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第2部
第54話 愛か死か
「やはり悪魔はヴアルと考えて間違いないだろうな」
情報をまとめて出た結論に俺達全員が頷いた。

ヴアルか……愛に飢えた殺戮者に俺達は今日会いに行く。


54 愛か死か


放課後、中谷がスポーツバッグを軽いながら返事をする。

「じゃあ犯人はヴアルって奴なのか?」
「あぁ、ストラスが言うにはな。とりあえず今日行ってみるつもりだけど」
「ロシアめっちゃ良かったぞ!これ写真な」

光太郎がデジカメで撮った写真を中谷に見せる。

「うお!いいなー。俺も今度から写メとろ」

お前ら、こんな大変な時に写真撮ってる場合かい。

「はぁ……俺も付いて行きたいけど部活がなぁ」
「しょうがねーよ。こればっかりはな」

俺達は中谷に別れを告げ、一度自宅に戻った。
理由は1つ。日本より遥かに寒いロシア。俺達は厚着の服を着ていくことにした。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「んーこれでいいか」

制服を脱ぎ棄て、できるだけあったかそうな服を着こんでいく。
シャツを2枚、ポロシャツ1枚、その上にセーターを1枚、更に上にダウンを着て、マフラー巻いて、手袋付けて準備は完璧。

『それは着こみ過ぎではないのですか?』
「馬鹿。お前は毛むくじゃらだから分かんねーんだよ」
『失礼ですね』

ストラスはブツブツ小言を呟き続ける。
あーぁーうるさいな…もー
俺はストラスを肩に乗せ、そのまま家を出た。

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「やっぱロシアは寒い」

マンションに行ってからすぐに俺達はロシアに向かった。
相変わらず雪が積もってるし寒いし、どうしようもないなこれ。
とりあえず俺達は昨日言っていたアクセサリー屋に向かう事にした。

「まだ朝なのに人いるもんだなぁ」

今の時刻はロシアで11時20分。
平日なのにもかかわらず、店内には客がいた。
シトリーは気を感じたアクセサリーをパイモン達に手に取るように促す。

「確かに感じるな」

パイモン達はそのまま難しそうな顔をしている。
俺はそんなパイモン達をよそに店の外に出た。

「やっぱすごいなぁロシア」

思わず呆けてしまった声。だってロシアにいんだぞ?
女の人もなんか背たけーし、マジですげー……

「……愛かぁ」

今回の悪魔が悪い奴なのはわかるけど、でも恋愛成就させてくれるんだろ?
でも別れた罰が「死」なんて……それも重すぎるだろ。

「Вы делали, оно?(何してるの?)」

え?俺の目の前には1人の女の子。
見た目は10歳もいかないくらいかな?長い黒髪に帽子をかぶっている。
っていうか見た目がめちゃくちゃ東洋人っぽい。

「え、あーその……I can’t speak Russian!I am Japanese!」

俺は何が何だかわからなくて適当な英語を並べる。
マジでなに言ってんだ俺。

「日本人?」

この子日本語話せるのか?
少女は人のいい笑みを浮かべて俺を見上げてくる。

「観光の方かしら?このお店に用があるの!?」
「え?あぁ……うん」
「そうなの?このお店はね恋愛成就のアクセサリーが有名なんだよ!」

少女は嬉しそうに話し続ける。
見た目も可愛らしいこの女の子がニコニコ笑っているのを見ているうちに俺は忘れてしまっていた。

この少女がヴアルである可能性があるということを。

「貴方は好きな人いないの?」
「え?好きな人?」

少女は嬉しそうに俺の返答を待っている。

「いるっちゃーいるけど……」
「だったらアクセサリー買うべきだよ!その子と仲良くなれるよ!」

少女は俺に一気にまくし立てた後、嬉しそうに微笑む。

「恋っていいよね。少し辛いこともあるけど、でも楽しくって暖かい。好きな人と永遠に一緒にいたい。人間の最も純粋で最も美しい願いと思わない?」

大人びてるんだな。そんなこと考えたこともなかった。

「一緒にいたいって言うのはあるよな」
「でしょ!?」

少女は目を輝かせる。

「貴方はとってもいい人。貴方の恋をあたしは応援するね!」
「え?あ、ありがと……」

女の子は嬉しそうに笑い、どこかに走って行ってしまった。
俺は何が何だか分からず、その場に立ち尽くしてしまった。

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「Оно не завершито.(すみません)Меньшее время оно может получить?(少しお時間いただけますか?)」

俺が店に戻ると、パイモンが店主に話しかけていた。

「どこ行ってたんだよ」
「わりぃわりぃ」

俺は光太郎に謝って、パイモンの会話に耳を立てる。

「Оно вероятно?(なんでしょうか?)」
「Здесь трудно сказать.(ここではちょっと)Оно пойдет к месту где персона не.(あちらに行きましょう)」

パイモンは店主の腕を引っ張って店の隅に連れていく。
店主は怯えを含んだ目でパイモンを見つめていた。

「Будет некоторым делом в мне?(俺に何の用だ?)」
「Будет возможность вы делая подряд с демоном.(貴方が悪魔と契約している可能性がある)Вы не знаете?(ご存じないか?)」

パイモンが店主に何か言ったとたん、店主は目を丸くした。

「Оно должна сказать?(何を言ってるんだ?)Демон и cThe cLike… как для вас имея влияние на вероисповедании, ем too much.(悪魔なんて……あんた宗教に影響されすぎてるぞ)」
「Потому что вы не знаете на всех, хвостовик?(貴方は何も知らないのですね?)」
「Естественно.(当たり前だろう)Пожалуйста возвращение уже.(もう帰ってくれ)Магазин пожалуйста не нарушает.(店の邪魔するな)」
「Impoliteness оно сделало.(失礼いたしました)」

パイモンは頭を下げて、俺たちのもとへ戻っていく。

「あの人なんだって?」
「あの様子では悪魔と契約している訳ではなさそうです」
「マジかよ!?」

シトリーはがっくり項垂れる。

「じゃあアクセサリーを提供してる業者の誰かとか?」
「それはないでしょう。ここは手作りアクセサリーの店ですからね」

ヴォラクは何か思いついたようにパイモンに話しかけた。

「もしかしたら、契約者が知らないうちに契約してるかもよ」
「そんなことありえないだろう」
「でも俺もマルファスも自分を悪魔と知らせずに契約した。今回もそうなのかも…」

パイモンは考え込む。

「だとしたら、悪魔の姿を確認するまでどうしようもないな」

えぇ……それってかなり時間かかんじゃん……あ。
さっきの女の子が不意に思い出される。

「まさか……」
「拓也?」

俺は慌てて店の外に出る。
そしてさっきの女の子が走って言った方向へ走っていく。

「拓也!?」

光太郎たちが俺の後を追いかけてくる。
まさかあの子がそうなのか?なんでさっき気づかなかったんだよ!?
普通、こんな時間にあんな小学生のような子供が歩いてる訳ないじゃん!それに日本語まで話せたし!
でも探してもさっきの子は見つからない。

「拓也マジ何?」

俺も光太郎も息が切れている。

「俺、さっき女の子みたんだよな」
「はぁ?」
「もしかしたらその子かも……」
「え?嘘だろ」

光太郎は信じられないという顔をした。
自分でも信じられない。
だってあの子は普通の女の子だったから。

「ちょっと拓也。何してんの。ストラス達待ってんだぞ。戻ろうよ」

追いついたヴォラクが俺を睨む。

「さっき女の子が居て、もしかしたらその子かなぁって」
「特徴は?」
「真っ黒な長い髪で、年はお前と同じくらいかな?」
「ヴアル……」

やっぱりそうだったのか……

「拓也、一度戻ろう」

ヴォラクに促されて、俺たちは一度アクセサリー屋に戻ることにした。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「拓也、急に走り出してどうしたんだ?」

戻った俺たちに心配相にセーレが駆け寄る。

「さっき女の子みてさ、ヴォラクが多分ヴアルだって」
「本当か?」
「うん」

セーレは俺が頷いたのを見て、少し考え込んだ。

「今ならまだ見つかるかな?」
「無理だろう。モスクワは広いからな」

そんな!本当になんで気付かなかったんだよ!?
俺は自分自身を責め立てる。
でも悪魔が自ら話しかけてくるなんて思わなかったからっ!

「確率は低いが、とりあえず俺達は主がいた方向を探しに行ってみよう。行くぞ」
「拓也、お前と光太郎はここにいろよ。お前らすぐへばるから足手まといだしな」

なんじゃそりゃ……すっげー失礼。
シトリーとパイモンとセーレは女の子が走って行った方向へ走りだした。

「ヴォラク、お前は?」
「俺は万が一の時に守ってあげないとね」

なるほど頼もしい。

「ってかやっぱアクセサリー屋に入んない?ちょー寒いし」

光太郎がそう言ったので、俺達はまたアクセサリー屋に入ることにした。(暖房目当て)
中では店主がレジでアクセサリーを作りながら店番をしていた。

「本当だ。手作りみたいだな」
「ますますこのおっさんが契約者の可能性が出てきたよ」

さっきまで誰かしら店内にいたのに、今は誰1人店の中に客はいない。
俺達はきょろきょろとあたりを見回した瞬間、ドアが開いた。

「また会ったね継承者」
「継承者からパイモン達を引き剥がすために結構苦労したんだよ?」

そこにはさっきの女の子。やっぱりこの子が!どういうことだ!?

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「おいおい、マジかよ」
「死体だな」

ヴアルを探していると人だかりができている場所があった。
そこには男の死体。
警察官が必死に野次馬達を追いかえす。

「パイモン」
「どうした?」
「彼の付けてる指輪……同じものをアクセサリー屋で見つけたよ」

なに?じゃあまたヴアルが事を起こしたのか。

「行くぞ」

俺達はヴアルを探す。
あいつは一体どこに隠れてるんだ!?

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ヴアルがドアを閉めて俺に近づいてくる。

「あたしを地獄に戻しに来たの?」

声が出ない。やっぱりこの子が悪魔だったんだ!ヴアルはかすかに笑って俺の手を掴む。

「ダメだよ。あたしとグレゴーリーを離そうとしちゃ……あたし怒ってるんだからね?」
「拓也!」

なんだ?手が急に熱く……!
ヴォラクが急いで俺の手を引っ張ってヴアルから引きはがす。
そしてその瞬間……

ドオォン!!

俺の目の前で爆発が起こった。
尻もちをついてその光景を呆然と見つめる。
ヴアルは笑ったまま。

「Оно иметь что-то!?(どうした!?)」

店主が俺たちに走って近寄ってくる。

「な、なにがどうなってんだよ」
「ヴアルの力だよ。あともうちょい遅かったら拓也爆死してたよ」

俺が固まっている目の前でヴアルは笑い続ける。

「ふふ、とろいんだぁ」

とろいって……こんな爆発避けれる訳ないだろ。ヴアルは悪魔の姿に代わり、俺に近づいてくる。

『ねぇ、あたし別に人に危害を加えたくないの。だから引いて、ね?』
「人に危害加えないって……もう3人も殺して何言ってんだよ!」

ヴアルは悲しそうに顔を歪める。

『だってそれはあの人たちが悪いの。貴方もわかるでしょう?愛してる人を裏切るなんて最低じゃない』
『ヴアル、それは理由にはなりません。いかなる理由があろうとも殺人は許されない』
『ストラス』

目の前の光景に店主は訳が分からないと言う様に、その場に座り込んでしまった。

「riyuba」
『оно делает.guregori(ごめんね。グレゴーリー)』

少女は少しずつ俺に近づく。

『ねぇ、なんで邪魔するの?好きな人と居たいって言うのはそんなにおかしい事?』
「それはおかしくなんかない。でもそれで人を殺すのってどうなんだよ!」
「拓也」

ヴォラクが急に俺の言葉を遮る。

「あいつがあんなに人に執着するのは前の契約者に恋をしてたからなんだ」
「恋?」

ヴアルはポツポツと話しだした。

『あたしは前の契約者が好きだった。その人の為なら何でも出来た。その人が結婚して、子どもができて、それでも想い続けてきた。でも彼は死んでしまった。悲しかった。苦しかった。地獄に戻っても彼を思い続けてきた。でも今の人間は何?こんなに人を裏切って悲しませて、そんな奴らに愛を語る資格なんてない。そんな奴らにあたしの力を使ってほしくない』

ヴアルは俺の目の前に膝をつける。

『今のあたしにはグレゴーリーだけ。彼しかいないの』
「気持ちは分かったよ!でもそれで人を殺すのは違うだろ!」
『え?』
「俺は澪に振られても澪を殺さない!悲しくても殺しなんかしない!そんな簡単に人を殺しちゃいけないんだ!!」

ヴアルは俺の顔を覗き込む。

『優しいんだね……でももう無理だよ。殺してしまった人は戻らない』
「だからって!」
「ヴアル」

ヴォラクがヴアルの前に出る。

『ヴォラクが裏切ってるの意外だった』
「そんなのどうだっていいだろ。もうこんな事は止めろ。今ならまだ間に合う」
『間に合ったところで地獄に戻すんでしょ?なら嫌。あたしはここに居る。あんたを殺してでもあたしはここで生きていく』
「交渉は決裂か」

ヴォラクが悪魔の姿に変わる。
光太郎も竹刀を構えて、俺の前に立つ。

「どうなっちゃうんだよ」
『ストラス。拓也と光太郎と店主を早く2階に連れてくんだ』
「え!?パイモン達呼びに行かなくていいのかよ!?」
『結界が張られてる』

うそ。まさかこの店全体に結界はってんのか?
俺達は店主の腕を引っ張って2階に上がる。

くそっ!まじでやばいなこれ!!


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