『拓也、福岡県に住む金田真吾、調べてみる気はありませんか?』
あの後、あの天使の言葉を気にしたのか、ストラスが俺にそう言ってきた。
『もしかしたら彼も何者かと契約しているのかもしれません』
21 天才の憂鬱
「すげぇなぁ…金田また全国模試1位だってよ」
「あいつ勉強してる素振りなんて全く見せてねぇのに」
勉強?そんなの出来てなんになる?それが出来た所で本当に立派な人間になれるのか?
小さい頃からあまり勉強しなくてもテストではいつも満点を取っていた。スポーツも人並み以上にできる。
親や親戚は自分のことのように俺をまつりあげ、騒いでいた。
東大?そんなところに行って何になるんだ?行ったところで俺のやりたいことは見つかるのか?
合格判定の基準にするためだけに書いた志望校一覧、どの判定もAだった。普通なら泣いて喜ぶはずなのに当り前になっていてどうでもいい。
俺はそのまま成績表をグシャグシャに包んで鞄に突っ込んだ。
このまま何事もないように俺は生きていく。そう思っていた矢先に悪魔と言う者が現れた。
あまりにもオカルトな存在、なんの悪戯かとも思った。
でもそいつは本物だった。
学校から近いと言う理由で借りたマンション。親は勉強のためならと言う理由で快く許可してくれた。
そのおかげでこいつを飼うことができた。
『ツマラナイ学校ハ終ワッタノカ?』
「あぁ。どいつもこいつも馬鹿ばかり…嫌になるよ」
俺はカバンを放り投げ、ベッドに沈んだ。
悪魔は俺の顔を見て、軽く笑った。
『生キル希望ノ持テナイオ前ノ方ガヨホド馬鹿デ愚カシイト思ウガ?』
「内面ではな。表面だけ見たら、俺ほど完璧な奴ばおらんやろ?」
自分では言いたくないが、容姿も人並み以上はある。告白されたことだってかなりの回数だ。はたから見れば、俺は完璧な人間として見られてるだろう。
あくまで表面的なことだが…
『オ前ハ変ワッタ人間ダ。私ヲ見タ時モ恐レルコトヲシナカッタ』
「だってお前、見た目だけならただの馬やん?」
なんて生意気なガキ…自分でもそう思う。
小さい頃から急に何事においても冷めてしまった。やりたいこともない。
生きてる実感もわかないし、だからと言って死にたくもない。
そうやって今まで過ごしてきた。
ただ1つを除いて…
「今日も頼むな…」
『イイダロウ……』
そのまま俺は目を閉じた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ここが福岡…すげぇなぁ。初めて来た」
あの後、ストラスの言われるがまま俺はセーレ達と福岡に来ていた。
シトリーはもうバイト先を見つけたのか、バイトがあるので来なかったが。
俺とセーレとヴォラクとストラスは福岡県の博多に来ていた。
「で、ストラス。なんでまた今日はここへ?」
事情の知らないセーレとヴォラクは首をかしげたままストラスに問いかけた。
しかし人の行き交う街の中でフクロウが喋れるはずもなく……
「なんかここに悪魔と契約してるかもしれない奴がいるんだ」
「悪魔と?」
「うん。金田真吾って奴らしいけど」
「なんだ。名前まで知ってるのならすぐ見つかるんじゃないか?」
「いや、名前しか知らないから誰かわかんなくて…」
「はぁ?」
セーレとヴォラクはなんで?というように顔を歪めた。
天使に教えてもらったなんて言ったら、なんかめんどくさいことになりそうだから、俺はそのままテキトーにその場をやり過ごした。
「ま、いいけどさ。でもどこにいんのかね?顔もわかんないの?」
「あぁ。全く」
「拓也って本当に使えないよねー……また片っ端から探すの?」
ヴォラクがため息をついて後ろに振り返った瞬間、ヴォラクは高校生とぶつかった。
相手は女の子だけど、ヴォラクは子供の姿、体格負けしてるわけで…
当然の如く、ヴォラクはその場で少しよろめいた。
「ヴォラク、君もう少し体鍛えたほうがいいよ」
セーレがその状況を少し憐れむように見ている。(そういう問題じゃないと思うけど…)
女の子は落としてしまった雑誌のようなものを拾っていた。
「すいません!」
なぜか知らないが尻拭いは俺。
俺は慌てて、その女の子の落とした雑誌やら広告やらを拾うのを手伝った。
広告は大学案内。どうやら大学説明会の帰りらしい。
そして雑誌は全国模擬試験の順位結果だった。
え?金田真吾?
俺はその雑誌を拾おうとしていた少女(オレより多分年上だが)に話しかけた。
「あの…この金田真吾って」
「あぁ、ウチの学校の天才よ。バリ頭のいい奴でね、模試もいっつも一番なんよ」
うわぁ…初めて聞いた博多弁。なんか感動…っていうか、これは人違いなのかな?でも他に情報もないし。
「すごいですね。その制服は?」
「海星よ」
海星……どっかで聞いた事あるな。多分有名な進学校なんだろう。
俺はその子の荷物を拾い、挨拶を交わし、セーレ達の元へ戻った。
「拓也、君は女の子には随分優しいじゃないか。シトリーと実は同類か?」
「失礼な。それより今、拾ってたら金田真吾の名前が載ってたんだ」
「それって本人〜?」
「いや、わかんないけど…他に情報もないし、海星の生徒らしい」
「海星?」
「多分、有名な進学校だよ。名前聞いた事あるし」
「でもそれがわかったとこで、見つけれるって訳じゃないよね」
「進学校は大体、夏休みには補習ってもんがあるんだよ。だから明日学校あるだろ」
「でも拓也、今は日本はお盆って行事なんだろ?学校は休みなんじゃないか?」
……そうだった。
セーレ、なんでお盆なんて言葉を知ってるんだ?
「お盆ってそっか。確かに学校ないな」
「だろ?こないだ太陽の家に行った時、高校生の子たちがお盆は学校がないってはしゃいでたからさ」
「じゃあ捕まえられないの?ちょー無駄骨じゃーん」
ヴォラクはなんだそれとでも言うように欠伸を1つした。
「情報が入らないなら動けないなぁ…こんな時、シトリーがいれば便利だったのにな」
「なんでそこでシトリーなんだよ?」
「彼、話術が巧みだろ?いろんな人から上手く、聞きだせるんじゃないかって」
なるほど確かにな。
シトリーのあの軽さなら何らかの情報を聞きだしてくれそうだ。
でも盆までは絶対に何もできなさそうだなぁ。
俺はこれを機に、宿題をやってしまおうと思った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
結局、金田真吾を探すのは盆明けとして、家に戻った俺は宿題を再開した。
ストラスはクーラーのついた部屋が涼しくて快適なのか、そのままベッドに横になった。
いいよなフクロウは宿題なんか必要ないし?勉強なんかもする必要ないし?
俺は気まぐれにケータイをいじった。
肝心の光太郎はお盆を利用して、家族でハワイに行くそうだ。流石金持ちはやることが違う。
俺なんかお盆で家族でどっかに行ったことなんてほぼ皆無。たまにじいちゃん家に行くくらいだ。(じいちゃん家は兵庫)
そして盆明けには光太郎はもちろん夏期講習。ゆっくり休めるのは8月の終わりしかない。
中谷も野球ばっかで暇なのは夜しかないしなぁ。
上野や桜井達も別に頭いいわけじゃないし。前あいつ等と勉強会したとき、途中から遊びだして全く進まなかった記憶がある。
暇つぶしにケータイの電話帳を見ていると、森岡の名前が出てきた。
森岡…元気になったんかな…
あれから時々、森岡とは連絡を取り合うけど、メールじゃ本当に元気になったのかなんて確認できない。
そうだ。森岡に教えてもらおう。
森岡は頭いいし、何より直接会った方が情報手に入るし!
そうと決まればさっそく連絡。
俺は森岡に明日、宿題教えてくれとメールをした。
20分後、森岡から返事が返ってきた。返事はOK。
その後、早速俺たちは明日の場所と待ち合わせ場所と時間を決めてメールを切った。
俺はなんだか明日勉強すればいいかと思い、そのままベッドにダイブした。
ストラスはそのまま寝ていたので、俺がダイブした時の反動でベッドから落ちた。
ストラスはまたか、というような目で俺を睨んできたが、眠気の方が強いのか、何も言わずにベッドによじ登り、そのままもう一度、瞳を閉じた。
その様子を確認して、俺もベッドの上で目を閉じた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「よぉ!森岡久し振り!」
駅の改札口で俺と森岡は待ち合わせた。
「久しぶり。えっと元気そうだな」
「おう、お前の方はどうだ?あの後」
森岡は困ったように苦笑いを浮かべ、顔を軽く伏せた。
「相変わらず。集団下校だし…全校集会ばっかだし…」
「そっか」
それ以上聞くのは何か悪いと思ってしまったので、俺はそのまま近くのファミレスに向かった。ファミレスは昼前なので混んでいたが、あんまり待たずに席は取れた。
俺はテキストを広げて、1つ1つ森岡に質問していった。
森岡の教え方はハッキリ言ってうまい。
光太郎よりも全然。光太郎は元の頭がいいからどんな問題もできて当たり前的な感じで、逆に人に教えるとなると上手く言葉にできないそうだ。
でも森岡は公式からちゃんと教えてくれるし、応用問題も順序よく教えてくれる。
森岡、先生に向いてるんじゃないか?
着々と問題を解いていき、2時間過ぎた頃には宿題が半分終わっていた。
「疲れた〜。なぁ、何か食おうぜ。もう2時だしさ」
「え?本当だ。じゃあ一旦休憩な」
俺はテキストをしまい、ファミレスのメニューを開いた。
どれもこれも上手そう〜!でも魚系は昨日食ったしなぁ…今日は肉だな。
俺と森岡はボタンを押し、店員にオーダーをし、そのままメニューが来るのを待った。
「なぁ池上、その…今は大丈夫なのか?悪魔とか…」
森岡は気まずそうに、遠慮しがちに質問してきた。
「あぁ、今また1人契約してるかもしれない奴がいてさ。探してるんだけど中々見つかんなくて。金田真吾っていう奴なんだけどさ〜」
「金田…真吾。聞いたことあるな」
「え!?福岡の奴だぞ!?」
森岡は頭をひねって考えてけどやっぱりと頷いた。
「うん。やっぱり聞いた事あるよ。全国模試1番の奴だろ?」
「そうだよ!それそれ!なんで知ってんだ?」
「俺の通ってる予備校が同じでさ、塾内の全国模試でいつも1番なんだ。塾の先輩があいつには叶わないって言ってた。1回あったこともあるよ」
「会ったこともある!?」
「うん。東大も首席で行けるんじゃないか?って言われててさ。東大のオープンキャンパスに来てたんだ。その時、塾に寄ってもらったんだよ。でも、全然ガリ勉って感じじゃなかったし…むしろ拓也みたいなタイプかな?明るくて、オシャレで」
「へ、へぇ…」
オシャレ?俺が?(笑)
森岡はウェイトレスが持ってきたネギトロ丼を箸を割って食べだした。
俺も自分の元に届いたホットペッパーハンバーグをフォークでかきこんだ。
その後も勉強を教えてもらい、なんとか残り3分の1程度までに減った。
「マジでありがとう〜〜〜!俺1人だったら終んなかったからねマジで!」
「いやそんな…池上が頑張ったからだよ」
相変わらず森岡はなんつーか謙遜するよなぁ。
教え方とかマジで上手かったんだからもっと胸張ってもいいのに。
「でさ、話変わるけど…さっきの金田真吾のこと……」
「あぁ金田さん。俺も詳しいことは全く知らないよ。だってあの人は福岡の人だし交流がないから…」
ですよねー…
「でも聞いただけなんだけど…金田さん、勉強できるけど別に大学に行きたいってわけじゃないらしいんだ」
「え?」
「東大の模試も親に言われて仕方なく受けただけらしいし。そこまで受験とか勉強とかに興味ないらしいよ」
へぇ。理解できない悩みだな。多分一生。
「天才には天才の悩みがあるんじゃない?あの人、スポーツも芸術も何やらせても人より秀でてて…そのせいで挫折を全く知らないでさ、逆にやりたいことがないみたい」
「天才の悩みかぁ…一般人の俺には羨ましいくらいだよ」
「俺たちには理解できないよね。なんでもできるなんてこと…あったことないから」
森岡はジュースを飲みほし、コップを置いた。
そして時間も来て、俺たちはそこで解散した。
「今度4人で遊ぼうぜ。暇な日、連絡する」
「わかった。待ってる」
俺は軽くなった宿題の中身に若干テンションが上がりながら、帰路についた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「拓也、お帰りなさい」
家に帰ると俺の家に来ていたのか、澪が出迎えてくれた。
あぁ、なんて今日はついてるんだ。宿題はかなり片付いたし、澪には会えるし、俺は澪にただいまといい、カバンを置きに2階に上がった。
澪もストラスに会いたいのか、俺の後をついて2階に上がってきた。
「ただいまー。ストラス」
『拓也、宿題は片付きましたか?』
「おう。大分な」
『そうですか。では早く、ポテトを出してください。今日は厚切りなのでしょう?』
「おう。ちょい待ち」
俺はカバンを置いて、机の引き出しを開けた。机の中には大量のポテトの袋。全部、ストラスの為だ。
ドラッグストアなどが安売りしている時に大量に購入したもの。
俺はその中の1つを適当に選び、澪の膝の上に座っている(羨ましい)ストラスに開けて渡した。
ストラスは袋を受け取ると、机に飛び移り、ポテトを食べだした。
「ストラス。ポテトばっかじゃ栄養偏るよ〜」
『わかっていますが、実際この部屋にはポテトしかありませんから』
「俺のせいにすな」
俺は軽くストラスの頭にチョップを1発かましてやった。
ストラスはそれにあまり堪えてないのかケロリとした顔でポテトを食べていた。
『そういえば、セーレが今日、大量に食材を買い込んだので明日食べに来いと言っていましたよ。あそこに行けばまともな物も食べられますからね。行きましょう』
まともな物って…まぁ確かにポテトしかやってないけどさぁ(汗)
『澪も是非来るように言っていましたよ。セーレは料理がうまいとヴォラクも言っていましたし…期待してもいいと思います』
「え?じゃあお邪魔しようかな」
『是非そうしてください』
いやいやお前が仕切んな(笑)でもまぁいいか。宿題もかなり終わったし。
とりあえず母さんに言っとかなきゃな。
俺は澪と一緒に1階に下りた。
台所からはいい臭いが漂ってくる。今日はあんかけチャーハンか!はやく食いて〜!!
俺は階段を駆け下りてリビングに入った。
リビングにはお盆なので家にいる父さんと一緒に直哉がテレビを見ていた。
「兄ちゃんお帰りー」
直哉は俺を見つけると駆け寄ってきた。
「兄ちゃん早くテレビみてよ!兄ちゃんの好きなお笑い芸人出てるから!」
「マジか!そりゃ一大事だ!!」
俺は直哉とテーブルまで走って向かった。
澪はその光景をクスリと笑い、母さんの手伝いに台所に入った。
あんかけチャーハンは俺の好物の1つで俺はペロリと食べきった。
俺はおかわりをよそってもらいながら明日は夕飯が要らないと伝えた。
「母さん、明日夜から友達と遊ぶから夕飯要らない」
「はーい。わかったわ。でも最近あんた家にいないわね〜」
「いるじゃん。今日だっていたんだし」
「そうだけど…相対的に見たら家にはいない気がするのよね〜」
「考え過ぎだって…」
まぁ否定はできないけどさ。俺はその話をやめたくて、話題を変更した。
あんまりそんなこと言われたら罪悪感出るから…
だって俺は何も悪いことしてない。
俺が俯いているのを見かねた澪も慌てて会話を変えた。
こんな指輪さえなかったらなぁ…こんなバタバタした夏休みは無かったはずなのに…俺は皆にわからないように軽くため息をついた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
次の日、俺は夜、澪とストラスと一緒にマンションに足を運ばせた。
夕飯ならきっと大丈夫だろうと中谷にもメールを送っておいた。
マンションでは既に料理を作っているのか、玄関を開けた瞬間いい匂いがしていた。
何品かはできているのか、テーブルには料理がもられていた。
「おう池上。久しぶり!すげーよなー!こんなの見たことないし!」
中谷はもう着いてたらしく、ヴォラクと料理をしげしげと眺めていた。
確かに凄い。レストランにでも来たみたいだ。
セーレは料理をするのが好きなのか、少々鼻歌を歌いながら野菜を切っていた。
「セーレ、すごい手つきだな。慣れてるし」
「ね。いっつもあんな感じだよ。今日は特に豪華だけど」
ヴォラクは感心したように唐揚げを1つつまみ食いした。
「あ、ずりぃ。俺も」
中谷も唐揚げを1つくすね、口に放り込んだ。
「そういえばお前ら、いっつも金どうしてんの?あの2万で足りてんのか?」
俺はストラスが前、拾ってくれた3万のうち、2万をヴォラクに渡していた。
渡した日からまだ数週間しかたってないけど、こんなに豪華なの作るくらいだ。金は足りるんだろうか?
ヴォラクは首をかしげながらも頷いた。
「セーレ、すっごい安いとこで買ってるよ。ちょっと離れたとこだけど。電気代とか、なんかそんなのは勝手に光太郎が払ってくれるから心配いらないって」
それって引き落としになってるってことか?あっさりそれをやってのける光太郎に感服。
「あと、シトリーのバイト代から貰うんだって」
あぁそうか。シトリーはバイトしてるからこれからは何とかなるな。
「シトリーってどこでバイトしてんのー?」
ヴォラクはわからなさそうだから俺は少し声を大きくしてセーレに話しかけた。
「居酒屋とバーだよ。週3で夜ずっとやってんだ。かなりハードだよ。夜の7時から11時まで居酒屋で働いて、11時から朝の5時までバーで働いてるんだ。帰ってくるのはいっつも朝だよ。時給も居酒屋は1000円以上で、特にバーは自給が3000円だからいいんだって」
「1日で20000円以上か。すっげー荒稼ぎ」
「しかも居酒屋は研修期間が1か月で終わったら自給が1300円にあがるらしいよ」
おそるべし…シトリー……
「今日はバイトの日なのか?」
「今日は違うよ。セーレのおつかいに行ってる」
おつかい〜〜?
「醤油がなくなっちゃったからって。ぶーぶー言ってた」
オレがヴォラクと話してるうちにシトリーが帰ってきた。
「お〜い。買ってきたぞ〜って澪ちゃん!!今日はラッキー♪」
シトリーは澪を見て若干テンションが上がったのか醤油をセーレに渡してこってに来た。
「なんだよシトリー。澪に近づくんじゃねーよ」
「んだよ。ナイト様ぶってさ。えっらそーに」
シトリーはぶつくさ言いながらヴォラクに紙袋を手渡した。
「はい、ワンピース1~10巻。読み終わったらまた貸してくれるって」
「やったぁ!!ありがとうシトリー!!」
ヴォラクはピョコピョコ飛び跳ねて漫画を手にした。
「ワンピース?ヴォラクそれ好きなのか?」
ヴォラクは「うん」とだけ答えて、椅子に座って漫画を読み出した。
その代わりにシトリーが答えてくれた。
「おぅ。こないだコンビニに行ったときに、ジャンプの立ち読みしたんだ。そしたらあいつはまっちまってさ。でもアレ単行本じゃかなりの数でてんだろ?買ってやるのは無理だから、バイト先の奴に聞いたら持ってるから貸してやるってさ」
バイト仲間とか……こいつエンジョイしてんな。
ヴォラクはよほど面白いのか漫画にくぎ付けになっていた。
「完成!!できたよ〜」
セーレが料理をどんどん持ってきた。何品あるんだ?軽く10品はある。
「バイキングみてー」
俺と中谷は感心した。セーレ料理うますぎ。
俺たちはテーブルについて料理を食べた。
「うま!マジで上手い!!やっべー!コレ!!」
「マジでレストランみてー!!コレならいくらでも食えるし!!」
俺と中谷は感動してガツガツと料理を食べた。ストラスも皿に大量に取り、器用に食べていた。
本当にうまい!やばいなんか感動!!
俺たちはかなりの量を食べて、最後にはすべての料理が無くなった。
「食った食った〜〜!」
セーレと澪が洗い物をしている間、俺たちは背伸びを大きく1つした。
ヴォラクは相変わらずマンガを読んでいるし、シトリーはついでに買ってきたのかメンズの雑誌を読んでいた。ストラスもヴォラクの漫画を覗き込んでいた。
シトリーは雑誌でケータイの広告を見たのか、いいなぁ〜と呟いた。
「あ〜俺もケータイほしい〜」
「?なんだよシトリー、お前バイトしてんのならケータイ買えばいいじゃん」
「馬鹿。身分証が必要だろうが。新規加入者には」
あれ?そうだったっけ?
「ないと色々と不便なんだよな〜」
本当に人間みたいだな。こいつ等を見る限り、本当に悪魔だなんて信じられない。
どこからどう見ても、しっかり者の長男、おちゃらけた次男、わがままな三男、ペットのフクロウ…とでもいった感じだ。
見た目もセーレは20歳くらいで、シトリーは18歳くらい、ヴォラクが10歳くらいだ。
なんかホームドラマが作れそうだな。俺はのんきに3人を観察しながらそう考えていた。
そして時間も10時を過ぎたので、俺たちはそのまま解散した。
俺は中谷と別れて、澪を送って家に着いた。
母さん達にただいまと言い、自分の部屋にあがって窓からストラスを部屋の中に入れた。お盆も明日で終わりか。
あさってはまた福岡に行くんだよなぁ。
1か月前までは考えられなかった生活。現実離れした日常。でもそれが当たり前になって自分でもビックリする。
人間って適応能力があるって言うのは本当だったんだなぁ。悪魔と戦うのは怖いのは今でも変わらない。それは多分ずっと変わんないと思う。
でもきっと俺はこういうのに憧れてたんだと思う。小さい頃見たアニメで正義の味方が敵を倒していくのを……
いつか自分もあんな冒険ができればいいって、あの頃は思ってた。
でも実際の冒険は本当に命がけで……
「普通の生活に戻りたい」
72匹いる悪魔のうち、まだ66匹が残ってる。マルファスとの戦い以外はそんな危ない目には会っていない。
でもまだそれ以上の危険な奴に会うんだろうなぁ。
俺はなんだか疲れてしまい、軽く目を閉じた。
1か月前に思ってたことをもう1度思い出した。
また今までのような生活に戻れたらいいのに……そんなことを思ったってもう意味なんてないのに。
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