「おはよー」
あれから1週間が経過した。
悪魔の情報は今のとこは見つからず、俺は平凡な日常を過ごしていた。
59 恐怖の幽霊屋敷
教室について席に着こうとしたら、立川が俺の席に座っていた。
どうやら俺の後ろの席の上野の所に桜井と藤森も集まってるようだ。
「なにしてんだよー。ほらどけどけ」
「ちょっ池上、止めろって!」
俺は無理やり椅子に座って、尻で立川を椅子から追いやろうとした。
立川は俺の椅子にしがみついて抵抗する。なんだよどけよー。
その時、急に上野に話しかけられて、俺は上野に振り返る。
「おい拓也知ってっか?」
「はぁ?何が?」
「ヴィクトリアハウスだよ」
ヴィクトリアハウス?なんじゃそりゃ。
「何だよそれ」
「イギリスにある古い洋館だよ。そこ、リアルに幽霊でんだって」
なんだ怪談話か。こいつら朝からよくやるな。
「なんだよー。お前ら朝からそんなん話してたんか。そういう話は夏にするもんだろ」
「いやさ、こないだイギリスの一般人がその屋敷で度胸試しした動画をyoutubeに投稿してさ。今めちゃくちゃ注目集めてんだよ。そこに映ってんだ」
「まさかの?」
「あぁ。子供のお化けがマジで映ってんだって!あとな、誰も居ないはずなのに人影が見えたり、ガタガタ物音が聞こえたり、俺らもその動画見たんだけどマジ怖いんだよ!しかも昼間は何も起こんないんだ。夜にしかそういうこと起こんないんだぜ!?マジ怖くね!?」
「怖い!それは怖い!!」
俺の反応に桜井たちも思い出したのか、ひぃ〜と言って肩をすくめる。
「あんだけリアルに映るってマジやばいよな!?」
「え?そんなに映ってんの?」
「あぁモロ見えだ。足がない子供がこっちをジーっと見てんだよ。あれはマジでねぇ!」
「俺なんかその日怖くて便所いけなかったぜ」
桜井はこえーっと騒ぎ出す。藤森も真っ青な顔で語る。
気になる、気になって仕方がない!
でも見るのが怖い!!俺も便所行けなくなりそうだ。
本当に幽霊なんだろうか?単なる合成した悪戯動画じゃなくて?
あぁ見たい!猛烈に見たい!!
◆◇◆
「と、言うわけで一緒に見ようぜストラス」
俺の提案にストラスは少し嫌そうに眉を動かした。
学校が終わって、今日は珍しくマンションに寄らなかった。
理由は1つ。動画を見たかったから。
ホラーが苦手な光太郎は絶対無理!って言って見てくれないし、中谷も部活だーと言って断られた。(それは答えになってない気もするが)
なので俺はストラスと一緒に見ることにした。パソコンの電源をつけて、立ち上がるのを待つ。
「あー拓也、何してるのー?」
「澪、一緒に動画見ない?なんかすげーらしーよコレ」
澪は俺に手招きされて俺の隣に腰掛ける。
「なんの動画なの?」
「え?ホラー」
「あたし台所行く」
立ち上がろうとした澪の腕を俺は掴む。
「いーじゃんいーじゃん。一緒見ようや。怖くなったら俺の胸に飛び込んでくれていいから」
「そんな冗談言ってる場合じゃないでしょ!あたしホラー苦手なの!」
澪は半泣き状態になって声を張り上げる。(そんな姿もかわいい)
「だーいじょうぶだって。ここには悪魔のストラスさんも居るし、合成動画だってすーぐわかるよなー」
『そんなこと当てにされましてもね……』
あ、パソコン立ち上がった。
俺の腕にしがみついている澪を可愛いなと変態的なことを思いながらyoutubeを開いた。
「えーっと……確かヴィクトリアハウスって言ってたよな」
それを打ち込むと1件の動画が出てきた。これか。
ってか投稿日が1月16日って……8日前じゃん。なのに再生数はもう150万越してる。なんだこの動画すごすぎるだろ。
動画をクリックして、画面が開くのを待つ。
すると、男の声が聞こえた。
イギリスの洋館って言ってただけあって、男たちも多分イギリス人だ。全く聞き取れない。
「ストラスーなんて言ってんだ?」
『私を通訳の為に呼んだのですか?今日は心霊スポットで有名なヴィクトリアハウスに来ています。幽霊が出たらこのビデオカメラで映したいと思います。そう言ってますね』
へぇ、すげぇな。
俺だったらまず、心霊スポットなんて怖くて近寄らないね…。
そのまま男たちは中に進んでいく。
『ここはキッチンですね』
ストラスの解説を聞きながら、俺と澪は画面を覗き込む。
澪も怖いって言いながら、怖いもの見たさはあるんだろう。
ガタガタッ!
「どわ!」「きゃあ!!」
急に聞こえた物音に俺と澪は悲鳴を上げた。
動画の中も男たちが騒いでいる。
「うわーマジで上野たちが言ってたとおりだ」
めちゃくちゃ怖いんですけど。ストラスは平然そうに見てるけど……やっぱ悪魔か。
男たちはそのまま奥に進んでいく。
『随分広い屋敷ですね』
「確かに」
洋館はかなりの広さがあるみたいだ。
キッチンとかもめちゃくちゃ広かったしな。
男たちは次々と部屋を調べていく。
「なんか俺までドキドキしてきた」
『当事者でもないのに』
うっさいなぁ。
俺がそう思った瞬間、男たちが騒ぎ出した。
「なんだ?何があったんだ?」
『どうやら人影が見えたみたいですね』
え!?マジで?見逃した!
こういう時、動画って便利。すーぐ巻き戻しできちゃうんだもんな。
俺は少し前に動画を戻した。
すると画面左上に人間の影が歩いていくのが確かに映っていた。
「ぎゃ――――!!」「きゃ―――!」
同時に悲鳴を上げる。
ストラスはうるさいな。とでも言いたげに俺たちを見てきたが、そんなことを気にしている余裕はない。
だってこれマジだよな!?ガチで写ってんだよな!?
めちゃくちゃ怖いじゃねーか!!
でも男たちは興奮して、影の見えた場所を追いかけていく。
「こいつらすごいな」
「あたしだったらもう引き返すよ」
うん。俺も引き返す。
男たちが着いた場所はどうやら子供部屋だった。
ボロボロになった玩具があちこちに散らばっている。
男たちはカメラに向かって何かを話している。
『人影を見失ってしまったと言っていますね』
あーなるほどね。
すると、男たちの後ろに緑色の光が映りだす。
その光は小さな男の子の姿になった。
「おいおいマジかよ……ままま、マジで出るんだ……何だよここ……!?」
動画の男たちもカメラを回している男が大声を上げて、走って逃げていく。
そこで動画は終わった。
澪は恐怖からか両手で顔を覆う。
「こわい〜〜!!」
「あはは……ストラス、これって合成だよな?な?そうだよな。これが本物な訳ないよな?」
『……とても作り物には見えませんが、あの幽霊は本物でしょう』
え――――――――――!!!???
俺と澪はその場に固まってしまった。
本物って……ストラスが言うのならリアルだよな?
ストラスは動画が気になるのか、未だに渋い顔をしている。
『拓也、今の動画をもう一度流してみてくれませんか?』
「冗談だろ?こえーよ」
『元は貴方が見だしたのですよ』
そう言われるとどうしようもない。
俺はもう一度、動画を最初から再生した。
「あたし台所行くね」
澪!?逃げられた!!
伸ばした手は空しく、澪は台所に逃げるように向かっていってしまった。
画面ではまた同じ動画が流されている。
マジで見たくないんですけどー……
俺は敢えて見ないようにケータイを開いた。悲鳴やドタドタと走る音が聞こえて集中できない。
早く終われよ〜。
そう思うこと20分、動画は終わったようだ。ストラスは考え込むように首をかしげる。
「満足したか?」
『えぇ。この件、もしかしたら悪魔の仕業かもしれません』
は?
「嘘だろ?」
『可能性は0ではありません』
「でもお化けだぞ?悪魔じゃないんだぞ。それに心霊スポットに幽霊なんて普通だろ。(無茶苦茶だが)そんなんだったら日本にだって出るって噂の場所あるぞ」
『この死霊の少年をよく御覧なさい』
「やだよ!見たくねぇよ!こえーな!!」
幽霊よく見ろって!
そんなのわかりましたーって言う奴いんのかよ!
『ならば口頭で説明しましょう。この少年の首には首輪が嵌められていました』
「首輪?」
『えぇ。生前に首輪につながれたまま死んだのならこの姿も納得できますが、どうやら違うようです。首輪からなにやら魔力を感じます』
「画面見ただけでわかんのか?」
『霊は人間と気が違います。まぁ気の色で判別できるわけですが……首輪だけ色が違う』
「だから?」
ストラスの言ってる意味がわからなくて、聞き返すしかできない。
『もしかしたらネクロマンシーを得意とする悪魔に召還されたのかもしれません』
「ねくろまんしー?ってなんだ?」
聴きなれない言葉に俺は首をかしげる。
『死霊魔術のことですよ。死した人間の魂を媒体にして霊にして召喚したり、死した体をゾンビ、スケルトンに変える魔術です。それをネクロマンシーと言います。その魔術を扱うものはネクロマンサー、“死霊魔術師”といいますがね』
ネクロマンサーって聞いたことあるぞ!おい!!
「それあれだろ!?アンデッドって奴だろ!?」
『おや、よく知っていますね。その通りです。ソロモン72柱の中にもネクロマンシーを得意とする悪魔は数匹いますからね…あなたが地獄に戻したオロバスやサミジーナもネクロマンサーですよ』
「うそ!?オロバスも!?」
『嘘ではありません。ただ、彼はその力をあまりよく思っていないのでこの数千年間一度も使っていません。そのせいかネクロマンサーとしての印象が薄れ、未来を見据える力しかないと思われているのですがね』
ネクロマンサー……死霊魔術師。
なんかめちゃくちゃ恐そうなのが来た気がする。
まぁ悪魔は全部恐いんだけどさ。だって今までにないタイプじゃない?
殺人とか、株が上がったーとか、そういうのしか今まで経験してなかったから。
まさか、こんな悪魔がいると思ってなかったよ。
思わず青ざめた俺にストラスはため息をつく。
『とりあえずパイモン達に報告する必要性がありますね。今日はもう夕飯も出来上がりますし、明日行ってみるとしましょう。拓也、明日帰りにマンションによってくださいね』
「嘘だろ。頼むからパイモン、嘘であるといってくれ」
「拓也、ご飯だって」
澪が俺を呼びに来て、思わず我に返る。
やべぇ。放心してた。
『拓也、わかりましたね。マンションに来るのですよ』
ストラスはそういい残し、キッチンに向かう。
残された俺に澪が不安そうな表情を浮かべて近づいてくる。
「拓也?」
「さっき見た動画の幽霊、ストラスが悪魔かもって……」
「嘘……」
嘘であってほしいさ。
澪もサーっと顔を青くし、できる限り明るい話題を出した。
「でもわかんないよね、まだ……だよね?」
「……」
「……」
俺達は何も言わずに、一緒に夕飯を食いに向かった。
+注意+
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