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第2部
第37話 人間として、母親として
シトリーが帰ってきたので、俺達はそのままジェダイトに乗ってアメリカに向かった。
少しだけシトリーのことを気に掛けながら。


37 人間として、母親として


「早速だけどさ。シトリー、ほんとにガードマンの人を誘惑できたわけ?」
「当たり前だろ。さっさとエアリスさんを拝んでみたいもんなぁ〜〜」

いつもなら馬鹿じゃねーの?と思うような言動でも、あんなことを聞いたら何も言えない。
何も反応しない俺をシトリーは怪訝そうに見てきた。

「マジでお前どうかしたのか?」
「別に何も。じゃあさっさとエアリスさん連れて来てよ」
「それが人にものを頼む態度かよ。ったく最近のガキは」

シトリーはぶつぶつ言いながら携帯を取り出した。

「Hello, Is her state how?(彼女の様子はどうだ?)」

ガードマンと喋っている間、シトリーを覗き込む。
シトリーは会話をしながらOKサインを出した。会話を終わらせ、シトリーが俺たちに向きなおった。

「今から連れてくるそうだ。やっとご対面ってわけだな」
「主、お気をつけください」

パイモンがそう言ってくるから、俺はドギマギしながらエアリスが来るのを待った。
数分後、ガードマンの人が俺たちの方を指差した。

「What? It is some business in me?(私に何の用なの?)」

女の人の声が聞こえ、写真でみたのと同じ女の人がボディーガードと歩いてきた。
エアリスはガードマンに手をあげてその場に立ち止まらせて、俺たちの前に立つと怪訝そうに顔をしかめた。

「What?Who are you?」
「あ、えーと……I’m Takuya Ikegami」

ひゃ〜〜〜!外人と英語でしゃべっちゃったよ〜〜〜

「Takuya? OK. By the way,It is some business in me?」
「え、えぇっと……どうしよう。もうわかんない」
「拓也……」
「お前、学校で何してんだ?」

セーレとシトリーの痛烈な一言に俺はウッと言葉を詰まらせた。
セーレは軽く苦笑いし、エアリスの前に出た。

「Haven't you made a contract with devil?(貴方は悪魔と契約しているんじゃないですか?)」

エアリスは一瞬のうちに表情を暗くした。

「What are you saying?(何を言っているの?)I can’t understand.(理解できないわ)」
「Don’t lie.(嘘をつかないでくれ)We have understood already.(俺たちはもうわかってるんだ)」

エアリスは俺たちを見て、眉をひそめた。

「Please show evidence to me.(証拠を出しなさいよ)Don’t say Complaint.(言いがかりはやめてくれないかしら)」
「どういうこと?なぁ光太郎なんて言ってんの?」
「証拠を出せだってさ。そんなこと言われてもなぁ」

光太郎は呆れながら呟いた。
俺は少し考えたが不意にいい考えが浮かんだ。

「そうだ!契約石、契約石だ!契約石を見せてもらおう!」

俺の案にストラスとパイモンは頷いた。

「そうですね。確実ですし……ボティスの契約石は……セーレ」
「あぁ。スモーキークォーツのネックレス。任せてくれ」

セーレは頷いてエアリスに向きなおった。

「Please Let’s show me contract stone.(契約石を見せてくれないか)」
「I don’t have it.(そんなもの持ってないわ)What are you saying.」
「しらばっくれちゃってさ」

ヴォラクはポツリと呟いた。
しかしエアリスは強気の態度を崩さない。やっぱり決定的な証拠がないと。
俺は父さんがくれた資料をペラペラとめくった。
なにか、なにかいいことが載ってないかな。あれ?これって……俺は光太郎と中谷に資料を見せた。

「エアリスって娘しかいないよな……この子だれ?」
「友達の息子とかじゃねぇの?」
「こんな肩組んで家に入れるかよ!しかもこの子の家族らしき人は映ってねーぞ」

俺は資料をパイモンとストラスに見せた。
パイモンはストラスと顔を見合わせ、そして頷いた。

「間違いありませんね」

パイモンはセーレに資料を見せて、なにやら耳打ちをした。
セーレは軽く頷いて、エアリスに向きなおる。

「Who is him?This is evidence.(彼は誰だ?これが証拠になるはずだ)」
「……!Why」

エアリスの表情が固まる。
そこには少年の肩に手を置いて、家に招き入れるエアリスの写真が載っていたからだ。

「しっかしどこであんな写真撮ったんだ?」
「さぁ」
「This boy is Botis. Appearance that he becomes man.(彼はボティス。これは彼が人間になった姿だ)Right?(違うか?)」
「……っ」
「なんか効いてるみたいだぞ?」

中谷は小声で俺に耳打ちをした。
確かに。急に余裕がなくなったな。
エアリスはフゥと息をついた。

「Is it up to here etc.(ここまでね)What do you want to do to me?(貴方は何がしたいの?)」
「To seal the devil, we are moving. We think that it wants you to cooperate in you.(悪魔を封印するため、君に協力してほしいんだ)」
OKわかったわWhat I should do?」
「とりあえず、彼のいるところに案内してくれ」
「I see.」

エアリスは頷くとガードマンの男に話しかけた。
すると男は頷いてどこかに立ち去って行った。俺はセーレに話しかけると、セーレはエアリスに代弁した。

「あいつどこに?」
「リムジン?っていうのを連れてくるそうだよ」

リムジン!?すげぇ!俺乗れるの!?
セーレの言ったとおり、リムジンが公園の前の道路に止まった。
エアリスに連れられて、俺たちはリムジンにのった(感激)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「Why,Why were you going to contract to the devil?(なぜ、なぜ悪魔と契約しようと思ったんだ?)」

パイモンはリムジンの中で不意にエアリスに話しかけた。
聞き取れない俺はボケーっとしていたが、エアリスは軽く笑みを浮かべた。

「Um……It is so.(うーん……そうね)I did not want to destroy life.(生活を壊したくなかったわ)」
「Life?」
「Yes」

エアリスは少し悲しそうに語った。

「This company was immediately before the bankruptcy.(この会社は倒産寸前だった)I was not able to become colorless Because there are as many as two children.(私は無職になるわけにはいかないの。子供が2人もいるんだから)I grew up in the fatherless family.(私は母子家庭で育ったわ)It was very poor.(とても貧しくてとても大変だった)I studied desperately.(必死で勉強した)I threw everything away and studied happiness of all doing.(みんながしている楽しいことを全て捨てて、勉強だけをした)The result is a tiny company today.(その結果は今のちっぽけな会社)And, the threat of bankruptcy.(そして倒産の危機)I did not want children to have only miserable time. (子供達には惨めな思いはしてほしくなかった。)I will be done by what, and be endured for that by what.(そのためならどんなことでもするし、どんなことでも耐えてみせる)It was a desire to cling to straw.(藁にもすがる思いでいたの)At such time … That child showed up.(そんな時、あの子が現れた)」


                          『Will I save?(俺が救ってやろうか?)』



「なるほどな……」

パイモンはしばらく考え頷いた。

「You are selfish.(勝手な女だな)」
「What?」

話を大人しく聞いていたシトリーはエアリスにかみついた。

「Of free self-satisfactory.(ただの自己満足だろ)」
「……」
「シトリー」
「嫌いなんだよこういう奴。他人を助けることを言い訳にして、結局は自分の都合のいいようにする奴はよ。悪人よりもタチ悪いぜ」

驚いた。シトリーが女の人にかみつくなんて。

「なんて言ってたんだ?光太郎」
「……少しは英語の勉強したらぁ?勝手な女だってさ」

俺の横から来た光太郎の厳しい突っ込みはあえて聞かなかったことにする。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
リムジンを走らせること30分。俺達は高級マンションにたどり着いた。

「でっけー……これ光太郎のマンションよりデッカイや」

ヴォラクの言葉に俺もうなづく。確かに…これざっと30階くらいはあるだろ。
エアリスがマンションに入って行き、俺達はエアリスの後を付いて行った。
エレベーターであがること14階。目的の階に俺たちは到着した。

「なんか緊張してきた」
「ションベン漏らすなよ」

シトリーの突っ込みを他所にエアリスは玄関の鍵を開けた。
中から聞こえたのはゲームの音。どうやらボティスはいるみたいだ。
俺達は家の中に入り、リビングに通された。

「Botis.」

エアリスが名前を呼んだ。
すると、目の前に猫の頭を型どったニット帽をかぶった子供が現れた。
猫の帽子の耳の部分はワイヤーを入れたかのように尖ってて、(角が猫の耳の中に入ってる)口からは牙が出ていた。
人間ぽいけど明らかに人間じゃないだろ。普通牙が口からはみ出るかよ……

「Oh……Hello Paimon.」
「どうも」
「あら?日本語?」

やっぱこいつも日本語話せるんだな。パイモンが日本語で挨拶したらすぐに言葉を切り換えた。

「お前が来たってことは俺を地獄に返しに来たんだろ?」
「よくわかってんじゃん」

シトリーは言葉を否定することなく頷いた。

「そりゃぁ裏切り者の情報はどんな情報よりも早く届くさ」
「そうですかっと」

ボティスは笑みを崩さない。

「いいのかねぇ、そんなことして……はっきり言って何の得にもなんないぜ?人間の味方したってさ」
「それはお前も同じだろう」

パイモンの切り返しにボティスはキョトンと眼を丸くした。

「契約者の望むままに動いている。これは人間の為じゃないのか?」
「くく……ばっかじゃねぇの?」
「なに?」
「誰が人間の為なんかに……こっちの方が魂の価値は増すんだよ」
「なんだと……」
「満足、快感、喜び、絶望、恐怖、あらゆる感情は魂の価値を高める。俺はただその価値を高めるために行動してたにすぎない。わかってんだろ?」
「何がだ」

「価値が高まった魂を食っちまえば、契約者なんかいなくても俺達は人間界で好き勝手に暴れられるってこと」

なんだって!?俺は慌ててエアリスを見た。
しかしエアリスは訳が分からないと言う顔をした。

「ちょっ……そんな呑気な顔してる場合じゃないだろ!」
「無理だって拓也!ここはアメリカだぞ!?日本語なんて通じないんだから!」

エアリスは突然の俺の大声に肩をビクリとあげた。

「もう遅いっての。お前さ、何か勘違いしてるんじゃねぇ?」
「勘違いって何がだよ!?」

俺は思いっきりボティスを睨みつける。

「俺と契約してる奴、その女だと思ってんだろ?」

ボティスの言葉に目が丸くなる。
違うのか?でもウリエルは確かに……

「悪魔って契約者を変えることできんだよな。石さえ渡せば」
「それって……」
「今、俺が契約してるのはこの女の娘の1人だよ。会社が倒産しそうになって一番母を心配して、それが免れて一番安心している娘。不安と安心、喜び……それが全て混じってる。格好の獲物じゃないか?」

まさか……
ボティスはスッと手から何かを出した。それはスモーキークォーツの指輪。

「エアリスさん!あんたの娘は!?今どこに居んの!?」
「?」

あ――!くそ!日本語通じねぇ!!

「Daughter!Your Daughter!!」
「My daughter? What did my daughter!?(私の娘がどうしたの!?)」

あー!なんて言えばいいんだぁ〜〜〜マジ英語勉強しときゃよかったぁ〜〜〜!

「拓也大変そう」
「手伝ってやれよお前!」

ヴォラク。前空気みたいになりやがって!
でも慌ててる俺にすかさず光太郎が助け船を出した。

「Where is your daughter now?(貴方の娘は今どこにいるんですか?)」
「She must be a class at today morning……(今日は確か午前授業のはず……) She is not.(いないわ)Where are you!!(どこにいるの!?)」

エアリスは顔を真っ青にして慌てて子供部屋に走って行った。
セーレがボティスを睨みつける。
しかしボティスは軽く笑いながら指輪を指にはめた。

「お前!」
「気付くのおせぇよ。それより意外だったな〜指輪の継承者がまさか日本人だったなんて。どーりでアメリカで探しても見つかんないはずだなぁ」
「No!!!」

悲鳴が聞こえて俺達は声が聞こえた方向に走った。
そこには血まみれでぐったりしているエアリスの娘。
まだ小学生ぐらいの小さな女の子。

「Mary!Mary!!Open your eyes!(目を開けて!)」
「ひ……嘘だろ」

中谷が口元を押さえて目をそらす。でも俺はそらせなかった。
俺がもっとしっかりしていれば……また俺のせいで人を殺した。
泣きながら娘の名前を叫ぶエアリスにかける言葉もなかった。
するとだんだん娘の体が透け出した。

「Mary!?Mary!!?」

エアリスは必死で名前を呼んで抱きしめるが、娘はそのまま砂の様になって消えていった。
なにが……起こったんだよ……
泣き崩れるエアリスを尻目に俺達は後ろ髪をひかれるまま、リビングに移動した。
リビングにはあんまりことが進展してないのか、今もにらみ合いが続いていた。

「あいつは消えたか?」

ボティスの急な問いかけに俺は首をかしげる。
しかし怖いもの知らずの中谷はボティスに噛みついた。

「ふざけんなよ!あ、んな……人殺しといてヘラヘラすんじゃねぇよ!!」

光太郎も少し吐きそうなのか口を押さえている。
しかしボティスはニヤニヤ意地の悪そうな笑みを浮かべたまま。

「What’s are you did?」

声がする方を振り返れば、涙で顔をグシャグシャにしたエアリスが立っていた。

「What did you did to her!?(あのこに何をしたの!?)」
「I ate the Mary’s soul(魂食っちゃった)」
「What’s?」
「I can rage in the with one's own way by the favor without the contractor.(そのおかげで俺は契約者なしで好き勝手に暴れられる)」
「な、なに言ってんだよ。大体魂食うって意味わかんねぇよ!どういうことだよ!?」(最初は訳せた)
『拓也、訳せたのですか』
「んなこたどうでもいいだろ!!どうなんだよ!」

『もう輪廻はできません』

「輪廻?」
『人間の魂は死んだら大体天国に運ばれます。まぁ地獄に行く者もいますが。ですが地獄に行っても罪を償えば再び現世に生を受けることができます。天国でもまた然り。まぁいわゆる「生まれ変わり」というものですね。しかし、魂を食べられたということは地獄にも天国にももう行くことはできません。つまりわかりますね?』

「もう生まれ変わることはできねーってことか?」

そんなのあんまりじゃねぇか……
ボティスはフンと鼻を鳴らした。

「さぁてそろそろお暇するかな。もう俺は自由なんだし」
「行かすと思ってるのか?」

パイモンはボティスの目の前に立つ。

「おいおい。5匹で俺1匹を叩くのか?そりゃあんまりだろー」
「悪魔に正攻法を求めるな。決まりきったことだろう?」
「確かに。だから逃げるんじゃねぇか。これから魂をどんどん集めなきゃな。じゃあな継承者、審判の門の前で我らとの邂逅を待ち望む」
「審判の門?って待て!」

おれが首をかしげた瞬間にボティスは窓から飛び降りた。

「ちょっ……ここ14階!」
「ちっ!」

ヴォラクとシトリーが窓から顔をのぞかせると、ボティスは見事なバランスで近くのポールを掴み、地面に着地した。
その瞬間、地上にいたアメリカ人は驚きと着地したボティスに目を丸くし、大丈夫かと駆け寄って行く。
かなりの混雑になっていて、俺はもちろんシトリー達もボティスの姿を見失ってしまった。

「この状況で騒ぎは起こせないな」
「そんな……急いで追いかければ!」

セーレは舌打ちをして、俺たちに向きなおった。

「おそらくもう探すのは無理だろう。彼は俺たちに警戒して同じ場所にはもう現れないだろう。パイモンやヴォラクと戦いに来ることはあり得ない。ここまで来て成果はなし、か……」

セーレはやれやれと肩を落とす。
でもそんな簡単に割り切れるわけないじゃんか。
後ろで泣き崩れるエアリスにどう声を掛けていいかも分らない。

「エアリスさん……」
「I……I have done an extraordinary failure.(私は……私ははとんでもないことをしたのね)」
「なんて言ってるんだ光太郎」

少し、いやスゴく恥ずかしいけど、俺は光太郎に通訳を求めた。

「……とんでもないことをしてしまったってさ」
「……」

エアリスにシトリーが近づく。

「The basis of dealings with the devils is an exchange of the equivalents. (悪魔との取引の基本は等価交換)You should have known the contract like it.(そのぐらい契約する際知ってたはずだ)」
「Yes.But It didn’t know that I was such heavy.(えぇ。でもこれほど重いとは知らなかったわ)」
「The really heavy one is from here.(本当に重いのはここからだ)」
「What’s?」

シトリーは俺たちに振りかえる。

「なんだよシトリー?怖い顔して」
「そろそろだ……」
「え?」

その言葉とともに俺は首をかしげた。

「あれ?悪魔は?そういえば倒したのか?」

は?
俺は光太郎と中谷を見た。
2人は今まであったこと等まるでなかったようにキョトンとしてる。

「ってかあれ?何この状況?」

中谷は訳が分からないと言う顔をした。
そんな、何で急にそんな事……冗談だったらきつすぎる。

「な、に言ってんだよ中谷……なぁ、どういうことだよ!?今の今まで俺達は悪魔と」
「悪魔?ボティス見つかったんか!?あれ?なんで俺知らないんだ?ここまで来て」
「俺もこの部屋きてから全く記憶がないわ」

光太郎まで……なんで?今まで震え上がっていたのに全然そんなのはなくなっている。
俺は訳が分からなくなりストラスを見つめた。

『彼らには記憶がなくなっています』

その衝撃的な言葉に俺は目を丸くした。

「どう、言うことだ?」
『悪魔と契約するのは等価交換が基本です。まぁ悪魔によっては見返りを求めない者もいますが、自分の望みの高さに相応な物を返すこと。悪魔が契約者に恩恵をあたえても、それを守られていない場合……契約の不成立がなされ、悪魔に契約者が殺された時、その命といままでの人生全てで採算を取ることになります。人生と言うのは今まで生きてきた記憶全てを悪魔にとられると言うことです。エアリスの娘はもうこの世に最初から生を受けていない……そういうことになります』
「訳わかんねぇよ……」
「つまり、この世でのエアリスの娘の記憶はすべての人間から消去される。それが人生を奪われると言うことです。エアリスの娘は最初から存在しないものと考えられて、その死を悲しむ者はいない。元契約者と悪魔と今契約している者と主、貴方を除いて……誰もね」

パイモンの付け加えでやっとすべてを理解することができた。
ということは……

「じゃあ光太郎と中谷はエアリスの娘の話が出てきたとこからの記憶がないんだな」
「はい」
「でも中谷はヴォラクと契約してたんだぞ?なんで中谷まで……」
「契約の期間が短すぎるんだよ。まぁお試し期間の間に契約が終わったって感じ?」

ヴォラクの返答に俺はもう1度、光太郎たちに振り返る。中谷と光太郎は訳が分からないと言う顔をしている。
シトリーはエアリスにそのことをすべて説明した。するとエアリスは血相を変えて、かばんの中から手帳を出した。
中を開けると、そこにはエアリスと娘が写った写真。
でもそこに殺されたあの子は映っていなかった。
俺も父さんにもらった資料を見直してみた。
するとエアリスには2人の娘がいたと書いてあったのに1人と書かれていた。

「そんな……」

きっとエアリスのもう1人の娘も姉の存在なんて忘れているんだろう。
そんなの悲しすぎる。

「Already It is good. (もう、いいわ)Because I compensate alone, it is already good.(私は1人で償っていくからもういいわ)It must never contract, and you also must never show up with the satan in front of me.(悪魔とは2度と契約しない。そのかわり貴方達も2度と私の前に現れないで)」

エアリスは涙をこらえることもしないで、ボロボロ泣きながら俺たちに何かをつぶやいた。
言ってることはよくわからなかったけど、多分悪いことを言われてるんだってことは分かった。
そしてエアリスの目と言葉は俺の胸に突き刺さった。

登場人物

ボティス…ソロモン72柱17番目の悪魔。
      60の軍団を従えた総統であるとも伯爵であるとも言われ。
      大蛇の姿で現れるが、召還者が命じると毒を塗った剣を持った角と牙を持つ人間じみた姿をとるという。
      エノク書には26の軍団を従える大公と記されているがどれが正しいかは不明。
      一時的にではあるが敵同士を和睦させる能力を持つ。
      契約石はスモーキークォーツの指輪。

エアリス・リンガーバーグ…中小保険会社の秘書。 
         会社が潰れて職を失うことと、娘たちに不自由な思いをさせることに恐れ、ボティスと契約していた。
         しかしボティスの意思で、契約者はエアリスではなく娘に変更された。

メアリー…エアリスの娘。ボティスが契約したいと言うことからエアリスに頼まれて契約していた。
      そのままボティスに殺されて魂を食われてしまう。


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