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第2部
第52話 血染めのクリスマス
相変わらず寒すぎる。
学校に行くのがスッゲーやだ。
はぁ……今日も剣の稽古しないとな。


52 血染めのクリスマス


「うっほ。雪が積もってる!マジねーわ」

玄関の外は見事な銀世界。
歩くたびにシャリシャリ音が鳴る。
小さい頃は嬉しかったんだけどなぁ……この年になるともう寒いしか思わない。

「早く春こねーかなー」

しかも今も牡丹雪だし。
俺はぶつぶつ文句を言いながら、学校に向かった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「おはよーさまんさ」
「なんだよそのギャグさっみぃ」

学校について挨拶をしたのにこの切り返しは酷くないか?

「おはようございますぅ〜今日も寒いでぇすねぇ〜〜」
「今度は何だよ。でもマジさみーな……雪めっちゃ積もってたし」

上野は真っ赤になった鼻をスンッとならす。
俺は鞄を置いて窓の外を見る。
雪は相変わらず降っており、かなり凄い状態だ。

「ってか山田たちまだ来てねーじゃん」
「雪の影響で遅れてんだろ。ニュースで言ってた」

いつもなら学校に早く付いている電車組が今日はまだ来てない。
上野はもう一度鼻をならし、ティッシュで鼻をかむ。

「大変だなぁ」
「このまま学級閉鎖になんないかな」
「電車止まったらなるんだっけ?」
「そう」
「でも無理だろ。学級閉鎖ならもう連絡網回ってるって」

いつもならクラスに来ている面子も今日は少ない。
自転車通学の光太郎もまだついてないし。

「きゃ〜〜マジさっみぃ!部活も休みだし、やんなっちゃうよ」

あ、中谷。相変わらず元気だな
中谷は鞄を置いて、こっちに近づいてくる。

「今日めっちゃ雪すごいなぁ。グラウンド使えなくて朝連も部活もなくなっちゃったよ」
「やっぱこの雪じゃなぁ」

しょうがないよな。これじゃ。
雪は静かに降り続ける。
このままいけば本当に今日は学校早く終わったりするかもな。
光太郎は20分後に学校に来た。
もうHR始まってるんだけど、いない生徒がいっぱいいる中じゃ途中で教室に入っても全然恥ずかしくない。
しかも光太郎が来た瞬間の先生の言葉。

「さっき連絡が入ったが、電車が止まったようです。せっかく来てくれたようですが、今日はもう授業はしません」

「なに!!?」
「しゃっ!」

上野は小さくガッツポーズ。
嬉しいけどさぁ、それならもっと早く言ってよ。寒い中頑張って来たんだからさ、まじ勘弁してよ。
来たばっかの光太郎も嬉しさと不満が入り混じった顔をしている。
とりあえず学級閉鎖になったので俺は鞄に荷物を詰めなおした。
時間はまだ8時40分。マンションに行こうかな。稽古しに。
俺がそう思って立ち上がると、光太郎と中谷が来た。

「マジ最悪だよ。根性出してチャリ漕いできたのに…まさかの学級閉鎖。俺3回もこけかけたんだぞ」
「俺もまさかの部活なし〜こんなことなら学校来なくて寝ときゃよかった」
「俺これからマンションに行くんだけどお前らどうする?」
「それを誘いに来たんだよ」

どうやら2人もマンションに行くつもりらしい。
俺達は学級閉鎖になったのにもかかわらず10時になったら近くのカラオケに行こうとはしゃいでいる上野たちに手を振って教室を出た。

「あ〜さむぃ~光太郎チャリどうすんの?」

外は風と雪でかなり寒い。
こんな中マンションまで歩くのもきついよな。

「今日は置いて帰る。これは無理っしょ」

ですよねー。
俺達はそのまま歩いてマンションに向かった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「おっすー」

玄関を開けると、セーレとなぜかストラスがお出迎え。

「どうしたの?まだ朝の9時だよ」
「学級閉鎖。つかなんでお前いんだよ」
『悪魔の情報を探して、寒い中ここまで来たのですよ』

あ、なるほどね。
奥は暖房が効いててかなり快適だ。
リビングではパイモンがノートパソコンで悪魔の情報を調べている。

「あいつらは?」
「2人ともまだ寝てる。いっつも10時過ぎにしか起きないよ」

確かにあいつ等に早起きのイメージはないけどな(笑)

「俺シトリー起こしてくる」
「俺も起こしてこよ。あいついないと稽古できないし」

哀れ……叩き起こされんだな。

「パイモン。よろしく」
「わかりました。すぐ行いますか?」
「あぁ」

「起きろヴォラクー!!うりゃうりゃ!」
「あ、あはは!や、やめ……起きるから、ひゃはは!!」
「おーきーろー!稽古すんぞ!!」
「ぐぼっ!!てめぇ……人の腹にダイブすんじゃねぇよ!!」

「荒っぽいね2人とも」
『全くですね』

2人の会話を他所にパイモンは空間を広げ、中に入るように俺に促す。
俺はその中に呼び込むように入りこむ。

「俺達も入ってみようか」
『そうですね。どのように稽古しているか見るのもいいでしょうね』
『入るなら早くしろ』

俺の後にセーレとストラスも空間に入ってくる。
なんか人が見てると思うと緊張するんだけど。

『主、大丈夫です。ストラスもセーレも何も期待などしていません。昨日と同じリラックスしていきましょう』
「なんでそうストレートなこと言うかなぁ……」

俺はハァ……とため息をついて、剣を出す。

『まずは素振りから行きましょう。昨日の振り方覚えていますか?』
「あ、うん。家で少しだけ練習した」
『上出来です。ではやってみましょう』

俺は言われたとおりに、剣を振ってみる。

『ふむ……まだまだ初歩ですね』
「でも昨日やり始めたばかりだしね」

うるさいなぁ。悪かったな下手糞で。

「おーやってるやってる」
「いっちょやるか!」

少し遅れてきて、シトリーと光太郎が竹刀を持って入ってくる。
シトリーは屈伸をして体をほぐし、光太郎も肩を回し、体をほぐす。

「行くぜシトリー」
「はいはい。こっちから攻めてくか!」

シトリーが竹刀を持って、光太郎に向かって全速力で走りだす。
光太郎は竹刀を構えて、シトリーの攻撃を観察するように動かない。
シトリーは真っすぐに攻撃はせず、光太郎の背後をとろうとする。

「そう来たか!」

光太郎はシトリーの素早い動きに翻弄されながらもシトリーの足を狙って攻撃する。
シトリーはそれを避け、光太郎の頭上に竹刀を構える。
シトリーが思い切り竹刀を振る。でも光太郎はそれをギリギリのところで避ける。
しかもそこで攻撃も忘れない。光太郎は竹刀をまっすぐ、シトリーの胸めがけて突く。
シトリーはそれを左に動くことで回避した。
お互いの距離が開く。

「避けながら攻撃かよ……いつの間に覚えたんだよ」
「へへ」

やっぱ光太郎とシトリーは本当に実践状態だ。
その光景にストラスも舌を巻く。

『光太郎はかなり上達してますね』
「彼、中学の3年間、剣道やってて最初から反射神経とかは結構すごかったらしいよ」
『なるほど』

『もー中谷のせいでとんだ災難だよ。まだ寝てたいのにぃ』
「へへ。いいじゃねーか」

悪魔の姿になったヴォラクと中谷も空間に入ってくる。

「やるか!」
『中谷、今日稽古したらそろそろディモスに乗る練習もしようか』
「マジで!!?うっしゃ―――!!!」

中谷は両手を挙げて喜ぶ。
そんな中谷にヴォラクは自分の持っている剣を投げる。
中谷はそれをキャッチして(すげぇ)、ウォームアップをする。
ヴォラクもスペアの短剣を出して構える。
中谷ももう実践練習にいってるらしく、ヴォラクと剣を合わせだした。
光太郎は竹刀だからまだいいけど、中谷はリアルな剣なだけすごいな。俺だったらそこでビビって動けんくなるし。
まぁ光太郎とシトリーの方が、動きが本格的だけど。(どんなだ)
ストラスとセーレも中谷とヴォラク、シトリーと光太郎の打ち合いを見て満足そうにしている。はぁ……俺なんかまだ素振りだしな。
でもそんなこと言ってられない。
俺は黙々と剣をパイモンの指示通りに振り続けた。

俺達は昼まで各々が剣の稽古をしていた。

『主、踏み込みは全体重ではなく、すぐに移動できる程度の体重をかけるようにしてください。その方が力強さは劣るけれど次の動作に移しやすいですからね』
「おう」

「お前正面から来すぎなんだよ。少しは相手の裏をかくことも考えなきゃな」
「わかった」

「まぁこんなもんでいんじゃない。そろそろディモスに乗ってみる?」
「待ってました!!」

それそれが皆違うメニューをこなしていく。

『主、休憩にしましょう。踏み込みも今のを忘れずにいてください』
「うん。練習する」

光太郎も休憩しているのか、背伸びをしている。
俺も一度、空間から出ようとしたとき……

「ひゃっほ――!」

大声が聞こえた方を向くと、ディモスの上に乗ってはしゃいでいる中谷の姿。

『やれやれ……拓也殿と違い、えらく肝が据わっている』
『中谷は拓也と違うからね』

聞こえてんぞ。
俺は声を張り上げてディモスの下に行く。

「失礼なこと言うんじゃね―――!」
『拓也殿。お久しぶりです』

ディモスは俺の頭の高さまで頭を下げてくる。

「あぁうん。ってかヴォラク何気に失礼じゃね?」
『何が違うのさ?マルファスの時、ディモスに乗るの滅茶苦茶しぶってたじゃんか』

それを言われると言い返せない。
俺が切り返しに困っていると、空間の奥から声が聞こえた。

「ご飯できたけど休憩しない?」

なんかセーレ主婦みたいだな。

『ご飯ご飯♪中谷おりて』
「えーもうちょっと乗ってたいのに」

ヴォラクはしぶしぶディモスから降りた。
俺達はそのまま昼飯を食うことにした。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
セーレの飯を食いながらもパイモンはパソコンと睨めっこ。

「パイモン〜この時くらいゆっくりしてもいいじゃん」
「気になる記事を見つけて」
「気になる記事?」

「ロシアの新聞の内容なのですが、クリスマスにモスクワの赤の広場にある巨大ツリーに男の死体が飾られて、モスクワ内がパニックになったようです」

「な、なんだそりゃ!」
「犯人の可能性のある人間は幼い少女みたいです。人通りのない通りで、男がその少女と話しているのを見たという通行人が1人いたそうです。ですが高さ10mもあるツリーに少女1人で男を縛りつけるのは不可能です。少女と男は面識もないみたいですし、それに男からは犯人のDNA鑑定に使える資料も見つかってないらしく、一概にその少女と言う訳も行かないらしいです。なので少女はもう釈放されていますが……でも悪魔ならば話は別です。この奇怪な事件、調べてみる価値はあると思います」
「ロシアか」

でも容疑者が女の子で、しかも少女なんて……
悪魔のせいだっていうのなら今回もかなりクレイジーだ。人の死体をツリーに飾るなんて……

「でもさツリーって今頃?クリスマスって12月じゃん。なんでパイモン見つけるの遅くなったの?」
「殺人事件自体は前から起こっていた。だが犠牲者の数も2人だったからな。そこまで睨んではなかったんだが、ツリーに死体を飾るなんて人間にはできないだろう」
「まぁね。でももうクリスマス2週間くらい過ぎてない?」
『ロシアではキリスト教の宗教行事はロシア正教のユリウス暦で行われます。今日の1月7日がそのユリウス暦でいう12月25日に相当するのです』
「なるほど」

中谷は納得したのか、ご飯をがっつく。

『では午後から行ってみますか?』
「この雪の中か!?」

ロシアって日本より寒いぞ!?
そんなとこに、しかも日本がこんなに雪降ってる日に行きたくない。

「明日でいいじゃん。今日は俺マジで剣の稽古する気なんだからさ」
「わかりました。主がそうおっしゃるのならば明日にしましょう」

勝った!心の中でガッツポーズ。

とりあえず今日はこのまま剣の稽古。絶対に今日中に踏み込みをマスターしてやる。
でもなかなか素振りみたいに上手くいかない。
やっぱ振るだけとは全然違う。
これをできるようになった中谷と光太郎は本当に頑張ったと思う。
俺は今日はギリギリの時間まで剣の稽古をした。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あいつ、急にあんなに躍起になって大丈夫なのか?」
「無理して体の調子崩さないといいけどな」

拓也は踏み込みも交えて剣を振り続けている。
あいつがこんなになってまで頑張る理由って何なんだ?

「ストラスは何か知らないか?」

俺は中谷の頭に乗っているストラスに聞いてみた。

『……ヴァッサーゴと戦った時に直哉がヴァッサーゴによって足に傷を負いました』
「直哉君が!?」
『幸い怪我は軽く、セーレの白魔術でなんとかなりましたが……それで思い知ったのでしょうね』
「そっか」

拓也は家族思いだ。
いや、家族が巻き込まれれば誰だって強くなろうって思うはずだ。
無心で剣の稽古をする拓也に、俺は何も言葉をかけれなかった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―犯人今だに捕まらず―
―モスクワに警戒態勢―

「ふふ」
馬鹿げた記事。そんなに騒ぎ立てることないじゃない。新聞の記事には、このことばかりが書かれていた。
赤の広場では警官達が一般市民を外に追いやっている。
ツリーを真近で見れない恋人たちは不満を漏らす写真が写されている。
悪いことしちゃったかな……

「Плох для его предать.(まぁ彼が裏切ったのが悪いんだしね)」

地獄で反省しなさい。
あたしの手には3つの魂。

「No one такой душе.(こんな魂誰もいらないけど)」

それでも頭数くらいにはなるかしら?

「Я должен собрать душу имеет значение.(もっと価値のある魂を集めなきゃ)」

あたしがそう呟いた直後、ドアをノックする音が聞こえる。

「riyuba.(リューバ)」
Guregoriグレゴーリー

中に入ってきたのは、最も信頼する人間。
あたしの契約者。

「Оно come out of работа, даже.(仕事を手伝ってくれないか?)По возможности нанять клерк магазина к вам?(店番をよろしく頼むよ)」
「Было понято.(わかった)」

あたしは部屋から出て行こうとするグレゴーリーを引きとめる。

「Guregori」
「Оно?(なんだい?)」
「Оно имеет полюбило.(愛してる)」
「Я этим же.(俺もさ)」

はっきりと聞こえた肯定の言葉。嘘だったら許さないから。
幾分か気分がよくなったあたしは彼の後を付いて1階に降りる。

「Сегодня в хвостовике рождества.(今日はクリスマスだな)」
「Вы не думаете.(そうだね)」
「Торт оно пойдет купить потом.(後でケーキを買いに行こう)」
「Самое высокое!(やったぁ!)」

グレゴーリーはあたしの反応を見て、嬉しそうに目を細める。
貴方は本当に優しい人。
カウンターの椅子に座るあたしの後ろで、彼はアクセサリーを作り始める。
彼が今作ってるのは、アメジストやパワーストーンを混ぜた恋愛運アップのブレスレット。
それにあたしが願掛けをしてあげるの。

貴方の恋が上手く行きますようにって。
でも裏切ったらただじゃ済まさないから。

新聞を床に投げ捨てる。新聞のトップの一面は先ほど読んだクリスマスの記事。
そこに書かれているのは『血に染まったクリスマス』。
中々いいネーミングじゃない。
雪は降り続ける。
そして今、お店に入ってきた女の子が1人。

「Как для вспомогательного оборудования куда романтичное везение влюбленности однимает оно где-то?(恋愛成就のアクセサリーってどこに置いてますか?)」
「И другие обыкновенная толком марля.Вспомогательное оборудование романтичного одъема везения влюбленности это.(いらっしゃいませ。恋愛成就のアクセサリーはこちらです)」


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