第25話 光太郎の災難
「今日から2学期の始まりです。夏休みの余韻に浸らず、気持ちを切り替えていきましょう。特に3年生はそろそろ推薦入試も始まるので気を引き締めるように」
なんで3年の話に俺たち1年も付き合わなきゃいけないわけぇ?
クーラーの効いてない蒸し暑い空間の中はひどく不愉快だった。
25 光太郎の災難
やっと教室に戻って、俺は下敷きをバタバタと仰がせた。
皆それぞれ暑そうに団扇や下敷きを仰がせている。
そんな中、光太郎だけが浮かない顔。
今日は授業がないから後はHRだけなのに、なんでそんなにテンション低いんだ?
光太郎は名前順のこの席では大体隣の席の立川と後ろの席の藤森といつも話している。
しかし今日の光太郎は全く会話に参加せず、憂鬱そうに顔をしかめている。
「光太郎、なにかあったんか?」
「あぁ広瀬か。あいつ今日機嫌悪いよな〜。宿題でも忘れたんじゃねぇか?」
俺の呟きは後ろの席の上野にも聞こえていた。
いや、そんな理由であそこまで落ち込まんだろ。
でも本当にどうしたんだろ。学校終わったら聞いてみよ。
HRも終わり(光太郎は宿題をちゃんと持ってきていた)、午前中に終わったので、皆はそれぞれ部活に行く生徒は行き、帰る生徒は帰っていた。
俺は中谷と挨拶を交わし、光太郎の席まで歩み寄った。
いつもは帰る準備を早く済ませている光太郎が珍しくノロノロと教科書を鞄に詰めていた。
「光太郎、どうかしたのか?今日なんかおかしいな」
「そんなにおかしい?俺」
光太郎はやはり何かあったのかハハハと笑ってため息をついた。
「どうしたんだよ。何があったんだよ」
「親父が機嫌悪いんだよ」
光太郎の親父が?
「なんで?会社上手くいってねぇのか?」
「その通り。株がこの1ヶ月で10万円も下がったんだ。ライバル社に取られたんだよ」
う〜ん……俺は株の話は分んないから10万円がどんなに凄いことかはわからんが。
機嫌が悪くなるくらいだ。かなりのことがあるんだろう。
「しかもその会社がでかいプロジェクトを計画してるらしくてさ。それでまた株価が下がるんじゃないかってピリピリしてて我が家はお手上げ。兄ちゃんも家にいたくないのか友達ん家に、ここんとこずっと泊ってて帰ってこないしさ。母さんと俺が奴あたり食らうよ」
光太郎はペットの犬も怖がって元気がないと言っていた。
う〜ん……こりゃ大変だなぁ。
「だから帰りたくないんだよ」
「帰りたくないならマンション行けばいいじゃん」
そうだよ。光太郎にはマンションがあるじゃん。いつでも逃げ込めるところが。
しかし光太郎は首を横に振った。
「駄目。兄ちゃんが逃げて気まずくなってんのに、俺まで逃げたらさらに気まずくなるよ。俺も兄ちゃんが逃げる前に逃げてりゃよかったよ」
光太郎はトホホ……と肩を落とした。
うわ〜俺、一般家庭でよかった。そんな家庭内の緊張感、入試の年だけで充分。
光太郎は力なく笑い、鞄に荷物を詰め終わった。
「だから拓也。遊ぼう。俺まだ家に帰りたくないよ〜」
「そういうことなら……ていうか俺も誘おうと思ってたとこだからよ」
「さすが拓也!話がわかる!!」
光太郎は俺の手を取って、感動していた。(え、何この状況?)
とりあえず俺はそのまま光太郎と一緒に教室を出た。
グラウンドではそれぞれの部活に励んでいる生徒たちの姿。
その中に、走りこみをしている野球部の姿もあった。
全員、帽子をかぶっていたのでどこにいるか分んなかったが、この中に中谷はいるんだな。
がんばれよ〜中谷〜。俺たちは遊ぶけど〜
俺は心の中で中谷にエールを送り、そのまま光太郎と校門を出た。
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その後、俺たちは渋谷に買い物に行ったり、カラオケやゲーセンに行ったりかなりエンジョイした。そして6時くらいになり、俺たちは1度マンションに足を運ばせた。
「あ?拓也、光太郎」
あれ?シトリー。
オートロックの玄関の前で俺たちはシトリーに会った。
シトリーは内側から鍵をあけ、ドアを開けてくれた。
「シトリーどこか行くのか?」
「おう。今日はバイトの日だ」
あーそういや今日はバイトの日か。こいつも大変だな。
俺たちはそのまま挨拶を交わし、俺と光太郎はエレベーターで10階に上がった。
玄関のインターホンを鳴らすと、バタバタとヴォラクが玄関を開けた。
「あ、拓也と光太郎だ〜」
「よう、元気か?」
「元気だよ。今は俺1人だよ〜」
え?確かに部屋をキョロキョロ見てもセーレが見当たらない。
「なんで?セーレは?」
「またあの家に行ったんだよ」
あぁ、太陽の家か。
俺たちはそのまま家に上がらせてもらい、中に入った。
ヴォラクは夕飯を食べていたのか、テーブルの上には数種類の料理があった。
「これお前が作ったん?」
「違うよ。セーレが温めて食べろって。シトリーが温めてくれたから一緒に食べてたの」
あぁ。バイトの時間までシトリーと夕飯食ってたってわけか。
ヴォラクはフォークでウインナーを突き刺し、そのままほうばった。
「拓也達もいる?」
「いや、俺は家で食うから心配なさらず」
「誰も心配なんかしてないし〜」
「こいつ……」
光太郎はドカッとソファに座って背伸びをした。
「やっぱいいな〜ココ。マジで帰りたくねー」
「光太郎なんかあったの?」
ヴォラクはパチクリと目を瞬かせながら俺に尋ねてきた。
どうせ言ってもヴォラクにはわかんなさそうだから俺は適当に相槌をうっておいた。
ヴォラクは「そっかぁ」とわかっているのかいないのか適当な返事を返して、サラダを食べた。
光太郎はそのままパソコンを開き、株価のチェックをしだした。(お前はマジで高校生か?)
「げ、また下がってる」
「マジかよ?どこに取られてんだよ」
俺はパソコンの画面を覗き込んだが、ハッキリ言って見方がさっぱりわからん。
光太郎はライバル社と言っていた会社を指差した。
「ここ?」
「そう。またこの会社の株価が上がってる」
「へぇ……なんだってまた急に」
「なんか3年前に入社した社員がすごい発言力持ってるみたい。立場的にはまだ25だし平社員のはずなのに」
「すげぇなぁ」
よくわからないけど、若手がすごいってことだな。
でも3年たったとはいえ、まだ入ったばっかの社員にそんなに発言力があるものなのか?
光太郎はハァ……とため息をつき、ソファに寝転がった。
「やっぱ今日は帰んねぇ。今帰ったら何言われるかわかったことじゃないし」
「あぁ親父さん?」
「そう。今日はここで大人しくしとくよ」
光太郎はお手上げと手を挙げた。
俺は時間も時間だったので、そのまま帰路についた。
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家に帰った俺はまず、自分の部屋に上がり、ストラスにポテトを渡した。
俺はストラスが横でポテトをかじるのを見ながらスウェットに着替えた。
「そういやさ。今日光太郎の会社の株が下がってさ。親父さんが機嫌悪いみたいなんだ」
『株?』
ストラスは聞きなれない言葉にポテトを食べるのをやめ、俺に向きなおった。
そっか。地獄に株なんかないもんな(笑)
「うん。俺もよく知らねぇんだけど、それで会社の価値が決まるんだって」
『ほう、興味深い話ですねぇ』
「んでさ、ライバル会社が株を取っちゃってさ。光太郎の会社の利益が下がってんだって」
『ビジネスには山あり、谷ありですよ。仕方のないことです』
「そうなんだけど。なんかライバル会社は新入社員が上の役員よりもすっげー発言力持ってんだって。そいつ、立場的にも下なのにメチャクチャ待遇いいんだってさ」
『悪魔……ではありませんよね?』
「まさか。ただ単に優秀ってだけだろ。んじゃ俺メシ食ってくるから」
俺はそう言い残し、1階に下りた。
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「拓也。光太郎君の会社、苦戦してるようだね」
下に下りて、飯を食おうとした瞬間に父さんの口からその言葉がでた。
父さんは新聞を折りたたんで、箸を持ちながら話す。
「父さん知ってんのか?」
「あぁ。光太郎君のライバル会社はうちと取引しててな。今日行ってきたんだ。なんでも入社3年目なのに一大プロジェクトを手掛けてる社員がいてな」
俺は海老フライを食べるのをやめて、父さんの話に参加した。
「そいつの話、光太郎がしてた。プロジェクトが成功したら株がまた下がるって」
「まぁ光太郎君の会社は大企業だ。あのくらい下がったところですぐに盛り返すさ。でも今日会った青年は、なんだか不思議な感じでなぁ」
「不思議?」
「あぁ。なんだかすごい威圧感というかな、逆らえない様な雰囲気があったんだよ。ああ言うのを威厳って言うんだろうなぁ。しかし若いのに立派だ。彼、業績はもとから優秀だったが、会社の方針が不満でよく上司と問題を起こしていたらしい。業績が優秀だから首にはされなかったらしいんだがな。でも最近、急に彼の言った案が通りだしたらしくてな。ま、そのおかげであんなに株が上がったんだが」
「急に……」
最近とか急にとかは悪魔に関係してるような響きだ。
俺は海老フライを口に含みながら、少し考えた。
「もう貴方、拓也にそんな難しい話をしなくてもいいじゃないですか。せっかくのご飯なのに、もっと盛り上がる話をしましょう」
母さんはこの話題が不満だったのか、話題を変えろと言ってきた。
父さんは笑って軽く肩をすくめ、この話はいったん終わりになった。
でも俺の中じゃ始まりだけど。
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「ストラス、やっぱり悪魔が関係してるのかも」
飯を食い終わった俺は自分の部屋に上がり、ベッドに横になった。
ストラスは枕元で俺を覗きこみ、首をかしげた。
『さっきの会社の話ですか?』
「おう。なんかその社員が力を持ち始めたのが最近らしいんだ。しかも急に……これって危なくないか?」
『そう申されても調べてみないことには……』
「でも調べるっつってもなぁ……大企業の人間なら会うのも難しいし、知り合いじゃないし」
『会えないのですか?』
「うん。多分入れてくんない。ていうか会わしてくんない」
『それでは調べようがないではありませんか。まったく不便な世の中です』
ほんとにね。
一般人だけど有名な会社の人間なら会うのって難しそう。
残業って当たり前にあるんだよな。となれば何時に帰るかも分んない。
そもそも張り込みたくても会社のボディーガードに追い払われそうだよ。これってどうすりゃいいんだろ?
俺はストラスと頭を捻ったが何も思い浮かばない。
『拓也。とりあえず明日行ってみましょうか』
明日ぁ?もう普通に学校あんだからそんなに夏休みみたいにできねぇよ〜。
それにここから丸の内までってかなり遠いじゃん。
俺はともかくストラスはそこまで飛んでくのって無理じゃね?
「無理。明日学校あるし」
ストラスはジト目に俺を見てきたがそんなことされてもしょうがない。
だって無理なもんは無理なんだし?
学校サボるわけにはいかないし。俺優等生だから(嘘)
とりあえず、俺は光太郎にそのことを教えるべくメールをした。返事はすぐに帰ってきた。思ったとおり、かなり慌てている。
《マジで!?悪魔がやったのかよ!じゃあちゃっちゃと片付けようぜ!》
光太郎、親父さんのこと怖がってんなぁ。
でも何も策なんかないので、俺はパソコンでその会社のことを調べてみた。
「なんにもわかんないなぁ」
やっぱHPなんかじゃ社員のことも載ってないし、細かいことわかんないなぁ。
行かなきゃダメかこりゃ。
しかし夜に行かなきゃいけないのならまた母さんキリキリだろうなぁ。
俺はため息をつきながらパソコンの電源を切り、自分の部屋に上がった。
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「なぁ拓也。その会社に殴りこみに行こうぜ!もう俺も頭にきてさ!マジでとばっちりばっかだよ!早くなんとかしてくんないと!!」
翌日、学校に着くと、光太郎はカンカンになって俺の机を叩いた。(こわ!)
俺はどうどうと落ち着かせようとしたが光太郎の怒りは収まらない。
「まだ確定した訳じゃ……」
「ちょっとでも怪しいなら調べるべきだろ!!」
光太郎さん目が据わってますよ。
「おーなんだよ広瀬。今日はテンション高いなー」
「中谷。いまは光太郎を茶化さないほうがいいって」
事情を知らない中谷はヘラヘラ笑いながら俺の机にきた。
俺は中谷に一応忠告しておいた。
しかし中谷は頭に?を浮かべて、光太郎の肩を叩いた。
「なんかあったんか?広瀬」
あぁ俺はちゃんと忠告したのに。
光太郎は中谷をギッと睨み、自分の今までのことをマシンガントークで話した。
「なんつーか……大変だったんだな」
中谷は半ばその勢いに引き気味になって曖昧な笑みを浮かべた。
光太郎は握り拳を作りながらいまだにブツブツ言ってる。
よっぽどムカつくんだろうなぁ。かわいそうに……なんとなくいたたまれなくなって俺は軽く光太郎の肩を叩いた。
とりあえず、光太郎に押されて俺は今日その会社に行ってみることにした。
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放課後、ストラスを連れて俺と光太郎は会社の前にきた。
改めてみるとすごいデカさ。本当に一流企業って感じだ。
「なんかトイレ行きたくなるな」
「ちびんなよ拓也」
ちびんなっつったって……俺こんなでかい会社をこんな近くで見ることなんか初めてだし?
ちびるに決まってんじゃん!
ちゃんと入口の前にはボディーガードが立っている。中には美人な受付嬢がいるんだろうなぁ〜。
俺はにやける頬を引き締め、会社をまじまじと見つめた。
「でも入れそうにないなぁ……あんなごついおっさんが立ってんだぞ?俺とおまえの2人が力ずくで行ったって跳ね返されそう……」
「拓也。指輪で何とかしてよ」
もちろん常識から考えてそんなことしないけど、でもこのままじゃ入れないし。
光太郎までもが当てにならない俺の指輪に頼ってくる。
おまえ相当だな。
「そんなこと言われても、どうしようもないし〜……あ、こんな時こそ……そうだ……!」
俺はポンと手を打った。
光太郎とストラスがおれの顔を覗き込んでくる。
「そうだよ!ストラス!シトリーだ!シトリーに頼もう!また呼び出してくれる!」
『ほ、ほう』
ストラスは多分肯定してんだろうな。頷いてる。
俺は急いでマンションにケータイで電話した。
『はいは〜い。誰ですか〜?』
「あ、ヴォラク?俺」
『おれおれ詐欺はお断りでーす』
「馬鹿!違うよ!拓也だって!!てかなんでそんなの知ってんだ!?」
『なんだ拓也かぁ〜。だってセーレがそう言いなさいって言ったから』
セーレどんだけしっかりしてんだ。電話の取り方も教えこんだのか。
「なぁシトリーいる?ちょっと力貸してもらいたいんだけど」
『シトリー?いるけど今日バイトの日』
なに?そうだったっけ?昨日もバイトだったのに?不規則にやってんなよ〜
受話器からはシトリーの声がかすかに聞こえる。
たぶん今は出れないっつってんだろうな。シトリーだけが頼りなのに……
「じゃあ明日は?」
『明日?シトリー大丈夫?』
シトリーは無理といった。
『無理だって』
「ちょっと変わってくれ」
なんか腹立ってきた。
ヴォラクの声が聞こえ、シトリーが電話に出た。
『なんだよ〜。時間ないんだから手短にな』
「お前、今日はバイトだからわかる。それはわかるけどな。でもなんで明日も無理なんだ?」
『明日はバイトの奴らと合コンなんだよ。かわいい子がいたらお持ち帰り〜♪なんちゃって』
なにぃ!!?
「バカたれ!!こっちはそんな状況じゃねぇっつうのに何やりたい放題してんだ!!」
『なんだようるせーなぁ。なんかあったのか?またこないだみたいに俺をこき使う気か?』
「あぁ。なんか多分悪魔が関係してんじゃないかなぁって」
『肯定すんな。ふーん。多分だろ?確信を持ってから連絡してくれぃ』
「ちょちょちょ、ちょっと待ってくれよ!!なんか怪しいんだって!!」
『はぁ……状況は?』
俺は状況をすべて報告した。
『ふーん……でもそれが悪魔かどうかもわかんねぇし?それにそういう種類の力を持つ悪魔ってかなりいるんだぞ?やだよめんどくせぇ。誰がやるかい』
このやろ―――――――――!!!
ストラスが俺の携帯によってきて小声で声を出した。
『シトリーもしかしたらパイモンかもしれません』
『パイモンだって?』
シトリーの声が急に変った。
パイモンって……たしかストラス前に名前だしてたよな。よく覚えてないけど。
シトリーは少し無言になって意外な言葉を発した。
『わかった。明日はキャンセルして付き合ってやるよ。ありがたく思え』
あれ?なんだ急に?
「お、おう。助かる」
『あと一々取り次ぎめんどいからケータイにかけてくれ。番号は090−xxxx−xxxx』
「え?お前いつケータイかったん?」
『あぁ2台持ってるやつが使わないからって理由で貸してくれてんの。金は俺持ちだけど』
すごいな友達。俺だったら貸さないね、こんな奴に。
俺はあわてて鞄からメモ用紙とペンを出し、番号をメモった。
「わかった。サンキューな」
『おう。じゃぁ俺もう行くから』
「はーい」
切れた。俺は紙切れを制服のポッケに入れて光太郎たちに向かい合った。
「今日は来れないから帰ったほうがいいかも。明日シトリー来てくれるって」
「え、明日……わかったよ」
光太郎は一瞬戸惑ったが頷いた。
俺は光太郎と別れ岐路についた。人通りのない住宅街でストラスに話しかける。
「なんで急にシトリー協力するって言い出したんだろ?」
『おそらくパイモンだからですよ』
「パイモンだから?」
『パイモンは絶世の美貌の持ち主ですから。そこら辺の女性よりも美しいですからね』
あぁ、合コンに来る女より絶対そいつの方が綺麗だからってことか……あいつらし。
「でも前、お前パイモンのことなんか言ってなかったっけ?」
『パイモンは悪魔の王ルシファー様の腹心中の腹心。ルシファーが最も信頼を置く家臣の1人です。それゆえにその力も悪魔の中では群を抜いています。サミジーナやマルファスよりも遥かに強いですよ』
「え?」
そんなに強い奴がもう来ちゃうの?ヴォラクの言葉が思い出される。
“マルファス以上に危険な悪魔なんてまだまだいるんだよ!”
もしかして今回その悪魔に当たっちゃう?
なんか背筋が寒くなってきた。嫌な予感がするよ、危険でこわい……
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「お疲れ様。今日の調子はどうでした?」
「最高だ。俺の意見はすべて通った。課長もおれにヘコヘコしてやがる」
青年は上着をバサッとソファに投げ捨てた。
「これもお前のおかげだ」
「いいえ。交換条件ですから、お互い様」
「お前の探しているものは見つかったか?」
「いえ、残念ながらまだ……なんとなくなら」
「ふぅん。まぁゆっくりやれ。このプロジェクトが成功したら俺は一気に昇格だ!!」
「なるといいですね。コーヒー飲みます?」
「あぁ。入れてくれ」
「はい」
青年はそのままソファに腰を掛けて握り拳を作った。
この会社を立て直す!腐りきったあいつらに目に物見せてやる!!
あいつらは自分の保身が第1でプロジェクトも無難なものばかり。
勝負をかけないと会社は大きくならないんだ!俺は平凡な生活を送るために大学を出てここに入ったんじゃない!
そんな中、あいつが来てくれて俺の人生は180°変った。
入社3年目だからという理由ではねのけられてた俺の企画は通り、プロジェクトまで任されるようになった。
俺の力でこの会社を日本1にしてやる!
あいつさえいたらその願いは叶うんだ!
「はい。コーヒーどうぞ」
「ありがとな」
俺はそいつの手からコーヒーを受け取り、口に運んだ。
そいつはその姿を見て軽く笑い、調べ物を再開した。
その姿を後ろから眺めて俺はそいつに話しかけた。
「探し物が見つかったらいなくなるのか?」
「そのつもりです。目的がありますから」
「そうか。じゃあそれまでにプロジェクトを成功させて信頼を得とかないとな」
「貴方ならできますよ。一生懸命ですから」
そいつは俺を見て微笑んだ。
あぁ……こいつが来てくれてよかった。
お互い利害関係が一致しただけだが、それが今はとても有難い。
浅い関係の方が後が怖くない。
「お前がいてくれてよかったよ。パイモン」