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第2部
第35話 経済のすすめ
次の日、放課後に俺はマンションに行くことにした。
ストラスは既に行くと言っていたから。おそらくアメリカに行きます(笑)


35 経済のすすめ


「はぁ……鬱だ」

俺は鞄に荷物を積めながらボソリと呟いた。
ここ1週間の間は悪魔のことなんか忘れてたのに、また悪魔狩りか。いや、自分は何もしてないし役にも立ってないけど。
でも嫌なものは嫌だ。避けれるもんなら避けたい。
俺はマンションに向かおうとして中谷と光太郎に話しかけた。
最近あいつ等、特訓とかでよくマンションに行ってんだよな。大丈夫かな?

「お前ら今日も行くん?」

俺の問いかけの意味は分かったらしく、中谷と光太郎は頷いた。

「おう。今日は部活休みだしな。行くつもり」
「ふーん。俺もマンションに用あんだ。一緒に行こうぜ」

俺達は3人で一緒に学校を出て、マンションに向かった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「主。ストラスも来ていますよ。中谷と光太郎も上がってくれ」

パイモンがドアを開けてくれ、俺たちを部屋に招き入れた。
ストラスは優雅にクッキーを食べていて、俺を見るとこっちに飛んできた。

『拓也、思ったより早かったですね。では腰掛けてください』

俺は言われるがままに3人でソファに腰かけた。
セーレとヴォラクは反対側のソファに腰掛け、ストラスが話し出すのを待っている。

『拓也、昨日申し上げた通り、今回はアメリカという国に調査に向かいます』
「それそれ。一体なんでアメリカになったわけ?」

理由はあるんだろうけど、それを知らない俺はいまいち腑に落ちない。
ストラスはそうですね。と言い、理由を述べた。

『中小企業が一流企業を破格の値で買い取ったのです。そのせいでアメリカの株価が一気に下落しています』
「それってやっぱ悪魔の仕業なのか?」
『光太郎?何かあったのですか?』

俺が聞くと、光太郎は気まずそうに頭を掻いた。

「いやーその影響でさぁ、ドル安になってんじゃん?父さんの会社も煽りかぶってんだよね〜……」

あ、そう言えば光太郎の会社ってアメリカに商品輸出してたっけ。
そりゃ結構深刻な問題だよなぁ。
ストラスは頷いて今にも飛び出さんばかりに羽を広げた。

『なるほど。では行って確めてみますか?』
「待てって。アメリカと日本ってメチャクチャ時差あんだぞ。今行っても朝の6時ぐらいなんじゃね?」
『朝の6時ならいいではありませんか。日も出ていますし』
「ていうか時差って何〜?」

今まで話に参加していなかったヴォラクが話しに割り込んできた。

「あーなんつーかなぁ今、こっちは夕方じゃん?でも太陽の動きでアメリカって国は今まだ朝なんだよ」

わけわかんねー。ヴォラクは理解できなかったのか首をひねった。
この説明じゃぁなぁ……俺でも自分が何を言ったかがわからん(笑)

「とりあえず、あっちは朝だってこと」
「本当に簡潔に述べたね」

セーレは苦笑いしながら、ソファに深く腰掛ける。

「んでさぁ。行くの?行かないの?俺アメリカいきてーよ」
「お前な……」

中谷はやっぱり旅行気分が抜けないらしい。旅行だったらどんなにいいことか。

「中谷もああ言ってるし……いかがいたします?主」
「え、え?どうしよっかストラス?」
『貴方に聞かれているのですよ全く……行ってみましょう』

ストラスの提案に俺はとりあえず頷いた。(情けないよなー俺って)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「やっぱりあの乗り方だったのか」

アメリカ、ニューヨーク。路地裏に着地した俺達はジェダイトから降りた。
あの乗り方と言うのは、いつものアレだ。ぎゅうぎゅう詰めの(笑)
パイモンはやっぱり慣れてないのか、降りるなり文句を一言つぶやいた。

「なーなー自由の女神はー?グランドキャニオンはー?」

中谷。グランドキャニオンはニューヨークじゃないだろ?
でもやっぱり夢にまで見たアメリカ。俺も興奮を抑えきれるわけがなく。

「俺も自由の女神みてーなぁ。ハリウッドとかラスベガス行きてーなぁ」
「観光じゃないんだよ。2人とも」

セーレは柔らかく笑い、俺たちに釘を刺した。
普段なら引き下がる俺たちだけど、やっぱりアメリカとなれば話は別になる。

「せっかく来たんだから自由の女神みてーよぉ!グランドキャニオン行きてーよぉ!」
「ラスベガス行きてーよぉ!ハリウッド行きてーよぉ!」

俺と中谷はワーワーと大声で駄々をこねた。
何人かのアメリカ人がこっちを見て笑っているが、あんま気にしない。←しろよ。

「どうする?俺たちだけで探すか?」
『正直言って、拓也と中谷がいても役に立ちそうもありませんしねぇ』
「そうするか」

パイモンはため息をついて、俺たちに向き合った。

「今から2時間。その間ならいいでしょう。2時間後にここで落ち合いましょう」
「え?連絡とかどうすんの?」
「残念ですが私達は携帯と言う物を持っていません。だから絶対に時間厳守です」
「あ、じゃあ俺がストラス達と一緒にいれば連絡取れるじゃん」

光太郎の申し出にパイモンは首を振った。

「いや、主と一緒に行ってくれ。お前が止めてくれなきゃ、あの2人は絶対に時間にこの場所に来るなんてできないだろう」
「確かに……」

拓也と中谷は暴走するからなぁ。
後ろでキャッキャとはしゃいでいる拓也と中谷をストラスが冷めた目で見ているのを2人は知らないだろう。
とりあえず腕時計の時間(日本時間に合わせて)6時にこの場所に集合することになった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あぁーついに来た♪あこがれのアメリカ」

中谷はよっぽど感動しているのか、辺りをパシャパシャと写メっている。

「なぁなぁ早く自由の女神見に行こうぜ〜」

俺は中谷の襟を掴み、唯一のアメリカ旅行者の光太郎に頼んだ。
しかし光太郎はキョトンと目を瞬かせ、首を横に振った。

「無理だって」
「え?」

今なんと?

「こっから自由の女神像ってかなり遠いから。バスかタクシー拾わなきゃ無理。でも俺達ドルとか持ってないじゃん。だからここら辺しか回れないな」

そんなぁー自由の女神が見れないアメリカなんてぇ……
俺と中谷は若干うなだれたがニューヨークと言う事実は変わらない。
とりあえず、そこら辺を回ってみることにした。

「すげー。全部英語だ」

俺達は看板を見て、道を確認しようとした。でも読めない。

「お前ら……単語とかは中学で習ったのあるだろ」
「え?だって俺たち日本人だしさ」

だよなぁ中谷。別に英語なんかでできなくていいし。日本から出ないし。
ため息をついて、光太郎は看板を読み上げた。

「この先に今回の保険会社があるみたいよ」
「保険会社?あぁ、買収されたってやつか」

光太郎は頷いた。

「でもまぁ、俺達だけじゃ何もできないし…とりあえず、ここら辺うろついとくか」

俺達は時間まであたりをウロウロ周り、時折店に入ったりして時間をつぶした。
約束の時間。俺達は最初来た広場でストラス達を待っていた。

「あ、来た」

中谷はストラス達を発見して、大きく手を振った。
あ、本当だ。セーレが手を振り返してる。
ストラスは俺の肩に止まり、状況を小さい声で説明した。

『やはり悪魔でしょう。そして今回は会社の重役の誰かが契約しているものと思います』
「じゃあ契約者は見つかったのか?」
『いえ、そこまでは。なんと言っても気になる人間があまりにも多い。この少ない時間だけではどうしようにも』
「そっか」

俺は指輪を見つめた。
これを使えばまた何か変化が起こるだろうか?
剣が手に入ってから指輪の力を使っていない。ウリエルに聞いてみたら……
夜、練習してみるか。上手くできないだろうけど。

あの後、俺達は日本へ帰り、それぞれ解散した。
俺とストラスは家に帰っていつも通り夕飯を食べた。その後、家を出ようとしたところ、母さんに止められた。

「拓也。どこ行くの?」
「近くの河原まで」
「何かあったの?」

そうとられても仕方ないよな。

「なにもないよ。ただの気分転換」
「そう」

俺は軽く笑って家を出た。

河原は人も少なく、辺りも真っ暗だった。
俺は砂利の上に胡坐をかいて指輪をジッと見つめた。

「頼む。誰でもいいから俺の言葉に応答してくれ」

しーん。
なんで指輪ってこんなに使うの難しいんだろう。剣を使うのは簡単なのに。
諦めるもんか。できるまで。俺はその後もしばらく祈り続けた。
祈り続けること10分…指輪が不意に光り輝いた。

「な?え?」
『お前なんなんだよ。さっきから人に雑音飛ばすなや』

この声。そしてこのムカつく傲慢な態度。間違いなくウリエルだ。

「相変わらず偉そうにしてんなお前。こっちは悪魔狩りで大変なのにさ」
『おーおーご苦労なこって。んで、何で呼んだんだよ』

改めて言われると、俺は返事に困ってしまう。

「……契約者の情報をさ、お前知らないか?」
『なぜ俺に聞く?』
「だってお前らだって悪魔がここにいるの好ましくないんだろ?だったらさ、その……少しは調べてくれたりするんじゃないのか?」
『調べるのは俺の専門外だ。それはラジエルの仕事だからな』
「ラジエル?」
『とにかく俺は裏切り者や罪におぼれた人間を懲罰するのが仕事だ。そっちは専門外だから知らないんだよ』
「じゃあそいつと変わってくれよ。大体なんでお前が出てくんだよ」
『てめぇ……しょうがねぇだろ?お前のおもりは俺に任されてんだよ』

おもりだと!?

「おもりとか失礼なこと言うんじゃねーし!」
『あーうるせぇうるせぇ。それに代わることはできない』
「なんでだよ。使えねーな」
『信用されてないんだよ、お前は。悪魔と一緒に行動してるからな』

え?どういうことだ?信用されてない?

「なんだよそれ……」
『言葉通り、お前は悪魔の味方をしてると思ってる天使が何人もいる。だからお前に情報を送れないのさ。浄化の剣を渡した時も俺、こっぴどく文句言われたんだぜ?」

なんだよそれ……なんなんだよそれは!?
勝手に人を巻き込んどいてそれか!?冗談じゃねぇ!!

「お前が、お前たち天使が勝手に指輪で俺を巻き込んどいて信用できない!?ふざけんな!俺がどんな思いでいるかわかんねぇのか!」
『それはどうでもいいことだろ。結果、お前は俺達天使の思うとおりに動いてくれてる。だから何のお咎めもないんだよ』
「お咎め……?」
『なんでお前のおもりに俺が抜擢されたかわかるか?』
「知るわけねーよそんなの」
『お前が悪魔の側に寝返った時、俺がお前を殺すように命令されてるからだ』

殺す。命令?

「は……え?」
『……』
「お前たち天使は、俺を体よく利用しようとしてるだけじゃねぇか」
『そう言う訳じゃねぇ』
「なにが違うんだよ!!?」

頭がぐじゃぐじゃになって何を考えていいのか分からない。
だってこれじゃまるで俺はただの操り人形じゃないか。

『もしお前が悪魔の側に着いたら、その指輪は脅威になる。その前に殺す。それは当然の結論だろ?』
「ふざけんなよ!」
『ふざけてなんかいない。これは前から決まっていたことだ』
「なんで……」
『だから悪魔を倒し続けろ。元の生活に戻りたいならな……』
「指輪外せよ」
『あ?』
「指輪。お前たちの物なら外せるだろ?今すぐ外せ。そんで俺を普通の人間に戻せよ!」
『それは無理な相談だな。それに指輪をはずしたらお前は真っ先に殺される』
「なん、で……」

『おそらくお前の情報は地獄に行き届いているだろう。地獄にとってお前は邪魔な存在。7つの大罪だけじゃなく、地獄の王サタネル達もお前を殺害しようと動きだす』

「そんな……嘘だ」
『もし捕まったら永遠に終わらない罰と、死にたくても死ぬ事の出来ない地獄がお前を待ってる。唯一の戦う手段の指輪をお前からとったら……わかるだろ?』

そんなの考えたくない。
考えたら終わりのない恐怖が体中を駆け巡る。

「いやだ……ふざけんな、ふざけんなよ」
『もう戻れないところにいるんだよ。お前は』

その言葉、シトリーにも聞いたな。
今更になって実感してくる。わかっていたんだ。もう戻れないって。
いつか、いつかは戻れると信じてた。
でも先が見えないんだ……

『なぁ継承者』

ウリエルは黙っていたかと思えば突然声を出した。

『お前の働きは俺が認めてる。もしお前が死んだら、天国に送ることを約束する』
「いかねぇ。誰がお前らのとこなんかに」
『地獄がいいのか?』

それはもっと嫌だ。

「死にたくねぇんだよ。俺は死にたくないんだよ!」
『それはわかってる。でも死ぬんだ。いつかはな』

あぁ。いつかならいいよ!人間として寿命を全うできるならな!
でもこんな死に方なんて嫌に決まってる。

「俺は普通の人間なんだよ……」
『あぁ、普通の人間だった。2か月前まではな』

うるさい。うるさい。

『うっぜぇ……ボティスとエアリス・リンガーバーグ。お前が調べてる奴はそいつだ』
「ウリエル?お前知らないんじゃなかったのか?ていうか、なんでわかったんだ?」
『全ては知らない。たまたま今回は知ってるだけだ。俺はもう切る』

途端に返事は途絶えた。

「切りやがった……エアリス・リンガーバーグ」

俺は立ち上がり、ポンポンとケツを叩くと家に帰った。
早く終わらせたい。こんなこと早く……

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『結局ウリエルはあの子の味方ね』
『盗み聞きなんて趣味が悪いな。ハニエル』
『盗み聞きなんて……誰かさんの大声が聞こえたのよ。あまり情報漏らしちゃだめよ。ラジエルの書だって勝手に覗いたらいけないんだから』
『そんで、なんでお前がここにいる?』
『ラファエルを探しにね』
『あいつを?』
『このままだとあの人、堕天使になっちゃうわ。ミカエルはその前に手を打とうって考えてるの』

……あいつは妙に人間くさいところがあるからな。

『なるようにしかならねぇ。全部はあいつしだいだ』
『……そうかもね』

全てがあいつにかかってるんだ。
俺たちの決着も何もかも……

王は1人でいい。


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