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第2部
第65話 南国の大陸
「あーまじで寒いなぁ。2月ってぶっちゃけ一番寒いと思わない?」

あれから更に1週間が経過した。
2月に入り、期末テストもだいぶ近づいていた。


65 南国の大陸


「確かに。寒いぃー……」

光太郎もホッカイロを手放さない。学生の冬の必需品だな(笑)
そんな中、中谷は雑誌を読んでいる。

「中谷何読んでんだよ?」
「え?旅行パンフ」
「行くのか!!?」
「ちげーよ。学校に登校してるとき、店の前で置いててさー。つい取ってきちゃったんだ」

中谷は机にパンフレットを広げる。
そこには南国の楽園ハワイの記事。

「あーいいなぁハワイ。行きたいなぁ」
「なー。一年中あったかくって……楽園だよなぁ」

行ったことのある光太郎は何も言わずにお茶を口に含んだ。
そんな光太郎に俺と中谷はにやりと笑う。

「光太郎、お前今年の春休みはどこに行くんだよー?」
「そうそう。お前毎年長期休みにはどこかしらいってるよなー」
「……オーストラリアだけど」

……羨ましい!!

「はぁ…俺も光太郎の家の子供になりたい」

羨ましすぎるぞ光太郎!
俺なんかまだパスポートも持ってないのに!!

「別にー兄貴がサーフィン好きだからさ。今回はそこになっただけ」
「え?この時期にサーフィンって寒くない?ハワイとかの方がいんじゃね?」
「オーストラリアって南半球だろ。日本と季節が逆なんだよ。あっちは今が夏」

そうなのか!??初めて知ったよそれ。

「それでもハワイのがいいじゃん」
「確かにこの時期ハワイは乾季だしいいけどさ…オーストラリアに親父の仕事関係の知り合いいるから、泊めてくれることになってさ」
「え!?お前オーストラリア人に知り合いいんの!?」
「正確にはオーストラリアに在住してる日本人な。まぁそんなとこ」

いいなぁ、いいなぁ……南国の楽園。
俺たちが余りにも羨ましがるのを見て、光太郎がニヤリ。

「今日行ってみないか?オーストラリアってあんま時差ないし」

はぁ、なに言ってんだ?

「寒すぎて頭凍ったんじゃねーの?俺は大体パスポート持ってないし、金もない」
「俺もパスポート自体もってないぜー。来年の修学旅行で初めて手に入るのさー」
「そうじゃないって。セーレに連れてってもらおうや。今日は土曜日。補講も4限で終わるし?明日は休みだし。イイと思わない?」
「それいい!乗った!!」

中谷は意気揚揚と光太郎の提案に賛成した。
でもなぁ……

「そんな勝手にセーレ振り回していいのかなぁ」

セーレも嫌がるんじゃないかなぁ。
足に使ってるじゃんコレ。

「まぁセーレが駄目って言ったらそこまでだけどさ。頼むくらいいいじゃん。な?」

まぁ頼むくらいなら……
俺達は学校が終わって、セーレに頼んでみることにした。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「いいよ。夕飯までに帰るならね」

あっさり了解してくれたセーレに俺達は飛び跳ねて喜んだ。
中谷はそうと決まれば早速私服に着替えてくる!と家を出て行こうとする。

「中谷ー。あっちは夏だぞー。薄着持ってこいよー」
「おー!」
「待って!帰るの面倒だろ?シトリーの服使っていいよ」

セーレが帰ろうとした中谷を慌てて止める。

「マジで?いいの?」
「いいって。一日に何回も着替えるわけじゃなし。好きな服着てくといい」

やっぱセーレっていい奴。
俺悪魔の中でセーレいちばん好きだわ(笑)
俺達はギャーギャー騒ぎながら、服をあさっていった。

「パイモン、君は行かないのか?」
「遠慮する。お守はお前だけで充分だろ?」
「そうか残念だなぁ。ヴォラクとヴアルもいないしなぁ」

そう言えばあの2人いないな。
着替え終わって気になったので、俺はセーレに聞いてみることにした。

「なんであいつらいないんだ?シトリーはバイトだろ?」
「あぁ。あの2人はバレン……何だっけ?」
「バレンタインフェアだ」
「そうそう。それを見に百貨店に行ったんだよ」

バレンタイン……あ、もうそんな時期かぁ。
流石恋愛事には聡いヴアル。こういう行事も良くご存じで……

「ヴォラクはボディーガードっていう名目で連れてかれたよ」
「守る必要もないだろう。あの爆発女を」

パイモンってヴアルのこと嫌いなのか(笑)なんか言い方酷いな。

「ふーんそっか!なら行こうか!」

俺達は薄着の上にコートを着て、セーレが召還したジェダイトに飛び乗った。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「すっげー!あったけー!!ここがオーストラリア!!」
「海すげー綺麗!!」

ここがオーストラリア!(大事なことなので2回言う)
すっげー!!マジで夏だ!水着着た人がいっぱいいる。
俺達はジェダイトを降りてすぐに海に向かった。

「水着持ってくりゃよかったなぁ」

中谷の呟きに頷くしかない。

「パンツで入っていいかな。俺トランクスだし」
「それだけはダメ」

セーレに諭されて中谷は思いとどまる。
パンツって……水泳の授業で水着忘れた奴じゃあるまいし(笑)

「止めとけって中谷。ちんこふやけるぞ」
「俺のちんこはそんなヤワじゃねぇ!」
「昼間から下ネタはやめなよ!」

広瀬と中谷の掛け合いをセーレが慌てて止める。
そんな3人を横目に俺は海を見渡した。
泳いでる人、ビーチバレーをしてる人、サーフィンをしてる人、ヨットをしてる人、いろんなことをしてみんな楽しんでる。
俺は近くに置かれてあるサーフボードに思わず手を触れた。

「あーサーフィンしてみたいなぁ……」
「What are you doing?」

へ?
目の前には俺を覗き込んでる男の人。

「わわゎ!!ごめんなさい!sorry!!」

慌てて謝るけど男性は笑ってる。

「君、日本人だよね?」
「え?」
「俺も日本人。高校生?修学旅行かなんかかな?」
「え、あの……貴方はここに住んでるんですか?」

男性は人懐こく笑う。

「あぁ。俺は大学の長期留学でこっちに来てるわけ。それ、俺の」
「あ、このボード!すいません!かっこよかったからつい!」
「そっか。サーフィンに興味あんの?」
「今度やってみたいなぁって。そっちは?サーファーですか?」
「まぁそんなとこ。今度サーフィンの大会があってさ。それもあってこっちに留学したんだけどな」
「へぇ」
「池上ー何やってんだよー」

中谷が俺に突っかかってくる。

「重いって!離れろー!」

男性がきょとんとこっちを見ている。
やばい。

「君たちはホームステイかなんか?」
「あ!そうそう!ホームステイ!あれが保護者!オーストラリア在住日本人!!」

俺はなんだかよくわかんなくなってセーレに指差した。

「え!?」

ごめんセーレ、勝手にオーストラリアの在住日本人にしちゃった。
男性は人懐こい笑みを浮かべて、セーレに近づく。

「そうなんだ。俺と同い年くらいか?何歳?俺は19歳なんだけど」
「あー21歳」

セーレ必死で誤魔化してる!(笑)

「マジで?やっぱ近いなー。どこ大?俺はキャンベラに留学してんだけど」
「一緒だ、よー?」

マジでごめんセーレ!無茶させてごめん!!
光太郎と中谷が必死で笑いをこらえてるけど、俺は正直笑えない。
真っ青な顔でセーレを眺めている。

「マジで!?何学部!?俺、人文なんだけど」
「えーっと……」
「あー文学だよね?」

光太郎が慌てて助け船を出す。

「あ、そうそう」
「マジで!うける!そうなんだ!!」

男性は嬉しそうに笑ってセーレに手を伸ばす。

「よろしく。俺は川崎颯太」
「あ、セ……じゃない。俺は雄介。よろしく」
「今度一緒にサーフィンできたらいいな」

適当な名前を教えて、セーレも手をのばす。
青年は手を振って海に入っていく。

「拓也、人を勝手に日本人にするのはやめてくれ」
「ごめん」

颯太さんは波に乗っていく。
かっけーなぁ。俺もあんな風にサーフィンできるようになりたいなぁ。
颯太さんは楽しそうに波に乗っている。
俺達は靴を脱いで、浅瀬で遊ぶことにした。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「波乗んないの?」

1時間ぐらい遊んだら颯太さんがこっちに向かって歩いてきた。

「あ、颯太さん!めちゃくちゃ凄かったですね!」
「どうも。君もやればいいのに……えーっと」
「あ、拓也です」
「拓也。俺のボード貸してやろうか?」
「いやいいって!そんなの!水着持ってないし」
「そっか、残念だな。今度はちゃんと持ってこいよ?そしたら教えてやっからよ」
「あ、はい!」

優しい人だなぁ。
でももう会う事ないだろうけど(笑)
颯太さんは手を振って、大学の友達だろうか?誰かと歩いていく。
俺達はその後もなんとなくその場に居た。そしてそのまま時間は過ぎていった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「拓也、そろそろ帰らないか?」

セーレが時間なのか、俺に話しかけてくる。

「あ、うん。じゃあ帰るか」

楽しかったなぁ。また来たいなぁオーストラリア。
俺達はそのまま帰ろうとしたところで海岸がざわめきだした。

「何があったんだ?」

光太郎と中谷が顔をのぞかせる。

「子供が波にさらわれちゃったみたいだな」
「マジか!?そんなのん気に言っていいのか!?」
「だからって……ジェダイトで探すか?」
「うん!」

中谷と光太郎はその場で状況を連絡してもらう事にして、俺とセーレはジェダイトで空から子供を探すことにした。

「どこにいんだよ……」

結構沖まで行ってみたけど、子どもは見つからない。
もうこんなとこではサーフィンもヨットもしている人がいない。

「なんかサメがいそう……」

オーストラリアって確かホオジロザメいたよな。
まさか食われたんじゃ!!

『拓也は急にネガティブだね』
「だって!」

その時、ケータイの着信音がなる。
光太郎からだ!俺は慌てて電話に出た。

「あ、拓也ー。子供見つかったぞ!」
「マジか!?」

俺はセーレに子供が見つかったという事を伝えた。

『そうか。よかったね。じゃあ俺達も戻ろう……あれ……』
「セーレ?」
『あそこ』

セーレが指差す先には1人の女性の姿。
何でこんな沖に!

「助けなきゃ!」
『拓也、待って』

なんで?だってこのままじゃ!
女性はあたりを見渡すと、そのまま海に潜ってしまった。

「なぁ!」
『……』

セーレは何かを考え込む。

「セーレ?」
『思わぬところで悪魔を見つけたかもな』
「え?」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「いやー良かったなぁ。あの子見つかって」

中谷がのほほんと笑う。
でも光太郎は少し顔を渋くした。

「でもあの子、なんか人魚がどうとか言ってたけど、どういうことだろ?」
「光太郎聞き取れたのか?」
「英語だったから少し。なんか人魚に助けられたとか言ってんだよ。でも皆、溺れてたからパニックを起こしたんじゃないかって言ってたけど」

人魚……まさか。

「セーレ」
「さっきのはやはりヴェパール?」

まさか悪魔なのか?
空気が伝わったのか、中谷たちの表情も変わる。
でも子供を助けたって、悪い悪魔じゃないのか?

「ちょっと戻ろうか。ストラス達に伝えなくちゃな」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
海岸から少し離れた場所に崖がある。その崖には実は小さな穴があった。
そこで俺はいつも通り彼女と待ち合わせる。

「今日子供助けたんだって?」
『だって……可哀相だったから』
「いや、いいよ。いいことしたんだし」

そう言うと彼女は嬉しそうに笑う。
小さい頃から海が好きだった。人魚がいるって、そう思ってた。
でもそんなことも忘れて、いつの間にかただサーフィンするためだけに海に通うようになってた。
そんな中、一度波に攫われたことがあった。
もう駄目だと思った。でも彼女が助けてくれた。

それが嬉しくて嬉しくて、この場所に通ってしまう。

彼女は嬉しそうに目の前で微笑んでいる。
俺は彼女の頬に触れる。

「このままずっと一緒に入れたらいいのにな」
『そうね。あたしもそうしたい』

“人間になれたら”
それが彼女の口癖だった。
俺は彼女を抱きしめて髪の毛を優しく梳く。
このまま時が止まれば……そう思わずにはいられない。



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