまま勢いよくペンダントを地面に叩きつける。

『よせ!契約石を壊すことがどういう事か知ってるのか!?』
「何だよ?」

やっぱり知らないみたいだな。

『契約石を壊した時点で契約の不成立がなされる。それこそ本当に腱を切られるぞ!?』
「あいつがいなけりゃ大丈夫だ。契約石を壊したら、あいつはここに来れやしない」

信司君はそう言って、アマゾナイトのペンダントを何回も地面にぶつけつづける。

『そう言う問題じゃない!契約石を壊した時点で、契約石の中に詰まっている悪魔のエネルギーが君に襲い掛かる!サブナックがいなくてもこの場で君の腱は切られる。契約石を俺に渡すんだ!』
「誰が渡すかよ。ばーか」
『信司君……』

信司君は契約石を強く握りしめて俺を睨みつける。

「あんたが言ったんだろ。償えって……あいつをこの世界から消すのが俺の光太郎への償いだ」
『……っ』

信司君は何回も何回もペンダントを叩きつける。ひびはどんどん大きくなっていく。
俺が幾度止めても信司君は言う事を聞かなかった。
そして十数回、信司君がペンダントを叩きつけた瞬間、小さな音を立ててペンダントが割れた。そしてペンダントの中からエネルギーの塊が放射される。
本当にこの子はやってしまった!
エネルギーの塊は一直線に信司君の足に向かい、信司君の両足を貫いた。
信司君は痛みから、その場に倒れこんだ。両足からは血が噴き出ている。

「信司!?」

竹下君が慌てて信司君を支えた。

「へへ……ざまぁみろ」
「お前何してんだよ!?なんだかわかんないけど、足の腱切れたらもう二度と歩けねーじゃねーかよぉ!!」
「覚悟はとうにできてた。今更ですよ……」
『……契約石が壊れた』

契約石は俺たちの力の源。いわゆる心臓そのものだ。
それこそ契約石自体を結界でコーティングして、割れないようにしているのに、いくら何回も叩きつけたからと言って何でこんな簡単に……サブナックは契約石を結界でコーティングできない程、追い詰められてたのか?
俺は信司君を背負って、竹下君と体育館に戻った。

―拓也side―――――
『っ!』
「な、なんだ?」

俺達に斬りかかろうとしていたサブナックが急に体育館に膝をついた。

『契約石が………壊され、た……?』

そう呟いた瞬間、サブナックの体が砂のように崩れ出す。

「なんだ!?」
「あいつの契約石を恐らく光太郎の幼馴染が壊したんだ」

体中に湧きだす蛆を払いながらシトリーが答える。

「壊した?」
「契約石が壊されれば今まで蓄えられていたエネルギーは全て放出されて消える。あいつはヴェパールと同じ目に遭うんだよ。でも契約石が壊されるなんて初めてだな」
「早くこいつを戻さないと!」

苦しそうに息を吐きながら地面に倒れるサブナックの前に立つ。

「ストラス召喚紋を!」
『わかりました。しかし契約者でなければ、彼を地獄に返すことはできません』
「ヴォラク!結界を解いてくれ!」
『拓也ってばそんな奴まで助けるなんて……お人よし』

ヴォラクが手を動かした瞬間、結界が消える。
それと同時に信司君をおぶったセーレが入ってきた。
俺は信司君に大声を出す。

「おい!早く呪文を唱えるんだ!こいつ地獄に返すぞ!!」
『わかった!行けるね信司君』
「呪文しらねぇ」
『君は俺の言った言葉を間違えずに繰り返せばいい』
「わかった」

幼馴染が呪文を唱えていく。

『どこまでもお人よしか』

最後の最後にサブナックは薄く笑う。
最後までニヤニヤしやがって……どれだけの犠牲を出したと思ってるんだ。
そんな奴でさえも殺せない俺は確かにお人よしなのかもしれない。

『犠牲無くしての勝利はあり得ない。それは考えておくことだな。俺を召喚紋に閉じ込めた分のペナルティをな』
「何が言いたい」
『どこまでも気楽な奴と言いたいんだ。ペナルティは確かに下った。一生苦しみながら生きていくがいい』

サブナックはその言葉を吐くと、光に包まれて地獄に消えて行った。
後ろを見ると、光太郎の手を握っているシトリーとそれについている中谷。

「何が言いたかったんだよあいつ……あんな奴のせいで光太郎はっ!」

『セーレ』
『え?』

パイモンに呼びとめられて、セーレが振り返る。

『サブナックに斬られたところに蛆が湧いている。白魔術を頼む』
『了解。信司君…おろしていい?』
「うん」

セーレは幼馴染をおろして、パイモンのいる方に歩いて行った。
その幼馴染をストラスは険しい顔で見つめている。

『拓也、あの少年……』
「どうでもいいよ。あんな奴……それよりも光太郎が」

堪えていた涙が再び溢れそうになる。全てが終わった体育館の中は静寂に包まれている。
あの姿の光太郎を見るだけで胸が締め付けられるように痛い。

『話を聞きなさい。あの少年、恐らく腱を切られています』
「何言ってんだよ。サブナックを地獄に返したんだ。そんなわけねーじゃん」
『契約石を破壊すると言う事は契約の不成立がなされること、彼はそのペナルティを受けたのです。まぁ殺されなかっただけ幸いと言うべきなのかはわかりませんがね』

俺は慌てて幼馴染の足を見ると、足からは大量の血が流れ落ちていた。
その光景を見て、俺は真っ青になる。
幼馴染がさっきから立ち上がらないのは足が痛いからじゃなくて、立ち上がれないから?
サブナックの最後の言葉が思い出される。

「嘘だろ……?」
『嘘ではありません。彼はサブナックを止めるために自らの足を犠牲にしたのです』

じゃあもう二度と歩けないってこと?
幼馴染は四つん這い状態で光太郎に近づく。

「光太郎ごめんな……」

そんな幼馴染を見て、シトリーがポツリと話しかける。

「お前自分の足を犠牲にしたのか?」
「これがけじめだった」
「そうかよ……」

シトリーはそれ以上何も言わなかった。

『シトリー。君も回復いるよね?』
「頼む」

パイモンとヴォラクの回復を終えたセーレがシトリーに近づいて行く。

「主」
「パイモン、よくなったのか?」
「えぇ。今回の事……すみませんでした」
「パイモンは悪くないよ……」
「とりあえず、マンションに戻りましょう。話さなければならないことがあります」

俺は頷いて幼馴染に目をやる。

「うん。なぁ信司の足ってさ、セーレにも治せないのか?」
「腱を繋ぐなどは高等魔術です。それこそ白魔術専門の悪魔でなければ難しいですね」
『拓也……』
「あいつどうすんのかな。自主すんのかな」
『証拠がありません。それに死体もないのです。悪魔の存在を知らない人間に打ち明けた所で、いつかは矛盾が生じ、説明できない事態に行きつきます。このまま罪を背負って生きていくのでしょう。自主した所で、どうしようもありませんからね』
「そっか……」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あの後、俺達は信司を家まで送って、竹下さんと別れた。
恐怖で顔が引きつっている竹下さんに、この事は言っちゃ駄目って教えて。
竹下さんは言ったところで信じてくれないっつってた。
そして俺達はマンションに向かった。

「光太郎を家族の所に返さなきゃ……」

マンションについてソファに寝かせた光太郎を見て、俺はポツリと呟く。
なんて酷いんだろう。きっと光太郎の家族皆が悲しむ。
家族だけじゃない。澪も桜井も上野も立川も藤森も国崎も山田も、皆皆悲しむ。

「拓也、話がある」
「え?」

光太郎の手を握っていたシトリーが顔をあげた。

「悪魔フォラスを探すんだ」
「フォラス?」
「だからシトリーは光太郎とリンクしてたのね!」

ヴアルが納得したように声を出すが、理由のわからない俺たちは納得がいかない。
どういうこと?

「なんでこんな時まで悪魔の話なんだよ!」

俺も中谷と同じ気持ちだ。
親友が死んだのに、なんでまた悪魔を探さなきゃいけないんだ!

『中谷!話を聞きなさい!』
「なんでだよ!」
「悪魔フォラスの力があれば、光太郎を生き返らせることができる」

シトリーの言葉に目が丸くなる。

「うそ……」
「フォラスが司るは生と死。奴は72柱の中で唯一、人間と契約しなくてもこの世界に存在を許された悪魔だ。あいつの力は相手の寿命を奪って、それを自分の寿命にかえること。逆もまたしかり。つまり、あいつの寿命を光太郎に送り込んだら、光太郎はまた目覚めることができる。その為には魂が肉体にとどまってるのが大前提なんだ。だから今、俺はこいつと体をリンクしてる」

生き返らせる?光太郎を?

「拓也、光太郎を生き返らせるにはそれしか方法がないよ。どうすんの?」
「……そんなの決まってんだろヴォラク。俺はフォラスを探す」

俺の言葉に皆が一斉に頷く。

「じゃあ早くしてくれよ。期限は5日間だ」
「5日間!?」

期限があんのかよ!?

「当たり前だ。契約者がいない今、契約石の中の自分のエネルギーを使ってんだ。5日もしたら俺のエネルギーも空っぽだ。そうなったら俺は砂になっちまうし、光太郎も死んじまう。5日間以内だ」
「……わかった」

絶対に探し出してやる。情報も何もないけど、絶対に光太郎を死なせるもんか。
パイモンもパソコンを開き、早速情報を探し出す。

『拓也、中谷。今日は疲れたでしょう。探すのは明日からにしましょう』
「でも」
『情報もないのです。マンションにいた所で何もできません。私は今日はマンションで調べますので帰っていてください』
「手伝うよ」
『いいえ、休みなさい』

有無を言わさない一言に俺と中谷は渋々頷き、俺達は一旦家に帰ることにした。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「見つけられると思うか?」

帰り道、中谷が不意に呟く。

「見つけてやる。絶対に」
「そうだよな。やる前からそんなこと言ってたら意味ねぇもんな」

絶対に光太郎を救いだしてやる!

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
高校の前ではリポーターが十数人待機している。
校長達もこの事態にあたふた騒いでいる。
その理由はもう全校生徒が知っていた。

「知ってるか?信司の奴」

1人の生徒が一緒に登校していた生徒に話しかける。

「あぁ、信司が先輩に腱を切られたって奴だろ。最悪だよな先輩達、竹下さんが警察に先輩が信司をいじめてたって言った時には、もう全員行方不明になっちまってさ」
「はは。夜逃げだなこりゃ」
「確かに」

その話が聞こえてきて、俺は顔を俯かせた。
バスケ部は無期限の活動停止処分。監督は解雇。
もちろん高体連、インターハイの地区予選も出れない。

俺たちの夢はここで潰えてしまった。

本当にこれでよかったんだろうか、俺は信司に同情して警察に突きだせなかった。
元の原因は確かに先輩達にあった。それを自分自身に言い聞かせて。

◆◇◆
雲1つない晴天。普段なら嬉しいはずなのに、なぜかその眩しさに苛立ちが募る。
そしてそんな俺の横には……

「信司、その……すまなかったな」

今日も父さんと母さんが病院に見舞いに来ている。ずっと気まずそうにして……

「早く捕まるといいわね」
「捕まんないよ。絶対に……」

だって俺が殺してしまったから。

「そんなこと言わないで。母さんと父さんが絶対に見つけてみせるわ」

今更母親ぶらないでくれ。何を言われたところで、あの言葉を俺は忘れないんだ。
肝心な時にあんたは信じてくれなかった。
カーテンがそよいでいる。外は憎らしいほどの晴天。

「信司リンゴいる?」
「いい」

光太郎はどうなったのかな?
あの拓也って言う奴は警察に何も言ってないらしい。逆に部長達の両親が家に帰ってこない部長達を心配して捜索願を出したらしく、捜査している時に竹下先輩が部長達の事を警察に言って今に至る。
そのせいで俺は完全に被害者扱い。警察も俺に何も言ってこない。
言ってくれた方がすっきりするのに……

「母さん」
「ん?」

「俺が先輩達を殺したって言ったらどうする?」

母さんと父さんの空気が固まる。
さぁどう出る?

「信司、貴方少し疲れてるのよ」

母さんは俺を抱きしめる。
やっぱり信じてくれない。まぁ普通は信じないよな、それはわかってる。
でもそれに絶望してる自分がいる。

「退院したら車いすを使って学校に行くのか?」
「悪い?」
「またそんな目に遭うと思ったら……」
「心配しなくてもいいよ」

俺は人殺しだ。そしてそれを揉み消してしまっている。他人に話しかける資格なんてない。
だから俺は父さんたちに笑いかけてこう言った。

“もう誰とも関わらないから”

その時の父さんと母さんの顔は傑作で……俺はその顔を2度と忘れることはないだろう。
登場人物

サブナック…ソロモン72柱序列43番目の悪魔。
      50の悪霊を率いる侯爵であり、その姿はライオンの頭部を象った豪奢な兜を頂いた蒼白の騎馬を駆る騎士の霊であるという。
      腐敗を司り、傷を負わせた箇所を腐らせることができる。
      サブナックの武力は凄まじいと語られている事から戦闘力はかなり高い。
      また、サブナックの武力は単に戦闘能力だけに留まらず、戦争に関するあらゆる能力を含めた武力なのである。
      その為、契約者が望めばサブナックは強固な城や塔を作り出し、必要とされる武器を用意することも可能である。
      契約石はアマゾナイトのペンダント。

信司…光太郎の幼馴染。
   才能あるバスケ選手だったらしく都内では結構有名だった。
   自分を怪我させた先輩たちの復讐のためにサブナックと契約した。


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