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第46話 一人ぼっちの少女
母さんは俺が謝ると、泣きながら俺を抱きしめて何度もごめんなさいと繰り返した。
そして一緒に頑張っていこうねって…
それが嬉しくて悲しくて…俺はまた泣いた。


46 一人ぼっちの少女


次の日から俺は学校に行くことにした。
母さんは心配そうにしてたけど笑って答えることでそれを振りきった。
心臓がバクバクいってるのがわかる。俺が人を殺したなんて誰も知らないはずだ。
だけど皆の態度が変わってないか、それが不安でしょうがなかった。
人殺し、俺は人殺しなんだから……

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「お前なんで昨日俺のメールも電話も無視ったんだよ」
「悪い」

学校に来て席に着いた時に初めて他人と話した第一声がこれだった。

「電話に出る余裕もなくてさ」
「おかげで雄一には着拒じゃね?とか言われるし〜…マジで参った参った」

上野は大げさにオーバーリアクション。少し悪いことしたな。
俺は軽く謝ってとりあえずその場はそれで終わりになった。
それから上野はもう何も言わなかった。

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「なぁなぁ。今日帰りに病院いかねー?」

1週間後、11月に入ってすぐ突然立川が俺と上野が話していると会話に混じってきた。
なんだって病院?どっか具合でも悪いのか?

「なんで?」
「いやさー。藤森一昨日から休んでたじゃん?」

そういやそうだったな。

「んでさー昨日病院に検査しに行ったらマジで肺炎だったんだって!だから1週間くらい入院するらしいぜ」
「マジで!?」
「おう。でさヒマヒマ言ってっから見舞いに行ってやろうと思ってさ。俺って優し〜」

藤森肺炎にかかったのか!?たしかに一昨日は学校来てなかったけど……

「えー俺行こう。拓也はどうすんだ?」
「俺?俺も行こうかな」

立川は決まり!といい、生徒手帳のメモ欄にメモをした。
どうやらクラス全員に聞いて回ってるようだ。部活やってる奴は行けないらしいが。
じゃあ中谷は除外か……ってことは、

「部活やってない奴って12〜3人くらいしかいなくね?」
「あー。まぁ人数は少ないけど…40人全員で行くわけにもいかんしな。これでいんじゃね?」

俺らと仲いい奴ら(上野たち)は藤森しか部活やってないけど、うちのクラス結構部活やってる奴いたぞ。
アバウトだな。まぁ確かに一理あるが。

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放課後、集まったのは13人中11人。
俺達は皆で200円ずつ出し合って果物を買っていった。
藤森が入院してる病院は、藤森ん家から結構近い総合病院だった。

「え〜と……とりあえず受付すますから、待合室で固まってて〜」

立川はそう言って、受付に向かった。
その間、俺は光太郎と桜井と上野の4人でヒソヒソ話していた。

「なんであいつ肺炎なんかかかったんだ?」
「さぁ、でも結構前からなんか胸らへんムカムカするみてーなことは言ってた」
「でもまさかの肺炎だな」
「かわいそうに藤森」
「受付できたから病室に移動しまーす」

俺達は11人でどやどや移動する。当然場所をとってる訳で、

「うおっ」「きゃっ」

俺は1人の女の子とぶつかってしまった。
桜井が呆れた声を出し、皆がその場に立ち止まってしまった。

「何してんだよ池上〜」
「あーごめん。先行ってて。すぐ行くから」
「藤森の病室5301だからな」

皆が行ったのを見て、俺はその子を抱え起こした。
寝巻きみたいなものを着てるということは、この子は入院患者なんだろうか。

「ごめんなさい」

謝ってきた少女に俺も謝って立ち上がらせようと腕をつかんだ。
腕はかなりやせ細っており、軽いせいかすぐに少女の体は浮いた。

「あ、いやこっちこそ……前確認してなくて、大丈夫ですか?」
「はい。ありがとうございます…お見舞いですか?」
「あーまぁそんなとこ。クラスメイトが肺炎にかかっちゃって」
「大変ですね……すぐ良くなるといいですね」

少女はにっこりと笑った。
俺がそう聞くとその子は少しさみしそうな顔をした。なんかヤバいこと聞いたか…?

「えっと……そっちはなんか病気で?」
「うん。そうですね、結構前からここにいますね」
「そう……ですか。あの、じゃあ俺そろそろ行きます。お大事に」
「はい。また会えるといいですね」

俺は軽く頭を下げて藤森の病室に向かった。
藤森の病室は結構奥の方らしく、歩いて1分……まだ着かなかった。あともうちょいだろうな。

「なぁ」

急に声をかけられて後ろを振り返ると、何とも奇抜な男が立っていた。
髪の毛は黒く、でもところどころに青いメッシュが入った髪の毛。(シトリーみてー)
ゆるいTシャツとズボンをはき、靴はサンダルというラフな格好だった。
アクセサリーもジャラジャラ付けており、年は少し上くらいだが、どう見てもチンピラにしか見えない。

「な、なんでしょうか……?」

思わず声をかけられて俺は少し震えた声を出してしまった。
しかし男は気にした様子もなく俺に話しかけてきた。

「髪の毛が肩より少し下で軽くパーマ巻いてる女見なかったか?」

え?誰だそりゃ。
俺は考えていると、さっきぶつかった少女を思い出した。

「あー、あってるかは分かんないけど、その髪型の子ならあっちの方向に行きましたよ」
「マジか?あいつ勝手にいなくなって……悪いな」

男はそのまま俺が言った方向に歩いて行った。
なんか……見た目マジこえー(失礼)
俺は失礼なことを思いながら藤森のいる病室に急いだ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「お前らマジで来たのかよ!マジで感動なんですけどー!」

藤森の病室の前に着くと、クラスメイト達と盛り上がってる藤森の姿が。
俺が病室に入ると藤森が俺を見つけて手を振った。

「よぉ池上!わざわざ悪いな」
「それはいいよ。お前大丈夫なんか?」

藤森は平気平気と笑った。

「薬で治るみてーだし。早く良くなってサッカーしてーよ」(そういやサッカー部だったな)
「やめとけやめとけ。今せっかくいい線いってんのにお前が戻ったらまた試合負けるわ」
「んだとこらー!大体俺はまずスタメンじゃねぇ!」
「それもそれで切ね―――!!」

病室にドッと笑いが起こる。
俺も光太郎と一緒に藤森を茶化したり、買ってきた見舞いのフルーツを渡したりして、小1時間辺り話して、俺達は帰ることにした。

「あいつ意外と元気そうだったな」
「でもちょっと安心したよねー」

俺達は皆でワイワイ言いながら廊下を歩いていた。
あ、あいつ……あの子見つけたのか。
窓から病院の中庭が見え、そこのベンチに仲良く話している2人を見つけた。

「拓也。どうした?あれ、あの子さっきお前がぶつかった子じゃね?あの男彼氏かな?」

ニヤニヤしながら2人を眺める光太郎。
確かにそんな感じするな。しっかし楽しそうだなぁ。

「あの子、入院生活長いんだってさ」
「へぇーなんで知ってんだ?」
「さっき話した」
「ふーん、大変なんだな。でも楽しそうにしてるし、少しは良くなってんじゃね?」

そうだといいな。
自分と同い年くらいの子が入院してるって、やっぱ嫌だもんな。

「なにしてんだー広瀬ー、池上ー」

クラスメイトが俺たちを呼ぶ声が聞こえ、俺達は慌てて皆の元に向かった。

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「へぇーあいつ元気そうだったんか。俺も行きたかったなー」

次の日、中谷は弁当を食いながら悔しそうに呟いた。
中谷と藤森仲いいもんな。お祭り好き同士。

「今日行けば?」
「あ、そうしよっかな〜。今日ミーティングだけだし行ってもいいかなぁ〜」

中谷は藤森にメールを入れてみた。
返事はすぐに帰ってきて(藤森ヒマなんだな)答えはもちろんOK。
俺達も付き合って、3人で見舞いに行くことにした。

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「中谷〜行こうや」
「おー!」

放課後、ミーティングが終わって教室に帰ってきた中谷に声をかけた。
中谷もスポーツバックを背負って、俺達は昨日の病院に向かうことにした。

病院は総合病院だけあって相変わらず混んでいた。
俺達は受付を済ませて、藤森の病室に向かった。中谷は歩いてる途中にポツリとつぶやいた。

「結構奥の方なんだな」
「そうなんだよ。結構遠いんだよ」

俺達は笑いながらゆっくりと病室に向かっていった。
あれ?
1つ、ドアが開いている病室があって俺は軽く覗き込んだ。
そこには昨日と同じように仲良く談笑しているあの子と男の姿。
あいつ……毎日きてんのか?その瞬間、あの子が俺に気づいた。

「あ」

やっべ……
でもその子は俺に手を振った。
男もこっちに振り返って俺に気づく。

「あ、あいつ」

男は俺のとこに近づいてくる(ひいぃ!俺なんかした!?)
だが俺の予想と反して、男は随分とフレンドレーだった。

「昨日はどうもな」
「あ、いえ……」
「池上?」

中谷は知り合いか?とでも言う様に俺を見てくる。

「あー先行ってて」
「あ、うん」

光太郎が「あいつ昨日もそれで遅れてさー」などと話しているのが聞こえた。
気まずい空気が包み込む。

「昨日見つけられましたか?」

とりあえず無難なこと言っとくか。
男は頷く。

「あぁ、あの後すぐにな。あいつすぐいなくなんだからよ〜」

女の子はクスクス笑っている。
男に入れよと言われて俺は病室に入った。(なぜこんなことに?)
俺はとりあえず椅子に座った。

「えーっと……こんにちは」
「こんにちは」

なんかスッゲーきまずい。つか普通病室に入れなくないか?
俺はとりあえず思ったことを素直に聞いてみることにした。

「毎日お見舞いに来てるんですか?」
「あぁ。こいつが死ぬまでは毎日くるよ」

は?なんだ今の。普通そんなこというか?
でも女の子は気にとめてないのかニコニコ笑っている。

「気にしないで。彼変な人だから」
「おい。そりゃどういう意味だ」
「仲いいんですね」

でもやっぱ仲いいんだな。楽しそう。
俺は笑いながら2人にそう言うと、2人は顔を見合せて笑った。

「表面だけね」

え。今度はこの子がなに言ってんだ?
何この空気―――!?
俺は気まずくなって左手で頭をボリボリ掻いた。
その瞬間、男の表情が変わる。

「継承者……」
「え?なんか言いました?」
「いや、なんでもない」

女の子の言うとおり、変な奴だなこいつ。
とりあえず何か言うこと探さないと……え〜っとえ〜っと……

「そういえば昨日入院生活長いって言ってましたよね?大変ですね」
「もう慣れちゃった。ずっとなんだもん」

その子は窓の方を見た。その顔は少し淋しそうだった。

「今まで入院と退院を繰り返して、友達もいなかったし、彼だけ。こんなにしてくれるの」
「照れるべ。やめろや」

男は照れ隠しかそっぽを向く。なんだ、やっぱ仲いいんじゃん。

「そうですか……ご家族も心配してますよね」
「うん。それが申し訳なくって……だからお見舞いには来ないように言ってるの」

少しまた悲しそうに笑う目の前の女の子。
それがシャネルにかぶる。

「あの……俺も見舞いに来ていいですか!?その、折角こうして知り合えたのに……」
「本当に?あたしの話し相手になってくれるの?嬉しい……」

その子は目を丸くしたが、すぐ笑顔になって頷いてくれた。
でも男は不満そうな顔。俺が来るの嫌ってことなのか?

「じゃあ俺、今から友達のとこ行ってきます。また来ますね」
「少し話がある」

俺は病室から出ようとすると、俺を男が呼び止めた。
え、なんで?早く藤森のとこ行かないといい加減遅刻し過ぎだろ。
でも断るわけにもいかず、俺は男と一緒に病室を出た。

「どういうつもりだ?」
「え?」

病室を出て急に言われた一言。なんでそんなこと言われんの?

「お見舞い、いけなかったんですか?」
「とぼけてんのか?俺を監視するためにあいつに何かしようとしてんのなら許さねーぞ」
「どういうことですか?ってか何で俺があんたを監視すんだよ!」

マジ訳わかんねーし!お前を監視するとかするわけねーじゃん。
何を思ったのか、は俺の言葉を聞いて、キョトンとした。

「気づいてない?」
「は?」
「いや、何でもない。何でもない……あいつのこと宜しくな」

男は急に態度を変えて、病室に戻って行った。
俺はぽかんとそれを眺めていた。

「マジで変な奴」

関わんない様にしとこ。
俺はそう言い聞かせて、藤森の病院に足を運ばせた。
病室は中谷と光太郎と藤森の騒ぐ声が聞こえて、俺は顔をのぞかせた。

「おっす藤森。また来たよん」
「よー池上ぃ。度々わるいな」

藤森は腕に点滴を打ってたけど元気そうだ。
俺達はしばらく話していると、病室の扉が開いた。

「雅也ー(藤森の下の名前)。具合はどうー?あら?お友達が来てるの?」

入ってきたのは藤森のお母さん。
俺たちは慌てて頭を下げた。

「あ、こんにちは」
「こんにちは。雅也がいつもお世話になってます」

俺たちが頭を下げると、藤森のおばさんも頭を下げる。
なんだか俺達はその場に居づらくなって帰ることにした。

「じゃーな藤森」「早く退院しろよ」「ばぁ〜い♪」

それぞれ藤森に声をかけて、俺達は病室を後にした。
歩いている途中、思い出したように中谷が俺に話題を振ってきた。

「そういえばお前来るの遅かったな。何してたんだ?」
「あぁ、なんか女の子と話しててさ。少し遅くなった」
「なんだよ〜お前だけ出会いがあってさー!くっそ〜」

中谷は悔しそうに地団太を踏んだ。

「じゃあお前もこれから来いよ。俺これから時々見舞いに行かなきゃいけなくなってさ」
「なんでそんな事になんだ?」

光太郎が声を上げる。

「だってなんかその場のノリで。言っちゃった以上にはさ。それに」
「それに?」
「すっげー悲しそうに笑うんだ。それが、なんかシャネルとかぶって……」
「シャネル?」

中谷はわからなかったが、1日ギリシャで一緒に悪魔探しをした光太郎は分かったようだ。
少し気まずそうに頷いた。

「お前がそう思うんなら後悔しないようにすればいいさ」
「なーなー何だよシャネルって。ブランドか?」
「ギリシャの……悪魔と契約してた人間の名前」

光太郎がそう呟くと、中谷も理解したのか、気まずそうに頷いた。
何か少ししんみりしちゃったな。
俺達はそのまま帰路についた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「どうしたの?ヴァッサーゴ?」

彼が病室から出て行ってから、ヴァッサーゴは浮かない顔。少し表情も強張ってる気がする。
あたしは彼の顔を覗き込む。

「あいつ、俺が探してた奴だ」
「前に言ってた指輪がどうとかっていう?間違いじゃないの?」
「そんなんじゃねぇ!俺が間違えるわけねぇ!確かにあの指輪だったんだよ!」

そっか。でもどうしてそんなにつらそうな顔するの?
あの子はそんなに悪い人なの?

「そう言えば理由……なんで指輪を探すのか教えてもらったことない」
「知らなくていい。それにお前はもうすぐ死ぬだろ。死んだ後のことだ」

そんなにハッキリ言わなくたっていいじゃない。少し悲しい。

「ねぇ、あたしが死んだら悲しんでくれる?」
「契約条件増えたぞ」
「いいじゃない。そのくらい……」

確かにそんな義理はないよね。でも……

「他に悲しんでくれる人なんていないから」

父さんと母さんはお見舞いに来たことない。仕事が忙しいから。
本人たちも病院に行くことを煩わしそうにしてたから。
あたしが来なくていいって言ったら「本当にいいの?」と言いながらも安心したような顔をした。
誰も来ない病室、寂しさだけが募る。
だからあたしがこの世界からいなくなる間、あと少しだけでいいから。

あたしを1人にしないで。
登場人物

立川隼人…拓也のクラスメイト。中谷と同じ中学で、個人的にも仲がいい。
      桜井、上野、藤森とつるんでいて、特に藤森と仲がいい。
 

藤森雅也…拓也のクラスメイト。サッカー部所属。
      色グロで身長が高く、くせっ毛なのを少し気にしている。
      桜井、上野、立川の4人でつるんでいる。
      席が近いことから光太郎とも仲がいい。