あの後、パイモンは結局来なかった。
理由を聞いても悪かったと謝る一点張りで、何か抱え込んでる気がする。
そのまま悪魔の情報も俺は聞かないまま、とうとう年は開けてしまった。
51 強くなるために…
『このコタツという物はまさしく天才的な発明ですね』
ストラスはよほどコタツが気に行ったのかヌクヌクと過ごしている。
マジでこいつはもうコタツから出る気ねぇな。
年が明けてもう1月4日。あーぁ、あと2日で学校もはじまんのか。マジ嫌になるなぁ。
しかもそろそろパイモン達も悪魔のこと、何か言ってきそうだ。
最近、悪魔のことも何も言われないし。
いっつも探してるのはパイモンなだけに何も言われないってことは怪しい事がないんだろうけど……流石に1か月何にもなく過ごせるってなかったから少し怖い気もする。
でもまぁ何にもないのはいいことだし、自分からは何も言わないけど。それにしても……
「お前くつろぎ過ぎだろ」
俺は横になっているストラスの羽を引っ張る。
「むぎゅ……何ですか。私は今動きたくないのです。羽を引っ張らないでください」
「いや、なんかお前最近ごろごろしすぎで太ってんじゃねーかと思ってさ」
『……そんなことはないと思います』
今の間は何だ。
とりあえずストラスは動く気がないらしい。
まぁ俺も人(?)のこと言えないけど。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あーついにこの日が来てしまったぁ」
机に突っ伏す俺を見て光太郎が笑う。ついに地獄の新学期が来てしまった。
めんどくせー。しかも寒いし。
冬休みず〜っとコタツから出なかったんだぞ。この寒さは無理だろ……
俺は室内なのにパーカーを羽織ったまま机に座っている。
光太郎、お前よく制服だけで平気だな。桜井たちと騒いでる中谷もそのままで平気そうだ。
お前ら強いね……俺そんなに強くなれないよ。
今日から早速授業ですか。ってか俺結局、冬休み剣の稽古頼んでない。
マジでやろう。
今日マンションに行って頼んでみよう。
俺はそんなことを思いながら学校が終わるのを待った。
学校が終わり、部活がある中谷に別れを告げ、俺は光太郎とマンションに向かった。
玄関を開けて、勝手に中に入る。
「あ?なんだおめーらまた来たのか」
「げ。シトリー」
「うん。剣の稽古に」
嫌そうに反応した俺と違い。光太郎は軽く答えて鞄を床に置く。
「げ。じゃねーよカス。で、お前は?」
「俺?俺も稽古しようかなぁって……」
「……」
何で黙るんだよ。俺が稽古するっておかしいのかよ。
「あんま足引っ張るのもどうかって思うし、それに直哉が足に傷を負ったのは俺のせいだし」
「あれはヴァッサーゴのせいだろ」
「でも俺がしっかりしてなかったからなんだ。だから少しでも……」
「パイモンなら奥いんぞ」
シトリーはそれだけ告げて、ソファに腰かけた。
「パイモン」
「主、来てたのですか」
相変わらずパイモンはパソコンに向かっている。この部屋は完全にパイモンの書斎状態だ。
「あの……俺に剣の稽古つけてくんないかな?」
「主に?」
「うん。やっぱ少しは強くなっておかないと、さ」
「……いいでしょう。引き受けましょう。でも私は光太郎を見てますからね」
そうだったな。
「無理ならヴォラクにでも頼むし……」
「いや、光太郎はシトリーに見てもらう事にしましょう。契約者である主の方が優先です」
「え〜」
光太郎が不満の声を漏らす。
「あいつ剣とか使えんのかよ」
「少なくともお前よりはな」
そう言われるともうどうしようもないじゃん。
光太郎は少し頬を膨らました。
「なんだよパイモンは拓也びいきだぞ。同時進行でいいじゃん」
「お前は元々剣道をやっていたから基礎はできてるんだ。でも主は本当の素人だぞ。一緒にやったら間違いなくお前の足を引っ張る」
あ、傷ついた(笑)
光太郎もあまりのストレート発言にもう頷くしかなかったらしい。
「わかった……」
「ありがとう光太郎」
「とりあえず、シトリーに伝えましょう」
俺達3人はリビングに移動した。
リビングにはいつもの面子。ヴォラクとシトリーがWiiをして遊んでいて、セーレがそれを見ていた。
「シトリー、俺は主の剣の指導をすることになったから光太郎はお前が頼む」
「え!冗談っしょ!?」
「光太郎はかなり強い。甘く見ると痛い目にあうぞ。それに光太郎の契約者はお前だろう」
「つかお前はそんなに嫌か!」
光太郎がシトリーに掴みかかる。
「嘘だって!わかったわかった!首しまってる……」
「すげぇ」
ヴォラク感動してないで助けてやれよ。
「早速始めましょうか」
パイモンは悪魔の姿になり、自分の空間を広げる。
入るように促されるけど、なんか入るの少し怖いんですけど……でも俺は暗闇の中に足を踏み入れた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『主。まずは素振りからやってみましょうか』
空間に入ってすぐ、パイモンは剣を抜いてきた。
俺もそれに合わせて浄化の剣を手に握る。
光太郎も竹刀を持って空間に入ってきた。
「なぁシトリー。お前本当に強いのかよ〜」
「馬鹿!お前よりは強ぇよ!伊達に地獄で生きてないってね」
シトリーも光太郎と同じく竹刀を持っていた。(光太郎が2本マンションに置いてるらしい)
「まずは1回やってみっか。お前の実力知らないしな」
「おう!」
光太郎は竹刀を構えて、シトリーめがけて走っていく。
竹刀と竹刀がぶつかりあったと思ったらシトリーは瞬時に竹刀を引き、光太郎めがけて竹刀を振った。
光太郎はそれを見切ってるらしく簡単に受け止めた。
「うおっ……思ったよりやるなぁ。結構なスピード出したつもりだったんだけど」
「剣道じゃよく見るスピードだよ!」
光太郎はシトリーの竹刀をはじいて、シトリーの脇腹を狙って打ち込む。
でもシトリーも簡単にはやられない。光太郎の打ち込みを後ろに下がることで回避した。
「おいパイモン。こいつ結構強ぇぞ」
『だから言っただろう。痛い目を見ると』
「でも教えることなんかねぇよ。踏み込みもできてるし、重心もしっかりしてる」
『光太郎は3年間、剣道をやってたそうだ。踏み込みや剣をふるう速度は最初から中々のものだった。あとは実践に向けての打ち合いをお前がしてくれたらいい』
「型はできてるってわけね。よし」
シトリーはぐるぐると肩をほぐすように腕を回す。
「久し振りに本気でやってみますか」
「へへ」
2人はもう1度、竹刀を構える。
「すげぇ……」
『感心している場合ではないですよ。中谷と光太郎は9月からこのようにしているのです。光太郎は最初から筋が良かったので成長は早かったのですが、中谷もだいぶ型は出来てきてもう実践練習に入っています。本気でやらねば追いつきませんよ』
「うぅ……すいません」
『でも主が自ら言ってくるのには若干驚きましたよ』
「え?」
『無理じいはさせたくありませんから。でも…覚悟は決まったのでしょう?』
俺は頷いてパイモンを見据える。
「あぁ。俺がもっと強かったら澪達を守れたのにって」
『それに気づいただけ進歩ですよ』
パイモンは剣を向ける。
『やってみましょうか』
「おう」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『そこはもっと後ろに下がるべきです』
「こ、こうか?」
俺はまずパイモンに基礎的な戦い方を教えてもらっていた。
『むやみやたらに振るのではありません。ちゃんと距離のことも考えねば。自分の攻撃が届いて、なおかつ相手の攻撃が少し下がっただけで避けきれる……それが理想の距離なのです』
「あ、だから漫画でも懐に入られるとしまった!って言うよな」
『……漫画のことは知りませんが、その通りです』
なるほど。でも言われても難しいんだよなぁ。
俺は剣をブンブンと振り回す。
『主、前から思っていたのですが……その剣は重くはないのですか?』
「え、これ?」
そう言えばこの剣って軽いよな。重さ感じたことないって言うか……
『私の剣よりもかなりの大きさなので少し気になっていました。でもその様子だと、重いと言うわけではないようですね』
「うん。ってか重さを感じないって感じ?」
『そうですか。でもその分スイングは早くなります。主はもっと振る速度を速めることをお勧めします。振るスピードが早ければ、自然と太刀筋も重くなってきますからね』
「なるほど。うん、じゃあ素振りしとくな」
『そうしておいてください。次に重心の取り方ですが』
パイモンはやっぱり説明が上手い。俺の質問にもちゃんと的確に答えてくれる。
これなら頑張れば少しはマシになるかもしれない。
光太郎はマジでヤバい。
シトリーと結構対等にやり合ってるもん。
横でバチンバチンはじく音聞こえるし、それに比べて俺は……はぁ……
―光太郎side―――――
「お前、かなりやんじゃん、か!」
シトリーの攻撃を俺は後ろに飛びのくことで何とか避ける。
あっぶね……シトリーの凄いとこは竹刀を片手で振り回すとこだ。
片手な分スイングも早いし、体勢の立て直しも早い。両手で持ってないだけ、力は多分俺と互角だと思いたい。
でもシトリーは休憩する暇を与えない。すぐにこっちに全速力で向かってくる。
「やべっ!」
俺はシトリーめがけて竹刀を上から下に振りおろす。
しかしそんな俺にシトリーの檄が飛んだ。
「お前斬りおろしとかそれ以外の技ねーのか!」
シトリーは斬りおろしをなぜかジャンプして避ける。
あいつのジャンプ力はかなり高い。
少なくとも俺の頭上よりも1mは飛んでいる。
「どりゃ!喰らっとけや!!」
「ぎゃ!!」
シトリーは俺に竹刀を向けて、そのまま上空から真下に竹刀を構える。
竹刀は俺の脚元に突き刺さる。
俺はバランスを崩し、尻もちをついてしまった。
「あだだだだ……」
「ぎゃはは!見たか!俺様命名スカイクラック!」
「何だよその技〜。ジャンプして竹刀そのまま地面に突き刺すとかありえないでしょ。マジでビビんじゃん」
「俺様に勝つなんて1万年早いんだよコラー。でもま、いい線いってたんじゃねぇの?」
シトリーは疲れたと言って肩をならす。
「休憩。まじ疲れたわ」
「おつかれ」
俺もゼーゼー言ってる。
でもシトリーとここまでやりあえたって…俺結構強くなってんのかな!?
それともただシトリーが手加減してくれただけなのか?
拓也の方はやっぱり初めてなのか、パイモンと剣の振り方を練習していた。
でも中学の剣道がこんなとこで役に立つとは思わなかったなぁ。精神統一とか訳わからん理由でやらせた親父にちょっと感謝。
―拓也side―――――
「もう少し、剣を斜めにしてみてください」
「こうか?」
「そうですね。剣をまっすぐにして斜めに振り下ろしても意味がありません。腕の角度に剣も合わせることですね」
「こんなこともう4か月も光太郎と中谷はやってたんかぁ……きついわ」
「主は他の2人よりも少し運動神経もないみたいですしね」
「え゛?」
「あぁいや……なんでもありません」
もう聞こえた後にそう言われても……まぁ自覚はしてたけど。
「素振りをあと30回したら休憩しましょう。あっちもそうしてるみたいですし」
本当だ。光太郎とシトリーは座り込んでる。
俺もあと30回で……
俺はパイモンに言われたことを忘れないように剣を振り続けた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「疲れた」
「お前素振りしてただけじゃん」
剣の稽古も一段落つき、時間も時間だったので俺達はそのまま家に帰った。
「こんなことお前らずっとしてたんだな。マジで尊敬したし」
「俺は剣道してたからまだマシだったけど……中谷は結構きつかったみたいだぞ」
「あいつは野球の後にしてたしなぁ……ヴォラクがコーチだし」
でも中谷は弱音を吐いてない。暇さえあれば行ってるみたいだ。
それに比べて俺は帰ったらお菓子食うばっか。
マジで真面目にやろう。
「じゃーな拓也」
「あぁ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ただいまー」
「お帰り」
今日は澪がお出迎え。
俺は澪にただいまともう一度告げて、リビングに入った。
やっぱりストラスは直哉に遊ばれている。
もう相手にするのも面倒なのか、ストラスは動かず、されるがままだ。
「直哉、ストラスいじめんな」
「いじめてないよ。ねーストラス」
「ノーコメントで」
さいですか。
俺は鞄を置いて、手を洗いに洗面所に向かった。
「拓也」
「澪どうした?」
澪は少し眉を下げて笑う。
「最近、悪魔の話しを聞かないから大丈夫なのかなぁって。パイモンさんも結局来なかったし」
「あぁ、あれ以来何も言ってこないなぁ。相変わらず探してはいるみたいだけど」
「そっか」
「俺今日から剣の稽古始めたんだ」
「剣の?」
「うん。これ以上足引っ張るわけにはいかないし。光太郎なんかめっちゃ強くなっててさ」
「……そっか」
「澪?」
「なんでもない」
澪は少しだけ笑い、リビングに戻って行った。
何かまずい事言ったか?思い当たる節はない。でも気まずそうにしてたから何か言ったんだろう。
「……俺って無神経なんかなぁ」
俺は1人ごち、リビングに入った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
雪が降ってる。真っ白な雪。この雪は今から赤色に染まる。
1月6日午後23時、1組のカップルが終わりを告げようとしていた。
「Оно не может держать меня будучи прикреплянным к вам.(もう貴方にはついて行けないわ)Дорога если.(さようなら)」
「Пожалуйста ожидание!(待ってくれ!)」
あーぁ終わっちゃった。昼ドラのような展開。
酷い。せっかくあたしがお祈りしてたのに、永遠の愛を誓うって言ってたでしょう?
約束、破ッタネ?
「Как для вас ужасная персона.(貴方は酷い人)」
「Вы?(誰だよ?)」
「Как для вас ужасная персона.(酷い人)Она заплакала.(あの人泣いてたよ)Вы все плох.(あんたが全部悪い)」
「Вы!?(誰なんだよお前!?)」
「Демон.(悪魔)」
「Демон?」
「Вы делаете нашивку посыла, семя?(約束したよね?)Давая то кольцо к ей.(その指輪を渡した時)Продолжительность жизни оно любит е.(「彼女を一生愛するって」)Для того НОП для вас пообещайте и дорога более лучшего семени?(でも貴方は約束を破った)」
「Вы что что-то хотел был сказать?(何が言いたいんだよお前?)」
「Наказание сделано для того чтобы получить к вам.(約束破ったペナルティは受けてもらわないと)」
「Оно смешоно.(馬鹿馬鹿しい)Мы возвращения.(やってられるか)」
「Мнение ничего.(黙れ)」
「aaaaaaa!!!!!(あああああ!!!!!)」
「Сдуру человек.(馬鹿な男)」
真っ白に積もった雪に、真っ赤な鮮血はよく映える。
白い雪を赤が染めていく。
「Чисто(綺麗)」
この男を見せしめにしてあげなくちゃ。
酷いよね、永遠の愛を誓ったのに裏切るなんて。
あの女の人、すっごくすっごく悲しそうにしてたよ?
貴方があの女の人と幸せになりたいって願うから、あたしは貴方をあの女の人と結び付けてあげたのに……もう裏切るなんて。
「Kак сделает?(どうしようかな?)」
これを見て、みんなが思い知ればいい。
裏切るとどうなるか……
ねぇ愛ってすっごく重い物なんだよ?
解説
スカイフラック…相手の頭上に飛び、剣を真下に突き付ける技。
+注意+
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