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序章
第5話 天使
変な夢を見た。
俺はあの指輪を使って天使を呼び出していた。
そして天使は俺を……


5 天使


『拓也、どうしました?』

俺がベッドから起き上がったので俺の上に寝ていたストラスはベッドから振り落とされた。
ストラスは眠そうな顔をしながらも不機嫌なオーラ全開で俺を睨んだ。

「いや、変な夢見てさ」
『夢を見るのはかまいませんが、私にまで被害が出られては困ります』
「悪い。なぁストラス、この指輪ってその…天使とかも引き寄せるのか?」

我ながらなんと馬鹿げた質問だろう。
悪魔だけでも頭が痛いのに、天使まで出てきたらきっと俺は頭がパンクする。
ストラスは黙って俺を見ていた。(ぜってーなに馬鹿なこと聞いてんだって思ってる)

『もともとその指輪は神ヤハウェの命を受けた大天使ミカエルより授けられた指輪です。貴方がその指輪を通して天使の存在を感じたのなら、それは恐らく間違いではないでしょう』

天使とか冗談。
自分で聞いたくせに話の展開についていけない。本気で言ってんのか?

「ならなんでお前たちみたいに姿を見せないんだ?」
『天使は我ら悪魔を毛嫌いしてますからね。その指輪も元々は我々悪魔を使役するために作られた物ですし』

ストラスはベッドによじ登り、あくびをひとつした。(相当眠たいようだ)

「起こして悪かったなストラス。おやすみ」
『はいはい。おやすみなさい拓也』

俺も考えるのが億劫になり、そのままベッドで目を閉じた。
その時、俺は気がつかなかった。

俺のことを監視するように見つめている何かが居たということを。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「おはよー」
「あ、おはよー拓也」

次の日、俺は普通に学校に登校した。光太郎は普通に俺に接してきてくれた。

「中谷、今日から真面目に朝練出てるみたいだな」

その言葉を聞いて俺は安心した。やっぱ中谷は野球やってる姿のが生き生きしてるからな。
そんな事を考えていると光太郎が少し戸惑いがちに話しかけてきた。

「昨日の傷、大丈夫か…?」
「ん?あぁ別に?完全に閉じちまった。すげえよなぁ」
「俺、今までそんなオカルトなこと信じたことなかったけど、なんかすっごいビックリしすぎて……なんて言ったらいいかわかんないけど…とりあえずお前のこと協力するよ。何かあったら相談して」

光太郎……マジでいい友達持ったよ。
俺はその後、いつもどおり学校を過ごした。(なんだか学校が平穏に感じる)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「中谷」
「あ、池上、広瀬」

放課後、俺と光太郎は中谷に声をかけた。
中谷は野球道具を担いでおり今から部活に行くようだった。

「大変だなー。がんばれよ」
「おう!初戦敗退しないように頑張んないとな!」

中谷はそう言って笑顔を作った。良かった、いつもの中谷だ。

「なぁ池上」
「ん?」
「なにかあったら言ってくれよ。お前は俺を助けてくれたんだから…今度は俺がお前の役に立たないとな」
「中谷……」
「へへ、じゃあな!」

そういうと中谷は照れくさそうに笑い、そのまま教室を走って出て行ってしまった。

「帰りヴォラクのとこにでも寄ってみるかな。あいつ暇そうにしてたし……光太郎は?」
「うん。暇だから付き合う」

放課後、俺と光太郎はヴォラクの居るマンションに向かうことにした。
とりあえず行く途中にコンビニでお菓子(飴)を買っていった(小遣いやばい)
俺は心の中で通帳の金おろそうかなぁと軽く心に思った。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
オートロックの玄関の鍵は光太郎が持ってんだけど一応俺はインターホンを鳴らした。
するとヴォラクの感極まった声が聞こえた。

「すげーすげー!拓也と光太郎の顔が映ってる!おもしれー!!」

いや、はしゃぎすぎだからね…しかも開錠してくれてないし。

「早く開錠ボタン押してくれよ」
「え?これのこと?」

ウィーン……

「すげードア開いた!」
「今からそっち行くから玄関の鍵開けとけよー」
「はーい」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あ!拓也ー!」

10階に着くとヴォラクは玄関の前に立っていた。

「部屋で待ってりゃいいのに……それとはい。お土産」
「うわぁい!飴だぁ!」

ヴォラクはそれを嬉しそうに受け取り中に入っていった。

「……!?」
「どうした拓也?」
「え?いや」

また何かに見られてる感じがした。
しかしどこを見ても誰も居ない。やっぱり勘違いなんだろうか?
急に不安になってきたな。やっぱりストラスにもう少し聞いとくべきだった。
その後、俺と光太郎はヴォラクの様子を確認して(ぴんぴんしてた)小一時間ほど雑談して岐路についた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「じゃーな。拓也」
「おう」

俺は光太郎と別れ、昨日の河川敷を歩いていた。
ここで昨日俺、悪魔と戦った(?)んだよな。夢じゃなかったんだよな。
俺は無意識に河川敷に降りて座り込んだ。

「なんか最悪だ。気分悪いし、なんか見られてる感じするし」
『主は私をお呼びか?』
「へ?え?」

頭上からの声に俺は顔を上げた。辺りに人なんか1人もいない。
しばらく俺は周りをキョロキョロしてたら急に目の前に人が降ってきた。
それは背中に羽を持ち、頭には輪っかがついていた。

「天使……?」
『やっと気付いていただけましたか。貴方が気付いてくださるのを待っていました』

天使は俺の前に跪いた。
俺は何がなんだかわからずただうろたえるだけだった。

『私の名はミカエル。栄光の天使の一角を担う者です。そして貴方は唯一私を使役できるソロモンの継承者』
「あの……話の筋が分からないんですけど」
『貴方はこれから72の悪魔や七つの大罪とも戦わなければなりません。そのときに貴方はその指輪を通して我々天使や神の力を使うことが可能なのです』

なんか更に話がぶっ飛んできたぞ。しかもこいつ聞く耳もってねーし。
ようするに、俺はこの指輪使ってこいつらの力を借りて、昨日みたいに悪魔を倒せと?
ってゆーか七つの大罪って何?
俺が頭に?を回しているとミカエルはそっと微笑んだ。

『混乱するのも無理はありません。これは大きな争いになります。ですから我ら天使も力を貸すことにしたのです』

うわー顔綺麗だなー整いすぎてて逆に怖いぜ。

「ていうかなんでそれが俺なんだ?もっと他にいただろう?」
『それは縁です。貴方がその指輪を手に入れ、指輪は貴方を選んだ。それだけのこと』

それだけのことって……言ってくれるじゃねーか。

「てゆうか力貸すとか回りくどいことしないでさ!最初からあんたが悪魔倒せばいーじゃん!人外の戦いに人を巻き込むなよ!」

そうだよ!お前が倒せばいいじゃん?お前は高みの見物かよ!?

『貴方でなければ意味がないのです。悪魔を使役するのは指輪に選ばれた者しか行えません。貴方でなければ駄目なのです』

何だよそれ……
へたりこんでしまった俺を励ますようにミカエルは言葉をつむいだ。

『貴方に神の加護があらんことを。アーメン』

ミカエルはそう言って姿を消した。
もう意味が分からん。天使って本当にいたんだなー…ていうか俺ってすごくない?天使にまで見込まれちゃったんだぜ?
帰ろう。なんかもう色々疲れた。とりあえず寝る。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『拓也、遅いではありませんか!』
「なんだよ、遅いってまだ5時30じゃん」

帰ってくるなりストラスが俺に文句をたれてきた。
今疲れてんの。お前の相手してる暇はねーの。
しかしストラスは俺のそんな気持ちは無視して俺の前に紙切れを寄越してきた。
なんだよこの紙切れ……ん?

「これ1万円札じゃねーか!!?スススストラス!?これどこで!?」
『どこでといわれましても……普通に公園でですが?』

公園に普通に1万円札は落ちてないよ!しかも3枚も!ていうか勝手に出て行ったな!?

『公園に財布が落ちていたのです。そこから少し抜かせてもらいました。心配せずとも誰もいないことを確認しましたから』

つまり盗み?こいつ意外と悪いこと平気でやるんだな。やっぱ悪魔か……
ていうか使って大丈夫なんだよな…もう落とし主も誰かわかんないし。
すみません神様。この3万円はストラスとヴォラクの飯代に使わせてもらいます。
ていうか……そうだ!

「ストラス!今日天使に会ったぜ!?」
『なんと!何もされなかったのですか?』
「おう。悪魔狩り頑張れだとさ。んなこと言うくらいなら自分でやれっつーんだよ。なぁ?」
『天使は訳が分かりませんからね』
「全くだぜ!」
『まぁそんなことは置いといて……とりあえずコレでポテトチップスが食べれます。拓也、早速明日3袋くらい買ってきてください』
「(置いとくんかい!)3袋ぉ?お前ポテトばっか食ったらデブになるぞ。俺いやだぜ、デブになったお前肩に乗っけて歩くの。ハズいし……デブラスじゃん」
『……では何か体にいいものを頼みます』
「生野菜くらいならすぐになんとかなるけど」
『拓也……』
「嘘だって。明日なんか買ってくるよ」

コンコン……

「ストラス!とにかく隠れろ!」
『拓っ!むぐ!』

俺は慌ててストラスをベッドの中に押し込んだ。(ストラスの潰れた声が聞こえたけど気にしない)

「はーい母さん?」
「拓也?あたし」
「澪!?」

俺は慌ててドアを開けた。
ドアの外には澪が少し気まずそうに立っていた。
ただいまも言わずに自室に篭ってたから澪が来てるのに気付かなかった。

「えっと……どうかした?」
「今日おばさんとおじさん同窓会で出かけるから2人なんだけど。あ、直哉君はお母さんについてっちゃったみたい……何か食べたいのある?」

え?そうだったっけ?どうりでただいまって言わなくても文句言われないと思った。
あ、直哉っつーのは小5の俺の弟。生意気に育ってます。
俺の母さんと父さんは高校からの付き合いで結婚した。(珍しいほどの純愛だったとか)
仲人も高校の友人がしたこともあってか今でも頻繁に連絡を取り合ってる。
こりゃあ今日は帰らないかもな。

「あーオムライスとか?ていうか澪がつくんの?」
「え?うん。上手くできるかわかんないけど」

そんなのオールOKだし!澪のなら不味くても食う!残さず!!

「えっと、あのフクロウは?話し声さっきまで聞こえてたんだけど…」
「あ〜と……ストラスー出ていいぞー。ていうか今日は1階にも降りていいから」
『無理やり押し込んで今度は出て来いですか』

あからさまに不機嫌な声でストラスはベッドからモソモソと出てきた。

「悪い悪い。っていうか父さんと母さんいないならヴォラク呼んでもいいかなぁ?あいつも1人で食うよりかは楽しいと思うんだけど」
『拓也がそれでいいと思うのならいいのではないですか?』
「そっかぁ。んじゃいっちょ呼んでくるかな」
『私が行きましょうか?窓を突けばヴォラクも気付くでしょうし』
「おっ助かる!くれぐれも窓に傷つけんなよ」
『はいはい』

ストラスは窓の鍵を開け(覚えたらしい)外に飛び立っていった。

「悪い澪。オムライス3つ作って。もう1人来るから」
「え、うん。またあのフクロウみたいなのが来るの?」
「あーまぁうん。見た目はちゃんとした子供だけど」

やばい。澪明らかに怖がってる。
そりゃ澪にとっちゃストラスさえもまだ慣れてないもんな。弁解しといたほうがいいのか?

「あの、ストラスのこと慣れた?」
「慣れない。喋るフクロウなんて……悪魔なんて」

馬鹿!何言ってんだ俺!?澪が慣れるわけないじゃん!!

「えっと……なんつーかごめん。勝手に呼んだりして……えっと」
「拓也は怖くないの?」
「え?」
「普通は怖いよね?信じたくないよね?なんでそんなに平然としてられるの?あたしにはそれがわかんないし、信じられない」
「……俺、悪魔に殺されかけたよ」
「拓也?」
「めちゃくちゃ怖かった。本当に殺されるって思った。光太郎と中谷も巻き込んだ」

俺は澪に指輪を見せた。

「この指輪のせいだってわかったんだ。でも全然外れない。この指輪がある限り俺はまたきっとあいつ等に狙われる。だから俺、戦わなくちゃいけない……らしい」

澪は信じられないという目で俺を見た。
信じないのは無理はない。俺だってなかなか信じられなかったから。

「拓也の言ってること……訳わかんない」

澪は乾いた笑いを浮かべた。

「お願い。元の拓也に戻って?馬鹿ばっかやってたけど優しかった拓也に戻って」

馬鹿ばっかって(汗)
俺は指輪を見つめた。

「全部が終わったら、きっと……」

コンコン。

ん?窓から音するな。ストラス?
俺は窓のほうを見た。

「な!」
「たーくーやーあーけーてー」

窓の外にはストラスに咥えられたヴォラクがいた。
ストラスめちゃくちゃ苦しそうだな。顔真っ赤だ……ってそうじゃなくって!
俺は慌てて窓を開けた。

「ヴォラク!空飛んでくるな!歩いて来いよ!フクロウが人間持ち上げるなんて普通はありえないんだから!!」

やばい!突っ込みどころがわからない!それほどに俺は混乱していた。

「えーそうなの?そういうとこすっごいめんどくさいね。でも高いとこ飛んできたし気付かれなかったよね。人間って馬鹿だから」

今何気に人間全般批判しなかった?っていうか反省しろ!

「えーじゃない!俺の言うことを聞け!俺はお前の主だろ!こっちの世界に来たんだからこっちの世界のルールに従え!」
「権力振りかざしちゃ駄目だよー拓也」

このガキ!
その光景を見ていた澪は慌てて言葉をつむいだ。

「えっとあの……あたし夕食作るね!」

澪はそう言い残し慌てて下に降りていってしまった。
ヴォラクは澪に警戒しているのか少し不機嫌そうに聞いてきた。

「拓也、今の誰?」
「澪。俺の幼馴染かな」
「幼馴染?」
「あー小さい頃から一緒にいる仲のいい友達ってこと」
「ふーん」

ヴォラクは自分から聞いてきたクセにどうでもよさそうに返事をした。

俺はこのとき全く気付かなかった。
澪が1人で泣いている事なんて……
登場人物

ミカエル…「神の如き者」を意味する天使軍団の筆頭。
      金色の長い髪をもった美青年の姿をとる。
      4大エレメントのうちの火を司り、栄光の7天使の筆頭でもある。
      4大天使の一角にも数えられている。


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