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第53話 歪な愛の形
『今日も午前から冷たい風と雪が降る見込みです。外出の際は寒くないように着こんで出かけてください』

朝、お天気お姉さんが寒そうに天気予報をしている。
俺はそれを見て、今日もロシアは寒いんだろうなぁと一人心に呟いた。


53 歪な愛の形


「今日俺、ロシア行ってくるから」

急な俺の言葉に、母さんと父さんはその場に固まった。

「ロシア?」
「うん。昨日ロシアで殺人事件あったらしくてさ、パイモンが悪魔と思うって言ってんだよね。だから調べてみることになったんだ」
「大丈夫なの?怪我しない?」

母さんは複雑そうな顔。
ヴァッサーゴの時、俺が腹を切られたのを気にしてるようだ。

「平気。今日は調べに行くだけだから。ストラスも途中で家出ると思うから」
「そう……」

母さんは深く追求しない。
俺はそのことをありがたく思い、行ってきますと告げて家を出た。

―ヴォラクside―――――
「何かが引っ掛かるな」
「なにが?」

パイモンがパソコンで情報を調べている横から俺は画面を覗き込んだ。

「殺害された奴らのことだが、何か共通点でもないかと……な」
「あぁ。で、あった?」
「いや、見つけられない。男2人に女1人……男だけや女だけを狙ってるというわけでもなさそうだし、共通点は皆10〜20代というとこだけだな」
「それだけじゃね」
「あぁ。だから何か有力な情報をな」

パイモンはまたパソコンと睨めっこ。
あーぁ、俺も行きたいなぁ。留守番って好きじゃないし。

「なぁパイモン、俺も行きたいよ」

パイモンはパソコンの画面から目をはなして俺を見つめる。

「お前はもう主と契約していないだろう」
「そうだけど……やっぱ留守番って嫌だし、パイモンだって俺がいないとキツいんじゃない?」
「確かにお前とシトリーがいないと戦えるのは俺だけだが……」

パイモンは考え込んで、俺に提案してきた。

「お前が中谷の許可をとったのならいいだろう。契約石のエネルギーは溜まってるな?…ロシアは範囲外だぞ」

相変わらず高圧的だなこいつ。
まぁいっか、それで俺も付いて行けるんなら。

「シトリーは居たり居なかったりするけど、付いてく気ないのかなぁ」
「まだないだろうな」

パイモンはパソコンを閉じて、俺に向きなおる。

「まだってどういうこと?」
「探してるんだよ。グレモリー様を」

グレモリーって確かルシファー様の……

「探すってどうやって?」
「さぁな。大方俺と同じでパソコン使って事件とかを調べ回ってるんじゃないのか?」
「ふーん……最後の審判のこと言ってきたのはあいつのくせに」
「そうだな。あいつは世界が滅ぶのも望ましくないけれど…それ以上にグレモリー様に戦いに参加されるのが嫌なんだろうな」
「意外と一途なんだね」
「今頃知ったのか?」

パイモンは軽く笑いながら席を立ち上がる。

「パイモンって意外とシトリーと仲がいいよね」
「腐れ縁だ。個人的なことには一切興味はないけどな。コーヒーいるか?」
「うん。砂糖とミルク入れてね」

ばっさり。パイモンって本当にこえー……
とにかく中谷早く帰ってこないかなー。
外は相変わらず雪が降ってる。それでも昨日よりはましになったかな?

―拓也side―――――
「あー今日は山田たち来てるし、学級閉鎖はなしかぁ」
「まぁそこまで降ってないしな」

上野が机の上でうなだれる。よっぽど残念なようだ。
電車は今日は普通に動いてたのか、山田たちはいつも通りの時間に来ている。
確かにこれで学級閉鎖は無理だろう。現に今、担任が普通に入ってきたもん。
やっぱ今日は普通に授業があるみたいだ。

◆◇◆
「さぁ今日も行くとすっかぁ」

帰りにマンション行かなきゃな。
今日は昨日言われたとおり、ロシアに行かなきゃいけないし。

「中谷ー光太郎ーお前らどうする?」
「今日は学校内で筋トレの部活あんだ。だからなぁ…悪いな」

中谷はダメみたいだ。となると必然的にヴォラクも駄目だな…

「俺は行くぞ。そうだ、松本さんも誘おうぜ」
「なんで?」

光太郎は鞄の中からなぜかデジカメを取り出す。

「やっぱいろんな国にこれからも行くんだから記念に撮っとくもんだろ。それに今日は探すだけだし。ならできるだけ大勢で写真撮りたいじゃん」
「いーなー」

中谷……いいなぁじゃないだろう。
そんな呑気な事言ってる場合か。
それに澪を巻き込む訳には。こないだ巻き込んだばっかなのに。
目の前でニコニコしてる光太郎の頭に俺は軽くチョップをかました。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『そろそろ来ると思ってたよ』
『お帰りなさい拓也』
マンションに着くと、セーレはもう準備をしていた。
結局澪を誘わなかった俺は、そのまま光太郎とマンションに向かった。
俺は軽くストラスに手を挙げて挨拶する。

「ねぇ中谷は?」
「いないけど?」

ヴォラクは俺らの周りをちょろちょろ見渡しだす。
何でそんなあからさまに肩を落とすんだよ。

「付いて行きたいんですよ。でも中谷がいないとどうしようもならないでしょう?」

なるほど……確かに俺も付いて来て欲しいかも。
やっぱ戦える奴は多い方がいいし……

「来いよヴォラク。中谷には俺から言っとくからさ」

俺の言葉にヴォラクは目を輝かせてコクコクと頷く。
しかしパイモンは不満顔。

「主、しかし……」
「いーじゃん。中谷も絶対OKくれると思うしさ」

パイモンは少し不満そうだけど、しぶしぶ了承してくれた。
ヴォラクは嬉しそうに飛び跳ねる。(なんでだ?)
リビングに入るとシトリーの姿。お菓子を食いながら雑誌を読んでいる。

「行くのか?」
「ん?あぁ」
「そっか」

シトリーはよっこいしょと立ち上がる。

「行くんだろ?さっさとしろよ。俺8時からバイトのシフト入ってっから」
「わかってるよ」

光太郎は奥の部屋から竹刀をとってきた。

「練習の成果見せるぜー!」
「はしゃぎすぎんなよ。お前」
「わかってるよ」

光太郎は頷いて、ジェダイトによじ登る。
俺も頑張ってよじ登って、俺たちはロシアへ向かった。

◆◇◆
「うお〜さみぃ〜〜〜!」

人通りの少ない路地裏に俺達は着陸した。
雪がめちゃくちゃ降ってる。寒すぎる!いまにも凍えそうだ!

「早くどっかはいろうや」
『今来たばかりではないですか』

光太郎も震えながらボソボソと呟く。
なんでそんなにお前ら平気そうなの?ストラスはまだ毛深いからわかるけどさぁ。
俺達はそのまま路地裏から外に出る。

「主、少し行きたいところがあるのですが、少し歩きますがよろしいですか?」

え?行きたいとこぉ?あーいーよいーよ。目的もないし。
俺は2つ返事で了承した。
ついた場所は広場だった。

「ここどこ?」
「赤の広場です。今回事件がおこった場所です」
「うおー!生で初めて見た。こりゃ写真とっとかないと!」
「俺もケータイで……」

光太郎はカシャッカシャと写真を撮りまくる。
やっぱ隣で写真撮られると俺も欲しくなるもんで…俺も写メを撮っていく。

「観光ではありませんが」
「いいじゃないか少しくらい。な?」

セーレに諭されて、パイモンはため息をつく。でもまぁ折角来たんだし少しくらいはなぁ。
広場にある時計を見ると、朝の10時30だった。

「ロシアって時差は−6時間なんだな」

平日なのか人もあんまり多くない。
俺達は地面に積る雪を踏み分けて歩く。
でも途中でKEEP OUTとかかれたテープに阻まれた。

「あ?なんだこりゃ」
「ここで事件が起こったようですね。これでは調べることはできませんが」
「聞き込みでもする?」
「そうだな。2手に分かれるか」

俺はパイモンとセーレとストラス、光太郎はシトリーとヴォラクとで別れて情報収集することにした。
俺達はそれぞれ別れて、モスクワ内で聞き込みを始めた。

「Я увеличиваю знать случай.(その事件なら知ってる)Moscow с последствием случая, будет только системой.(そのせいで今、モスクワは厳重体制なの)С особым уход уходом, хотя будет рождеством, очень regrettable.(せっかくのクリスマスなのに残念よ)」
「Так(そうですか)Оно было признательно.(ありがとうございます)」

セーレは軽く頭を下げて、俺の元に戻ってくる。

「ダメだな。いい情報が見つからない」
「そっかぁ」

俺は軽くうなだれる。

「Вы увеличиваете знать тот случай?(あの事件知ってる?)Как для человека убивает внутри на том случае, только человек который в том дне был сотрясан в ей вдыхая с что-то.(あの事件で殺された男性は、その日に彼女に振られた男ばかりなんだって)」
「Поистине?(本当に?)Неделями настолько 1 тому назад будут повреждение, даже убейте будет человеком будет для того чтобы сделать, знакомец друга друга, котор они кажутся, тем ме менее она, он сотрясал в ей и прошл и услышал.(でも1週間前に、殺害さえれた男性があたしの友達の友達の知り合いらしいんだけど、彼も彼女に振られた後に殺されたって聞いた)」

俺たちの横を女子大学生くらいの女の人が何やら話しながら通り過ぎる。
セーレは内容を聞こえていたのか、少し考え込む。

「どうした?」
「さっきの話が少し聞こえたんだけど、今回殺害された人たちは皆、殺害される前に恋人に振られてるみたいだな」

なんだそりゃ……

『また妙な共通点ですねぇ…』
「だが被害は3人だけだしな。今回の奴らがたまたまそうだっただけかもしれない」

何かますますこんがらがってきたじゃんか。
俺達はその後も色々調べてみたけど、何も情報が集まることはなかった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ここがアクセサリー屋かぁ」

俺とシトリーとヴォラクはアクセサリー屋に足を運ばせた。
なんか面白い話を聞いたから。

今回、殺害された奴らは全員ここのアクセサリーを持っていた。

それはシトリーが殺された男を知っている人からどんどん仲いい人を教えてもらって、この情報を知ったんだけど。
アクセサリー屋は女の子もだけど、男の姿も確認できた。

「ここのアクセサリー屋の恋愛成就のアクセサリーを身につけると恋が叶う、か」

俺も拓也に買ってやろうかな(笑)
俺とシトリーはその小さいアクセサリー屋の中に入って行った。
中はすごい人だ。この狭いアクセサリー屋の中で、これだけの人がいると、なかなか見て回れない。
しかも1か所に人が集中してる。
俺とシトリーはその中に割り込んだ。
これか?俺はじゃら……と1つパワーストーンで作られたブレスレットを手に取った。

「こんなの買っただけで本当に上手くいくのか?」

側には専用のノートがある。
ノートをめくると、そこにはロシア語がズラリと並んでいた。

「あーこりゃ人名だな」
「人の名前?このノートに?」

シトリーはノートの表紙を眺める。

「このノートに好きな人間の名前と買ったアクセサリーの番号を書くといいらしいな」
「いっぱい名前書いてるねー。男の名前が多いみたいだけど」

番号?
アクセサリーを調べると、値段が書いてる端に小さく番号が書いてある。

「これか」

試しに俺もやってみようか。あ、でも俺金ねぇや。残念……
俺はアクセサリーを置いて、辺りを見回す。
ノートは俺たちが机に置いた瞬間、さっそく女の子が書き込み始めた。
店主は30後半くらいの男の人かな?でも1人でやってんのかな?
店の中の混雑に少し押されて、俺達は店を出た。

「うーん……特に何か怪しいってわけではないような、でもなーんか感じたんだよな」
「シトリー?」
「もう少し詳しく調べてみるかな……ここで待ってろ」

シトリーは俺とヴォラクをその場に置いて、1人で店に入って行った。

「どうしたんだ?」
「あのアクセサリーから何か感じたんだよ」
「なにか?」
「んー魔法っていうか、なんかおかしな気がね。パワーストーンも元々魔力の入ってる石だけど、それとは別の何かを感じたんだよね」

つまり、変な気を感じたってことか?よくわからんが。
暫くすると、シトリーは戻ってきた。

「やっぱり感じた」
「何を感じたんだよ」
「呪術のような何かをさぁ」
「呪術!?」

そんな禍々しいもんを感じたのかよ!?
とりあえず拓也に連絡して、俺達は一度合流することにした。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「こっちはなーんも見つかんなかった」

俺はありのままを光太郎たちに告げた。実際何もなかったし。
少し気になることがあったけど、それが本当かの証拠もなかった。

「俺たちのとこは何か変なことがあったんだよな」
「変なこと?」
「まぁこいつ等に聞いて」

光太郎はヴォラクとシトリーを前に出す。

「自分で言えよ。なんかよ、今回の被害者は全員殺される直前に恋人に振られてんだよ。そんでそいつらは彼女か、彼氏かどっちかがある店のアクセサリーを持ってるんだ」
「店の?」
「おう。こっから結構歩くんだけどな。小さな店なんだけど、そこの店の恋愛成就のパワーストーンで作られたアクセサリーを買って、意中の人間の名前を店のノートに書くと、両想いになるらしい」

あれ?これって……俺たちも話を聞いたような。
なんかどこにでもあるおまじないみたいな感じだけどな。

「でもそのアクセサリーから妙な気を感じたんだよね」
「妙な気?どういうことだ?」

ヴォラクの言葉が気になったのか、パイモンが深く追求してくる。

「俺は軽く触っただけだからあんまわかんなかったんだけど、シトリーは感じたみたいよ」
「あぁ。ありゃ何かの魔術か呪術かが入れ込まれてる」
「では悪魔の可能性も」
「一概に捨てきれない。悪魔の力の欠片が入ってる可能性が高いな」
「そう、か」

皆が黙りこんでしまって、俺は気まずさから時計を見た。
今の時間は日本時間で午後7時。結構探してたな。

「シトリー。そろそろ帰んなくて平気か?」
「あ?お、こんな時間か。じゃあ俺はもう無理だから帰ろうや」
「証拠を見つけたばかりだが、まぁいい。とりあえず一度戻るか」

俺たちは一度、マンションに戻ることにした。
マンションについて、それぞれがそれぞれが帰路につく。光太郎も帰ってしまった。
俺はストラスと家に帰りながら、悪魔のことを少し話しあった。

「なぁ、今回の件で当てはまりそうな悪魔は何人いるんだ?」
『そうですね……アモン、ベレト、ゼパール……上げるとまだ数匹いますね』
「結構いんだな」
『しかし思い当たる悪魔は特定できています』
「え?」
『恋愛、別れ、死……おそらく犯人は悪魔ヴアルだと思われます』
「ぶある?」

『ヴアルです。ラクダに乗った少女の悪魔です』

「少女!?」
『彼女は別に悪意のある悪魔ではないのですが…彼女は恋愛事に関して、非常に協力的な悪魔でして、片思いしている人間が自分に乞えば、喜んで意中の相手を振り向かせる力を働かせてくれます』
「じゃあなんで殺人事件とか起きんだよ」
『ヴアルは非常に執念深い悪魔としても有名です。彼女は一度結ばれた者たちの破局は絶対に許しません。その時が来れば、彼女は容赦なく自分の力に頼った人間を死という形で罰します』

こわっ!

『今回のキーワードを結び付けていくと、恐らくヴアルが一番確率が高いのではないでしょうか。それに……』
「それに?」
『昨日、パイモンが言っていたでしょう?犯人の可能性があるのは幼い少女だと』
「な……」
『ヴアルが人間に変わった姿なら、この話は頷けます』

待てよ。じゃあ今回の相手は小さな女の子って言うのかよ。
悪魔だからと言っても、簡単に割り切れるわけねーじゃんよ。どうするんだよ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「Утомленная дорога.(お疲れ様)」

グレゴーリーは軽くあたしの頭をなでる。
優しい手、暖かい手、この手はあたしの物。
過去に全てを失ったグレゴーリー。だから彼あたしに固執する。

あたしは亡くなった娘の代わり何だとか。

でもあたしは2番なんて満足できない。
1番じゃなきゃ満足できないの。

「Guregori」
「Оно?(なんだい?)」
「Большая часть, котор вы полюбила в мире.(世界一愛してる)」

ねぇ早く気づいて。
貴方の娘も奥さんもこの世にいないのよ?
貴方の心を独占していいのはあたしだけ、あたしだけなの。

「riyuba.」

グレゴーリーはアタシの名前を呼ぶ。
ロシア語で「愛」を意味するその名前はあたしのお気に入りの名前。
でもね本当の名前も呼んでほしいのに。
彼の服にはアメジストのペンダント。それはあたしの契約石。お仕事の時にはつけてないけど、仕事が終わるといつもつける。
大事にしてくれてるのね。

だから愛おしい。
だから殺せない。

きっとあなたの魂は最高のはずなのに……

でもいいや。この方が楽しいもの。
ねぇグレゴーリーずっと一緒にいようね。世界の終焉まで……

貴方が死んでも魂は渡さない。絶対に天国には行かせない。
登場人物

ヴアル…ソロモン72柱47番目の悪魔。
     36の悪霊軍団を支配下に置く侯爵である。その姿はヒトコブラクダにまたがった人間の姿をとる。
     自分が想っている人間との間に愛情を芽生えさせる事と、敵対者と味方との間に友情を覚えさせる事を得意とする。
     契約石はアメジストのペンダント。

グレゴーリー…ロシアで手作りアクセサリーの店を経営している。
        過去の事故で妻と娘を亡くしたことからヴアルを自分の娘として引き取っていた。