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第2部
第70話 狙われた直哉
「お前何人の魂送った?」

1人の少年が手に青白い浮遊物を弄んでいる。
それを見て、隣にいる帽子をかぶった少年は帽子を深くかぶりなおした。

「14人。けっこう厳選したからな……どれもこれもかなりの質だと思うぜ」
「ふーん。でもあいつ等も悪魔バンバン地獄に返してってるからなぁ」
「俺いい事考えてんだよ」

帽子を被った少年が妖しく笑う。

「なに?」
「それはお楽しみ。それより早く食えよそれ。魂は鮮度が一番だぞ」

魂と呼ばれた浮遊物を帽子を被った少年が指差す。
そして魂はもう1人の少年の口の中に消えていった。


70 狙われた直哉


あれから家に帰った俺は家族こぞって心配された。
ずぶ濡れになってるし、泣いた後で目は真っ赤だし、でも涙は止まらなくて俺は母さん達の前で大声を出して泣いた。
母さんも話を聞いて、涙を流して俺を抱きしめた。

なぁヴェパール、お前は天国に行けたのか?
あんなに優しくて一途に想ってて……天国に行ってくれてたら嬉しい。
また颯太さんと会えてたら……俺は嬉しいよ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「そっか。そんなことがあったんだな」

次の日、学校に行った俺は中谷にありのままを話した。
中谷も話を聞いて、少し悲しそうに眉を下げた。

「悪魔って何なんだろうな」
「え?何って?」

中谷の急な質問に思わず問い直すしか出来ない。

「ビフロンやマルファスとかはさ、ほんっとーに悪魔って感じじゃん?悪い奴だし……でもストラス達やその人魚はさ、悪魔って感じしないじゃん。悪魔って悪い奴ってイメージしか今までなかったから、なんか一概に悪魔全部が悪いって言う事が出来ないなーって思って」
「うん……」

そうだよな……ヴェパールは優しかった。
ヴェパールだけじゃない。オロバスもブエルも危険な悪魔じゃなかったんだよな。
俺が物思いにふけっていると、何を思ったのか中谷は握り拳を作って立ち上がる。

「悪いのはやっぱ天使だよな!拓也に戦わせといて高みの見物とかよー!」
「なぁに朝からオカルトな話してんだよ」
「あ、桜井」

桜井が笑ってこっちに近づいてくる。

「おー。今日皆でカラオケいかね?藤森も部活ないっつってんだよ。野球も今日部活ないだろ?」
「何で知ってんだよ」
「チッチ……この桜井様の情報網舐めてもらっちゃ困るぜー」
「とかなんとか言って、どーせ藤本(野球部のマネージャー)から聞いたんだろ」
「あは。ばれた?」

桜井はエへっと舌を出して笑う。
まぁいいか。俺も今日は暇だし。

「俺はいいけど?」
「俺もー。今日塾ないんだ♪」
「決まりだな!」

桜井は嬉しそうに笑い、上野たちの所に戻っていく。
ひっさしぶりのカラオケだなぁ。今日は盛り上がるか!!

「カラオケカラオケ〜♪」

放課後、俺は荷物をかばんに詰めていく。
久しぶりのカラオケー♪何歌おうかなぁ?
気持ちはどんどん膨らんでいく。

「拓也、行こうぜ」

上野に肩を叩かれて、俺は鞄を持つ。
俺達は7人という大人数でカラオケに向かった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
都内の小学校。学校が終わった生徒が帰って行く。
そんな中、拓也の弟の直哉は教室で荷物を鞄に詰めていた。

「直哉ー、今日公園よって帰んね?」
「うん!」

親友である大輝に公園に誘われた俺は2つ返事で頷く。
なので俺は大輝と公園で少し遊んで帰ることにした。
何するわけでもないけど友達と公園にいるってこと自体が楽しい!
俺達は帰り道にある比較的おっきい公園に足を運ばせた。

「今日はバドミントンあるかなぁ?」

ここの公園は遊具のほかにもサッカーボールや野球のバット(プラスチック製)やバドミントンのラケットを無料で貸してくれる。
数が少ないから、いっつも借りられてるんだけど。

「あった!」

今日はラケットが2本あった。
俺と大輝はそれをとってとび跳ねる。今日はついてる!
シャトルもあったから俺達はそれでバドミントンを始めた。

「ぷっ……へったくそ」

やり始めて10分、バドミントンをしてると、後ろから小馬鹿にしたような声が聞こえた。
そこには帽子を目のところまで深く被った男の子。

「なんだよ!いきなり失礼だな!」
「わりーわりー。だけどさーラリー10回も続かねーじゃん。俺らのが上手いぜ。な?」

俺が言い返すと、その子は笑いながら謝ってくる。
その男の子の後ろにはもう1人、帽子をかぶってる子がいた。

「わーお前、なんか口から歯が出てるし頭尖ってんぞ?」

大輝が物珍しそうにもう1人の男の子に声をかける。

「すげーだろ。この歯、本物なんだぜー。」
「えーウソだろー?」
「ほんとだって!」

確かに口から牙みたいなのが出てる人間なんて見たことない。
でも男の子は普通そうだし病気とかでもなさそうだ。俺は2人ラケットを渡す。

「じゃあさ!やってみろよ!ラリー!」
「へっ50回はやってやるぜ。な?」
「えー50回もできっかなぁ。俺バドミントンとか初めてなんだけどー?」

初めて!?初めてであんな偉そうにしてきた訳!?

「こんなの玉を面でつきゃいいだけだろ?簡単簡単」
「どっからその自信が湧いてくんだよ」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「すっげぇ!マジで50回やっちゃったよ!」

大輝が大声をあげて飛び跳ねる。
シャトルは綺麗な弧を描いて、相手のラケットに飛んでいく。
そいつらは初めてなのに、ラリーを50回やってのけてしまった。

「まぁな。俺らにかかりゃ楽勝よ」

その子はいたずらっ子の様に笑う。
俺達はその場で意気投合し、暗くなるまで公園で遊んでた。

「あ、もう帰んなきゃ」

公園についている時計を見たらもう5時30。あたりも暗くなり始めてる。
早く帰んなきゃママに怒られる。
俺の言葉を聞いた大輝も時計を見て、ほんとだと呟く。帽子を深くかぶった子が手を振ってくる。

「残念だなぁ。また遊ぼうぜ」
「ねぇ名前教えてよ」
「もっと仲良くなったらいいぜ。俺ら明日もここにいっからさ」

2人はそう言って、走って公園を出ていった。

なんだよー名前くらい教えてもいいじゃん。
まぁいっか。明日もいるって言ってたし!俺は大輝と別れて、そのまま家に帰った。
兄ちゃんもう帰ってるかな?今日のことは話さなきゃ!

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「じゃーな池上」

カラオケを出て、皆がそれぞれの帰路についている。
方向が一緒で途中まで帰ってた立川と手を振って別れて、俺は1人で帰路についた。
あー今日は楽しかったなぁ。なんかすっきりしたし。今までの鬱憤を全部吐き出してやったからな!
カラオケって意外とストレス発散になるんだなぁ……
そんなことを思いながら、俺は家に帰り着いた。

「拓也、お帰りなさい」
「澪!ただいま!」

やっべ!なんか嬉しい。澪は相変わらず可愛いなぁ(きもい)
俺はそのままリビングに入る。
リビングでは直哉がストラスと嬉しそうに会話をしていた。

「お、直哉どうした?何かいい事あったのか?」
「兄ちゃん!今日ね!新しい友達ができたんだよー!公園で友達になったんだけどね。バドミントンが滅茶苦茶上手いんだ!明日も公園で遊ぶんだ」
「へぇ……よかったじゃねぇか」
「うん!」

直哉があまりにも嬉しそうに笑うので、自然と俺も嬉しくなってしまう。
ストラスも微笑ましいのかニコニコしてる。

「さ、ご飯できたわよー。食べましょう」

母さんが皿を運んでテーブルに置く。
俺は手を洗い、席についた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「直哉なんか今日楽しそうだったな」
『そうですね。良い友人ができるのは良いことです』

夕飯も食べ終わり、風呂も入った俺は自分の部屋のベッドの上でストラスと話していた。
今の時間は夜の1時。直哉は既にもう寝てる。
でも今日の直弥は嬉しそうだったよなぁ…友達の顔を見てみたいし。

「あーぁいいなぁ。俺も小学生に戻りてー。勉強楽だし」
『またそのようなことを』
「だってさぁ……高校生とか勉強多いし、大学受験だって……」

あ、そう言えば金田さんは元気にしてんのかな?
こないだ確かセンター試験あったよな。テレビで言ってたし。でもまぁ金田さんならきっと大丈夫だよなぁー

『拓也、どうしました?』
「あ?あぁ、金田さん元気かなぁって……もう受検だし」
『金田……あぁ、サミジーナと契約していた彼ですね。貴方は連絡先を交換していませんでしたか?』

そう。俺は金田さんとメアドを交換した。
でも福岡に住んでるから遊ぼうとも言えず、用がなければメールもほとんどしてない。

「今大事に時期なのに送ってもいいのかなぁ?」
『何を迷う事がありますか。面倒くさかったら返信は来ないでしょう?』

それもそうだな。でもこなかったら少し切ないけど(笑)
俺は思い切って金田さんにメールを入れることにした。
メールを送って数分後、返事はすぐに帰ってきた。

“久し振り。二次試験も終わって今結果を待機中。めっちゃ緊張してる(笑)結局東大の医学部受けることにした。医者になろうとおもって”

「金田さん、医者になりたいんだって」
『そうですか。彼も目標を見つけたのですね』

俺は嬉しくなり、すぐに返信をした。
“そうですか!合格したら連絡くださいね!ケーキ持ってお祝いに行きますよ!!”
そのメールを送ったら金田さんも嬉しそうにしてくれた。

“受かったら連絡する。ケーキだけやなくてジュースも持って来い(笑)”

そっか、金田さん元気そうだ。よかった!
しかも東大だったら光太郎の兄ちゃんの後輩になるんじゃん!
俺はなんだか嬉しくなり、そのままベッドに横になった。

「あー俺もう寝よ。お休みー」
『はいはい。おやすみなさい』

俺はそのままケータイを閉じて目を瞑った。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
次の日、学校から帰っても直哉の姿は見えなかった。

「あれ?直哉は?」
「公園に遊びに行ってるんじゃない?昨日言ってたでしょ」

母さんの言葉に確かにそんなことも言ってたと思いだした。
なんか俺の方が先に帰るなんて妙な気分だな。まぁいっか。剣の稽古でもしてこようかな。

「俺もちょっと出かけてくるー」
「夕飯までには帰ってきなさいよー」
「はーい」

俺はストラスを連れて、マンションに向かった。
直哉の奴、どんな奴と遊んでんだよ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あ!いたいた!」

小学校が終わって、俺と大輝はすぐに荷物を持って昨日の公園に向かった。
あいつ等は昨日言ってた通り、ちゃんと公園にいた。
向こうが手を振ってきたので、俺達も手を振り返した。

「よぉ!」
「よっす!なぁ今日は何して遊ぶ?」
「そうだなぁ。サッカーでもするか?」
「うん!」

俺達は4人でサッカーボールを借りに向かった。
大輝と帽子を被った子が係員さんにボールを貸してくれるように頼んでいる間、俺は牙が出てる男の子と後ろの方で待機していた。
その間に俺は牙が出てる子に名前を問いかける。

「そう言えば名前何なの?昨日教えてくれなかったよね」
「んーそっちは何て名前なんだ?」

あ、はぐらかされた。

「俺は池上直哉!んであっちが吉田大輝!」
「ふーん……直哉って兄ちゃんいるだろ」

突然そんなこと言うからビックリした。
なんでわかったんだ!?

「すごい!なんでわかったの!?」
「だってお前弟っぽいもん」
「なんだよそれー!俺がガキだって言いたいのかよ!」
「ガキだよ。何にも知らないからね」

え?
急に目の前の男の子の空気が変わった。
でもそれは一瞬ですぐに元の人懐こい笑みに戻った。あれは俺の見間違いだったのかな…?

「だって多分俺の方が年上だと思うしなー」
「もしかして小6?」
「は?小6?」
「違うの?だって俺小5だよ。俺より上ってことは小6だよね。まさか中学生!?」
「あーなんかよくわからんけど、そうそう小6」

よくわからないって何だよ……まぁいいや。そんなことは。
結局年上なんだし、敬語使わなくていいのかな。あーでも名前知りたい!

「結局名前なんなんだよー教えてくれたっていいじゃん。もう友達だろ」
「友達ねぇ……なら教えてやってもいいけど、誰にも言わないって約束する?」
「なんで?」
「何でも。約束破ったら縁切るよ」
「え!?わかった。言わないよ」

俺がそう言うと、そいつはにっこりと笑った。

「俺はボティス、あっちがラウム。よろしくな」
「う、うん!よろしく!」

まさか外国人!?外国人の子と友達になっちゃった!
俺が大声で返事をするとボティスは軽く笑って頷いた。
大輝達も戻ってきたことで、俺たちはサッカーをすることにした。

それから俺達はまた日が暮れるまでサッカーをして遊んだ。
やっぱボティスとラウムはめちゃくちゃ上手い!何をさせてもすごい!
ドリブル上手いし、パスも上手いし!もう俺と大輝なんて全然相手にならないよ!
日も暮れて大輝が帰って3人になってしまい、サッカーも出来ないので俺は帰ることにした。

「俺達も帰ろうよ」
「まぁ待てよ。ちょっと3人で面白い話しようぜ?」
「面白い話?」

ラウムとボティスと3人で円になって話す。

「なぁ。直哉は嫌いな奴いないのか?」
「嫌いな奴?」

なんだろういきなり。そんなの考えたこともないや。嫌いな奴、嫌いな奴、う――ん……

「学校の先生かなぁ…」
「どいつ?」
「んーとね……隣のクラスの先生で和田って言うんだけど、すぐ怒って怖いんだ」
「そいつに痛い目見てほしい?」
「一回くらいはちょっと見ちゃえー!って思う」

それを聞いて、ラウムは嬉しそうに笑う。

「そうだよな!そうこなくちゃな!」
「ん?」
「叶えてやるよそれ」
「え?」

ラウムはにっこりと笑う。

「そいつ不幸にしてやるよ。友達が怒られてるの見て、俺黙ってられないし」
「え、ちょっと……」

なんか怖い……そう感じた俺は慌てて首を横に振る。

「いいよ。そんな暴力とかしたらダメだよ」
「そんなことしないよ。おまじないするだけ。でもこのこと人に言ったら、お前が不幸になるからな」
「ひ……」

ラウムはそう言って笑い、俺にベルトを寄こす。

「何これ?」
「それ。お前にやるよ」

そのベルトには宝石がいっぱい散りばめられてる。

「そんな!もらえないよ!高そうだし!」
「いいって。これは俺たちの友情の証。もらってくれよ。それともお古は嫌ってか?」
「そうじゃないけど……高そうだよ!」
「いいんだって。でもお前の兄ちゃんとペットに見せないって約束な」

何で兄ちゃん?っていうか何でペットがいるってわかるの?(ストラスはペットじゃないって言ってるけど)

「なんで?ていうかペット飼ってるって何でわかったの?」
「年上って弟の物で気に入ったのがあったらすぐ欲しがるだろー?ペットはまぁ適当に言ったんだけど飼ってんだな。まぁペットの玩具にされちゃたまんねぇしな。言うこと聞けるな?」
「……わかった。誰にも見せないよ」
「いい子だなぁ直哉は。それは友情の証だからな。じゃあ帰るか」
「……うん」

俺は頷いて、ベルトを鞄に入れた。
これ、ばれちゃいけない。
それにこんな高そうなものもらったってママが知ったら絶対に怒るもん。
隠さなきゃ。
俺はそう思いながら帰路についた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ぷっ……あはは!何だよ友達って!ちょーウケるんだけど!!」
「笑うなよボティス。でもこれで準備は整ったかなぁ?」

お前の望み、叶えてやるよ。
嫌いな奴は俺が皆地獄に送ってやる。

「俺の力いっぱいいっぱい使って…あいつの寿命をどんどんすり減らしてやる」
「力使うだけじゃ契約者の寿命は対して削れないぜ。ってか殺せば早いんじゃない?」
「地獄に魂を送る時にかなりのエネルギー使うからな。それに目的は継承者だ。手に入れた人質をそんなにすぐに解放するかよ」
「ふふ……最低だなぁ。あんな小さい子だまして」

そんなの別にどうだっていいだろ?

「俺らの邪魔したのが悪いんだよ」
「確かにね」

俺たちの邪魔をしてくる継承者、大人しく地獄に連れていかれりゃいいものを。

「あいつ…口を滑らすかもよ?」
「別にいいさ。滑らせたとしても…あいつと契約してるだけで継承者は焦って出てくる」
「継承者の弟はいい人質ってことだね」
「あぁ。エネルギーを採取し続ければ寿命をすり減らされることを継承者は知ってるからな」

手っ取り早く大量に採取するには大怪我を負うのが一番だけど、痛いから嫌だな。
まぁいいさ。じっくりじっくりあいつの寿命をすり減らしていこうかねぇ。

「調子に乗りすぎたんだよ継承者はな」


オイタした分は、ちゃんと償ってもらわなきゃなぁ……



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