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*今回もギリシャ語の変換がうまく出来てません。
おかしい個所があっても気にせずに読んでください。
第2部
第43話 シャネル
どうしよう。結界の中に閉じ込められちまった。
誰も入れない。外からはストラスとセーレがこっちに呼びかけている。
でも声も聞こえない。

そして目の前には真っ赤に染まったシスター。


43 シャネル


「なぁマジでやめよう。殺し合いなんて馬鹿げてるよ!」
ストラスがいない今、俺の言葉をギリシャ語に訳してくれる奴はどこにもいない。
シスターは揺るがない。斧を構えなおしてこっちに向かってくる。

「Κμβο!!(死ね!!)」
「止めろよ!!」

俺の言葉にも耳を貸さず斧を振り回すシスター。走り回ってそれを避ける。
「Δραπετεει!(逃げるな!)」
なんて言ってるかわかんない。でもまともに相手したらマジで殺される。
なんで殺すことに抵抗がないんだよ!なんで怖くないんだよ!?
俺は人殺しにはなりたくないんだ!!誰か助けてくれ!誰か、か……!!


『くそっ結界の中が見えない』
セーレは悔しそうに結界を叩きます。
どうやら外側から中を見るのは不可能の様です。

『俺がもっとしっかりしていればっ!』
『セーレ、貴方のせいではありません。それよりもこの結界を壊す方法を見つけなければ』

恐らく結界は衝撃に耐えられなくなれば壊れるはず。しかしイポスは肉弾戦ではなく、魔法主体の悪魔。
肉弾戦が主体のヴォラクが張った結界をマルファスが壊すのにも十数分の時間を要したのに、私とセーレがイポスの結界を破るとなると何十分かかるのか。
パイモンでもかなりの時間を使わないと結界を破ることはできないでしょう。
しかしパイモンはイポスとの戦いで精いっぱい。
とてもこちらに手を回す余裕は……

『ジェダイト!結界に体当たりしてくれ!』

セーレはジェダイトに体当たりで結界を壊すことを命令しました。
確かにジェダイトは拓也達が数人で乗っても軽々と持ち上げれるくらいです。
体当たりした時の衝撃はかなりのものでしょう。ジェダイトは思いきり結界に体当たりしましたが、結界はびくともしません。それでも結界に体当たりするジェダイト。
しかし今はほかに方法はありません。
自分の不甲斐なさに憤りが募ります。
横ではパイモンがイポスの攻撃をかわしながら、反撃の機会をうかがっています。

拓也、もう少しだけ頑張ってください!

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『継承者が気になってしょうがないか?』

イポスは隙をついて俺に攻撃を仕掛けてくる。
先読みが得意なのか、上手く俺の逃げ道を先に封じてくる。
それに奴には羽がある。俺が斬りかかるとすぐに上空に逃げてしまう。
埒が明かないな。

『セーレ!ストラス!手伝ってくれ!』

『パイモン……でも拓也はどうするんだ!?』
『その結界はお前たちでは壊せない!それよりこいつを倒して結界を消す方が先だ!俺は空が飛べない。セーレ、お前の力を貸してくれ!ストラスは魔方陣の準備を!』
『魔方陣?』
『奴の力を消去する魔方陣だ。あいつを倒してもあいつの歌によってシスターが暴走する可能性が高い。奴の力を吸収する魔方陣を頼む』
『わかりました』

セーレはジェダイトに乗って俺に近づいてくる。
俺はセーレの後ろにまたがった。その様子を見たイポスは手に力を込める。

『神速セーレか……情にあついお前の裏切りは予想内ではあったけどな』
『セーレ、できるだけ近寄れるか?遠距離戦では勝ち目がない』
『わかった』

セーレはジェダイトの腹を蹴って空中に舞い上がった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「はぁはぁ……」

やっべぇ……逃げ回って疲れた。
でもそれは向こうも同じ。シャネルも肩で切るように呼吸をしている。
どうすりゃいいんだよ!?言葉が通じない今じゃ説得なんて不可能だ。
パイモン達が結界を壊してくれなきゃ壊す……

そうだ!結界を壊せばいいんだ!そうすれば俺はここから出られる!

俺は剣にイメージを注ぎ込んだ。
またあの竜巻で攻撃すれば結界は壊れるかも!
剣が光を帯びてきたのを見て、俺は剣を上に向けた。シャネルは怪訝そうに顔をしかめている。

「行け!」

剣から出た竜巻にシャネルは一瞬身を強張らせた。
でも竜巻が当たった空間はびくともしない。傷1つすら入っていなかった。

「え、嘘!」

サミジーナの時はこれで1発OKだったのに!こうなったらもう1度!
俺はもう1回剣にイメージを吹き込もうとした。

「Δεν μπορε να δεξει.(させない)」
「げっ!!」

シャネルは俺がイメージを吹き込んでる間に斧を持って俺に向かってきた。
まだ俺、この剣にイメージ吹き込むのに時間かかるんだよ。
だけどシャネルは俺の目前で斧を振り下ろそうとしていた。
避けれない!!
俺は剣に竜巻のイメージを吹き込むのを止めて、とっさに剣を立てる。

ギィンッ!!

剣と斧がギリギリと歯を立てている。
俺がビビっているのに対し、シャネルはさらに力を込めてくる。
それでも男と女。体格で勝ってる俺の方が力は強いわけで、俺は何とかシャネルの斧をはじくことに成功した。
心臓がドキドキ言ってる。冷汗が止まらない。あの時…剣を立ててなかったら確実に俺はあの斧で真っ二つにされてただろう。
シャネルは斧を抱えなおす。
どうすりゃいいんだよ!?どうすれば!!

『何を迷う必要があるんだ?そんな奴斬っちまえ』

急に頭の中に聞こえてきた声、その声は間違いなくウリエルだった。

「なに言ってんだよ……相手は悪魔じゃなく人間で、女の子なんだぞ!」

シャネルは日本語が聞き取れないので、自分に話しかけられたと思っているのか、怪訝そうに顔をしかめて首をかしげている。

『駄目だ。この罪は死でしか償えない。目には目を……思い知らせなきゃいけないのさ』
「そんなことさせない。お前が俺の体を乗っ取ろうとしても俺は許さない」
『……あまちゃんだな』

ウリエルは呟くと、そのまま会話を切った。
その瞬間、突然俺の体が動いた。
あいつが強制的に俺の体を乗っ取ったのか!?

「やめろよ!」

俺は体を抑え込んでその場にうずくまる。
体は動きたいとでも言う様にガタガタ震えている。
マジで全身で集中しなきゃ、体が勝手に動き出しそうだ。

「やめろやめろやめろやめろやめろ!!」

頼むから止めてくれ!!
俺は自分を抱きしめるような体勢で叫び続ける。

『ちっ……やっぱ合意の上でないと体の拝借は無理か』

頭に声がはっきりと聞こえて、体の震えは止まった。やった……あいつを追い出せたんだ。これでこの子を殺さないで済む。
そう思ったのも束の間、俺の目の前にシャネルは近寄ってきた。
膝をついている俺には避けることなんてできない。

「Amen……(アーメン……)」

膝をついている俺の頭上に斧が掲げられる。
殺される!もうウリエルは助けてくれない!!
そう思った瞬間、俺は何も考えられなくなり、手に持っていた剣を夢中で振りかぶって……

シャネルの体を切り裂いた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『くっ……流石セーレ、素早いな』

やはりセーレのスピードについて行けないのか、イポスは舌打ちをした。
セーレのおかげで遠距離戦一方ではなくなった。少しずつだが傷を与え続け、それが確実に大きくなっている。
まぁ傷ついたのは向こうだけではないが。

『セーレ、次で決める。全速力であいつに突進してくれ』
『何か策でも?』
『いや、でも弱っているあいつなら後一撃だ』
『わかった』

ジェダイトはものすごいスピードでイポスの突進する。
だがイポスも馬鹿ではない。
突進してくるジェダイトを避けないはずがない。

『くっ!』

だがジェダイトのスピードはかなり早い。わかっていても体はなかなか反応できないもの。
イポスは突進は避けたが擦れ擦れだった。

そこで動揺して体勢を崩すからお前はここでやられるんだよ。

俺はジェダイトからイポスに剣を立てて飛びかかった。
体勢を崩したイポスは避けきれない。

『パイモン……っ貴様ぁ!!』

俺はそのままイポスの腹を剣で突き刺して地面に叩き付けた。
叩きつけた場所はストラスが描いた魔方陣の中。
着地した俺と違い、剣を突き刺されたうえに背中から落ちたイポスとではダメージのケタが違う。
俺はそのまま立ち上がり、倒れこんだイポスを見つめる。
イポスは傷の治療に力が必要なはず。そうしたら結界を張っておく余裕もない。案の定、結界は薄れていく。

『拓也っ!』

ストラスは主の名前を呼び、近寄ろうとしたが動きが止まった。俺もセーレもこの光景をあんぐりとして見つめている。
主は大量の返り血を浴びていた。
剣は真っ赤に染まり、主の顔も血で染まっていた。
そしてそこには大量の血を流して倒れているシスターの姿。シスターは息も絶え絶えで、必死に呼吸していた。
シスターはイポスに手を伸ばすが、イポスは魔方陣に閉じ込められて苦しそうにしている。

「σον αφορ σε με…… Αυτ κβοι που εναι μια ττοια θση……(私は……こんなところで死ぬの……)」

声を出すたびに口と腹から噴き出る血。
主は呆然とその光景を見ていた。
まるで放心しているように。

「σον αφορ σε με ταν……αν και ακριβ θα επιθυμοσαμε να ζσουμε κανονικ……(私はただ……普通に生きたかっただけなのに……)」

それがシスターの最後の言葉だった。
シスターはそのまま息を引き取った。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1人の少女が丘を駆け上がっていく。花の冠を持って。

「司教様ー」

女の子はそのまま司教に飛びつく。
司教と呼ばれた女は少女の頭を優しく撫でた。

「シャネル。走ってきたら危ないでしょう?」
「ごめんなさい。でもきれいなお花がいっぱい咲いてたからこれ、司教様に」

シャネルは司教に冠を渡す。

「まぁ……ありがとう」
「ねぇ司教様」
「なに?」
「いっぱいいっぱいエライ子にしてたら、お父さんとお母さんはシャネルに会いに来てくれると思う?」
「勿論よ。神様は全て見ていてくださるのだから」

その言葉を信じることに疑いはなかった。

善行を重ね続ければ、神も私に希望を与えてくれる。
純粋にそう思ってた。
なぜこんなことになった?

◆◇◆
「司教様……死んじゃいや」

シャネルが握りしめた手を、司教は弱弱しく握りかえす。

「シャネル……人を憎んでは、ダメよ。人を尊び……大地の喜びを感じ、いつか貴方自身が幸せに……」
「司教様……?司教様ぁ!!」

どうして?お祈りも毎日かかさずにした。
神の教えを毎日勉強した。
人を恨むことなどせずに生きてきた。

それでもまだ神様は私と司教様を見てくださらないの?

◆◇◆
「お願いです!ここは司教様がずっとずっと守り続けた教会なんです!どうか取り壊すのだけは!」
「ダメだ。それにもうこの教会に巡礼に来てる人間自体も少なくなっているだろう。教会なんてもう必要ないさ」
「そんなことはありません!神は全て見ているのです!天罰が下りますよ!?」
「天罰か……ははは。食らってみたいもんだねぇ」
「なんという事を……」
「司教もいつまでも下らないことをやってないで、もっと村に貢献すべきだったんだよ」
「そんな……」

あたしの居場所がどんどん奪われていく。
1つ1つ司教様との共通点が消えていく。

最後の1つも……消えてしまった。

◆◇◆
「シャネル、何の用だ?もう教会は取り壊したんだぞ」

謝ってほしかった。ただそれだけだった。

「過ぎてしまったことは仕方がありません。ですが神を冒涜した事と司教様を侮辱したことを謝ってもらいたく思っています」
「なぜ俺が謝る?」
「なぜ?貴方は司教様がどれほどすばらしい方かわからないのですか!?」
「わからないねぇ。大体」

男はクッと笑う。

「天罰が下る、だっけな。まったく下ってないぜ?下らせてもいいんだぜ?お前らの信仰もその程度なんだよ。所詮、ただのままごとみてーなもんだろ?」
「なんですって……?」

心がざわめくのがわかる。
私と司教様は遊び半分で教会を守っていたわけじゃない!
なぜその様なことを言われなければならない!!?

神はこのような男まで平等に生きる権利があるというのか!?

「……おい、何持ってんだ?」
「そのように天罰をお望みならば、私が与えて差し上げましょう」
「冗談だろ?」
「アーメン」

◆◇◆
逃げなければ、逃げなければ。私はなんてことをしてしまったのだろう。
一時の怒りにまかせて、人を殺害してしまうなんて……

「私は今まで何のために……」

このような私を神がお許しになるはずがない。
ならばここで自分自身の命でその罰を……
斧を首元にかける。怖い、けどそれ以上にこれから先、生きていくのが怖い。

「司教様、シャネルは約束を破ってしまいました……」

人を憎んではいけない。人を尊べと。
なのに私は……

『本当にいいのか?』

声が聞こえ、顔を上げると目の前には羽の生えた男。
もしかして天使様が私を迎えに来てくださったのですか?

「天使様……ですか?」
『俺は天使じゃない。でもこの苦しみから救ってあげる方法は知ってる』
「方法ですか?」
『哀れな子』

男の手が私の頬に触れる。

『神に裏切られた。最も信用ならないだろう?神なんて』

そうだ。神は助けてなんてくれなかった。
私は神に見捨てられていたの?

『俺はそばにいるよ』

もう泣かないって決めた。
こんなロザリオ、私には必要ない。
目の前のこの天使のような男が私を必要としてくれるのなら、それだけに縋って生きていたい。
そう思った。
ただそれだけだった。

どうして私は幸せになれないの?
黒く染まり血を浴びて……全部あいつ等のせいなのに。
結局私は幸せになれなかった。
夢見てたのになぁ……いつか父さんと母さんが迎えに来てくれることを。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
俺たち全員が放心してるこんな状況にも関わらず、主の剣は輝きだした。恐らくイポスを戻すために魔方陣を描けということだろう。
俺は固まっている主から剣を抜きとった。それでも主は反応しなかった。
ストラスの描いた魔方陣から上書きするようにイポスの召喚紋を描いて行く。
そして死んでいるシスターの指から契約石のムーンストーンの指輪を抜き取った。
それを召喚紋の中に入れて、俺は詠唱を始めた。

『シャネル、シャネル……』

イポスは最後の力を振り絞ってシャネルに手を伸ばす。

『お前の死体は誰にも渡さない。魂も記憶も……お前は天国へは行けない。だけどお前1人を地獄にも行かせない。俺が……ずっと付いていてあげる』

こいつなりにシスターを想う心はあったんだろう。
そしてイポスは地獄へと消えて行った。

『拓也、これは貴方が……』

ストラスは途中で言うのも怖くなったのか、そのまま黙ってしまった。
すると、シスターの体が砂のように崩れていった。
セーレがその砂の1欠片を手ですくう。

『イポスが最後の力を振り絞って、シャネルの魂を自分の元に引きずりこんだんだろう。このまま天国に行ってもこれだけの罪を犯したんだ。地獄に落とされるだろう。それならまだイポスと2人で居たほうが良かったのかな……』

その答えをわかる者はもういないだろうな。
主は砂をジッと見つめていた。

『拓也……』
「ストラス……駄目だよ。汚れる」

ストラスがゆっくりと主に近づいていくと、主は消えそうなか細い震えた声を出した。
主は「あはは」と笑い、膝をついた。

「頭上で斧を振り落とされそうになった時さ、もう何が何だか分かんなかったよ。ウリエルは殺せって俺の体勝手に動かそうとするしさぁ」
『……』
「でも殺したくなかったんだよ。だからウリエルを俺の体から追い出した。俺、頑張ったんだよ」
『えぇ、貴方は頑張りました』
「殺す気なんかなかったんだよ……殺したくなんかなかったんだ……」
『……』
「本当なんだよ」
『わかっています』

「でも殺した、殺した、殺した、殺した!!」

『拓也っ!落ち着いてください!』

主は狂った様に叫び、自分の手を見た。
真っ赤に染まった手を見て、主は遂にパニックを起こした。

「うわあぁぁあああああぁああぁぁぁあああああ!!!!!」
『拓也!』

セーレも駆けつけて主の肩を掴むが、主は頭を押さえて泣き叫ぶ。

「ああぁぁああああああぁぁぁあああああ!!!!」
『拓也!貴方は悪くありません!悪くなんかありません……!!』
「殺した!俺が殺した!俺が殺したんだ!人を殺したんだ!!あの子を俺は、俺は!!」

主は泣き叫んでそのまま倒れこむように地面に頭をつけた。
あまりに悲痛なその姿に俺達は耐えられなかった。

「見るな!見るな見るな見るな!俺を見るなぁ!!!」
『主……』

「あああぁぁあああぁぁぁあああぁぁああ!!!!!」

主の泣き叫ぶ声だけが森の中にこだました。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『拓也はどうなってしまうのでしょう……』

ジェダイトに乗ってとりあえずマンションに帰っている途中でストラスは呟いた。
主はその後も泣き叫んでいたが、暫くするとショックがもう許容範囲を超えたのか、そのまま気を失って倒れこんでしまった。
俺達は主をジェダイトに乗せて、マンションへ急いだ。

「シトリーとヴォラクに殺されそうだな」

あいつ等はなんだかんだ言っても、主のことが心配でしょうがない奴らだ。
こんな姿の主を見たらまず言われるだろう。
なぜ拓也を守れなかったんだ!?と……

「俺だってこんな目に遭わせたかったわけじゃないんだ……!」

握りしめた拳からは爪が食い込んで血が溢れた。
でもこんなものじゃない。
主の体感した恐怖と恐ろしさはこんなものではなかったはずだ。
平和な世界に生を受けて、両親に愛されて育って、友達と笑いあって、死や殺戮と無縁な世界。
そんな世界で育った主が人を殺したなんて誰が思うだろう。
仕方なかったとしても、人を殺したことには変わりはない。心が壊れてしまってもおかしくないだろう。

“指輪の継承者といえど所詮は子供。お前達は重すぎる重圧をかけていたんじゃないか?”

あぁ、本当にその通りだった。俺達は主に重圧をかけ過ぎていた。

“こんな子供に悪魔退治なんて酷だと思わないか?なぁ、今まで何人の人間の死体を見せてきたんだ?何人の人間の悲しむ顔を見せてきたんだ?何人の人間の憎しみの表情を見せてきたんだ?何も知らなければ良かったものを”

イポスの言葉が頭で半濁される。それが悔しくて仕方がない。
ストラスは主の体に心配そうに擦り寄る。
セーレは時折、主の方を振り返り、そして何も言わずにまた前を向く。

最悪だ。

もう主が悪魔を退治していくのは不可能かもしれない。
このまま奴が言ったように主の心は壊れて、そのまま……自分の考えに嫌気がさして頭を振る。
守ると決めていた。でも守れたのは表面だけだった。

この傷は決して消えない。俺は守れなかったんだ……

拳は相変わらず握りしめたまま。でもそれでいい。それで少しでも痛みが共有できれば。


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