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第50話 聖なる夜に
「あーもうすぐクリスマスです予定がありません」

足立さんの葬儀も終わって、期末も終わり4日後…俺は机に突っ伏していた。

「上野〜お前なんか予定ある?」
「ふっふ……俺は霧立とデートだよん♪」


50 聖なる夜に


「嘘!お前らいつ付き合いだしたん!?」
「実は嘘。予定なんてねーよ」
「お前の嘘、スッゲー淋しかったぞ」
「うん。俺も今なんかスッゲー切ない」

上野はあーあ……と上を向いた。

「雄一と立川は彼女とデートだし、藤森は部活の帰りに部活仲間と遊ぶんだって。俺だけ予定ないじゃんか」
「とかなんとか言ってさぁーお前霧立誘う気だろ」
「あは。バレた?」
「井上いんじゃん。霧立といつも2人でいる。あいつから聞いた」
「はぁ!?あいつペラペラしゃべりやがって!本人に言ってねぇだろうな!?」
「俺は言ってないけど井上は口軽いから言ってるかもよ」
「あいつに相談したのが間違いだった……」

上野は頭を抱える。
いつの間にこいつらこんなに仲良くなったんだよ。

「となると俺だけ予定Nothing〜……ちょー楽しい。ひゃっほー」
「お前なんかもうやけくそだな。広瀬と中谷はどうした」
「中谷は部活なんだってさ。その後は家族で過ごすっつってたし〜。光太郎なんか毎年クリスマスは六本木のフランス料理店でディナーだぞ!?」
「さすが金持ち。スケールが違う」
「俺なんか補習が昼に終わって真っ直ぐ家に帰るしかないし」

俺に影が見えるのか、上野は一瞬俺から身を引いた。

「あの子誘えばいいじゃん。お前の幼馴染の」
「澪?」
「そうそう澪ちゃん」
「勝手に名前呼びすんな」
「苗字知らないんだよ。あの子と過ごせば?っつか上手くいったらWデートしよーや!」
「お前……発想乙女だなー」
「何だと!?」
「でも誘えたらいいなー。でも澪も家族で過ごしそう」
「いやー、案外彼氏かもよ?」

お前は俺のテンションを下げさせて何が楽しいんだ?

「澪は彼氏いねーよ」
「なに言ってんだよ。あの子モテるんだぞ?国崎がフラれたのお前知らねーだろ?」
「国崎が!!?」

ってか国崎……澪のこと好きだったのか!?
そんな話1回も聞いたことない。ってか澪からも何も言われなかったし。
つかフッたって……告白したってこと!!?

「な〜んか俺の話し聞こえると思ったら何?中傷?めっちゃ傷つくんですけど〜」

国崎が俺の頭に腕をのっける。

「お、国崎。お前澪にフラれたってホントか?」
「なんでお前はストレートに俺の心をえぐんの?本当だよ。ごめんなさいって一刀両断」

国崎はハァ……とため息をつく。

「澪ちゃんってガード堅いんだな」
「名前呼びすんなっつってんだろ。松本さんだ」
「拓也うっぜぇ!」

上野はキィっと大声を上げる。

「松本さん。徳岡もフッたらしいぞ」

国崎の言葉に俺は頭に徳岡を思い浮かべた。
あ、あの時のムカつく奴か。

「あーあれはフラれて当たり前だろー」
「だってあいつ評判良くないっしょ?俺、あいつは彼女じゃない女とカラオケでヤッたって聞いたぞ」
「マジでか!?」

そんな奴なのかあいつ!

「え?俺はネカフェでヤッたって聞いたんだけど」
「「マジか!?」」

国崎からの新情報に俺と上野は声をそろえて大声を上げる。

「でもどっちが本当だかわっかんねぇよな」
「どっちもだったらやばいっしょ」

そうだすね。

「そういや国崎。お前クリスマス予定あんのか?」
「なんだよ。お前からデートのお誘いか?悪いけどぉ」
「あらそう残念ってちげぇよ!!皆どんな予定があんのかなーって」
「予定ねぇ……俺特にはな…大地と友恵と由梨佳の4人で祭行こうって話はしてんだけど」
「あぁ、お前ら4人仲いいよな。Wデートか」
「あいつ等を彼女はキツイっしょ。でもまぁそんなとこ」

でも……

「この近所で祭とかあんのか?」
「あぁ、横浜のみなとみらいで打ち上げ花火あんだとさ。っつかさお前らディズニーのカウントダウンパーティとか行く?」
「なんで?」
「いやー。なんかあれすごいらしーじゃん。俺らも行く予定なんだけどさ、ほかの奴は行くのかなーって」
「……クリスマスに予定のない俺にもう年末のことを聞くのか?」
「そうだったな。悪い」

キーンコーン……

「あ、チャイムなった。じゃな」
「おう」

国崎は軽く手を振り、自分の席に戻って行った。
チャイムが鳴り、霧立も上野の隣(名前順なので)に戻ってきた。

「あ、霧立……あのさぁ」
「ん?」
「クリスマスとか予定空いてる?一緒にあそばね?」
「え?う、うん。いいよ」

あー上手く行っちゃった。霧立さん、顔赤くしながらもめっちゃ嬉しそうだし。
もうこいつ等その内くっつくな。確実に。
それに引き換え俺は……

「予定がない〜〜〜!!メッチャ淋しいクリスマスだぁ〜〜〜!!!」

昼休み、机に突っ伏して泣く俺に光太郎達は冷ややかな目線。

「いいじゃん。俺と中谷だってぶっちゃけ家族と過ごすんだし」
「そーそー俺たちだって彼女がいたらそっちと過ごしたいよ」

だけどさお前らはいいじゃん。俺なんか昼から予定ないし。

「拓也」
「澪!どうした!?」

昼休みに澪が来るなんて珍しくないか?
澪は少し笑いながら机に腕を乗せてしゃがんだ。

「あのね、拓也クリスマスね。皆で遊ばない?」
「え?皆で?」

澪は嬉しそうに頷く。

「うん。セーレさんがね、クリスマスは太陽の家でパーティするんだって言ったらヴォラク君が羨ましがっちゃって。あたし達もどこかに出掛けようかってことになったの」
「え?ってかいつの間にそんな話に?」
「昨日スーパーでばったり会ったの。でもヴォラク君達、クリスマスってパーティする日って思ってるみたいで、意味わかってなかったみたいだけど大丈夫かな?」

あぁクリスマスって元々キリストの誕生日とか何とかだもんな。

「まぁいいんじゃね?でもそれなら俺も全然OKだし。むしろ暇だったから」
「本当?広瀬君と中谷君は?」
「俺、家族と出かけるんだよね」
「俺も母さんが帰って来いってうっさいからさぁ」
「じゃあしょうがないね。拓也、一緒に色々考えようね」
「う、うん!」
「じゃあまた後で。あ、あたし今日マンション行くんだけど拓也もいこ?」
「わかった!」

澪は笑って手を振って教室を出て行った。

「浮かれてるな」
「うん」

中谷たちの声が届かないほどに俺のテンションはあがってた。
澪と過ごせるんだ!クリスマスに!
+αもいるけどな。でもそれでもクリスマスに……よっしゃぁああああ―――――――――――!!!!!

俺は心の中でガッツポーズを決める。
めちゃくちゃ楽しみだ!!

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「今日商店街に行ったらめっちゃおっきい木がすっげーピカピカ光ってた!ツリーって言うんだって!」

マンションについて、ヴォラクと話した第1声がこれだった。
相当楽しみにしてるみたいだ。
そんなヴォラクに俺はサンタの帽子をかぶらせる。
マンション来る前に100均で買ったサンタグッズの1つだ。
澪は帽子をかぶったヴォラクの写メを取っている。

「ヴォラク君可愛い♪」
「何これ?」
「サンタ」
「だからなんだよサンタって!」
「クリスマスの定番らしい」

パソコンをしていたパイモンが急にこっちに振り向く。

「クリスマスの?」
「あぁ。フィンランドの山間にすむ老人で、トナカイを走らせてソリを引きずって空を飛び回るらしい」

ん?なんか違うような……でもあってるっちゃあってる。
それにしても、なんでそんな物騒な言い方しかできないんだ?

「更に煙突から室内に忍び込んで、寝ている子どものベッドに物を置いて行くんだそうだ」
「え!?不法侵入じゃん!」
「あぁ。夜中に忍び込む老人……しかも靴下に物を入れるらしい。嫌がらせだな」
「そんな物騒な話じゃないから!」

俺は慌ててパイモンのサンタクロースの説明を中断させる。

「む……主、違いましたか?ですがここにはそう書いていましたよ」
「あってるけど違う!なんか違う!サンタってのは夢と希望の塊なんだ!」
「はぁ、そうなのですか」

絶対にわかってない。しかもかなりどうでもよさそうだ。
でも説明しなきゃな。勘違いされても困るし……

「サンタっつーのはな。1年間いい子にしてる子供にその子供が一番欲しがってる物をプレゼントする超いいじいさんだよ」
「なぜ見ず知らずの子供に?」
「え?」
「拓也ももらったの?」
「え、まぁ……ガキの頃にはな」
「その金は誰が出しているのです?スポンサーでもいるのですか?」

澪は笑うのを必死でこらえている。
笑ってないで助けてよ。俺どうすればいいか分かんないし。

「大体世界中の人間の子供にあげんの?どうやっていい子とか判別すんの?」
「……」
「主、どうなのです?」
「拓也、俺ももらえる?」

「うっせ―――!!サンタはそういう話をモチーフにした架空の人物だ!!でもクリスマスの定番なんだよ!!!」

「でしょうね。話が出来過ぎている」
「拓也嘘つくなよー」

なぜ俺が責められる?

「もういいっしょ別に。大体クリスマス自体イエスキリストの誕生日を祝う日だし」
「なんですって」

パイモンとヴォラクの空気が固まる。
ヴォラクはサンタの帽子を床に投げつける。

「そんなことならいーや」
「ヴォラク?」
「悪魔たる我々がキリストを祝うなど……ありえませんね」

やっぱり知らなかったのか。

「いいんだよ別に。日本では深く考えられてないんだから。クリスマス自体ごちそう食ったりするお祭りって日本人は認識してんだし」
「日本人は適当ですね」
「楽しめりゃいいんだ」

俺の説明に納得したのか、ヴォラクは「ならまたいいや」と機嫌を戻す。
そんなヴォラクに澪は再び帽子をかぶらせた。

「セーレさんは太陽の家に行くんでしょ?シトリーさんはどうするのかな?」
「あいつはバイトの皆と遊びに行くんだって」

そっかぁ。あいつ相変わらずだなぁ。

「そっか。じゃああたし達はどこに行こうか」
「それは私も含まれているのですか?」
「ったりめーだろこら〜」

俺が当たり前だという様に頷くと、パイモンはがくりと項垂れる。

「主、私は悪魔の情報を探すので忙しいのです」
「1日くらいいいじゃん」
「はぁ……勝手にどうぞ」

よし決定。パイモンはノリが悪いのが欠点だよなぁ。
とりあえず、俺と澪はパイモンをどかしてパソコンで店を探しだす。

「ストラス入れるかな?」
「あ、それ考えると無理かもね」

澪は考え込んでしまった。
ストラスも人間に化けれたらなぁ……やっぱ動物だと難しいよなぁ。

「うちん家でやろうか」
「え?」
「毎年さぁ、母さんがご飯作ったりしてんじゃん。ヴォラク達もそこでやれば」
「それいいかもね」

なんか楽しみになってきた!
俺と澪がきゃっきゃとはしゃいでいる光景を見てパイモンはため息。

「そんな暇などないというのに」

パイモンは呟いて、印刷した用紙をテーブルに置く。
その中にはロシアでの殺人事件についての情報が書かれていた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「やった――!今日から冬休み――!!」

12月24日。待ちに待った冬休みが来た。
まぁ冬期講習があるから全部が休みってわけじゃないけどさ。でもやっと学校が終わった!
通知表を持って俺は、光太郎の席に行った。
今日は光太郎と遊んで帰る予定だ。中谷は部活で来れないけど。

俺達はいつもの通り、原宿で遊んで帰った。
クリスマスイブなのかカップル率は高かったけど。
暗くなるまで遊んで、俺達はそれぞれの帰路についた。
家では直哉がストラスとクリスマスケーキの箱を嬉しそうに眺めていた。

「何やってんだお前ら」
「ケーキケーキ♪楽しみだなぁ〜」

まぁ俺もケーキ楽しみだけど。

「ただいま」
「お帰り拓也」

母さんはご飯を作りながら俺に振り返った。
明日ヴォラク達が来ることを母さんは快くOKしてくれた。
母さんも少し慣れてきたのかな?

「ねぇ拓也、明日来る子たちの好きな食べ物とか分かったりする?」
「ヴォラクは何でも好きだけどパイモンは知らないなぁ。どんなんが好きなんだろう」

あの見た目に性格だから結構あっさり系って感じもするけど。

「そう。まぁいつも通りでいいわね」
「気ぃ遣う必要なんてないって。いつも通りでOK」
「ふふ、そうね」

今日は澪がいない。
流石にクリスマスは澪の母さんも父さんも澪の為に早く帰ってくるらしい。
まぁ今までも時々は家族そろってたみたいだけど、でも澪は滅茶苦茶嬉しそうだった。
俺は毎年恒例、家族で飯を食ってケーキを食って直哉と遊んでやった。
なんか直哉とこうやって遊んでやるのも久しぶりな気がする。
今日はいっぱい遊んでやるか!

その日、俺は直哉と夜遅くまで遊んでやった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「なー早く行こうよ!」

25日。今日は拓也の家でパーティだ!
そんな俺にセーレが箱をよこしてきた。

「なにこれ?」
「あ〜開けちゃだめ。ケーキ入ってるから」

ケーキ!!?早く食べたい!!

「いい?絶対に迷惑掛けるなよ。まぁパイモンがいるから平気だと思うけど」
「わかってるよ」

パイモンもなんだかんだでもう着替えている。

「いこ!パイモン」
「はぁ……」

あんま乗り気じゃないみたい。まぁ気持ちはわかるけど。

「気をつけて」
「はぁい」

セーレも俺たちの後に出るみたい。シトリーは昨日から帰ってない。
俺はケーキの箱を持って拓也の家に向かった。

「おい。あまり振るな。ごちゃごちゃになるぞ」
「わかってるよ」

ったくパイモンは小言っぽいな。
流石の俺もそこまで馬鹿じゃないよ。何歳だと思ってんだよ。
パイモンが急に歩みを止めた。

「パイモン?」
「先に行ってくれ。少し気になることがある」
「悪魔?」

そんな気配、俺は全然感じなかったけど。

「行け」

なんだよ。その有無を言わさない言い方。
俺は言われたとおり、先に行くことにした。

◆◇◆
「よぉヴォラク」

インターホンを鳴らすと拓也がすぐに出てきた。

「これ、セーレから。ケーキだって」
「マジで?あいつ本当に気ぃ遣うなぁ。あ、上がって上がって」

俺は言われたとおりに家に上がる。

「パイモンは?」
「ちょっと遅れるって」
「まぁあいつ最初からあんま乗り気じゃなかったしな。まぁいっか」

そんなんじゃないんだけどね。

◆◇◆
「こっちの方に気配を感じたんだが……」

あの時、一瞬悪魔の気配を感じた。
それもかなり強力な気配。俺はこの気配を知ってる。

「パイモン」
「っバティンか」

俺と同じ、ルシファー様の側近、悪魔バティン。
バティンは人のいい笑みを浮かべながら俺に近寄る。

「何の用だ?」
「連れ戻しに」
「無駄だ」
「意地を張るなよ。俺とお前とバルマの3人でルシファー様に長年仕えてきただろ?」

バティンが近寄ってくる。
俺は遠ざかるように後ろに下がろうとしたら、腕を掴まれる。

「な!」
「お久しぶりパイモン。この間はお世話になったなぁ」
「貴様……ボティス!」

ボティスはニヤニヤ笑い俺に向こう側を見るように首を向ける。

「ラウム……」
「よっ」

そこにいたのはボティスの相棒ラウム。ラウムは挨拶代わりに軽く手を挙げる。
まずい……3人に囲まれてしまった。

「なぁパイモン、戻ってこないか?お前ほどの悪魔を失うのはこっちも痛手なんだ」
「断る」
「お前たちがいくらもがいたところで審判は行われる。こっちももうその準備に入ってるんだ」
「準備?」
「それを言う必要は今の君にはないがね」
「……そうか」

バティンは俺に手を差し出す。

「審判を行わせたくない。争いごとが嫌いな君の言い分は最もだ。それは個人の解釈だ。認めよう。でも俺自らが来たことも含めて考え直してほしい」
「……」
「今ならばなんの咎めもなく戻ってこれる。こんなことはもうないぞ。君がヴォラク達も連れてきたら彼らの罪に対しても不問にするように俺が働きかけてやる」
「何が言いたいんだ?」

「ベルフェゴール様は酷くお怒りになっている。それこそルシファー様以上に」

「……そうか」
「君も記憶に残っているだろう?過去に1度だけ人間に加担しただけでベルフェゴール様に殺されかけたことを……また同じことを繰り返すのか?」

ボティスとラウムもクスクス笑っている。
ラウムのズボンにはアイオライトが散りばめられたベルトが巻かれていた。
アイオライトはラウムの契約石。

「ラウムお前も……」
「皆やってんだぜ。綺麗事言ってねぇで戻ってこいよ。な?」
「っ貴様!」
「わかっただろパイモン。お前たちが何をしても事態は進んでる。お前たちが俺たちを地獄に戻していても、その時間に他の悪魔が魂を地獄に持っていく。もう遅いんだ」
「お前達はなぜ主を狙う?」
「指輪の継承者か」
「審判に主は関係ない。あれは天使と悪魔の戦争だろう」
「そうだな……彼の力で召喚門の封印を消滅させる。これが目的の1つだ」
「……!」
「天使の兵になる人間の魂を俺たちが地獄に持っていきルシファー様に献上する……7つの大罪も動き出したいのさ」
「なんだと」

主を狙っていたのは駒として使うんじゃなく、召喚門ごと消滅させる気だったのか!

「召喚門は審判の時にいずれは消える。だが早い方がいいだろう?」
「……くそ!」
「パイモン戻って来い。もしこのまま召喚門がなくなったらベルフェゴール様に今度こそ殺されるぞ?彼がどれほどの力か……戦ったお前が一番よくわかっているだろう?お前にサタネル達や7つの大罪は倒せない。これ以上罪を重ねるな」

この手をとれば、確かに俺はまた元の生活に戻れるんだろう。
だが……

「それはできない」
「そうか……それがお前の意志か」

バティンは俺に背を向ける。
ボティスも俺の腕を解放した。

「残念だ。ルシファー様はお前を信用していたのにな……」
「裏切り者の魂は2度と輪廻できないようにされるかもよ」

ボティス達はクスクス笑う。
それでもいいさ。

「行くぞ2人とも。パイモン、またいつか」

3人はその場を去っていく。
状況は俺が思っていた以上に悪かったようだ。これはクリスマスなどと浮かれている場合ではない。

「急がなければ」

恐らく悪魔たちは優秀な魂を持つ人間と契約して…そして魂の価値を高めて殺している。
魂は価値が高ければ高いほどいい。
おそらく最後の審判での天使の兵を減らすためにやっているのだろうが。
他にも何か目的があるような気がする。
その時俺は気付かなかった。
あいつらは天使の兵を減らす為だけに魂を集めているわけではないと。
解説

サタネル…悪魔の王であることを表す名称。もともと特定の悪魔を示すものではなく、悪魔の中でも上位にある者である。
     ルシファー、ベルゼバブ、ベリアル、アザぜル、アスモデウス、サマエル、マステマ、レヴィアタン(リヴァイアサン)、ヘベモト(ベヒーモス)、アバドン、サタエナルなどがあげられる。
     場合によってはモレク、ラハグという悪魔も含まれる。

7つの大罪…人間が持つもっとも醜い罪の7つといわれている。
      傲慢、嫉妬、暴食、色欲、怠惰、貪欲、憤怒がその7つといわれている。
      それぞれルシファー、レヴィアタン、ベルゼバブ、アスモデウス、ベルフェゴール、マモン、サタンという悪魔がそれを司るといわれている。   
      ちなみにルシファーは魔王として存在を知られている。